GYASI/HERE COMES THE GOOD PART

GYASI.jpg2月のリリース。
9月に入手して、最近まで聴けず。
半ば無理矢理新譜枠で紹介。

「ギャシ?」と思ったら、”JAH-SEE”と発音するのだそうで。
ジャーシーね。
随分変わった名前だなあと思ったが、本名らしい。
(フルネームはジャーシー・ヘウス)
全然知らない人だったんだけど、コレがもう4thアルバム。
2019年に『ANDROGYNE』、22年に『PRONOUNCED JAH-SEE』、24年に『ROCK N' ROLL SWORD FIGHT』をリリースしていて、シングルも10枚以上出しているので、かなり精力的な活動ぶり。

ジャケットを見ての通り、「今は何年ですか?」というグラム・ロック曼荼羅を展開する。
Bandcampには”グラム・ロックの未来”とあり(!)。
1曲目「Sweet Thing」から、デイヴィッド・ボウイ「Rebel Rebel」みたいなリフがグリッター・ロックなリズムに乗っかる。
「Snake City」イントロのハンドクラップもいかにもな感じ。
この曲はちょっと「The Jean Genie」風。
アルバムの随所で、『ZIGGY STARDUST』期のボウイっぽい歌い回しが聴かれる。
ボウイの影響は相当大きそうだ。
中ジャケットの上半身裸の写真は『RAW POWER』の頃のイギー・ポップを思わせたりも。

一方でハード・ロック色もかなり強い。
「She Says」「Street Life」「Cheap High」とかに顕著。
「Street Life」はちょっと、いやかなりPARISっぽい。

驚いたのは、このジャーシーという人がテネシー州ナッシュヴィルで活動していること。
ナッシュヴィルからこんなグラム番長が…。
ジャーシーはヴォーカルだけでなく、ギター、ベース、シンセサイザー、ピアノ、ストリング・アレンジ、ハープも担当し、マルチ・プレイヤーぶりを聴かせる。。
プロデューサーのボビー・ホランド(ベース、ピアノ、シンセサイザーで演奏にも参加。今年出たALICE COOPERのアルバム『THE REVENGE OF ALICE COOPER』のエンジニアも務めている)をはじめ、参加メンバーも大半はテネシーのローカルなミュージシャンらしい。
その中で目を引くのは黒人のドラマー、ダル・ジョーンズ。
この人はジャック・ホワイトとの活動で知られ、グラミー賞の受賞歴もアリ。
あと、サックスのクリス・ウエストはニール・モースと活動している人。

どの曲もクォリティは非常に高いが。
ジャーシー本人の歌にカリスマっぽさみたいなモノがそれほど感じられないのが課題か。
しかしカッコよくて面白いアルバムなのは確か。
一番気に入ったのは曲名通りアルバムの最後を飾る「Grand Finale」。
いや…モロに「Rock 'N' Roll Suicide」なんだけど(笑)。
ジャーシーが本当にデイヴィッド・ボウイを敬愛し、研究していることがよく伝わる。
(中ジャケットに漢字で”蛇市”とあるのも”出火吐暴威”に倣ったか)

サンクス・リストに参加メンバーや家族と並んでバスター・キートン、リトル・リチャードの名前があるのもユニーク。
かなりお勧めの1枚です。

THE ALLIGATOR BLUES/OUTSIDE BOOSTER

ALLIGATOR BLUES OUTSIDE BOOSTER.jpg20日に新宿red clothでレコ発ライヴをやったTHE ALLIGATOR BLUESが、その20日にリリースした新作アルバム。

2010年に結成されたTHE ALLIGATOR BLUES、それぞれドラマーの違う2枚のアルバムを経て、小池”ワニー”孝典(ギター、ヴォーカル)と田部”ベニー”年宏(ドラム、ヴォーカル)のコンビとなったのが14年。
以降シングル中心のリリースで。
初のフルアルバム『W.B.Vibe』(19年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201911article_1.html)はライヴ盤だった。
それからもう6年。
待望のスタジオ・オリジナル・アルバム。

待望のスタジオ作…と言っても、ほとんどスタジオ・ライヴのように聴こえる、もの凄いライヴ感。
それもそのはず、レコーディングは演奏に2日(14時間)、歌入れに2日(約8時間くらいとのこと)。
実際、歌が別録りとは思えないような仕上がり。
しかも1曲(「KAI-HOH」)を除いてギターを重ねていないのだという。

