THE TWEEZERS/ALREADY!

画像東京のガレージ/パンク・シーンから登場した、世界に誇るべき珠玉のパワー・ポップ・バンドTHE TWEEZERS。
唯一のアルバムがオリジナル・リリースから実に20年を経て紙ジャケ/リマスター/ボーナス・トラック収録で再発。
コレはまさに決定盤でしょう。
それにしても、もう20年も経っているのか…。

FIRESTARTERのFIFI(ギター、ヴォーカル)、SUPERSNAZZのトモコ(ベース、ヴォーカル)、SAMANTHA'S FAVORITEの尾崎(ギター、ヴォーカル:アルバムでは“KOJI”と表記)、ピーズのウガンダ(ドラム)という強力な布陣で90年代半ばに結成。
俺が初めてこのバンドを知ったのは、浪速のガレージ番長キングジョーが編纂していたオムニバス・ヴィデオでのことだったと記憶する。
そこではFLAMIN' GROOVIESの「Shake Some Action」を演っていて、「おお」と思ったもんだったが。
アルバムが出てぶっ飛んだ。
演奏にはパンク由来のスピード感とキレとタフネスがありながら、メロディはこの上もなくポップでキャッチーで切なく甘酸っぱい。
当然ながらFIRESTARTERともSUPERSNAZZともSAMANTHA'S FAVORITEともまた違う。
70~80年代のパワー・ポップを咀嚼し尽くした上で、90年代以降のガレージ/パンクの感覚で仕上げているというか。
(いや、そのへんのバンドに共通していたRAWな感じはないし、やっぱりまた違ってた)

ともあれ、CDのプレイ・ボタンを押すなり飛び出す「Get That Girl」「Walking With A Radio On」といった名曲の連続に、シビレながら聴いていた。
「Bad Time」なんか、サビを“ばったんばったん”と口ずさんでいたモノであります。
THE KIDSの「Someday」をカヴァーしてるけど、オリジナルが全部カヴァー以上に強力だった。
TEENGENERATE~FIRESTARTERとは違う歌い口で聴かせるFIFIもさることながら、抑制が利いた感じのトモコのヴォーカルがまた実に良かった。

今回の再発では、リマスターした上で、シングル曲やアウトテイクなどのボーナス・トラックを7曲プラスして全21曲となっている。
中上マサオ氏による詳細なライナーノーツも実に読み応えアリ。
一家に1枚、大推薦。

で、このバンド、復活して今もやってるんだもんなー。
(メンバーは交代している)
“唯一のアルバム”と書いたけど、FIRESTARTERの活動ペースが鈍化してSUPERSNAZZが解散してしまっている今、THE TWEEZERSの新作が出る可能性もあるワケで。


『ALREADY!』、19日より絶賛発売中。


(2025.2.17.改訂)

LARRY WALLIS/THE SOUND OF SPEED

画像PINK FAIRIESの3代目ギタリストであり、MOTORHEADの初代ギタリストであったラリー・ウォリス…の、レア音源を収録した編集盤。
うおおおおお。
最近はPINK FAIRIESも新作をリリースしたりしてるし、このへんキてますかひょっとして。

10曲しか入ってなくて、他にももっとあるでしょ、と言いたくなるが、それはそれとして。
いずれもアツい。
ラリー・ウォリス自身によると思われる(“ラザ”名義)ライナーノーツも読める。

まずは1986年のレアなシングル曲「Leather Forever」「Seeing Double」。
参加メンバーはアンディ・コルホーン(ギター)、ダンカン・サンダーソン(ベース)、ジョージ・バトラー(ドラム)という、THE DEVIANTSでPINK FAIRIESでLIGHTNING RAIDERSな人たち。
「Seeing Double」は同時期の再編PINK FAIRIESのアルバムでも再演された曲。

最も興味深いのは、幻となったスティッフ・レコーズでのソロ・アルバム用に録音されていた音源だろう。
「I Think It's Coming Back Again」「I Can't See What It's Got To Do With Me」「Crying All Night」「Story Of My Life」の4曲。
こちらはビッグ・ジョージ・ウェブリー(ベース)、ディーク・レオナード(ギター)、ピート・トーマス(ドラム)が参加。
ジョージ・ウェブリーはラリー・ウォリスが80年代前半にやっていたTHE DEATH COMMANDOS OF LOVEのメンバーだった人で、ラリーのソロ・アルバム『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』にも参加していたベーシスト。
他にもいろいろなレコードに参加していて、基本的にはセッションマンだと思う。
ディークはもちろんMAN、ピートはELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS。
すげえメンツ。
PINK FAIRIESのスティッフ時代のシングルや、ビッグ・ビートからのミニアルバム『PREVIOUSLY UNRELEASED』あたりを思わせる、タフなR&R。
「I Think It's Coming Back Again」は『PREVIOUSLY UNRELEASED』で、「Crying All Night」は『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』で、それぞれ再録されている。

