PINK FAIRIES/RARE LIVE RECORDINGS & RADIO BROADCASTS: 1970-1971

画像昨日旧譜レヴューで紹介したトゥインクに続き、またしてもそのへん界隈のやつ。
トゥインクのTHINK PINK 50THから昨年10月にリリースされていた…CD-R(くっ…)。

中身は1970年と71年のBBC音源とか、71年の「WEELEY FESTIVAL」とか、同年の「GLASTONBURY FAYRE FESTIVAL」とか。
全曲がトゥインク(ドラム、ヴォーカル)、ポール・ルドルフ(ギター、ヴォーカル)、ダンカン・サンダーソン(ベース)、ラッセル・ハンター(ドラム)の4人をフィーチュアしているとクレジットされているが、WEELEY FESTIVALなんかはトゥインク脱退後のトリオでの演奏のはず。

NMCやトータル・エナジーなんかのレーベルからリリースされていたPINK FAIRIESのレア音源を集めていたような人には、基本的には用のない1枚(CD-Rだしねえ)と言いたいところだが。
“Live 1971”とクレジットされた「Do It」だけ、ソースがわからない。
GLASTONBURY FESTIVALの音源と聴き較べてみたけど、明らかに違う。
結局マニアは手を出さざるを得ないか…。

いろいろなレーベルからいろいろな形でリリースされていたPINK FAIRIESのレア音源が約70分まとめられているので、例えば過去のリリースを持っていない人が改めて手を出す価値がないこともない。
(とはいえCD-Rなんだけどさ…)
BBCの「The Snake」とか、やっぱりカッコいいですよ。

THINK PINK 50THは2016年からリリースを始めていて、トゥインクのレア音源集とかTHE FAIRIESとかTOMORROWのライヴ音源とか『THINK PINK』のモノラル・ヴァージョンとかPINKWINDとかを、CDとCD-R取り混ぜて出している。
昔はそういうの何でも買っていた俺も、今ではもう手が回り切らなくなっているが、『THINK PINK』のモノラル盤(コレもCD-R…)は入手済みなので、後日紹介すると思う。
『THINK PINK』リリースから本当に50周年となる今年、更に何か出してくるのかどうか。
期待せずに(笑)待ちたい。


(2025.8.1.全面改訂)

THE DEBUTANTES/THE DEBUTANTES

画像昨年9月のリリース。
先日書いた2018年の年間ベストでリイシュー/発掘盤のベストに入れているが、年をまたいで改めて紹介。

デトロイトで1964~69年にかけて活動していたガールズ・バンドの編集盤。
中心人物であるジャン・マクレラン(ギター、ヴォーカル)以外のメンバーは交代を繰り返し、活動中にはシングル3枚を残したのみだが、このCDにはシングルの6曲に未発表曲9曲を加えた15曲が収録されている。

ジャン・マクレランことジャニス・マクレランは1964年2月9日に「Ed Sullivan Show」でTHE BEATLESを観て、たちまち虜になる。
しかしジャンが他の多くの女の子たちと違っていたのは、バンドを観てキャーキャー叫ぶ側ではなく、即座に自分もバンドをやろうと決意したところだった。

10歳からウクレレを弾いていたジャン・マクレランは、12歳の時にはアコースティック・ギターをプレイするようになっていた。
THE BEATLESに感化されたジャンは、同じ中学校のBEATLESファンの女の子たちと早速バンドを組む。
それがTHE DEBUTANTESだった。
メンバーたちはこの時14歳。
ジャンは兄たちからギターとドラムを借りて、リン・ホーキンス(ギター)とダイアン・アブレイ(ドラム)の二人に自ら演奏を教えたという。
アルバムのブックレットには、当時のDEBUTANTESがゼネラル・モーターズの重役だったジャンの祖父のツテでスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイと一緒に撮影した写真が載っている。
(お嬢様だったのね)

当時のTHE DEBUTANTESのレパートリーは、当時ラジオから流れていたトップ40の数々だった。
ジャン・マクレランはテープレコーダーとギターとノートを用意してラジオの前に座り、ヒット曲の歌詞とコード進行を聴き取って耳コピしていたという。
アコースティック・ギター2本とドラムのトリオだったDEBUTANTESは1965年に入るとエレキに持ち替え、コリンヌ・ヘルコ(ベース)が加入して4人組となる。
この頃バンドにはマネージャーも付いて、クラブでBOB SEGER & THE LAST HEARDやQUESTION MARK AND THE MYSTERIANSの前座を務めるようになっていた。

