HERE/電撃

HERE 電撃.jpg7日からレコ発ツアーを開始したHEREが、その7日にリリースした7thアルバム。

近年は初期に較べてかなりポップ化が進んだな、と思っていたHEREだったが、今回はタイトルから想像出来る通り、かなりガツンとロックした1枚になっている。
性急に突っ走っていきなり終わってしまう冒頭の「電撃KISS」とラストの「青年よ、電撃を抱け。」に挟まれて、「すべてぶつけて愛し合おうか、猛烈に。」とか「大丈夫、永遠じゃない。」とか「詩になる」とか「鋭く尖る」とか「どれほど僕が君のことを愛してるとかどうだっていい」とか「今ここがポイントだ」とか「ギリギリで鳴らす」とか、曲名を見るだけで「ああ、HEREだなあ」となる。

そして「電撃KISS」に続く「BANG-BANG-ZAI」から、”祝え 普通の日々を”と、コロナ禍がようやく落ち着きを見せ(…ているように見える。実は”ように見える”だけで全然落ち着いてないが…)、戻ってきた日常を全力で寿ぐ。
…ようでいて、”こんがらがった論争””微妙に狂った日本”といった歌詞に見られるように、手放しで「さあ皆さんご陽気に!」とはなっていない。
”右や左も 真ん中とかもない””勝敗も今は関係なく”という歌詞にも、今の世相が反映している…と思うのは決してうがった見方ではないはず。

そう、尾形回帰の歌詞には、どんづまりな極限状況を経験しながらそれでも遮二無二前を向こうとする、開き直ったポジティヴさが感じられる。
”明日はないかもしれない/そう思ったあの日から 今を全力で生きると誓った/バイバイ 自分を愛せない日々/いつも世界は変わらない だから俺自身変わるんだ”(「Sing!! Sing!! Sing!!」)
”絶望なんかしていないことに/僕らはやっと気がついたんだ”(「詩になる」)
あと”気づけばもう40代さ”(「すべてぶつけて愛し合おうか、猛烈に。」)とか、本来年齢不詳を標榜しそうなロック・スターらしからぬ歌詞…も尾形ならではというか。

特に心に響いたのは「大丈夫、永遠じゃない。」で。
”大丈夫、永遠じゃない。 大丈夫、終わりは来るよ”…終わりがないと思われるような苦しみに直面している人(例えばいじめに遭っていたりとか、離婚や失恋で回復不可能なほど落ちてる人とか)に届いてほしい歌だ。

ガツンとロック、と言いながら、当然ながら非常に多彩な曲があり、新機軸も。
特に注目すべきは「どれほど僕が君のことを愛してるとかどうだっていい」と「複雑な熱帯夜」の2曲だろう。
とりわけ「複雑な熱帯夜」。
歪まない流麗なギター・リフに導かれる、シティ・ポップ風(?)な横ノリのグルーヴ。
これまでのHEREになかったタイプの曲。
もちろん、終盤の超速い三々七拍子で盛り上がる「BANG-BANG-ZAI」みたいな曲があってこその対比。

非常に出来の良いアルバムだが。
一般の流通には乗せず、ライヴ会場での手売りとネット通販のみでの販売になるのだそうで。
メガヒットとそれ以外…という二極分化、あるいは多極分化の現状では賢明な選択、というべきなのか。
ともあれ活動15年となるHERE、まだまだこれからだ。

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