完璧な波を求めて、終わりのない夏を過ごし続けるには、北半球が冬の時期に南半球へ行けばよい…。
繁栄を謳歌していた60年代のアメリカ合衆国とはいえ、ネット全盛で世界がすっかり狭くなった現在とは何もかもが違う。
そんな時代に、当時26歳の映画監督ブルース・ブラウンが、21歳のマイク・ヒンソン、18歳のロバート・オーガストと共に波を求めて世界を巡る、ドキュメンタリーでありロードムーヴィー。
一行はまずアメリカ大陸を横断し、東海岸から空路でセネガルへ。
更にガーナ、ナイジェリア、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、タヒチ、ハワイ…と、旅が続く。
サーフィンをやりに行くというのに、飛行機に乗る時にはマイクとロバートがビシッと黒いスーツに身を固めているのは、世界の盟主を気取っていた(?)当時のアメリカ合衆国といえど、アフリカなどを気軽に訪れるような人はまだまだ少なかったであろう時代を想像させる。
それにしても…現在のドキュメンタリー映画に較べると、何もかもが素朴だ。
多分1台きりのカメラで撮影されたであろう映像が様々な出来事を克明に記録しているとはいえ、現場での生の音声は一切入っておらず。
THE SANDALSによるユル~いサーフ・インストゥルメンタルをバックに、ブルース・ブラウン自身によるナレーションがほとんど切れ目なく入ることで、状況を説明している。
何だか、子供の頃によくTVで観た、アメリカ製の世界紀行番組の類を思い出したり。
一方、サーフボードにカメラを固定したとしか思えないような、当時のテクノロジーでどうやって撮影したのだろうと思ってしまうシーンも随所に。
俯瞰やロングショットでの撮影を見ても、単なるドキュメンタリーではなく、ある程度の演出があったことが窺われる。
全体を通して、アメリカの古き良き時代が感じられる。
そして一方で、今改めて観ると、その古き良き時代の終焉の予感、をも意識させられる1本。
…というのは、俺たちがこの当時及びその後の歴史を知ってしまっているからなのだが。
(公開当時にそんなことを感じた人は皆無だったろう)
この映画が公開された1966年は、アメリカ軍がヴェトナムで「サーチ・アンド・デストロイ作戦」を開始した時期に当たる。
そして68年には、米軍兵士のヴェトナム派遣が約55万人と、ピークを迎える。
つまり映画の中でサーフィンを楽しんでいる若者たちも、2~3年後には多くが地獄の戦場にいたかも知れないワケで。
また、南アフリカの場面で黒人が一人も出て来ないことも、時代を感じずにはいられない。
(コレが80年代に作られた映画だったら、登場人物たちがアパルトヘイトの南アフリカへは行かないと決めるシーンが出てきたかも知れない)
閑話休題。
ともあれ、何となく想像しそうなワイルドさとかスピード感とかはあまりなくて、本当に牧歌的で平和な映画だ。
むしろそれゆえに、60年代のユース・カルチャーの一部を誇張なく切り取った一編として、評価されたのでは。
この映画が米国議会図書館とニューヨーク近代美術館に所蔵されているというのも納得な気がする。
ディック・デイルが大好きな人にはあまり響かなくても、ケネス・アンガーのファンとかにはある意味逆説的に楽しめそうな1本です。
12日(金)より新宿ピカデリー他で公開中。
https://endless-summer.jp
『エンドレス・サマー デジタルリマスター版』
製作・監督・撮影・編集・ナレーション:ブルース・ブラウン
音楽:ザ・サンダルズ
キャスト:マイク・ヒンソン、ロバート・オーガスト
1964年|アメリカ|カラー|DCP|5.1ch|90分|原題:THE ENDLESS SUMMER|字幕翻訳:小泉真祐|G
鈴正・フラッグ共同配給 宣伝:フリークスムービー
© Bruce Brown Films, LLC
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