その後リズム・ギターとベースが当時14歳だったメアリー・リントンとキャロル・リントンの双子に交代。
1966年に入るとドラマーもジノ・コミニスキーに替わり、ジャン・マクレラン以外のメンバーは総入れ替えとなる。
更に、この頃THE ROLLING STONESを観たジャンはやはり専任のシンガーが必要だと考えるようになり、ヴォーカリストとしてバーバラ・マケッチニーを加入させる。
しかしバーバラはすぐに脱退。
結局その後は解散までジャンがリード・ヴォーカルとリード・ギターを兼任し続けるのだった。
(ジャケットの写真はリントン姉妹が在籍していた66年のモノだろう)

当時のジャン・マクレランはまだ16歳だったが、音楽で食って行こうと真剣に考えていた。
THE DEBUTANTESはTHE SUPREMES、マーヴィン・ゲイ、MARTHA & THE VANDELLAS、SERGIO MENDEZ & BRASIL '66などとプレイし、アメリカ国内だけでなくカナダにもツアーしたという。
バーバラ・マケッチニー在籍時からレコーディングを経験していたバンドは、1966年に4人編成でデビュー・シングル「Shake A Tail Feather / Strong Foundation」をリリースする。
このシングルはなんと「Shake A Tail Feather」の作曲者であるあのアンドレ・ウィリアムズがプロデュースしていた。

その後リントン姉妹が脱退し、彼女たちは新たなガールズ・バンドTHE LORELEISを結成する。
THE DEBUTANTESにはダーレン・グロンキ(オルガン、ギター)とクリス・ジャンセン(ベース)が加入。
ダーレンを加入させたのは、当時ジャン・マクレランがVANILLA FUDGEを気に入っていたからだとか。
このCDのブックレットに載っている写真はこの頃のモノが多いようだ。
(ジャンはモズライトのダブルネックを手にしていたりする)

THE DEBUTANTESは新編成で1966年に2ndシングル「Love Is Strange / A New Love Today」をリリース。
リリース元は初期GRAND FUNK RAILROADのマネージャーとして知られるテリー・ナイトが主宰していたレーベル、ラッキー・イレヴンだった。
(B面は録音が残っているDEBUTANTES唯一のオリジナル曲)

1967年に3rdシングル「On Broadway / Little Latin Lupe Lu」をリリースしたTHE DEBUTANTESは、激化しつつあったヴェトナム戦争を背景に、米軍基地への慰問で稼ぐようになる。
68年には遂に大西洋を越えて西ドイツへ。
しかしジノ・コミニスキーはこのツアーに同行せず、バンドを脱退してリントン姉妹のTHE LORELEISに移ってしまう。
ジャン・マクレランは当時のデトロイト界隈で唯一女性のツーバス使いだったデニス・マンデルを加入させる。
この頃の写真を見ると、ジャケット写真のようなキュートな感じよりも、かなりセクシー&ワイルドなイメージになっている。

西ドイツでは米軍基地だけではなくハンブルクのTHE STAR CLUBなどでも演奏して好評を博したTHE DEBUTANTES…がアメリカに帰国したのは1969年だった。
しかし長いツアー生活に疲れたのか、ジャン・マクレラン以外の全員が脱退してしまう。
ジャンはすぐにメンバーを補充し、今度はアジアへとツアーに出たが、戦火のヴェトナムでは護衛もなしに前線まで慰問に行かされるような状態で、過度のストレスにさらされたバンドは帰国と同時に解散となるのだった。
この時点でまだ19歳だったジャンは、その後ラスヴェガスで歌手として成功した、らしい。