完全な新曲「KAI-HOH」、ライヴで2回しか演っていないというインストゥルメンタル「How do you feel, Jessica?」以外は、すべてライヴで磨き抜かれてきた楽曲。
なので、『W.B.Vibe』でも聴ける曲が大半だが。
ライヴでの勢いを削がないままに、スタジオ作として完成させている。
『W.B.Vibe』同様、以前に較べてソウル/ファンク色が強まり。
ブルージーにして、強力にダンサブル。
シングルでも『W.B.Vibe』でも(いずれもライヴ録音)、何より実際のライヴでも強烈極まりなかったロッキン・ブルーズ・ストンパー「Love you tender」は、ここでもやっぱり強烈。

メンバーにとって意欲的な試みであっただろう縦長の変形ジャケット(ジャケット内側のバスドラの写真のところにCDが収まるようになっていて、全曲の歌詞も掲載)は…正直に言うと、諸刃の剣だと思う。
CD棚には大き過ぎて収まらず、かと言ってLP棚には小さ過ぎる。
以前にも書いたことだが、いつも聴いているCDやLPが収まっている場所に収納出来ない変形ジャケットの作品は、聴取頻度が下がりがちである…というのは昔からよく言われていることなのだ。
その昔、音楽評論家の水上はるこさんが、レコード棚に収まらないPUBLIC IMAGE LIMITED『METAL BOX』を何処にしまったかわからなくなって、聴こうと思うたびに部屋の中を探さなければならない、という話があった。
俺自身、その手のアルバムはまとめて(他のCDやLPとは関係ない場所にある)段ボール箱に突っ込んであって、あまり聴かなくなってしまっているモノも多い。
もっとも、今の若いリスナーはそもそも家に”CD棚”も”LP棚”もないかも知れないから関係ないかもだけどさ。

それはさておき。
THE ALLIGATOR BLUESの作品は、これまでライヴの物販かHPからの通販でしか入手出来なかったが。
このアルバムから遂にサブスク解禁するという。
コレを機に、より多くの人に彼らの音楽が届いてくれれば、と願ってやまない。
何よりこのバンドに興味持った人は、一度ライヴを観てください。
そんなにしょっちゅうライヴやってないバンドだけど、少なくともこのブログを読んでくださっているような奇特な人(?)なら、一度ライヴを観たらきっと気に入ってもらえるはずだから。

死神紫郎/やってみろ

死神紫郎 やってみろ.png弾き語りのフォーク・シンガーとして活動し、数年前からラップへの果敢なトライを続けている死神紫郎の新曲。
10月26日にリリースされ、iTunes Storeのフォークソング部門で国内1位を獲得したとのこと。

今回はフォーク×ラップとでも言うべきスタイルで。
シンプルなバック・トラックに乗せてフラメンコ的なアコースティック・ギターが響き。
その上で死神紫郎が語り歌う。
口先だけの一億総評論家的な風潮に強烈なNOを突き付ける1曲。
タイトル通り、まず自分自身で”やってみろ”という強力なメッセージに貫かれている。
曲自体はまったく似てはいないが、PINK FAIRIESの元祖パンク・ナンバー「Do It」を思い出したりも。

それにしても。
死神紫郎がラップにアプローチしたことが、元々鋭かった詩作に更なる鋭さを与えている。
”お前は口だけ人間だ/お前は口空けて見てんだ”というサビをはじめとする、押韻のセンスの見事さよ。
コレこそが、死神紫郎がアウェイをものともせず幾多のラップ・バトルに挑み続けたことの大きな成果と言えるだろう。
彼は有言実行でやってきたし、これからもやり続けるのだ。
やらなければ何も起こらない。
そして死神紫郎は間違いなく何かを起こした。
(iTunes Storeでの1位も、彼が以前から公言して目指し続けてきたモノだ)

フォークで磨いた達者なギターも活きるし、ラップも出来ればメロディを歌い上げることも出来る。
そしてラップで鍛えられた硬質なリリックと、前向きなアティテュード。
死神紫郎自身、これからの代表作になる1曲と自負しているという。
リリースからもう10日以上経っているので、このブログを御覧の皆様の中には既に聴いている人も多いかも知れないが。
まだの人は是非お試しください。

