
活動中にわずかなリリースしかなかったのに、90年代末以降出るわ出るわ音源が。
そんな中の1枚。
タイトル通り、1977年と78年のライヴ。
それがCD2枚組48曲って…。
こんなの喜んで聴く奴が何処にいるんですか。
…俺か!
1976年初頭に結成。
ニューヨークあたりを別とすれば、アメリカでもかなり初期のパンク・バンドということに、一応はなるのだが。
しかし実際にはパンクというか…コレはあちこちで何度も書いたけど、このバンド、ファンジンとか作ってたロックおたく連中が自分たちもてんでに楽器を持ってバンドを組んでみたら、演奏技術のなさも相まってたまたまパンクみたいになっちゃった、というバンドだと思う。
(それが独自の面白さになったんだけどね)
ディスク1は1977年4月9日、MONROE COUNTRY PUBLIC LIBRARY(つまりクラブとかじゃなくて図書館)での演奏を中心に、前日4月8日の同所、および5月22日の「THE FIRST CINCINNATI PUNK ROCK FESTIVAL」(77年のシンシナティでそんなフェスティヴァルがあったのね…)のライヴを含む21曲。
4月のメンバーはテッド・ニーミエック(ヴォーカル、ギター)、ケン・ハイランド(ヴォーカル、ギター:元O.REX)、リッチ・コーフィー(ギター、ヴォーカル)、デイヴ・スラック(ベース、ヴォーカル)、デイヴィー・メドロック(タンバリン、ヴォーカル)、ドン・ジャスクルスク(タンバリン、ヴォーカル)、ジム・デヴリース(ドラム)…って、多い、多いよ!
更に体調不良で演奏に参加しなかったらしいエディ・フラワーズ(ヴォーカル他)も、”ill in the audience”とクレジットされている。
しかもオープニングMCはジョン・メレンキャンプですって(!)。
(当時は”ジョニー・クーガー”。このCDのトレイにはテッドとジョニーのツーショット写真がある)
4月のライヴではMX-80 SOUNDが前座を務めたという。
(「逆だろう!」と言いたくなる人も多そうな。MX-80 SOUNDのメンバーはTHE GIZMOSの活動を惜しみなくサポートしてくれたらしい)
5月のライヴにはケンとジムが不参加で、ジム・コールがドラムを叩いている。
(ケンは当時海兵隊にいて、GIZMOSの活動に参加出来る機会は限られていたはず)
この時、GIZMOSはフェスティヴァルのトリだったという(!)。
人海戦術(?)でぶっぱなされる、THE VELVET UNDERGROUND/ルー・リードやIGGY AND THE STOOGESやNEW YORK DOLLSやTHE DOORSやリンク・レイ、更にRAMONESやパティ・スミスその他の音楽を換骨奪胎…まで行ってない、へっぽこR&R。
THEMの「Gloria」やジョニー・クーガーの曲はともかくとして、KISSのベタベタなカヴァーを2曲も演っているのにも、この人たちのパンク的なアティテュードがDIY的なモノに限られ、いわゆるパンクに顕著なそれ以前のロックや社会に対する反発とかではなかったであろうことが窺われる。
でないとメンバーがよりによって(?)海兵隊に入ったりしないと思うし。
ただ、短くてシンプルでラウドなロックを演りたいという意識は明確だったようだ。
(このCDのジャケットで革ジャンにカーリーヘアという姿のドン・ジャスクルスクは、その後髪を短く切っている)
オリジナルのTHE GIZMOSは、1977年夏に解散。
1年余りの活動だった。
(メンバー全員がブルーミントン在住というワケではなかったため、コンスタントな活動が難しかったらしい)
しかしバンドの復活/存続を望む声は(意外なことに?)多かったようで。
テッド・ニーミエックは新たなメンバーですぐにバンドを再編。
ディスク2にはそちら、新生GIZMOSの演奏が27曲。
77年12月3日~78年末まで、やはりMONROE COUNTRY PUBLIC LIBRARYでの音源が中心となっている。
(ディスク1に較べると音質はやや悪い)
メンバーはテッド・ニーミエック(ヴォーカル、ギター)、デイル・ローレンス(ギター、ヴォーカル)、スティーヴ・フェイクス(ギター、ヴォーカル)、ビリー・ナイトシェイド(ベース、ヴォーカル)、シャドウ・マイヤーズ(ドラム)。
77年12月のライヴにはフィル・ハンドリー(パーカッション、ヴォーカル)とドン・ジャスクルスク(タンバリン、ヴォーカル)もいて、ドラムはMX-80 SOUNDの故デイヴ・マホニーが叩いている。
(デイヴはシャドウが加入するまでサポートしていた)
こちらはわりとフツーに(?)ガレージ的なパンク/R&Rになりつつあるような感じ。
「Adolescent Punk」なんて曲名からしても、意識的にパンク・ロックにアプローチしていたであろうことがわかる。
(当時のTHE GIZMOSは”NEVER MIND THE SEX PISTOLS HERE'S THE GIZMOS”と標榜し、SEX PISTOLSをカヴァーしたりもしていた)
ルー・リード「I'm So Free」、THE OUTSIDERS「Time Won't Let Me」、THE MODERN LOVERS「Astral Plane」、アリス・クーパー「I'm Eighteen」、THE MARVELETTES「Please Mr.Postman」、そしてTHE 13th FLOOR ELEVATORS「You're Gonna Miss Me」をカヴァー。
一部は初期のRADIO BIRDMANにも共通するチョイスだし、「I'm Eighteen」での凶暴さはアリスよりもむしろTHE IMPERIAL DOGSあたりを思わせる。
あと、この時点でもTHE VELVET UNDERGROUNDの影響が感じられる気がするのは、テッド・ニーミエックの志向かも知れない。
(ワイルドにプレイすることはメンバー全員が意識していたようだ)
で、聴いててどっちが面白いかというと、圧倒的にポンコツなディスク1の方なんだから始末が悪いというか(笑)。
あと、オリジナルのTHE GIZMOSと再編後で、レパートリーの重複が「Mean Screen」「Human Garbage Disposal」「Kiss Of The Rat」「That's Cool」「Amerika First」「Ballad Of The Gizmos」と6曲しかない。
パクリのツギハギみたいなの(?)も多かったとはいえ、彼らが凄い勢いで曲を作っていたことがよくわかるのでした。
再編されたTHE GIZMOSだったが、その後オリジナル・シンガーのテッド・ニーミエックが脱退。
デイル・ローレンス、ビリー・ナイトシェイド、シャドウ・マイヤーズは1979年初頭にティム・キャロル(ギター、ヴォーカル)を迎え。
そしてオリジナル・メンバーが一人もいなくなったGIZMOSは、4人編成のまっとうな(?)パンク/ロック・バンドとして80年代初頭まで活動することになる。
まさか10年代半ばになってテッドらを含むかつての大人数で再結成するとは…。
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