…といったあれこれはCDのライナーノーツから拾った。
で、レーベルの惹句には“Gutsy, Girly, Glam, Garage?”とあるが、実際に音を聴いてみるとそんなにガッツィーとかグラムとかガレージとかいう感じではなく、かなりソフトでポップ。
レパートリーもSONNY & CHERとかTHE RONETTESとか、R&R/R&Bよりはポップスが多い。
(THE ROLLING STONES「The Last Time」をカヴァーしている一方で、ジャン・マクレランに最初に衝撃を与えたTHE BEATLESが1曲も取り上げられていないのはちょっと不思議)
ジャン(そして3曲で聴けるバーバラ・マケッチニー)のヴォーカルもメンバーのハーモニーもかわいらしく、デトロイトと言ってもTHE PLEASURE SEEKERSみたいな(それこそガッツィーな)感じではない。
しかしジャケット写真に代表される、キュートで品の良いフィーリングがとてもイイ感じ。
超ガーリーなのは間違いない。
(1966年頃までのメンバーはみんなお嬢様っぽいし)

それにしても、このバンドが解散してから今年で半世紀。
いまだにこうやって知られざる音源が発掘され続ける60年代音楽、恐るべし。


(2025.7.18.全面改訂)

THE 5.6.7.8's/Woo-Hoo

画像THE 5.6.7.8'sの結成30周年(!)を寿ぐ“30th Anniversary 45 Series”、約1年ぶりとなる第3弾。
A・B面とも、昨年の第2弾「The Barracuda」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201711article_23.html)と同時期の録音と思われる2005年の未発表音源。
(今回は新録はなし)
録音はピース・ミュージックで、エンジニアはもちろん中村宗一郎。

ジャケットのポーズ、みんなわかるかしら。
コレは俺より年上のいとこたちの子供の頃の写真を見ると大抵一度はやっている「シェー!」のポーズだ。
左端のサチコ姐さんが、赤塚不二夫のオリジナルに一番忠実、だと思う。

A面「Woo-Hoo」は、THE 5.6.7.8'sをガレージ界にとどまらず世界のR&Rシーンに知らしめた映画『KILL BILL』で有名な1曲…の再録。
『KILL BILL』は確か2004年だったと思うから、映画で話題になった翌年に改めて録音されたモノ、ということになるはず。
おお?
は、速い。
『KILL BILL』で知られるオリジナルよりもかなり速い。
音質もRAW。
コレはカッコいいぞ。

B面「Dream Boy」は、シンパシーからリリースされた名EP「Bomb The Twist」(1996年)に収録されていた曲の再録。
昨年リリースされた「The Barracuda」同様、RUDE BONESのHiroshiがトロンボーンで参加していて、オリジナルとはちょっと違った表情を聴かせている。

このバンドのライヴは多分もう15年くらい観ていないのではと思うが、バンドが今も現役で活動しているからこそ、こういうアニヴァーサリー系のネタも映えるというモノ。
40年、50年と活躍し続けてほしいところです。

ちなみにナンバリング入り、限定300枚のリリース。
全国流通はなく、タイム・ボムの店頭と通販、そしてライヴの物販でのみ入手可能。
ライヴでは明日から売り出されるそうです。


(2025.7.7.改訂)

THE PUNKS/LOST & FOUND 1973-1977

画像5月のリリース。
8月に購入。
最近まで聴けずにいた。
ひょっとしてもう入手困難?

タイトル通り、1973~77年にかけて活動したミシガン州のプロト・パンク・バンド。
バンド名凄過ぎ。
2005年にレイヴ・アップ・レコーズから出たLPは即完売。
13年経って、同じレイヴ・アップから未発表曲10曲含むLP2枚組で新装リリースとなった。

デトロイト近郊のウォーターフォードで1973年に結成。
メンバーはウィリアム“フランティック”カチョン(ヴォーカル)、スティーヴ・ロッキー(ギター)、アラン・ウェバー(ギター)、ロッド・マクマホン(ベース)、クレイグ・ウェバー(ドラム)の5人。
73年末にデモ録音。
デトロイトを中心に活動し、かのレスター・バングスにプッシュされながら、レコード契約の機会には恵まれず。
77年初頭にはニューヨークに移り、THE ENDと名乗ったが、やはり成功は得られず、デトロイトに戻って解散。
結局、デモやライヴの音源がわずかに残ったばかりで、活動当時にはリリースがなかった。

彼らが結成された1973年にリリースされたIGGY AND THE STOOGESの『RAW POWER』が、当時は商業的に惨敗だった…ということを思えば、THE PUNKSが成功を得られなかったことはわからなくもない。
…というぐらい、完璧なデトロイト・ロック/プロト・パンクが聴ける。

