The Skarlets/Diamond Tears Tales

Skarlets Diamond Tears Tales.jpg1980年に少数がリリースされ、2020年にCD化されるまで幻の存在だった、東京ニュー・ウェイヴ/ポスト・パンク系オムニバス『都市通信』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202002article_15.html)…のトップを飾っていたSynchronize。
…の後身バンド・The Skarletsは90年に活動を停止していたが。
しかし彼らは『都市通信』がCD化された20年に活動を再開し。
昨年34年ぶり(!)の新作音源である12inch EP「hug」をリリース。
https://lsdblog.seesaa.net/article/498720012.html
そのSkarletsが、87年にSynchronizeから改名してSkarletsとなってから実に37年にして(!)初のアルバムを完成させた。

現在のメンバーは「hug」と同じ、白石未来夫(ヴォーカル)、野本健司(ギター:元NON BAND他)、橋本由香里(ベース)、久野(横田)尚美(キーボード)、小暮義雄(ドラム)の5人。
白石、久野、小暮が『都市通信』当時の、野本、橋本が1990年当時のメンバー。
彼らはこの11月の時点で60~71歳(!)という。
しかし90年にアイディアだけあったらしい「Original Hour」を除く全曲が活動再開後の新曲で、「hug」にも収録された「Off World」のリミックスを除く全曲が「hug」録音以降(昨年夏)に新たに録音されたモノ、とのこと。

印象としてはやはり「hug」の延長線上にある音…というだけではなく。
エレポップ風なサウンドと無機質な感じのヴォーカルをフィーチュアしたSynchronize時代に較べると、というか…いや、ピアノだけでなくバスーンやオーボエやチェロやバグパイプなども突っ込んで、「hug」以上にオーガニックな感触。
そこに、「hug」よりも更に肉感的になった、と感じさせる白石未来夫のヴォーカルが乗る。
60~70代のメンバーによる、とは思えないほど、どうかすると「hug」以上に瑞々しい歌唱とサウンド。
白石のヴォーカルが時に激する(と言うほどではないのかも知れない)のだが、そのタイミングが非常に独特で、個人的にはかつて「イカ天」で「どうしてそこで盛り上がるのかわからない」と評された、たまの石川浩司のセンスに近いモノを感じたり。

あと、「Clearnize Dance」の歌詞に”データ”とか”起動”といったいかにも(?)デジタルっぽい言葉が出てくるのだが。
やはりと言うべきなのか、デジタルネイティヴな若い世代とはまるで違った、デジタル的/ICT的な諸々に対する昭和生まれならではの(?)独特な距離感の様なモノを感じるのは、多分俺だけではないのでは、と思う。
ちょっと昭和のレトロ・フューチャーっぽい感覚とでもいうか。
『都市通信』がリリースされた1980年にテレビ電話(Zoomやスカイプなどがあるとはいえ、結局スマホの世でメインとなってはいない)を歌ったFILMSの名曲「T.V.Phone Age」なんかを思い出したりも。
(あるいは同じ80年に日本青年館で”俺はデータが欲しい”と歌ったPANTA & HALに通じると言ってもイイかも知れない)

ともあれ凄くいいアルバムです。
(個人的には年間ベスト候補に入るレベル)
興味を持った人は是非聴いてみてください。


『都市通信』参加組の中で近年もアクティヴであるNON BANDやThe Skarletsのライヴを観る機会は、仕事が忙しいこともあってなかなか巡ってこない。
それでもいつかは、と思う。
いつまでも生きてられんしなあ。


『Diamond Tears Tales』、15日リリース。

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