そして、『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』用の未発表デモ「Old Enough To Know Better」。
コレはすべての楽器をラリー・ウォリスがプレイしている。
曲順はスティッフ時代の4曲とごちゃ混ぜなのだが、違和感なく聴けるのが凄い。

更にラリー・ウォリスが90年代初頭にやっていたTHE REDBIRDSの「It Ain't Enough」。
このアルバムでは何故かこの曲についてだけ解説もクレジットもないんだけど、ベースがフィル・ミッチェル(Dr.FEELGOOD)で、ドラムがクリス・ノース(THE ENIDのドラマーと同じ名前なんだけど…誰?)だろう。

あと、ラリー・ウォリスが80年代半ばにやっていたらしいLOVE PIRATES OF DOOMの「I Love You So You're Mine」。
LOVE PIRATES OF DOOMというのは、実はシングル「Leather Forever」と同じメンツ。

で、ラストはEXIT WOUND名義の「Meatman!」。
この曲は『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』に収録されているが、EXIT WOUNDはすべてのパートをラリー・ウォリスが担当している、らしい。
2000年の録音、のはず。

これらの音源のほとんどは、その昔英国のPINK FAIRIESファンジン「UNCLE HARRY'S CITY KIDS」が制作したオフィシャル・ブート的な編集盤CD『HAMS』のシリーズに収録されていたのだが。
それも今じゃ入手困難だろうし、こうして1枚のCDにまとめられたのは実に喜ばしいことだ。
PINK FAIRIESをドライヴさせ、MOTORHEADの最初のトライアングルを成したラリー・ウォリスの豪放なヴォーカルとギターを存分に楽しむことが出来る。


ただ…このアルバム、権利関係の怪しい音源で有名なクレオパトラ・レコーズ傘下のパープル・ピラミッド・レコーズからのリリースなんだけど。
ネットで幾ら検索しても、リリースに関する情報がまったくないのである。
本当にリリースされてるのか、あるいはこれからリリースされるモノなのか。
俺自身は、さる筋から入手して、こうして毎日聴きまくっているんだが。
うーん、謎だ。


追記:
このアルバム、2017年10月20日に正式にリリースされている。
俺にこのアルバムをよこした”さる筋”は、どうやってか随分早くにコレを入手していたワケだ。

(2025.2.17.)

TV EYE/1977-1978

画像4月のリリースで、10日ほど前に入手。

TV EYE。
1976年結成。
THE PREFECTSと並んで、バーミンガムで最初期のパンク・バンドと言われる。
このCDの副題も“The lost studio recordings & no-fi relics of Birmingham's first Garage-Punk band”と。
(なげえよ!)
スタジオ録音の5曲と、リハーサル音源8曲を収録。

バンドはバーミンガムのモズレイ・アート・スクールの学生だったアンディ・ウィケット(ヴォーカル)、デイヴ・カスワース(ギター)、アーモン・ダフィ(ベース)を中心に結成。
当時、メンバーは17~18歳だったという。
1977年にはポール・アダムス(ギター)が加入し、ドラマーがSHOCK TREATMENTというバンドのヴォーカリストだったデイヴ・トゥイストに交代。

で、ギターがデイヴ・カスワース?
そう、このバンド、後にJACOBITESなどで活躍するデイヴが10代の頃に参加していたバンドなのだった。

バンド名はもちろんTHE STOOGESの名曲に由来している一方で、音楽的にはNEW YORK DOLLSの影響が大きかったらしい。
デイヴ・カスワースがいたことを思えば、納得ではある。
ただ、曲自体はNEW YORK DOLLSにもそれほど似ていないと思う。
はっきり言って上手くはないものの、子供っぽい声で独特なメロディを聴かせるアンディ・ウィケットのヴォーカル…を中心に、時代を先取りするかのようなニュー・ウェイヴ色をも感じさせるパンク・ロック。
活動当時にレコードのリリースはなかったが、バーミンガムの後進バンド勢にはかなり大きく影響したとか。
(スタジオ録音の「Stevie's Radio Station」は、1984年になってオムニバスに収録)