MAD3/Vinzella

MAD3.jpg先日の「KAPPUNK」でもナイスなステージを見せたMAD3の新作。
2曲入りの7inchと、3曲プラスで5曲入りのCDの2枚組。

で…ジャケットのこのきれいなおねいさんは誰?
えーっ、EDDIEくん?
うわっ、よく見ると本当にそうだ。

タイトルの「Vinzella」というのはEDDIEの理想の女性像だそうで。
それを自ら女装して受肉させるという…すげえな。

で、そのタイトル曲「Vinzella」はパーカッションやトランペットをフィーチュアしたクンビア風のインストゥルメンタル。
MAD3結成から36年というEDDIEのギターが冴えるだけでなく、トリオ編成にこだわらないアレンジも聴きモノ。
7inchB面の「444」は、こちらもゲストのハープをフィーチュアしたスウィンギーなブルーズ。
ジャジーでもある。

CDの方では、「Clash On 45」って…こりゃまたえらくファンキーな、と思いながら聴いていたら、あーっ、コレはアレか、THE CLASHへのオマージュなのか。
(有名曲のフレーズが次々に挿まれる)
「Femme Fatale From Hell」は昔のMAD3のイメージに近い感じの曲。
(暗黒プロレス組織666の女子プロレスラー、ラム会長の入場テーマ曲なんだそうで)
そして初期の代表曲「Jack The Violence」のリメイク。

見開き内側のVinzella(ことEDDIE)の特になまめかしいお姿にクラクラするけど、もちろん中身の音楽のカッコよさあってのこと。
ところでMAD3、コレが最後のリリースで、来年活動休止なんだそうで。
えっ、そうなんだ…。


「Vinzella」、本日リリース。

GALUNDO TENVULANCE/INSOMNIS SOMNIA

GALUNDO TENVULANCE.jpg2年ほど前にデビュー作『LUNAR ECLIPTURE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/500451840.html)を紹介した日本のシンフォニック/メロディック・デス・メタル・バンドの2ndアルバム。

2020年9月、ASUKUN(ギター)を中心に結成。
シンフォニックな要素とメタルコアなどを融合させた独自のメロデスを目指していたという。
シングルやEPを経て、23年8月23日に『LUNAR ECLIPTURE』をリリース。

結成当初はレコーディング・プロジェクトだったらしいが、アルバム制作を機にライヴもやる本格的な活動にシフトしたとのこと。
前作リリース後、2024年7月にSAO(ヴォーカル)が新加入。
新たなフェーズへと突入しての2ndアルバム。

前作で聴かれたメタルコア/デスコアっぽいビート・ダウンのパートがほぼなくなり、ブラストを含む超絶ファストなリズムに乗せたASUKUNとDERAのエモーショナルで叙情的なツイン・ギターとKENのシンフォニックでクラシカルな鍵盤(ピアノ独奏含む)の上で、SAOが咆哮する。
そのSAOのヴォーカル…近年、女性ヴォーカルをフィーチュアしたメロディック・デス・メタル・バンドでは、にわかに女性とは信じられないような極悪グロウルとメロウなノーマル・ヴォイスの間を行き来するようなスタイルがよく聴かれるのだが。
(このバンドの初代ヴォーカリストCHIAKIもノーマル声を用いていたとのこと)
SAOは潔く(?)グロウル一本に振り切ったスタイル。
一方ではっきり女性とわかる声質・唱法。
声自体も音楽性もまったく似てはいないものの、かのGALLHAMMERのヴィヴィアン・スローター(現ヴィヴィアン・クライスト)や”出禁系アイドル妖怪”十四代目トイレの花子さんを思い出したり。

冒頭がオーヴァーチュア的なインストゥルメンタル「Sleepless Dreams」、中盤にピアノ・ソロ「Cursed Bloodline」、ラストに激シンフォニックな「Epicedium」という構成も、前作よりかなりドラマティック。
今後に期待。

