今回初めてオリジナル・アルバムを取り上げる。
日本では一般に『THE VELVET UNDERGROUND Ⅲ』と表記されるが、実際にはシンプルなセルフ・タイトル。
もっとも、ニコを含む1stアルバム『THE VELVET UNDERGROUND & NICO』(1967年)もセルフ・タイトルだったので、別に満を持してのセルフ・タイトル、というワケじゃない。
しかも内容は、およそ満を持してのセルフ・タイトル、みたいなモノではない。
振り切れてノイジーな音を聴かせた2ndアルバム『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』(1968年)から一転、燃え尽きかかったようなTHE VELVET UNDERGROUNDがここで聴ける。
個人的には、AMON DUULの同じく3rdアルバム『PARADIESWARTS DUUL』(71年)に通じるところもあると思う。
しかしVELVET UNDERGROUNDは、AMON DUULのように3rdアルバムで完全に燃え尽きてしまったワケではなかった。
VELVET UNDERGROUND/ルー・リードがいったん完全に燃え尽きたのは、『LIVE AT MAX'S KANSAS CITY』(72年:https://lsdblog.seesaa.net/article/202109article_8.html)の時点だったと言えるだろう。
(ではルー脱退後のVELVET UNDERGROUNDは燃えカスだったのか…)
ともあれジョン・ケイルが脱退し、ここでのTHE VELVET UNDERGROUNDはルー・リード(ギター、ピアノ、ヴォーカル)、ダグ・ユール(ベース、オルガン、ヴォーカル:元THE GRASS MENAGERIE)、スターリング・モリソン(ギター、ヴォーカル)、モーリン・タッカー(パーカッション、ヴォーカル)の4人。
GRASS MENAGERIEでウィリー”ロコ”アレキサンダーと活動していたダグは、VELVET UNDERGROUNDのファンだったのだという。
ルーが歌わない1曲目「Candy Says」での、かなりルーに寄せた(?)ダグのヴォーカルを聴けば、それは充分に了解出来る。
(ルーが歌わない曲を含め、全曲をルーが作詞・作曲している)
その「Candy Says」をはじめとして、基本的には嵐の後の凪のような世界を聴くことが出来る。
一言で言えば、聴きやすい。
前2作に較べるとあまりにも凪いでいて。
かえって不気味に思われる。
神に救いを求める「Jesus」にしても、ついつい裏を読んでしまいそうになるのは、俺の心が汚れているからだろう。
スターリング・モリソン曰く、それまで使っていた機材を盗まれたからこうなった、とか。
いや…それだけじゃないと思うよ?
(それも俺の心が汚れているからかも知れない)
R&Rっぽく(?)盛り上がるのは「What Goes On」「Beginning To See The Light」の2曲。
この2曲にしても、その後のライヴ盤で聴けるヴァージョンには遠く及ばない。
ちょっとアヴァンギャルドな「The Murder Mystery」にしても、前2作に較べればはるかにスカスカな音。
(『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』の「The Gift」と同じような構成をもっと複雑にやっているはずなのに)
「Some Kinda Love」なんかはほとんどブルーズ。
ちなみに「Beginning To See The Light」はジョン・ケイル在籍時からあった曲。
そして「Pale Blue Eyes」は更に古い曲だという。
”俺たちが昨日やったことは良かった/もう一度やろうじゃないか/君が結婚したってのは事実/それこそ君が俺の親友だっていう証明なのさ”と歌われる「Pale Blue Eyes」は不倫の歌だというが、基本的に青を意味する”Pale”と”Blue”をわざわざ重ねた「Pale Blue Eyes」は、PROCOL HARUMの「Whiter Shade Of Pale」と並んで(!)、日本語に較べてニュアンスに乏しいとされることもある英語のニュアンスというモノについて俺が考えるきっかけとなった1曲だ。
そしてアルバムはモーリン・タッカーがかわいらしい声で歌う「After Hours」で終わる。
リード・ヴォーカルを嫌がるモーリンを、ルー・リードが無理矢理説き伏せて歌わせたのだという。
ルーの意地悪なニヤニヤ笑いが目に浮かぶ。
当時カルトな支持にとどまっていたTHE VELVET UNDERGROUNDは、このアルバムをリリースしたことで一部のファナティックなファンを失ったとも言われる。
全米171位だった『THE VELVET UNDERGROUND & NICO』、199位だった『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』に対して、『THE VELVET UNDERGROUND』はチャート入りを逃す。
フォーク・ロック的な聴きやすさを考えれば、例えばプロモーション次第ではもっと売れても良かったような気がしてならないのだが。
ともあれTHE VELVET UNDERGROUNDはAMON DUULのように3rdアルバムで完全に燃え尽きてしまうことはなく、更なる名作『LOADED』へと向かう。
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