…実際のところ、デイヴ・カスワースがかつて在籍したオブスキュアなバンド、では済まされなかった。
TV EYEの影響を受けて、バーミンガムで1978年に結成されたのが…DURAN DURAN!
初代ヴォーカリストのスティーヴン・ダフィが脱退した後、DURAN DURANの2代目ヴォーカリストを務めたのが、誰あろうアンディ・ウィケットなのだった!
えー。
(初期DURAN DURANの名曲「Girls On Film」はアンディ在籍時の曲で、アンディが歌う音源も近年発掘リリースされている)
しかも、アンディが抜けたTV EYEにはスティーヴンが加入したという。
なんだそりゃー。
しかしTV EYEは間もなく解散。

…で、TV EYEの「Stevie's Radio Station」は、後にDURAN DURANの大ヒット曲「Rio」に改作されたのだという(!)。
もう一度「Stevie's Radio Station」を聴き直してみた。
ああっ、コード進行が「Rio」と同じ!

その後アンディ・ウィケットはDURAN DURANを脱退。
3代目ヴォーカリストとしてサイモン・ル・ボンを迎えたDURAN DURANは大スターの道を歩むことに。
DURAN DURANを抜けたアンディはレゲエ・バンドXpertzに参加するが、シングル1枚で解散。
1988年にはワールド・ミュージック志向の大所帯バンド・WORLD SERVICEを結成し、90年代には古巣DURAN DURANとツアーもするが、単独音源のないまま解散。
現在はMAU 61というバンドで活動している模様。

デイヴ・トゥイストもTV EYEを脱退。
このCD、リハーサル音源ではデイヴが叩いているが、スタジオ録音では“ゴフ”というドラマー(正体不明:メンバーも“ゴドフリーなんとか”としか覚えていないらしい)がプレイしている。
で、デイヴはTV EYEを解散させたアーモン・ダフィと共に、1978年にはTHE PREFECTSに参加。
以前このブログで紹介したPREFECTSのライヴ音源(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2175.html)でも演奏している。
アーモンがその後もPREFECTS→後身バンド・NIGHTINGALESでの活動を続けた一方で、PREFECTSを脱退したデイヴはスティーヴン・ダフィ&デイヴ・カスワースと再び合流して79年にTHE HAWKSを結成するが、シングル1枚で解散。
その後THE SCARECROWS~THE FILIPINOSを経て、またもデイヴと合流し、DAVE KUSWORTH AND THE TENDERHOOKSに参加している。
TV EYEの2代目ヴォーカリスト、スティーヴン“ティンティン”ダフィのその後については、言うまでもないだろう。

ってかバーミンガムのパンク/ニュー・ウェイヴ(&ニューロマンティクス)シーン、狭過ぎるぞ!


追記:
アンディ・ウィケットもデイヴ・トゥイストも、今も活動を続けている様子。
デイヴ・カスワースは2020年に亡くなってしまった。

(2025.2.12.)

THE INMATES/THE ALBUMS 1979-82

画像6月のリリース。
THE INMATES(ジャケットどおりの表記だとiNMaTES)の初期3作にボーナス・トラックを加えたBOXセット。
なんと、3rdアルバムは初CD化なんだそうで(!)。

バンドは1978年に結成。
元THE CANNIBALSの“ピーター・ガン”ことピーター・スタインズ(リード・ギター)とベン・ドネリー(ベース)に、ビル・ハーリー(ヴォーカル)とトニー・オリヴァー(リズム・ギター)。
当初は正式なドラマーが不在だったようで、1stアルバムではほとんどの曲でTHE VIBRATORSのエディがドラムを叩いていた。

1stアルバム『FiRST OFFENCE』は、1979年のリリース。
プロデュースは英国ロック・シーンにその名を轟かせたR&R録音鬼、故ヴィック・メイル。
音楽性は先達・Dr.FEELGOODにも近いが、ガレージ色がやや強めなのが初期のTHE INMATESの個性だった。
1曲目からTHE STANDELLSのカヴァー「Dirty Water」。
更にTHE PRETTY THINGSの「Midnight To Six Man」。
それ以外もカヴァーが多く、オリジナル曲はアルバム13曲中5曲しかない。
基本的にはアーサー・コンリーとかドン・コヴェイとか黒人音楽のカヴァーが中心で、適宜ホーンズもフィーチュアして、ソウルフルに盛り上げる。
(「Jeanie Jeanie Jeanie」なんかも演ってるけど)
多くないオリジナルもかなり強力で、渋いバラード「If Time Could Turn Backwards」なんかはスタックスの名曲カヴァーみたいにも聴こえる。
ホーンズの入った曲では、なんとなく札幌のBAKER SHOP BOOGIE(知ってる?)を思い出したりも。
一方でDr.FEELGOODを思わせるタフな疾走感の「Back In History」とか。
そしてロバート・プラントが絶賛したというビル・ハーリーの迫力ある歌唱。
(顔も体も他のメンバーより一回りデカい)
ボーナス・トラックの2曲はシングルB面曲で、やはりカヴァー。

