だからというワケじゃないが、今夜はメキシコのルチャ・リブレ・サーフ・ガレージ・バンド、LOST ACAPULCOのインタヴューをDOLLから再掲載しよう。ゴーグルエースでお馴染みのサザナミ・レーベルが5周年を迎えた2008年8月に、その記念イヴェントで彼らは初来日を果たしている。音の方はパンク/ガレージ度低めの、極めてオーソドックスなサーフ・サウンドながら、ステージではマスク着用でルチャ・リブレ(メキシカン・プロレス)の香りをプンプンさせて、妙にモンドな雰囲気を振りまくバンドだったな。
メンバーは、クランチー・アカプルコ(ギター:ロン毛)、レヴェレンド・アカプルコ(ギター:ちっこい)、Sr.ラミレス・アカプルコ(ベース、ヴォーカル:でっかい&顔が全く見えない)、エル・ウォーピッグ・アカプルコ(ドラム:超巨大)の4人。インタヴューは08年8月26日深夜、複数のメンバーに対して行なわれたが、覆面バンドであるからして、特に表記のないところは特定のメンバーではなくバンドとしての発言ということで。元の記事はDOLL08年12月号に掲載されている。
(Translated by ノリコ・オリーブ)
―…正直に白状すると、サザナミ・レーベルからCDが出るまで、LOST ACAPULCOのことを知りませんでした。…というワケで、バンドの基本的なところから聞かせてください。結成は何年ですか?
「バンドの結成は1995年だよ」
―メンバーは最初から今の4人ですか?
「最初にいた4人から2人交代して、今のメンバーになって10年目だな」
―これまでの音源は?
「LPが2枚にEPが7枚。あとLOS STRAITJACKETSのギタリスト、ダニー・エイミスと一緒にCDを1枚作ってる」
―LOST ACAPULCOというバンド名の由来は?
「長い物語だよ(笑)。LOST ACAPULCOというのは、メキシコで一番有名なビーチ、アカプルコから来ている。アカプルコは知ってるだろ?…日本人なら絶対知ってるはずだ(笑)。アカプルコというのは、昔は本当に素晴らしいビーチだった。しかしその本来の素晴らしさは、今では失われてしまったんだ。観光化が進み過ぎたりとかでね。それで我々は“失われたアカプルコ”を名乗ることにしたのさ。それと…英語の“The”はスペイン語だと“Los”になるだろ?…その“Los”と“Lost”をかけて、LOST ACAPULCO…というわけさ」
―確かに、普通、スペイン語圏のバンド名ならLOSなんとかですよね。
「そう。一種の言葉遊びだね」
―ロス・ビジャーノスとかロス・ブラソスとかロス・ミショネロスとか…バンドじゃなくてルチャ・リブレのタッグ・チームの名前しか出てこないですけど(笑)。ビジャーノⅢは昔日本で観ましたよ。
「おおっ(笑)」
―ところで、日本は初めてですよね。どうですか、初めての日本は。
「素晴らしい! 最高! クレイジーだ!…メキシコとは全然違うね。日本のオーディエンスも、メキシコとはまた全然違うんだけど、凄くクレイジーで最高だよ」
―今日が日本での初ライヴでしたよね?
ラミレス「最高だったけど、俺のマスクは何にも見えないんだよね(笑)。でも楽しかったよ」
―あのマスク、見えないでしょう?
ラミレス「全然見えない!(笑)」
―そもそも、何故覆面を?
「それは俺たちがブサイクだから…いや、嘘だけど(笑)。メキシコの、ルチャ・リブレの文化をバンドに取り入れてるんだ。俺たちはルチャ・リブレがもの凄く大好きだから、ルチャのヴィジュアルをバンドに取り入れることにしたのさ。LOST ACAPULCOがマスクをしてステージに立ち始めた頃、メキシコのロック・シーンでもそんなことは全くポピュラーじゃなかった。マスクをかぶるのはルチャ・リブレだけだと思われていたわけだ。みんな“どうしてマスクなんかかぶって出てくるんだ?”ってな具合だったんだが。今はもの凄くポピュラーだ(笑)。メキシコのいろんなバンドが、マスクをして演奏してる」
―俺も80年代はプロレス・ファンで、ルチャ・ドールも会場で見たりしたもんです。
「ミル・マスカラス?」
―マスカラスとドス・カラス!…あとロス・ブラソス!
