ART BOYS COLLECTION/STONED WALL(1972)

ART BOYS COLLECTION.jpgオーストリアの”プログレッシヴ・ビート・バンド”、唯一のアルバム。

1969年、オーストリアのアンドーフでゲルハルト・エッガーを中心にTHE BOYSとして結成。
70年にジャム・セッションでエッガーと知り合ったハンス・ヨアヒム・ホルツが加入し、バンド名をART BOYS COLLECTIONと改める。
メンバーはゲルハルト・エッガー(作曲、ヴォーカル、アコースティック・ギター)、ハンス・ヨアヒム・ホルツ(ヴォーカル、ドラム、ピアノ)、ヴァルター・ホルツ(オルガン)、ゲルハルト・バウアー(ヴォーカル、ギター)、ヨハン・アイグナー(ベース)の5人。
バンドはオーストリアとドイツのバヴァリアで米軍のGIクラブに出演し、腕を磨く。

バンドはその後ウィーンに拠点を移し、ヴァルター・ホルツが窓口となってレコード契約を取り付ける。
1970年、シングル「Lemon Tree」でデビューすると、オーストリア国内のラジオでパワー・プレイされて人気に。
70年にもう1枚「Life Is A Dream」をリリースした後、71年のシングル「Jesus Said」はオーストリア国内のチャートで6週連続1位の大ヒットとなる。

1971年には更にシングル「Freedom, voice of my soul」をリリースし、オーストリアをツアーしたGOLDEN EARRINGやDEEP PURPLEの前座を務めたART BOYS COLLECTIONは、アルバムのレコーディングに入る。
ここまでは順風満帆だった。

ところが1971年、バンドはオーストリアのラジオ局ORFとトラブルになり。
(どんなトラブルだったのかはよくわからない)
ART BOYS COLLECTIONはオーストリア国内のラジオから締め出されることとなる。
コレを機に、全曲のソングライティングを担当していたゲルハルト・エッガーがバンドを脱退してしまう。

ART BOYS COLLECTIONは新たにヒューベルト・ペルファール(ヴォーカル、リード・ギター)を迎える。
一方で、ゲルハルト・エッガーはアルバム完成までバンドにとどまって作業を行なったという。


前置きが長くなったが、そうして完成したのが『STONED WALL』。
バンド名、ジャケット、タイトルからして、ビザールでストレンジでドープなサイケデリック・ロックを想像する人が多いのではと思われる。
しかし実際にはかなり違う。
(いや、ストレンジと言えばかなりストレンジかも知れない)

シングルだったA面1曲目「Freedom, voice of my soul」から、”Waiting for the sunshine”と繰り返される女性コーラスがフィーチュアされる明るい曲調で、サイケデリックというよりは60年代米国のフォーク系コーラス・グループみたいな音。
「All My Life」「Wait For The Days」「In A Foreign Country」、そして大ヒットした「Jesus Said」も、「Freedom, voice of my soul」と同様の方向性。
ドイツの隣国オーストリアのバンドということで、クラウト・ロックやジャーマン・ハードみたいなのを期待する人は大いに裏切られる。

ところが、「Flying Mechine」は重いドラムと歪んだギターと分厚いオルガンを前面に出した”アート・ロック”。
ヴォーカルはやっぱりポップだが。
B面1曲目「I'm Riding On An Arrow」は引きずるギターをフィーチュアしたヘヴィ・ロック。
ヴォーカルはやっぱり(以下略)…と思わせて、途中で”ア~ッ!”とすっとんきょうなシャウトを放つ。
「Happy Woman」はギターとオルガンがうなりを上げるハード・ブギー。
ヴォーカルは(以下略)
何だろうコレは。

うん、確かにストレンジだ。
ネットに散見される”ハードな演奏””DOORSを思わせるオルガン””超アシッドなアレンジ”といったレヴューは、話半分に受け止めた方がイイかも知れない、とは思うけど…。
(まあ確かにオルガンは時々ちょっとTHE DOORSっぽいとも言える)
1972年の時点で、英米では既にプログレッシヴ・ロックが全盛を極め、当時ART BOYS COLLECTIONもプログレ扱いされることがあったらしいが。
どうもメンバーたちは自分たちのバンドが”プログレッシヴ”だなどとは言わず、あくまでビート・バンドを標榜していたらしい。

アルバムの完成を以てゲルハルト・エッガーは改めてバンドを離れ。
ヒューベルト・ペルファールをリード・ギタリストとしてフィーチュアしたART BOYS COLLECTIONは英米のハード・ロックのカヴァー・バンド(!)として活動するも、1972年に解散したという。

その後ART BOYS COLLECTIONの元メンバーたちはあらかたシーンから消えてしまったようだが。
ゲルハルト・エッガーは80年代に自分のスタジオをオープンする一方で、オーストリアのポップ・シンガーたちに楽曲を提供する売れっ子のソングライターとなる。
90年代以降はGERHARD EGGER & DIE MOSTROCKERSでも活動し、今も現役だという。

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