『FiRST OFFENCE』は全英チャートのトップ40に入り、シングル「Dirty Water」は全米51位。
その勢いで1980年にリリースされた2ndアルバムが『SHOT IN THE DARK』。
プロデュースは引き続きヴィック・メイル。
正規のドラマーとして、CURVED AIR(!)から山口百恵(!!)まで手広くセッション仕事をしていた名手ジム・ラッセルが加入。
今度の1曲目はTHE MUSIC MACHINE「Talk Talk」のカヴァーで、コレは「Dirty Water」に続くセンとして狙っていたとしか思えない。
基本的な方向性は前作と同様だが、13曲中9曲と、オリジナル曲の割合が増している。
カヴァーで目立つのは、THE ROLLING STONES「So Much In Love」か。
(コレはシングル・カットもされている)
ヴィック・メイルはビル・ハーリーとの電話で、このアルバムが自分のベストな仕事だと言ったらしい。
ボーナス・トラックはシングルから4曲。
THE 5,6,7,8'sも演っていた「Tallahassie Lassie」が印象的。

『SHOT IN THE DARK』の後、リリース元のレーダー・レコーズがWEAに吸収合併され。
3rdアルバムはワーナーからリリースされることに。
いわばメジャー・デビューと言っても良かったが、レーベルからの口出しも増えたりして、イイことばかりではなかったらしい。
ヴィック・メイルがプロデュースから外れたのもワーナーの指示だったとか。
リリースにも間が空き、3rd『HEATWAVE IN ALASKA』は1982年に出ている。
ややコマーシャルになった気がしないでもないけど、基本路線には変わりない。
ただ、大きな違いがひとつあって…それまですべてのオリジナル曲を書いていたピーター・ガンだけでなく、他のメンバーも曲を書くようになっている。
コレは結果オーライで。
1曲目を飾るベン・ドネリー作「She's Gone Rockin'」も、ジム・ラッセルによるロカビリー風ナンバー「Three Little Sisters」もかなりカッコいい。
カヴァー曲はTHE FOUR TOPSとかフィル・エヴァリーとか、それまでとちょっと方向が違う感じ。
コレはプロデューサーのステュアート・コルマンのアイディアだったそうで。
ジムのご近所さんだったという縁から実現したクリス・ディフォード&グレン・ティルブルック(もちろんSQUEEZE)の提供曲「On The Beat」も興味深い。
ボーナス・トラックの2曲はアルバムに先行して81年にリリースされたシングルの曲で、A面「Me And The Boys」はNRBQのカヴァー、B面「Betty Lou」はバンドにとって初となったメンバー全員の共作曲。

この後ビル・ハーリーが体壊して一時期EDDIE & THE HOT RODSのバリー・マスターズが参加したり、ジム・ラッセルが脱退してエディが正式メンバーになったりと、いろいろありつつバンドは今も活動中(のはず)。
来年は結成40周年か。


追記:
THE INMATES、アルバムはしばらく出していないものの、今も活動中らしい。
ビル・ハーリーが一時期離脱していたことを別とすると、ドラマー以外の4人はなんと結成以来不動。

(2025.2.10.)

BRINSLEY SCHWARZ/IT'S ALL OVER NOW

画像4月にリリースされて間もなく入手していたんだけど、最近まで聴けず。
BRINSLEY SCHWARZ、幻の7th&ラスト・アルバム。
80年代後半に権利関係の怪しいリリースがあったが、今回はイアン・ゴム自身がリマスターして、録音から実に43年を経て初の正規リリース。

メンバーはもちろんブリンズリー・シュウォーツ(ギター、ヴォーカル)、ニック・ロウ(ベース、ヴォーカル)、イアン・ゴム(ギター、ヴォーカル)、ボブ・アンドリュース(キーボード、ヴォーカル)、ビリー・ランキン(ドラム)という鉄壁の5人。
デイヴ・エドマンズをプロデューサーに迎えた6thアルバム『THE NEW FAVORITES OF BRINSLEY SCHWARZ』(1974年)に続く渾身の一作として、74年の秋にレコーディングされたのがこのアルバム。
しかし当時リリースされることはなく。
最後まで商業的成功とは無縁なままに終わったBRINSLEY SCHWARZだったが、他のアルバム同様にこのアルバムも中身はナイス。