「ロス・ブラソスのブラソ・デ・プラタは今、スーパー・ポルキーって名前でやってるよ」
―ブラックマンとホワイトマンとウルトラマン!
「そうそう、いたいた!(笑)」
―日本に来なかった人も含めて、いろんなルチャ・ドールがいましたよね。クン・フーとかカトー・クン・リーとか。
「イェー!…その頃は空手使ったりとか、サムライっぽいのが流行ってたね」
―日本人が相撲を愛するよりも、メキシコ人がルチャ・リブレを愛する心の方が勝ってると思いますが。
「そうだと思うよ。ルチャ・リブレをやってる会場は毎週末いっぱいだし」
―アレナ・メヒコ?
「そう!」
―ちなみにメキシコでは、プロレス以外の格闘技は?…日本では今、プロレスよりもむしろ総合格闘技の方が人気ですが。
「メキシコにももちろんいろいろな格闘技があるけど、人気で言ったら、一番がルチャ・リブレ、次がボクシング、それ以外はあんまり人気ないね。ルチャ・リブレの中にもいろんなスタイルの試合があるしね」
―それにしても、何故ルチャ・リブレと、サーフ・ガレージを融合するに至ったんでしょうか?
「昔、サント・ムーヴィー(註:ルチャ・リブレのスーパー・ヒーロー、エル・サントが主演して60年代に多数制作されたヒーロー映画のシリーズ)で使われていたサントラには、サーフ系が多かったんだ。だから、自分たちでバンドをやるときに、ルチャ・リブレとサーフ系のミックスというのを思いついたんだ。LOST ACAPULCOがそういう方向性を確立したことで、お客もマスクをかぶってライヴに来るようになった(笑)。ルチャ・リブレとサーフの融合というのは、バンドだけじゃなくて、そういうオーディエンスも一緒になって作り上げた文化、と言ってもいいだろうね」
―そもそもメキシコで、サーフ・ミュージックとかガレージ・パンクとかは、ポピュラーだったんですか?
「昔は…北米のR&Rバンドの演奏をコピーして、それをスペイン語で歌う、というのがメキシコのR&Rの主流だった」
―60年代の話ですね。
「そう。そして、LOST ACAPULCOの前には、インストゥルメンタル系のロック・バンドというのは、メキシコにはほとんど存在しなかった。何故かというとそんなの売れないからね(笑)。LOST ACAPULCOは、メキシコのインストロR&Rとして最初のバンドだと思う」
―60年代のガレージ・パンクのコンピレーションとか聴くと、当時のメキシコのバンドとかも聴けるんですけど、メキシコや中南米のロック・シーンというのは今どういう風なんですか?
「最近は“ガレージ・ロック”のシーンが大きくなってきていて、メキシコ全土で、サーフも含めるとガレージ・バンドが40組ぐらい」
―そもそもメキシコにどんなロックがあるのか、俺たち日本人はほとんど知りません…。
「今でもそうなのかい?…今ではMySpaceという、世界中のバンドを知ることが出来る凄いツールがあるじゃないか!…もちろん、メジャーなレコード・カンパニーからリリースされない限りは、それほどのポピュラリティは得られないかもしれないけどさ。今は、MySpaceなんかを通じて、小さなバンドも世界中に発信することが出来る。俺たち自身、MySpaceのおかげで、日本のいろいろなバンドを知ることが出来たよ」
―やっぱりMySpaceの存在はデカいんですね。…LOST ACAPULCOがサザナミ・レーベルからリリースすることになったのも?
