CAN/SOUNDTRACKS(1970)

CAN SOUNDTRACKS.jpgCANの、一応2ndアルバム…だが、本来はタイトル通り、サントラ提供曲を収録した編集盤のはずだった。
実際リリース当時も、”コレは編集盤で、2ndアルバムは今度出る『TAGO MAGO』”みたいなアナウンスがされていたらしい。
しかし現在ではこのアルバムをとりあえず2ndと見るのが普通だろう。

商業的成功とは無縁だったデビュー当時のCANが、糊口をしのぐために手掛けていたというサントラ仕事の集成。
…なんてのはフツー、バンドが有名になって何年も経ってから発掘されたりするモノだが、1stアルバム『MONSTER MOVIE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202210article_16.html)の翌年にリリースされたということは、この時点でレーベル側がCANにかなり期待していたことの現れでは、と思う。
メンバー交代の端境期にリリースされたアルバムなので、マルコム・ムーニーが歌う曲とダモ鈴木が歌う曲が混在している。
マルコム2曲、ダモ4曲、インストゥルメンタル1曲。
楽曲制作に際して、実際にそれらの映画を観ていたのはイルミン・シュミット一人だったという。
他のメンバーは、イルミンの語る映画のあらすじから、めいめい勝手なイメージを膨らませて演奏したらしい。

前半冒頭3曲は映画『DEADLOCK』から。
テーマ曲「Deadlock」ではダモ鈴木のヴォーカルが物悲しく響く。
続く「Tango Whisky Man」、ダモの歌うメロディはけっこう歌謡曲っぽい。
インストゥルメンタル「Deadlock」は曲名から明らかな通り1曲目のヴァージョン違いだが、重厚なアレンジと演奏はいかにもサントラ風。
1曲目でダモが歌っていたメロディを、ミヒャエル・カローリのギターがなぞっている。
ところでこの『SOUNDTRACKS』は1970年9月リリースだというが、『DEADLOCK』の3曲が録音されたのは70年8月。
録ってすぐエディットしてミックスとマスタリングをして出したことになる。
『DEADLOCK』がいつ公開されたのか知らないけど、ひょっとしたら公開よりも前にこのアルバムが出ていたのかも、と思う。

「Deadlock」からシームレスに「Don't Turn The Light On, Leave Me Alone」につながる。
映画『CREAM』より。
1970年6月の録音。
ダモ鈴木の初レコーディングだという。
こういうトライバルな曲を叩く時のヤキ・リーベツァイトのプレイは絶品…いや、ヤキは何叩いても絶品だけどね。

A面ラストはマルコム・ムーニーが歌う「Soul Desert」。
映画『MADCHEN MIT GEWALT』より。
1969年12月録音。
CAN在籍時のマルコム最後の録音。
『MONSTER MOVIE』の「You Doo Right」あたりから直結するタイプの、ミニマル・ファンク・ナンバー(?)。
マルコムのイカレっぷり全開。

B面には2曲。
まずCANの代表曲のひとつ「Mother Sky」。
映画『DEEP END』より。
1970年7月録音。
俺がこの曲を初めて聴いたのは、ベスト盤『CANNIBALISM』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201907article_25.html)に収録されたエディット・ヴァージョンで。
その後この『SOUNDTRACKS』でオリジナルの14分半ヴァージョンを聴いて、 改めてぶっ飛ばされた。
楽曲を下支えせずにただ脈動するベース。
(現代音楽を学んでいたホルガー・シューカイとイルミン・シュミットは、無調っぽく聴かせることを意識していたのではと思っている)
虫の羽音のような、やたら耳障りなギター。
破裂するスネア。
ダルでとりとめのないダモ鈴木のヴォーカル。
何度聴いても素晴らしい。

そして映画『BOTTOM』(ドイツ語タイトルは『EIN GROSSER GRAUBLAUER VOGEL』)から「She Brings The Rain」。
1969年11月録音。
マルコム・ムーニーが歌う、まるでシャンソンのような歌モノ。
ひたすら侘しく、しかもメロディアスでキャッチー。
(1回聴いたら覚える)
デビュー以来、CANはエクスペリメンタルでありながら、キャッチーでメロディアスなバンドでもあった。
一方で、当然ながらこのアルバムには当時のCANが手掛けたサントラ音源のすべてが収録されているワケではない。
『BOTTOM』のサントラには、短波ラジオから録音された信号音なども用いられていたという。
(短波ラジオはホルガー・シューカイがソロ転向後も音源ネタとして重宝し続けた)
「She Brings The Rain」について、『SOUNDTRACKS』が2005年にCD再発された時のライナーノーツでは”ラウンジ的”と評されているが、例えば90年代以降に生まれたような若い音楽ファンには、よくわからない表現かも知れない…と思う。
(まあこのブログ読んでる人にそんな若い人はほぼいないと思うけどね)

ジャケットにはCANとあるが、作曲やプロデュースのクレジットは『MONSTER MOVIE』同様にTHE CANとなっている。
(違和感…)
ともあれダモ鈴木をフロントに立てたバンドは、その後アヴァンギャルドでありながらチャートにも絡む存在として、特異過ぎる道を歩んでいくのだった。

CANがロック史上に巨大な爪痕を残した一方で、彼らが楽曲提供した映画の数々は早々に忘れ去られた。
『SOUNDTRACKS』の元になった5本の映画は、1977年にケルンで開催されたCANのイヴェントで再上映されるまで、ほとんど思い出されることもなかったという。
(残念ながら俺も1本も観たことがない)

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