レコードの1枚目(2005年のLPと同内容)は“ALBUM ONE”、2枚目は“ALBUM TWO”と、極めてシンプル。
音の方はTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGESとMC5に多大な影響を受けたであろうことは間違いない。
ギター2本の5人という編成からしてMC5の影響の方が大きかったかも知れないし、実際「Drop Dead」はMC5の「Black To Comm」にインスパイアされたのでは、と思わされる。
「Just One Night」でサックスがフィーチュアされているのを聴くと、このへんはSTOOGESの『FUN HOUSE』(1970年)を意識したかな、とも。
(MC5のライヴ音源でもサックスは聴けるが)
あと「Ten Dollar Satisfaction」での跳ねるリズムは、STOOGES「1969」経由でボ・ディドリー・ビートを消化したのかな、とか想像したり。
それにしても、とんでもなくハード・ドライヴィンで強力なサウンド。
解散せずにオーストラリアにでも渡っていれば、RADIO BIRDMANの好敵手として人気を博したのでは、と思ってしまうぐらいの。
「Chains Of Madness」のリフなんて、初期DEAD KENNEDYSみたい。
「Drop Dead」「Chains Of Madness」だけでなく、「Darker Side」「Rocks Funeral」「No Mercy」「Hit And Run」「Into Action」…などという曲名を見ただけで、コレは聴きたい、と思う人は少なくないはず。

オリジナル編成のTHE PUNKSが最後にライヴを行なったのは2010年で、その後クレイグ・ウェバーが亡くなり、15年にはクレイグの兄弟であるポール・ウェバーがドラムを担当して“Detroit Rock Awards”でステージに立ったという。
その後TVでドキュメンタリー番組も放映されたとのことで、近年は再評価著しい様子。
活動当時に評価されてほしかったとも思うけどね。


追記:
やっぱりというか、現在ではかなり凄い値段が付いている。

(2025.6.27.)

BARRENCE WHITFIELD & THE SAVAGES/DIG EVERYTHING!

画像リリースは3月。
入手したのは4月。
で、最近まで聴けずにいたブツ。

BARRENCE WHITFIELD & THE SAVAGESの1stアルバム(1984年)がCD化されたのが2010年末。
7年以上経って、1stアルバムを再発したのと同じエース・レコーズから2ndアルバム『DIG YOURSELF』(85年)と3rdアルバム『CALL OF THE WILD』(87年)がカップリングで再発。
サブタイトルは“THE EARLY ROUNDER ALBUMS”。
1stアルバムにはボーナス・トラックが10曲も入っていたが、今回は2枚のアルバムをそのまんま1枚のCDに詰め込んである。
2枚合わせても約49分。
『CALL OF THE WILD』なんかは6曲しか入ってないんで、アルバムというよりもミニアルバムといった方がイイのかも知れない。

『DIG YOURSELF』でのBARRENCE WHITFIELD & THE SAVAGESは、バレンス・ウィットフィールド(ヴォーカル)以下、1stアルバムと同じピーター・グリーンバーグ(ギター)、フィル・レンカー(ベース)、スティーヴ・ラグレガ(サックス)、ハワード・ファーガソン(ドラム)というラインナップ。
もちろん元DMZ~LYRESを中心とする強力な布陣。
音楽性自体も、1stアルバムと全く変わりない。
サックスの野卑なブロウと咆哮するヴォーカルが、シンプルでタフなガレージ・サウンドに乗っかって炸裂するガレージR&B/RAWソウル。
大半の曲が、俺なんぞはオリジナルを聴いたこともないようなオブスキュアなR&B/R&Rのカヴァーからなるところも前作同様。
カヴァーだろうと思うようなカッコいい曲が実はフィル・レンカー作のオリジナル、というところも。
血沸き肉躍る、黒人シャウターと白人ガレージ・バンドの融合。