ノリコ・オリーブ「それは…私が6年前、TIKI TIKI BAMBOOSでスペインをツアーした時に、メンバーと知り合っていたんです。それから今年の2月にメキシコ旅行をしていて、再会した訳です。その時に、是非一緒に何かやろうと…。彼らは日本に行きたいと言い出したんですけど、私はその時にはゴーグルエースから“引退”していて。その後サザナミ・レーベルの人たちと話をしていたら、彼らもLOST ACAPULCOのことは知っていたし(註:LOST ACAPULCOはサザナミのオムニバスCD『Wild Sazanami Beat! Vol.3』に参加している)、LOST ACAPULCOはメキシコじゃ凄い人気で、サーフ・バンドとしては南米ではNo.1なので。メキシコと日本というのは面白い組み合わせじゃないか、ということになって、じゃあサザナミから(単独アルバムを)出そう、ということになって」
―なるほど。…ちょっと話は戻りますが、メキシコで英語はどれくらいポピュラーですか?
「あんまりポピュラーじゃないね。でも、例えば日用品には英語の名前がついたものが多いよ。説明書とかはスペイン語だけど。映画も、スペイン語のサブタイトルや字幕が付くし。英語をしゃべれる人間はあんまり多くないけど、製品の名前とかで日常に入り込んできているから、なんとなくどっかで親しんでいる感じかな」
(註:このインタヴューは俺が日本語で質問し、通訳ノリコ嬢とメンバーはスペイン語と英語のちゃんぽんで会話していた)
―そのへんは、日本と同じですね。…なので、MySpaceとかがあっても、言葉の壁というのがあると思うんですけど。
「そうだね。MySpaceは凄い発明だと思うけど、それは確かに」
―LOST ACAPULCOの音楽がインストロなのは、言葉の壁を克服するというのもあったのでは、と推測しているんですが。
「そのとおり!…サーフ・ミュージックというのはインターナショナルなもので、誰にでも理解することが出来るよね」
―たとえば、同じようにして言葉の壁を越えたのが、日本ならJACKIE & THE CEDRICSとか。
「日本のバンドのことも、何年も前から知っていたよ。特にサザナミ・レーベルは、日本のバンドを知るいいきっかけになったね」
―日本人も、メキシコ人と同じような言語の問題を抱えているので、凄く分かり合えると思いますね。
「そうだね!」
―あと、メンバーについてもう少し教えてください。ウォーピッグは、“メタルヘッド”なんですか?
「ウォーピッグはメタル系の大ファンだ。もの凄くメタルが好き。LOST ACAPULCOに参加する前は、ハードコア・バンドのドラマーもやっていた」
―そうですか。確かに…音源で聴けるドラムが、微妙にサーフっぽくない(笑)。
「多分メタルとかの影響を強く受けてるからね(笑)」
―他のメンバーの音楽的嗜好は?
「ウォーピッグ以外の3人は、サーフ系に凄く入れ込んでいるよ。小さい頃からサーフ・ミュージックを聴いていた。おじさんからVENTURESを聴かされていたしね」
ラミレス「俺はディック・デイル」
―メンバー間に年齢差がありますよね。何年生まれですか?
ラミレス「1982年」
―若いなあ!
レヴェレンド「彼はバンドのベイビーなのさ(笑)」
―(他のメンバーの年齢は、秘密ということでした)…では最後に、読者様にメッセージを。
ラミレス「いっぱい飲め! セックスもたくさん!…以上!(笑)」
レヴェレンド「音楽とセックスは、人生を楽しむためのすべてだ。みんなLOST ACAPULCOを絶対聴いてくれよ!…サーフ・ミュージックは、最高にセクシーだからね。少なくともメキシコでは最高にセクシーと言われている(笑)。メキシコじゃ、LOST ACAPULCOのライヴでは、オーディエンスの女の子たちがみんなオッパイ見せてくれるんだ。俺たちの演奏で、みんなセクシーな気分になるからさ(笑)」
このバンドのその後を全然知らないんだけど、最近どうしてんのかな。
追記:
LOST ACAPULCO、調べてみたらその後も当時と同じメンバーで活動を続けている模様。
(2020.3.20.)
(2023.3.20.改訂)