THE HAMMERSMITH GORILLAS/GORILLA GOT ME(1999)

HAMMERSMITH GORILLAS.jpg短髪にモミアゲの怪人ジェシ・ヘクター率いたTHE HAMMERSMITH GORILLAS~THE GORILLASの編集盤。
パンク・ロックというか、プロト・パンク/パブ・ロックもちょっと入ってるね。
何しろ一番古い音源は1974年。

ってかジェシ・ヘクターのキャリアのスタートは1959年(!)のTHE ROCK'N'ROLL TRIOに遡る。
彼の初レコーディングは61年。
62~64年はTHE CRAVATTESで、64~66年はTHE CLIQUEで、66~67年は再編したROCK'N'ROLL TRIOで、67~68年はTHE WAY OF LIFEとTHE MOD SECTIONで活動。
その後ジェシが69~71年にかけてやっていたCRUSHED BUTLERの音源集+DVD-R『UNCRUSHED』はこのブログでも紹介した。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1287.html)
この時点でメンバーの3分の2はのちのTHE HAMMERSMITH GORILLAS。

CRUSHED BUTLER解散後、ジェシ・ヘクター(ギター、ヴォーカル)とアラン・バトラー(ベース)はHELTER SKELTERとTIGERを経て、ゲイリー・アンダーソン(ドラム)と1974年にTHE HAMMERSMITH GORILLASを結成。
76年にドラマーがクリス・タウンソン(元JOHN'S CHILDREN)に交代し、バンド名をTHE GORILLASと短縮。
パンク・ムーヴメントの一角で活躍し始める。
更にドラマーがマット・マッキンタイアに交代。
その後アランが脱退してジミー・ナイトが加入、ゲイリーが戻る。

で、やってることはCRUSHED BUTLERから、と言うよりそれ以前から変わっていない。
このCDでもTHE HAMMERSMITH GORILLAS1974年のTHE KINKSカヴァー「You Really Got Me」からガツンとクるR&Rを聴かせるし、パンク時代のTHE GORILLASも基本同じだ。

このCDは、彼らが1974~81年、THE TROGGSも在籍していたペニー・ファーシングと、MOTORHEADやTHE DAMNEDで知られるチズウィックからリリースしていたシングルに、未発表音源を加えたモノ。
ペニー・ファーシングでもチズウィックでもアルバムはリリースされず、その間の78年にTHE GORILLASとしてロウからMESSAGE TO THE WORLD』が遺されたが。
ホントに74年のも81年のも(そして『MESSAGE TO THE WORLD』も)、方向性はまるっきり一緒。

ちなみに1981年の「Move It」「Song For Rita」はラット・スケイビーズがプロデュース。
81年にコレかよ、と言いたくなるような、武骨なR&Rを聴かせる。
(流石に録音はちょっと80年代っぽい感じだが)
ジェシ・ヘクター自身は60年代初頭から同じことをやっていたのが、76~78年の時点で奇跡的(?)に時代とマッチしたTHE GORILLAS。
しかし80年代には流石にもうニーズがなかったようで、バンドは解散する。

未発表で注目すべきは、THE HAMMERSMITH GORILLASとして1976年8月28日に出演した仏モン・ド・マルサンでの有名な「EUROPEAN PUNK ROCK FESTIVAL」に出演した時の音源。
(マット・マッキンタイア在籍時なのでこの頃は既にTHE GORILLASだったはずだが、ここでのクレジットはHAMMERSMITH GORILLAS)
60年代ガレージのTHE SHADOWS OF KNIGHTでも知られるボ・ディドリー「You Can't Judge A Book(By Looking At The Cover)」あたりはともかくとして、エルヴィス・プレスリー「Jailhouse Rock」にTHE TROGGS/ジミ・ヘンドリックス「Wild Thing」にこれまたジミの「Foxy Lady」って…。
「Wild Thing」はTHE DAMNEDが80年代にカヴァーしているものの、76年当時に”パンク・バンド”がこのチョイスってのは、ちょっと他に思い付かない。
「Foxy Lady」なんて、『MESSAGE TO THE WORLD』の1曲目に入れちゃったもんな。
(あと81年の「Move It」はクリフ・リチャードのカヴァーなんだぜ…)

ジェシ・ヘクター、1976~77年当時、パンク・ムーヴメントに乗っかってやろう、みたいな部分は毛ほどもなかったのではと。
以前にも書いたけど、彼はどの時期もただ自分流のハードなR&Rを演ろうとしか思っていなかった気がする。
とりあえずジミ・ヘンドリックスが大好きなことはよーくわかった(笑)。
しかしこの音、ただただ痛快。

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