PINK FAIRIES/KINGS OF OBLIVION(1973)

PINK FAIRIES 3rd.jpg”今日の旧譜”1400枚目。
そこで今更ながらコレを。
PINK FAIRIESの3rdアルバムにして、70年代の時点でのラスト・アルバム。
俺はこのアルバムを5枚持っている。
(アホや…)

MOTORHEADとイギー・ポップとBLUE OYSTER CULTが三本柱…と言い続けている俺だが、そこにMC5とPINK FAIRIESを加えると五本柱となる。
そして俺にとってPINK FAIRIESと言えば、まずこのアルバムだ。
もちろんポール・ルドルフ(あとトゥインクも)が歌っていたアルバムも素晴らしいけどね。

脱退したポール・ルドルフに代わり、新たなギタリスト兼ヴォーカリストとしてミック・ウェイン(元JUNIOR'S EYES)を迎えたPINK FAIRIESだったが。
シングル「Well, Well, Well」でミックが示した方向性に、ダンカン”サンディ”サンダーソン(ベース)とラッセル・ハンター(ドラム)は納得行かず。
そこでサンディとラッセルはセカンド・ギタリストとしてラリー・ウォリス(元SHAGRAT、BLODWYN PIG、UFO)を迎え、その上でミックをすぐさまクビにしてしまう。

焦ったのはラリー・ウォリスだった。
ギタリストとして60年代からキャリアがあったラリーだったが、それまでろくに歌ったことも作曲したことも作詞したこともなかったからだ。
ところがそんな彼がフロントに立ったPINK FAIRIESの3rdアルバムは大傑作に仕上がったのだから、世の中わからないモノですね。

ジャケットでは豚が飛んでいる。
PINK FAIRIESはPINK FLOYD『ANIMALS』(1977年)より4年も早く豚を空に浮かべたのだ。
しかし『ANIMALS』で資本家の暗喩だった豚は、ここでは貪婪なならず者を象徴している。
彼らこそ”忘却の王者たち”。
空を飛ぶ豚どもには今と未来しかなかった。

このアルバムでのラリー・ウォリスのクレジットは”ビッグ・ギター”。
まさにその通りの音が聴ける。
そして、「City Kids」がラリーとダンカン・サンダーソンの共作、「When's The Fun Begin?」がラリーとミック・ファレンの共作、「Chambermaid」がメンバー3人の共作である以外は、すべてラリーの作詞・作曲。
ラリーが秘めた才能をフルに発揮した1枚となった。
歌いっぱなしな感じのヴォーカルも実にカッコいい。

MOTORHEADのレパートリーにもなった1曲目「City Kids」から、もう名盤確定。
一級のハード・ロックでいてプロト・パンクでもあり。

そして随所に炸裂するラリー・ウォリスの豪快な曲作りと、どこかひねくれた作詞のセンス。
”俺はストリート・ファイターになんてなれなかった””トラブルになったら俺は姿をくらます””だって俺は女の子になりたかったんだ、女の子だったら良かったのにな”と歌われる「I Wish I Was A Girl」は、多分性別に違和を感じる青年の歌だろう。
1973年にコレか。
一方で”俺はホテルのメイドと寝たんだ””彼女の体の向きを変えさせて、後ろから試したのさ”と歌う「Chambermaid」や、街娼への愛情を吐露する「Street Urchin」などの露骨なセクシャルさ。
”とても不確かな時代、お前が必要としているのは金だけ”という「Street Urchin」の歌詞には、この曲が書かれてから半世紀以上経った21世紀に新宿あたりの路上に立っている女性たちを想像してしまう。

もちろんリズム・セクションの貢献度も高い。
THE DEVIANTSに加入した時点では初心者だったダンカン・サンダーソンは、印象的なベース・ラインを弾きこなし。
別に速くないはずの「Chromium Plating」がえらくエキサイティングなのは、ドカドカジャンジャン叩きまくるラッセル・ハンターのドラミングあってのことだろう。
(ホントこの人、上手いのか下手なのかさっぱりわからないプレイをする)

プロデュースは、『IN THE LAND OF GREY AND PINK』をはじめとするCARAVANの諸作や、GENESISの『FOXTROT』などを手掛けていたデイヴィッド・ヒッチコック。
意外な人選のようでいて、コレがハマった。
このアルバムがPINK FAIRIESの前2作とは違うずっしりしたスケール感を得ているのは、デイヴィッドの貢献あってのことだったと思っている。
それがあってこそ、「I Wish I Was A Girl」「When's The Fun Begin?」「Street Urchin」といったミドル/スローの曲が活きた。
ところで超絶カッコいいインストゥルメンタル「Raceway」は、元々ヴォーカルが入る予定だったのが、ラリー・ウォリスが歌入れをする前にデイヴィッドが勝手にミックスダウンしてプレスに回してしまった…とされているが、それって本当なのだろうか。
(それにしてはインストゥルメンタルとしての完成度が高過ぎる気がするんだけど)

まぎれもない大傑作『KINGS OF OBLIVION』…しかし、(信じ難いことに)当時は大して売れなかったらしく。
ポリドールとの契約も終了し、PINK FAIRIESは(最初の)解散となる。

HAWKWINDをクビになった後、MC5を範としてMOTORHEADを結成したレミーだったが、ギターにラリー・ウォリスを迎えて「City Kids」をレパートリーにしたことは、バンドの方向性に決定的な影響を与えたのでは、と思っている。
レミーとラリーがMOTORHEADで新たに録音した「City Kids」は、『KINGS OF OBLIVION』とはまるで違ったガレージ的な質感のパンキッシュなR&Rとなった。
そして「City Kids」は、ラリーがMOTORHEADを脱退してからも”ファスト”エディ・クラークのギターで再録音され、しばらくMOTORHEADのセットリストに残ったのであった。

悲しいことに、このアルバムでのPINK FAIRIESメンバーはもう一人も生きていない。

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