MOTORHEAD/THE MANTICORE TAPES

MOTORHEAD THE MANTICORE TAPES.jpgええ、MOTORHEAD大好きですけどね。
ここ何年かはもう、次々に出るアルバム『○○○○』の”××エディション”みたいなのを買い集める金も気力もなかった。
(特に金がない)
しかしコレだけは買わないワケにはいかんのだった。
(カードで)
忙しくて発売日に買いに行けなかったし、買ってすぐに聴くことも出来ず、紹介遅れてしまったが。

1976年8月、イアン”レミー”キルミスター(ベース、ヴォーカル)、”ファスト”エディ・クラーク(ギター)、フィル”フィルシー・アニマル”テイラー(ドラム)という”黄金トリオ”編成になったばかりのMOTORHEADが、当時ロンドンにあったEMERSON, LAKE & PALMERのマンティコア・レコーズ本社のスタジオ(レコーディング・スタジオではなく、リハーサル・スペースだったらしい)にロニー・レインのモービル・ユニットを持ち込んでレコーディングしたという、彼らの初録音。
バンドはここでリハーサルと、レーベル向けのショウケースをやっていたのだそうで。
ジャケットはわざわざ中古盤っぽく仕上げられている。

デモとか言うよりも、リハーサルをそのまんま録ったみたいな感じに聴こえる。
まあ、大体予想通りの音。
「Motorhead」をはじめとする初期レパートリーが、RAWでガレージ的な質感で収められている。
ラリー・ウォリス(ギター、ヴォーカル)在籍時の『ON PAROLE』と黄金トリオの正式なデビュー・アルバム『MOTORHEAD』の間のミッシング・リンクみたいなサウンド。

ともあれあちこち興味深い。
後に「Beer Drinkers EP」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202009article_10.html)に収録されることになる「Instro」(ここではアルバムのイントロとしてそのまんま「Intro」と表記)がこの時点で演奏されていたり。
「Motorhead」「The Watcher」「Leavin' Here」「Vibrator」という、『ON PAROLE』にも『MOTORHEAD』にも収録された曲があるのは当然として。
(「Motorhead」でのエディ・クラークのギター・ソロは、この時点でほとんど完成している)
少々意外なのは、「City Kids」「On Parole」「Lost Johnny」そして「White Line Fever」あたりが入っていないこと。

俺はこのブログで”黄金トリオの3人による初のオリジナルは多分「White Line Fever」”と書いてきたのだが、ここに「White Line Fever」がなくて「Keep Us On The Road」(この時点では「Help Keep Us On The Road」)が入っているということは…ひょっとしたら「Keep Us On The Road」の方が先だったのかも知れない。
ただし「Keep Us On The Road」はMOTORHEADの3人とミック・ファレンの共作なので、黄金トリオ3人の作詞・作曲による純然たるオリジナル曲はやっぱり「White Line Fever」だったということかも知れん。
(いずれもミドル/スローだというのが興味深い)

それにしてもフィル・テイラーのドラム。
なんだろう、このせわしなくヘンテコなオカズの数々は。
「何故そこでそのハイハットさばきが入る…?」とか思わざるを得ないプレイの連続。
(この独特過ぎるシンコぺイトのセンスはその後「Live To Win」あたりで完成を見る)
あちこちミスもあるけど(それはフィルシーだけじゃない)、ファンにはむしろ楽しく聴けるだろう。

「Witch Doctor」と「Iron Horse/Born To Lose」はインストゥルメンタルとクレジットされているが、よーく聴くとどっちもうっすらヴォーカルのようなモノが聴こえる。
コレはインストゥルメンタルとして演奏・録音されたんじゃなくて、機材の不具合とかでヴォーカルが録れてなかったんじゃないかと思う。
(このブログで紹介したHAWKWINDの編集盤やフランク・ザッパのブートにも、ヴォーカルが録れてなくて結果的にインストゥルメンタル、みたいなのはあった)

残念なのは、英文ブックレットのクレジットに誤りがあること。
ホランド/ドジャー/ホランドの(というかTHE BIRDSの)「Leavin' Here」が何故かMOTORHEADのオリジナル曲とされている。
クリス”オーヴァー・ザ・トップ”ニーズによる英文ライナーノーツ(国内盤ブックレットに対訳がある)ではちゃんとカヴァーである旨が書いてあるのだが。
ただしこのライナーにも不正確な部分があり。
ラリー・ウォリスがPINK FAIRIESに加入したのはポール・ルドルフがレミーの後任としてHAWKWINDに参加した後、みたいに書いてあるんだけど、それはもちろん間違い。

まあそれはそれとして。
中身の方は、黄金トリオのファンには間違いなしですわ。
国内盤はSHM-CD+ボーナス・トラック(1977年ライヴ2曲。音質は悪い)入り。

英文ライナーには、これまでにあらゆるところで引用されてきた(俺もMOTORHEADについて書く時に引用していた)SOUNDSやMELODY MAKERやNMEの初期MOTORHEAD評(=悪評)がまたしても引用されているが。
1975年当時、ジェフ・バートンはMOTORHEAD/ラリー・ウォリスのプレイの何処にDEEP PURPLE的なモノを見出だしたのだろうか…。

ともあれマンティコア・スタジオでのショウケースは実を結ばず。
翌1977年春には、レミーたちは解散を考えるところまで追い込まれる。
しかしMOTORHEADはゴキブリ以上にしぶとかった…。

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