『DIG YOURSELF』から2年後の『CALL OF THE WILD』では、バックを固めるTHE SAVAGESの顔ぶれが一新。
ミルトン・レダー(ギター、ヴォーカル)、リッチー・ロバートソン(ベース、ヴォーカル)、デイヴィッド・ショール(サックス)、ブルース・カッツ(ピアノ、オルガン)、ローン・エントレス(ドラム、ヴォーカル)という、鍵盤奏者を含む5人となっている。
ブルースはのちにデューク・ロビラードやジミー・ウィザースプーンやグレッグ・オールマンなんかとも活動している人。
で、1曲目「Stop Twisting My Arm」から疾走するが、ちょっと軽いかな…と思ったら。
2曲目以降は以前とかなり様子が違い。
なんか、いかにも80年代後半らしいモダンなブルーズ/ソウルって感じの。
楽曲もオリジナル主体。
「Livin' Proof」あたりは、同時期のFABULOUS THUNDERBIRDSあたりを思わせたりも。
バレンス・ウィットフィールドのヴォーカルも、随分おとなしい。
コレはコレで悪くないけど、初期の2枚を聴いてた人で当時「コレじゃな~い!」となった人も多かったのではという気がする。

ミルトン・レダーをフィーチュアしたBARRENCE WHITFIELD & THE SAVAGESはその後も活動を続けるが、90年代半ばに解散。
21世紀に入って初期に近いラインナップで復活することになる。


(2025.5.26.改訂)

ASYLUMの再発

画像現在配布中のFOLLOW-UPに掲載されているインタヴュー(特にHIROSHIの方)が各方面で話題の(笑)ASYLUM。
メジャー・デビューを果たしたビクター時代のアルバム2枚が遂に再発。
どちらも中村宗一郎(PEACE MUSIC)によるリマスター、更にボーナス・トラック2曲ずつ+α…と、元トランスギャルの皆さんにも当時を知らない皆さんにも必聴必携の2枚となった。


『ASYLUM』(画像)

1989年、通算2作目にしてメジャー・デビュー・アルバム。
俺はことある毎にこのアルバムがASYLUMの最高傑作だと言ってきたし、いずれ“今日の旧譜”で取り上げようと思っていたが、その前にめでたく再発となった。
パーソネルはGazelle(ヴォーカル)、HIROSHI(ギター)、Aki(ギター)、有賀正幸(ベース)、Mitsu(ドラム)の5人。
Gazelleの出自であるハードコア由来の激烈さ、彼が愛してやまないVAN DER GRAAF GENERATORをはじめとするプログレの複雑精緻さ…が、融合されることなく継ぎ足されているような音楽。
(「Plastic Clay」なんかはまんまハードコアだ)
ルーツであるTHE BEATLESについては、メロディアスさより実験性を範として取り入れたか。
(いや、そうでもないか…「Out Of My Times」あたりにはやはりBEATLES好きとしてのメロディ志向の片鱗を感じないでもない)
叙情と激情、それぞれの頂点から頂点へと一瞬にして切り替わるヴォーカル。
それらが、HIROSHIのキテレツなギター・リフや有賀の異様なベース・ラインに乗せて放たれる。
リマスターによって、音の分離が更によくなり、左右のチャンネルにきっぱりと分かれた2本のギターの対比もより鮮やかになった。
ボーナス・トラックは2曲ともライヴで、アルバム収録曲「Stained Grass」と未発表曲「U.H.S」。
音質はブートレグ並みながら、この時期はライヴをほとんどやっていないとのことで、貴重な音源。
Gazelle自身による、メジャー・デビューからバンド崩壊に至る経緯を追ったライナーノーツ付き。


『THE PIECE OF THE FOOLS』

1990年、メジャー2作目にして通算では3rdアルバム。
AkiとMitsuが脱退し、ヤマジカズヒデ(ギター)が加入、そしてMitsuが出戻り、『ASYLUM』とはギターの片割れが違うという編成に。
HIROSHIはこのアルバムを「曲がつまらない」と酷評している…。
しかし、実際楽曲単体の魅力では(俺がASYLUMの最高傑作と見ている)『ASYLUM』に軍配が上がるものの、コンセプチュアルなアルバムとしての構築性、そして音響面ではとても素晴らしい。
マイクの立て方に工夫を凝らし、“疑似バイノーラル”を目指したという録音は、オリジナルのCDでもかなりイイ音だった。
今回のリマスターで、更に深みのあるサウンドとなっている。
ギターは『ASYLUM』に較べるとかなり常識的な定位になっていて、『ASYLUM』でHIROSHIが否定していた“2本のギターの絡み合い”はここではナチュラルに(?)実現している気がする。
「When The River Knows Part Ⅰ」ではスライドのような音が聴こえるが、HIROSHIによればスライドは弾いていないとのこと。
前作に較べるとサイケデリックなテイストが増していて、そこも良い。
一方で「On The Cross Road」など、ハードコア色も健在。
ボーナス・トラック2曲はこちらもライヴで、「Godgilla」(「Whe The River Knows Part Ⅰ」の原曲)と「Out Bound」。
Gazelleの28年越し(!)の念願がかない、今回のブックレットにはオリジナル・リリースの時に封入出来なかったアルバムのストーリーが掲載されている。