目玉は何と言ってもニック・ロウが後にソロでヒットさせる「Cruel To Be Kind」の、BRINSLEY SCHWARZによるオリジナル・ヴァージョンが聴けるということだろう。
ボブ・アンドリュースの涼しげなキーボードをフィーチュアしたアレンジ。
ニックの歌い回しもソロとはけっこう違うが、コレはコレで非常にカッコいい。
他にもデイヴ・エドマンズに提供された「As Lovers Do」など、後になって日の目を見た曲があり。
それらクォリティの高い曲を当時お蔵入りさせたユナイテッド・アーティスツ・レコーズの罪は重いぞ。
(UAは約2年後にMOTORHEADでもやらかす)

それにしても、この時点での彼らの音楽の完成ぶりに目を見張る。
軽さに味のある演奏とアレンジ、ドラム以外リード・ヴォーカルが取れるメンバーをそろえての完璧なコーラス・ワーク。
ストリングスまでフィーチュアした「Hey Baby(They're Playing Our Song)」でのフィラデルフィア・ソウルっぽい洗練の度合いや、いかにも南部風なファンキーさを聴かせるインストゥルメンタル「Do The Cod」もあり。
そしてTHE ROLLING STONESで有名なボビー・ウォマックのカヴァー「It's All Over Now」はレゲエに。
(他にも随所でレゲエ風のカッティングが登場する)

結局、トミー・ロウのカヴァー「Everybody」が1975年にシングルとしてリリースされただけで、前後してバンドは解散。
メンバーは散り散りになりつつも、それぞれにパブ・ロック/パンク/パワー・ポップの界隈で活躍して行くことになる。
ともあれこの力作が遅まきながら正式にリリースされたのは非常にめでたい。


(2025.2.10.全面改訂)

BORED!/PIGGYBACK

画像昨年12月のリリースで、春先に入手してたんだけど、最近まで聴けず。
80年代末~90年代前半のオージー・パンク界で気を吐いたバンド、BORED!…の、コンピレーションに提供した曲やシングルB面曲や未発表曲を集めたLP2枚組。

BORED!はデイヴ・トーマス(ヴォーカル、ギター)を中心に、1987年に結成。
バンド名はDESTROY ALL MONSTERSの曲名に由来。
『NEGATIVE WAVES』(1989年)、『FEED THE DOG』(91年)、『JUNK』(92年)と3枚のオリジナル・アルバムをリリースした後、93年にアウトテイクとライヴ音源を収録した編集盤『SCUZZ』をリリースして、94年に解散している。
このLPは91~94年の録音を集めたモノで、デイヴとラッセル・バリセヴィック(ベース)以外のメンバーは録音毎に違い、トリオ編成だったりギター2本の4人編成だったり。

ラッセル・バリセヴィック加入以前には一時期元GODのティム・ヘメンズレー(故人)がベースを弾いていたりもして、音楽性はGODやTHE YES-MENあたりにも近い、デトロイト・ロックとハード・ロックとグランジ/オルターナティヴの影響を混ぜ合わせたようなハイエナジーなロック。
で、このアルバムではカヴァー曲も多くて、そのチョイスが非常に興味深い。
THE VELVET UNDERGROUND「Waiting For The Man」、70年代オージー・パンクのCHOSEN FEW「There's A Lot Of Going Around」、THE WIPERS「Over The Edge」、更にはD.O.A.「Disco Sucks」にHUSKER DU「Pink Turns To Blue」、RUDIMENTARY PENI(!)「Rotten To The Core」、THE SAINTS「Demolition Girl」と。
一番びっくりしたのは、AMERICAN SOUL SPIDERS「Teenage Jesus」のカヴァー。
録音は1991年。
そんな早い時期にAMERICAN SOUL SPIDERSのカヴァーを演っていたバンドが、オーストラリアにいたなんて!

リリース元であるスペインのBANG!レコーズは、最初のリリースが『NEGATIVE WAVES』の再発。
そしてこの『PIGGYBACK』は、レーベルにとって記念すべき100番目のリリース。
BANG!の、このバンドに対する思い入れが嫌でも伝わるというモノだ。

見開きジャケットの2枚組LPで、デイヴ・トーマス自身によるライナーノーツ、未発表の写真の数々と、気合入ったリリース。
限定500組だけど、このへんのバンドがそれほどバカ売れするとも思えないんで(苦笑)、まだ入手可能か?


…ってか、80年代後半以降のオージー・パンク/ガレージのバンドを紹介し続けてる日本のブログって、ここぐらいなのかなあ。
そんなこのブログも、ウェブリブログに引っ越して1年が経過しました。
この1年でアクセス総数が実に8万件ちょっとです。
皆様、ありがとうございます。


追記:
リリースから8年後、Discogsでは流石にそれなりの値段が付いている。

(2025.2.7.)

