死神紫郎/独白

死神紫郎 独白.jpgフォーク歌手にしてラッパーという、異色にもほどがある道を歩む死神紫郎。
前作『さよなら平成』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201911article_25.html)から約4年半ぶりとなる5thアルバム。
3月に配信リリースされていたが、この度CDでも出た。

これまでにこのブログで紹介した「冷蔵庫」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202205article_17.html)「神と紙」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202209article_9.html)も含む全12曲。
「執念のラップもういっちょ」以外は外部のトラックメイカーからの提供を受けて、それらにラップを乗せている。
自作自演のシンガーソングライターだった死神紫郎は、「一度自分でも思いがけない方向に、おのれを放り込んでみたかったのです」と語る。

フォークのスタイルで出してきたアルバムでは、常に死を見つめ続け、ダークにして時にネガティヴとも取れる言葉の連なりの中になけなしの希望と生きる意志を浮かび上がらせてきた死神紫郎。
興味深いことに、ラップのスタイルで放たれる言葉の数々は今までになくダイレクトに、前向きな生きる意志を伝える。
”弱くたって生きちまえば価値は勝ちじゃねえか”(「超コノハチョウ」)
”弱いままで逞しく”(「独白」)
”何度でもやり直す生き直す”(「執念のラップもういっちょ」)
”いじいじしている暇などない 図々しいほどやってやっから”(「おのれの踊り」)
”反省だらけの半生まだやりたい 生きたい”(「眠ることで」)
”生きる意味なぞハナからないから 死んでたまるかリアル・サバイバル”(「リアル・サバイバル」)
本人は「ラップは韻というモノの弾みが世界を広げてくれる表現スタイルということに気づきました」と語っているが、実際死神紫郎の世界は新たな広がりを見せるようになった、と思う。
陰々滅々とした(?)『さよなら平成』にも聴かれた特有なユーモアのセンスは、ここでは当然ながら増量している。

個人的に一番気に入っているのは、死神紫郎本人がトラックを作った「執念のラップもういっちょ」。
本人によると思われるアコースティック・ギターをフィーチュアしたトラックは、他の曲に較べて正直素朴に過ぎ、素人臭くてスカスカなのだが。
フォーク歌手がラップにアプローチしたというバックグラウンドが、他の曲にない個性として光っている1曲、と思う。
(他の人が作ったトラックに委ねることで新たな個性を獲得しようとしたであろう死神紫郎には不本意な評価かも知れないけどね)

死神紫郎、次のアルバムはフォークだろうか、ラップだろうか。
いずれにしても期待しかない。
ともあれ2019年(ああ、コロナ禍の前だったんだなあ)の個人的なベスト10枚に入った前作同様、今回のアルバムもおススメです。
仕事が忙しくてこのアルバムに伴うインタヴューとかは出来なかったんだけど、死神紫郎にはいずれまた改めて話を聞きたいと思っている。


『独白』、15日リリース。

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