2枚とも30年近く前のリリースだが…ASYLUM、恐ろしいことに現在進行形で、今この時もこの頃のアルバムを超える作品を作ろうとしているのだった。
『ASYLUM』『THE PIECE OF THE FOOLS』、11日リリース。
14日には高円寺HIGHで再発記念ワンマン・ライヴがあります。


(2025.5.12.改訂)

THE NUNS/CBS DEMO 1977

画像昨年11月のリリース。
先月購入。
今月まで聴けずにいたブツ。

“西のBLONDIE”とも呼ばれるTHE NUNS。
アルバム・デビューは1980年だが、結成は75年で、サンフランシスコのパンクとしては最初期のバンド。
ライヴ音源が発掘されたり、1stシングルが『KILLED BY DEATH』に収録されたりで、初期はかなりRAWでワイルドだったことが知られている。
で、CBSとの契約を得るために77年にスタジオ・ライヴ形式で録音されたデモ音源が登場。

この時点でのパーソネルはジェフ・オールナー(ヴォーカル)、リチャード・ディートリック(ヴォーカル)、ジェニファー・ミロ(ヴォーカル、キーボード)、アレハンドロ・エスコヴェード(ギター)、マイク・ヴァーニー(ベース)、ジェフ・ラファエル(ドラム)の6人。
マイクは、後にシュラプネル・レコーズで速弾きギタリスト発掘に精を出すあの人。
なんと、パンク・バンドでベース弾いてたのね…。

このデモもやっぱり後のアルバムとは違って、思いっきりサヴェージで荒々しいパンク・ロックが聴ける。
アルバムに収録される曲も全然勢いが違う。
『KILLED BY DEATH』に収録された「Decadent Jew」も、当然ながらシングルとは別テイク。
THE MUSIC MACHINE「Talk Talk」のカヴァーに、60年代ガレージから連綿と続いていたアメリカのパンクの水脈を見る思い。
ヴィジュアル・イメージ的な戦略だったのか紅一点ジェニファー・ミロを前面に押し出したイメージなのは初期からだったようだが、このデモを聴くとジェニファーはあくまでもキーボーディスト兼トリプル・ヴォーカルの一人という位置づけで、ジェフ・オールナー&リチャード・ディートリックという男性陣のヴォーカルの方がむしろフィーチュアされている。

このデモがメジャー契約に結び付くことはなく。
バンドは1979年に一度解散していて、BOMP!からアルバム・デビューを果たしたのは再結成後のことだった。
アレハンドロ・エスコヴェードの楽曲をフィーチュアしながら、アレハンドロは再編したバンドに参加せずRANK AND FILEを結成、その後いわゆるカウ・パンクやオルターナティヴ・カントリーの世界で活躍する。
そしてヴォーカリストは既に3人ともこの世の人ではないという…。


(2025.4.14.改訂)

V.A./BEST OF DOWN & WIRED 3&4

画像昨年6月のリリース。
入手したのは昨年末。
最近まで聴けずにいた。

で、元々のリリースは更に前の2014年。
昨年再発されている。

サブタイトルに“a dose of psychedelic funk & blue-eyed soul”とある。
まあ大体そんな感じの内容。
60~70年代にかけて地方のマイナーレーベルとかから出ていた、知られざるホワイト・ファンクや黒っぽいロックなんかを集めたシリーズ。
(ただし例外もかなりアリ)
で、タイトル通り第3弾と第4弾に各11曲収録された中から、“BEST OF”と銘打って全18曲を1枚のCDに収めてあるんだけど。
俺が持ってるCDは、何故か表ジャケットだけ第4弾のがそのまま使われている。
裏ジャケには“3&4”と書いてあるんだが。
(それにしてもこのシリーズはジャケットのデザインが謎。なんだこりゃ)

