主演のシアーシャ・ローナン(アメリカ生まれ、アイルランド育ち)もプロデューサーに名を連ねている。
ロンドンの大学院で生物学を研究していた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は、10年ぶりに故郷であるスコットランド最北部、オークニー諸島へと帰ってきた。
ロンドンでナイトクラビングを重ねる奔放な生活の中で、ロナは深刻なアルコール依存に陥り、すべてを失ったのだった。
断酒会でのプログラムを経て、故郷で新たに生き直そうとするロナ。
しかし、恋人だったデイニン(パーパ・エッシードゥ)との間に修復不可能な亀裂を生み、様々なトラブルを引き起こしたロンドン時代の記憶の断片は、折に触れて蘇り、ロナを悩ませる。
双極性障害を患う父アンドリュー(スティーヴン・ディレイン)、ロナや別れたアンドリューとの関係に悩んで信仰に救いを求めようとする母アニー(サスキア・リーヴス)らと関わりながら、ロンドンからはるか離れた北方の地でロナが得たモノとは…。
…というのがざっくりしたあらすじ。
超ざっくり。
何しろこの映画、118分もあって、ロナがオークニー諸島で暮らすストーリーの中に、それこそフラッシュバックのようにロンドン時代のシーンが挿まれる作りになっているので。
そのような作りのため、ぶっちゃけわりとわかりづらい。
しかし、ラストにはじんわりした感動が待っている。
そのへんについて語ろうとするとネタバレっぽくなってしまうので、塩梅が難しいが。
(時系列はロナの髪の色に現れる)
いや…ネタバレっていうか。
ロンドンでアルコールに溺れていたロナの大暴れ以外は、長尺の中でネタバレを気にするほどの大事件とかはそんなに起こらないのだ。
しかし、観客は2時間近くかけて、ロナのジグザグに過ぎる魂の遍歴を共にすることになる。
依存症の経験がなかったとしても、その2時間近くの間に、多くの人がロナに共感するはずだ。
多少なりともアルコール依存のケを自覚しているような人は、なおさらだろう。
ノラ・フィングシャイト監督曰く、この映画は「依存症の物語」ではなく、「回復の物語」だという。
ロナが都会の喧騒から離れて、スコットランド北部の厳しい大自然の中で孤独をかみしめながら自分の過去の過ちと向き合い、知を探求することを通して少しずつ自分を取り戻していく過程を、フィングシャイト監督は丁寧に描き出している。
(屋外でもヘッドホンをしたまま大音量で音楽を聴いていたロナは、やがて風の音や波の音と向かい合うように)
そして、主演のシアーシャ・ローナンの素晴らしい演技。
原作はエイミー・リプトロットの自伝的な作品だが、この映画ではヒロインは”ロナ”と命名され。
つまりコレは伝記映画的なモノではなく。
原作はありつつも、ここでは原作のエイミー自身に、ノラ・フィングシャイト監督とシアーシャが肉付けしたオリジナルなキャラクターの物語が描かれている。
そしてこの3人だけではなく、この映画のスタッフの多くが女性であったという。
この映画を観て、かつてドラッグ中毒からの回復のために海辺の寒村で隠棲したR&R詩人ジム・キャロルのことを思い出した。
孤独な日々を送りながら詩作を支えとしたジムと、知の探究の中で聡明な素面の自分を回復したロナ。
享楽の中では真実は見えてこない。
そして、自分と本当に向かい合うためには時に孤独が必要となるのかも知れない。
ともあれ118分という長尺の果てに、最後には頬が緩むこと請け合い。
多くの人に観てほしい1本です。
2026年1月9日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー。
(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.
提供:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
配給:東映ビデオ
公式サイト:https://www.outrun2026.com
公式X:@okubyoudori01
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