THE RINGS/RINGS REHEARSAL TAPES

画像1月のリリースで、3月頃に入手してたんだけど、今頃紹介。
あのトゥインクがパンクの時代にやってたTHE RINGSのリハーサル音源。
6曲入り45回転10inchのアナログ盤で、俺が買ったイエロー・ヴィニールは350枚限定とのこと。
(ってことはもう入手困難?)

THE RINGSの未発表音源は、1995年にリリースされたトゥインクの編集盤CD『ODDS AND BEGINNINGS』のボーナス・トラックとして音の悪いライヴが7曲収録されていたが。
それから22年も経って、良好な音質のリハーサル音源が出てこようとは。

1977年5月、ロンドンでの録音。
メンバーはトゥインク(ヴォーカル)、アラン・リー・ショウ(ギター、ヴォーカル)、デニス・ストウ(ベース)、ロッド・ラッター(ドラム)の4人。
アランはギターとヴォーカルだけじゃなくて、“ソングライター”ともクレジットされている。
更に裏ジャケットには“These recordings are the sole ownership of Alan Lee Shaw”と書いてあって。
多分このへんの権利関係でトゥインクとモメたりしたんだろうなあ、と(苦笑)。

A面1曲目はもちろん(?)チズウィックからの唯一の7inchのA面となった「I Wanna Be Free」。
そして2曲目はB面となった「Automobile」。
基本的なアレンジはシングルのヴァージョンと同じだが、「I Wanna Be Free」のサビの歌い回しがちょっとだけ違ってたりとか。
(“I wanna be”の後の“Free!”をけっこうタメている)

びっくりしたのは、A面3曲目。
60年代にトゥインクが在籍したTHE FAIRIESのレパートリーだった「Get Yourself Home」を演っている。
この曲は90年代にもトゥインクが録音しているから、びっくりするほどのこともないのかも知れないが。
もっとも、出来はあんまり良くない(苦笑)。
直線的なTHE RINGSの演奏もトゥインクのヴォーカルも、この曲には合わないと思う。

B面は、THE RINGSの未発表曲「I Wanna Get High」「Shoot You Down」に、PINK FAIRIESのレパートリー「Teenage Rebel」。
「Teenage Rebel」と「Shoot You Down」は、前述の『ODDS AND BEGINNINGS』収録のライヴの中でも演奏されていた。
それにしても、「Teenage Rebel」は1970年の曲だが…77年にパンク・バンドが演ってもまったく違和感のない曲で、PINK FAIRIESの元祖パンクぶりが改めて実感される。
「I Wanna Get High」は“I wanna get high”とか“You wanna get high”とか同じ歌詞を繰り返すだけのシンプルな曲。

バンドはベーシストの交代後にトゥインクと他の3人の音楽的方向性の相違(本当にそれだけだろうか?)から解散。
アラン・リー・ショウ(ヴォーカル、ギター)、ロバート・クラッシュ(ベース)、ロッド・ラッター(ドラム)の3人はMANIACSを結成。
「Shoot You Down」はMANIACSのレパートリーとして受け継がれることになる。
一方のトゥインクはTWINK & THE FAIRIESを結成するが、それも12inchを1枚リリースして終わるのだった…。


追記:
この10inch、やっぱりというか今ではそこそこの値段になっている。

(2025.1.22.)

V.A./I DON'T CARE COLLECTION

画像昨年11月にリリースされて、1月頃には入手していたんだけど、今頃になって紹介。
LPでリリースされていた『I DON'T CARE』と『I DON'T CARE VOLUME 2』の内容に曲を追加した(LPの方にしか入ってない曲もあるが)CD2枚組。
副題“DUTCH PUNK 1977-83”の通り、オランダのパンクの編集盤。
リリース元は…おや、昔THE OUTSIDERSの再発でさんざんお世話になったスードニムか。

オランダにも、1977年の時点で既にパンク・バンドやパンク系ファンジンが登場していたんだそうで。
この編集盤は、時系列は微妙に入れ替わっているところもあったりするんだけど、副題の通り77~83年のダッチ・パンクが実に66曲も収録されている。
77年の音源は3曲で、多分一番古いリリースと思われるポール・トルネードはディスク1の9曲目に入ってるんだが、写真を見ると眼鏡にネクタイのぽっちゃりでびっくり(笑)。
(音の方は歪みの少ないギターの大人しめなサウンドながら、ヴォーカルは完全にパンクそのもの)
そのポールに限らず、写真を見る限りではやっぱりというかなんとも垢抜けないルックスのバンドが多くて微笑ましい。