全18組18曲、確かに全然知らないような…と思ったら、ナニゲにマット“ギター”マーフィーとGEORGE BRIGMAN AND SPLITが収録されている。
他は本当に知らないのばっかり。
それらの中で一番メジャーなシーンに行ったのは、60年代後半にネブラスカで活動していたソウル/ファンク・バンドTHE FABULOUS IMPACTS(このCDには1967年にリリースしたアラン・トゥーサン「Get Out Of My Life Woman」のカヴァーを収録)のキーボーディスト、レスター・エイブラムスだろうか。
この人はFABULOUS IMPACTS解散後も活動を続けて70年代後半にカリフォルニアに移り住み、THE DOOBIE BROTHERSの『MINUTE BY MINUTE』(79年)のレコーディングに参加、ソングライティングにも関わり、その後も00年代初頭まで様々なミュージシャンとプレイしたという。

18曲の中で一番古い録音は、30~80年代(芸歴長い!)にアメリカとヨーロッパを股にかけて活動した黒人シンガー、エメット“ベイブ”ウォラスが歌う1960年の「Dizengoff」だろう。
ちょっとエキゾチックなメロディの、ジャズともジャンプ・ブルーズともR&BともR&Rともつかない、かなり迫力ある曲。
逆に一番新しいのは、テキサスのHEATHER BLACKによる「Come On And Get It」(78年)か。
あと、アメリカのバンドばかりじゃなくて、ドイツの白人ソウル/サイケ・バンドTAKE 5+2なんてのも収録。

ライナーノーツはかなり詳細…というか、やたら詳細に書いてあるバンドと一言たりとも触れてないバンドに分かれる。
そんな中、共に正体不明のTHE TURKSと49TH BLUE STREAKがどちらもジミ・ヘンドリックスを取り上げているのが目を引いたりも。

ガレージ・パンクやサイケのオムニバスによくあるズッコケっぽいのがほとんどなくて、どのバンドも無名ながらかなりクォリティの高い演奏を聴かせる。
HEATHER BLACKなんて相当カッコいい。
(ただし1978年の音には聴こえない。そこらへんがメジャーになれなかった理由か)
サブタイトルにあるほどはサイケデリックでもないんだけど、全曲楽しめる良いオムニバス。


(2025.4.11.全面改訂)

NEON/Neon

画像スイスの知られざる女性パンク・バンドによる2曲。
ドイツのスタティック・エイジというレーベルから昨年リリースされていたが、こちらはアメリカのウォーター・ウィングというレーベルからこの6月にリリースされた盤。
スタティック・エイジからライセンスを得てリリースしたようで、スリーヴの裏にはスタティック・エイジのロゴもあるが、表面の写真は今回何故か逆版で印刷されている。
メンバー自身によると思われるライナーノーツ封入。

バンドの結成は1978年5月、チューリッヒにて。
メンバーはアストリッド・スピリヒ(ヴォーカル)、ダグマー・ハインリッヒ(ギター)、ロレダナ・ザンドネッラ(ベース)、ジッタ・グセル(ドラム)の4人。
全員、楽器の経験はなかったという。

4ヵ月の練習で4曲のオリジナルが出来上がり、NEONは1978年11月1日にチューリッヒで初ライヴを行う。
ライヴではネオン管を用いたセットを使っていたとか。
しかし活動は順調ではなく、フェスティヴァル出演を含む数回のライヴと1回のTV出演だけで、79年夏には解散したという。
活動期間は1年余りで、リリースもなかった。

ところが2016年になって、ダグマー・ハインリッヒが自宅で2曲を収録したカセットテープを発見。
それが今回の7inchとなった。
「Neon」「Nazi Schatzi」の2曲。
レコーディングは、まったく上手く行かなかったらしい1978年12月のTV出演に際して行なわれたモノ。
あんまり歪まないギターがペンペン鳴るシンプルかつプリミティヴな楽曲と演奏は、パンク・ロックというよりもちょっとポスト・パンクっぽい。
アストリッド・スピリヒのヴォーカルも、歌うというより語るという感じ。
(ちょっと芝居がかった抑揚もあったり)
この時点で結成から半年ちょっと、こういう風にしかならなかったんだろうけど。

