ハンブルクに生まれ、14歳から歌い始め、1972年に22歳でSLAPP HAPPYを結成し、74年にHENRY COWに参加、78年にART BEARSに移行し、83年にNEWS FROM BABEL結成、以後ソロをはじめとする様々な形態で活動…というのは今更言うまでもないだろう。
そんな彼女が、1985年3月5日、88年2月3日、そして88年4月に行なったセッションの記録。
12曲収録だが、21分半しかない。
CDのチャプターは10曲分しか表示されず、10~12曲目は1曲扱いのようになっている。
(12曲目「Von Der Freundlichkeit Der Welt(On The World's Kindness)」は10・11曲目とは別の日の録音なのだが)
ハンス・アイスラーはクルト・ヴァイルに較べるとやや知名度が落ちるかも知れないが、ヴァイル同様にベルトルト・ブレヒトとのコラボレーターとして、やはり説明は不要だろう。
ワイマール時代のドイツ文化を愛してやまないダグマー・クラウゼが(ヴァイル及び)アイスラー楽曲に向き合うことになったのは、必然だったと言える。
ダグマーはブレヒト/ヴァイル/アイスラー楽曲を歌ったアルバム『SUPPLY AND DEMAND』(1986年)もリリースしているんだけど、このミニアルバムではヴァイル作詞に限らないアイスラー楽曲を取り上げている。
ハンス・アイスラーが1929~54年にかけて作曲した曲が収められている。
やはりというか、12曲中3分の2の8曲がベルトルト・ブレヒトの作詞によるモノ。
一方でシンガーのミニアルバムでありながら1曲がインストゥルメンタルという点にも、ダグマー・クラウゼのアイスラー愛が透けている気がする。
ブレヒトが作詞した8曲のうち、5曲が第二次世界大戦中に作曲されたモノというのも印象的。
曲により、歌詞は英語だったりドイツ語だったり。
ギターもドラムも用いられず、ピアノやハーモニウムやクラリネットを中心とするアコースティックなアレンジが、戦前・戦中のドイツへといざなう。
(戦後の曲もあるとはいえ)
12曲中10曲が1985年3月5日のライヴ。
88年2月3日に録音された「Zahlen Musst Ihr(You Have To Pay)」でピアノを弾いているジョン・ティルベリーは、ジョン・ケージとの共演もあった現代音楽方面のピアニスト。
88年4月に録音された「Von Der Freundlichkeit Der Welt(On The World's Kindness)」では、バンジョーで元GRYPHONのグレアム・テイラーが参加しているのが目を引く。
そして独特の抑揚を持ったダグマー・クラウゼの歌唱。
ハスキーで何処までも硬質な声。
…と言いつつ、1曲目「Berlin 1919」をはじめとして、HENRY COW~ART BEARS時代に較べるとかなり柔らかな部分もあり。
当時30代半ば~後半だったダグマーの、円熟にさしかかりつつあるヴォーカルを堪能出来る。
とか言ってもやっぱり随分怖い声してるけどねこの人。
コミカルに響くはずの(?)「Supply And Demand」も、ダグマー・クラウゼが歌うとブラックな皮肉の方がより際立つ。
そしてダグマー・クラウゼ、75歳の現在も活動中。
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