これまたやっぱりというか、1977~78年頃のバンドはかなりSEX PISTOLSの影響が透けて見える。
ディスク1の頭2曲を占めるIVY GREENなんかは、THE SAINTSをバックに歌うジョニー・ロットン、的な趣。
続くHELMETTESもやっぱりロットン風。
FLAMIN' GROOVIESに影響されていたというTHE FLYIN' SPIDERZなんかも、ここに収録された曲を聴くとかなりRAWでパンクっぽい。
「My Generation」のパンク・カヴァーを聴かせるSPEEDTWINSもなかなか強力。

個人的に「おっ」と思ったのは、同じ曲のデモ(1977年)と正規リリース・ヴァージョン(78年)の両方が収録されているTHE SOFTIES。
これまたルックスの方は太っちょ&老け顔(実際、若くなかったのかも)なんだけど、78年ヴァージョンでの豪放なギターとヴォーカルは、ライナーノーツの指摘通りラリー・ウォリス在籍時のPINK FAIRIESにかなり似ている。

ディスク2の方は1980~83年の音源。
当然ながらニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクが入ってきて音楽性は多様化。
ハード・パンク/Oiっぽいのも収録されているけど、83年頃には既に存在したであろうハードコアそのもののバンドが収録されていないのは意図的なモノだろう。
ラストはFRITES MODERNによる「Sesamstraat」(「セサミストリート」テーマ曲のふざけたオランダ語カヴァー)。
個人的には77~78年ぐらいのバンド群の方がツボだったんだが、もちろんどれを聴いても興味深い。

興味深いといえば付属のブックレットも凄くて。
ライナーノーツに加え、当時のバンド群の写真やジャケット画像ばかりか、ポスターやフライヤーなんかも大量に拝むことが出来る。
音源の数々と併せて、コレ1セットでオランダの初期パンクがある程度わかった気になれるすぐれもの。


追記:
内容は非常に良いのだが…ただし、縦長のケースはCD棚に入らず、他のCDとは別に段ボール箱に入れてあるんで、結果的に取り出すこともあまりなく、ほとんど聴かない1作になってしまっている。
フェリックス・ヴォン・ハヴォックも昔、特殊なジャケットはやめとけと言ってたなあ。

(2025.1.20.)

SOGGY/SOGGY

画像昨年末に入手していたのに、紹介が今頃になってしまった。
2008年にフランスのレーベルから500枚限定でリリースされて即完売したというLPが、アメリカのアウター・バッテリーというレーベルから再発。
白黒のマーブル…じゃなくて“スプラッター・ヴィニール”仕様で、またしても500枚限定。
黒盤もあるらしいが。

以前このブログで紹介したフレンチ・パンクの編集盤『PAINK』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1456.html)にも1曲収録されていたバンド。
1978年結成で、82年5月に解散。
活動中には、81年に7inchを1枚リリースしたのみ。
メンバーは“ベブ”ことパトリック・ベルトラン(ヴォーカル)、エリック・ダー(ギター)、フランシス・タイヤー(ベース)、オリヴィエ・エネグラヴ(ドラム)の4人。

このLPは7inchの2曲を両面の冒頭に配し(A・B面は逆だが)、1980年10月~82年3月にかけて録音された全11曲を収録。
初期はアリス・クーパー、BLACK SABBATH、THE STOOGES、MC5なんかのカヴァーを演っていたという。
そういったデトロイト・ロック、プロト・パンク、ハード・ロックの影響を融合して、自分たちの音楽性を確立。
STOOGES「I Wanna Be Your Dog」のカヴァーがある一方で、曲によってはメタリックでもあったり。
DENNIS MOST & AUDIOLOVEからサイケ抜いてメタル増量したみたいな。
時代から見て、New Wave Of British Heavy Metalとかの影響も受けていたはず。
結果的に同時期のBRATS(デンマーク)同様、メタルパンクの祖みたいな音になっている。

表ジャケットのベブの野獣派なルックスが凄いですね。
見開きジャケットの内側を見ると、ロブ・タイナーみたいな爆発ヘアのベブがイギー・ポップみたいに上半身裸で血を流したりのけぞったりしている写真が。
(パフォーマンスは相当イギーの影響大きそう)
一方でギターはかなりハード・ロックっぽい。
同じ頃のフランスにはSHAKIN' STREETもいたし、こういうパンクともメタルともつかないバンドが育つ土壌ってのが、フランスにはあったんでしょうか。
ともあれ当時としてはどのシーンからも浮きそうな感じのバンド…活動は続かなかった様子。

2012年にはこのアルバムの全曲を含む2枚組LPが出ていたそうだけど、そちらも現在は入手困難。
500枚とか言わずもっとプレスしてくれんかね。
ともあれSOGGY、お勧めです、見つけたら是非ゲットされたし。


追記:
限定500枚とあって、今ではそこそこの値段になっている。

(2024.12.25.)