左翼政党の集会で演奏していたそうだし、「Nazi Schatzi」という曲名からしても、ポリティカルな姿勢を持ったバンドだったことが窺われる。
(“Schatzi”は宝を意味するドイツ語の“Schatz”を“Nazi”に合わせてもじったと思われ)

NEON解散後、アストリッド・スピリヒは1981年1月にLiLiPUTの3代目シンガー“アストリッド・スピリット”となり、83年10月まで活動。
カート・コベインのフェイヴァリット・バンドのひとつとしても知られたLiLiPUTだったが、現在のアストリッドは“スピリチュアル・カウンセラー”とのこと。
ダグマー・ハインリッヒはアートの道に進み。
ロレダナ・ザンドネッラはオランダに移住し、現在はアムステルダム在住。
ジッタ・グセルは10年のニューヨーク暮らしを経て90年にチューリッヒへと戻り、現在は映画のディレクターをしているという。


(2025.3.5.改訂)

EAT HOT LEAD/PUKE SPIT AND GUTS

画像7月末に出て、8月末に買っていたんだけど、最近まで聴けずにいた1枚。
サンフランシスコのカルトなパンク・バンドが1980年にリリースした唯一のアルバムの再発。

メンバーはキャプテン・ワーム(リード&バッキング・ヴォーカル、リズム・ギター、ベース、パーカッション、44マグナム、手持ち資金)、ドニー・デス(リード&バッキング・ヴォーカル、リズム・ギター、ベース、パーカッション、ハープ)、マリー・マンスローター(リード&バッキング・ヴォーカル)、ディック・ヘッド(リード&リズム・ギター、ベース、バッキング・ヴォーカル)、ステュイサイド(ドラム、バッキング・ヴォーカル)の5人。
ステージネームからもうえらいことになってますね。
男女トリプル・ヴォーカルという編成で、女性ヴォーカルとドラム以外の3人がギターとベースをとっかえひっかえ演奏している。
グループ・ショットは何故かドラマーを除く4人しか写ってなくて。
個々のメンバー写真を見ると他のメンバーが狂ったルックスなのにドラマーだけ爽やかな好青年風という…。
(ひょっとして正式メンバーじゃなかったとか?)
更にベースは15曲中4曲でバック・ナイフという人が弾いている。

音の方は、THE GIZMOSがGGアリンを演ろうとしてるみたいな…と言えばわかりやすいだろうか。
早過ぎたスカム・パンク。
演奏自体はGIZMOSほど下手くそじゃないんだけど、ヘナチョコな感じの楽曲はけっこう似ている気がするし、ヴォーカルもギターも3人ずつで担当するあたりもちょっとGIZMOSっぽい。
で、けっこうポップな曲もあったりするあたりは初期のGGに通じるというか。
まあとにかくポンコツ感とイカレ具合は半端じゃないです。
曲間にはメンバーの叫び声とSEをミックスしたヘンな音が入っている…。

写真を見ると、上半身ブラジャー1枚の上に革ジャンを着て二連銃を構えたマリー・マンスローターが凄くヤバい感じなんだけど、歌声はやたら素朴。
バラード風(?)の「Send Me Your Ear」なんて、ほとんど哀愁さえ漂う。
ディック・ヘッドも、見た目からは想像出来ない速弾きを聴かせ。
ひとつひとつの音を聴けば、ディックに限らず全員が演奏はそんなに下手じゃないはずなんだが、バンド・サウンドとして出てくる音の腰砕け&ヘッポコ感には思わず笑う。
で、歌詞がまたひどい。
「But I Love Her」なんて“She's just a business cunt/But I love her”の繰り返し(笑)。
(歌詞カード付き)

何しろいろいろインパクト大な1枚。
ちなみにキャプテン・ワーム、ディック・ヘッド、バック・ナイフ、SEを制作したグレン・シン、グループの名付け親であるアラン・アウシュヴィッツ他、メンバーや関係者のうち8人が既に故人という…。


(2025.3.2.改訂)