DOW JONES AND THE INDUSTRIALS/CAN'T STAND THE MIDWEST 1979-1981

画像昨年9月リリースで、11月に入手していたんだけど、紹介が年をまたいでしまった。
インディアナ州ウエスト・ラファイエットのエレクトロ・パンク・バンド、未発表曲やライヴなど28曲を詰め込んだ約80分。
タイトルは、『KILLED BY DEATH #8 1/2』にも収録された彼らのシングル曲「Can't Stand The Midwest」からとられたモノ。
アメリカ盤なんだけど、“かぶせ帯”が付いてる。

インディアナで後期THE GIZMOSなんかと活動していたバンドだけど、活動中にリリースされたのはGIZMOSとのスプリットLP『HOOSIER HYSTERIA』(1980年)と7inch EP「Dow Jones And The Industrials」(81年)のみ。
その後もオムニバスとかに収録されるぐらいで、CDとしてまとめられたのは今回が初めてだと思う。
デジタル・マスタリング他のエンジニアリングはZERO BOYSのポール・メイハーンが担当している。
ライナーノーツは後期GIZMOSのメンバーだったデイル・ローレンスによる。

1978年に結成された時のメンバーは、グレッグ・ホーン(ヴォーカル、ギター、サックス)、クリス・クラーク(ベース:一応この人が“ダウ・ジョーンズ”らしい)、ブラッド“Mr.サイエンス”ガートン(キーボード、モーグ他)、ティム・ノース(ドラム)の4人。
初ライヴは79年8月17日だったという。
DEVOとPERE UBUに影響されていたらしいけど、音楽的にはもっとノイジーで、荒々しくてフリーキーなところも多い。
エレクトロ・パンクといっても、シンセサイザーをフィーチュアしつつも根っこはかなりパンク寄りで、「It Ain't Good Enough」なんかは、楽曲自体はNEW YORK DOLLS/ジョニー・サンダースみたいだったりも。
一方で、バンド名通り(?)インダストリアルっぽいアヴァンギャルドな曲もあったりする。
ライヴでは、メンバーはスーツにネクタイ姿で、クリスの父親の衣料品店から持ち出したマネキン人形をステージに並べて、更に秘書風の格好をした女性“ミセス・ジョンソン”が演奏の間ステージ上でタイプライターを打ったりファッション雑誌を読んだりしていた(?)そうで。

1979年11月にはインディアナに来たRAMONESの前座を務めたりもし、ポール・メイハーンにZERO BOYS結成を決意させることにもなったDOW JONES AND THE INDUSTRIALSだったが、活動中に全米に知られるようなことはなく。
80年11月1日にTHE BRYLCREEMS名義で行なったライヴを最後に、クリス・クラークとブラッド・ガートンが脱退。
(つまりこの時点で”ダウ・ジョーンズ”がいなくなったワケだ)
バンドは新たにジェニー・スウィーニー(ベース)とデイヴ・バーンク(キーボード)を迎えて81年に何回かのライヴとレコーディングを行なったものの、結局解散となる。
00年代に入って再結成ライヴもあったそうだけど、ティム・ノースは2003年5月7日に胃癌で亡くなったという。

タイトルには“1979-1981”とありつつ、実際にはバンド時代に書いた曲をグレッグ・ホーンが84年に一人で録音したのも入っていたり。
未発表曲を聴くと、メンバーがパートを入れ替わって演奏していることも多くて、マルチな人たちだったなあと思う。
全28曲中、ライヴで演奏された「Louie Louie」を除いてオリジナル曲ばかり、しかもライヴのレパートリーには当時レコードに収録されていた曲は1曲もなくて、相当のクリエイティヴさで進化して行ったバンドだったことが窺われる。
81年の録音ではジェニー・スウィーニーが歌っている曲もあり、それまでとは違った表情も。
その後もバンドが続いていればまた別の展開もあったんだろうけど。
ともあれ今になってCDの形で聴けるようになったことを喜びたい。
(…とか言っても1000枚限定だが!)


追記:
やはりと言うべきか、このアルバム、今ではかなりの値段が付いている。

(2024.12.25.)