『INSOMNIS SOMNIA』、17日リリース。

ハシモニュウ/I like your ghosts

ハシモニュウ.jpg取り上げるのが遅くなった。
札幌在住のシンガー/ギタリスト、ハシモニュウ。
初音源だったCD-R「hasymonew」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_77.html)以来、16年にわたって(!)CD-Rやミニアルバム、バンド名義の作品など紹介してきたのだが。
ソロ名義でCDとしてのフルアルバム・リリースは、何と今回初めてなのだそうで。

歪まないエレキギターでの弾き語り。
曲によってはアコースティック。
あと「Fappy」ではバスドラらしき音が聴こえる。
オーヴァーダブは最小限に抑えられている模様。

独特なハイトーン気味の声質は昔から変わらないが。
初期に較べると、声を張って歌うようになった。
ギターも弾き語りの伴奏をとっくに抜け出して、「Moanin' Morning」の間奏(あと変拍子のギター・リフ)や「エジプトで猫~拝啓ティーンクラブ~」のエンディングなどではかなり激しくも何処か奇妙な弾きまくりを聴かせる。
(敢えて歪ませないところに明確な意思を感じるような)
シャウト気味の歌唱やノイジーなギターなどもフィーチュアしたバンドでの活動などを経て、バンドでの感覚が弾き語りに統合されたとでもいうか。

そして”東京まで40分くらいならいいのに”(「東京」)や”ひがまない 暇がない ひがまない”(「LikeでLoveでRespect」)、”嘘でもいいから優しくなりたい”(「イファイイフュー」)といった、時にシュールだったりユーモラスだったり、時にはストレートだったりもする歌詞。
ちょっと聴き”暗い”、一方でそれを奇妙に薄明るい感じに聴かせていた初期に較べて、よりストレンジでイマジナティヴな奥行きを獲得したような気がする。
「真夏のクリスマ」(クリスマ?)「イファイイフュー」「ちっちゃ皿ライチ」「Fappy」「ファームン」など、少し不思議(SF)で意味不明な曲名もユニーク。
(あと構図もピントも謎なジャケット写真も)

何しろ初CD-Rから既に16年。
醸されてきたモノがソロとして結実するには十分な年月だったと思う。
CDだけでなく各種配信でも聴けるので、興味のある人はチェックしてみてください。
…と、東京(赤羽)まで40分のところに住んでいる俺は思うのだった。


『I like your ghosts』、5日から発売中。

THE DICTATORS/THE DICTATORS

DICTATORS.jpg昨年10月のリリース。
先月入手。
最近まで聴けず。
聴き始めたら超ヘヴィ・ローテーション。
とりあえず”今日の新譜”で紹介。
2001年の『D.F.F.D.』以来実に23年ぶりとなる、THE DICTATORSのオリジナル・アルバム。

バンドの編成は、大きく変わっている。
現在のメンバーは、キース・ロス(ヴォーカル、ギター:FRANKENSTEIN 3000)、アンディ・シャーノフ(ベース、ヴォーカル、キーボード、パーカッション)、”ロス・ザ・ボス”フリードマン(リード・ギター)、アルバート・ブシャード(ドラム、パーカッション、ヴォーカル、サックス、ハープ:元BLUE OYSTER CULT)の4人。

キース・ロス加入以前の2021年に配信シングルとなっていた「Let's Get The Band Back Together」「God Damn New York」では、23年に亡くなったスコット”トップ・テン”ケンプナーがギターを弾いている。
(トップ・テン最晩年の録音だろう)
他に、SHAKIN' STREETのアルバム『SHAKIN' STREET』(1980年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_824.html)やアルバートのバンド・BRAIN SURGEONSのアルバムなどに参加していた姉妹コーラス・デュオTISH & SNOOKY(パトリス&アイリーン・ベロモ)がバッキング・ヴォーカルで参加。
ミックスはエド・ステイシアムが担当している。

「Let's Get The Band Back Together」はアンディ・シャーノフとジェシー・ベイツ(元YOUTH GONE MADで、THE FLESHTONESのアルバムにも参加している人)の共作。
アンディはFLESHTONESのキース・ストレングとTHE MASTERPLANでも活動しているので、その人脈だろう。
「God Damn New York」のソングライティングには、なんと”マイティ”ジョー・ヴィンセント(THE DEVIL DOGS~THE SWINGIN' NECKBREAKERS)が関わっている。
(なんとというか、DEVIL DOGSはTHE DICTATORSをカヴァーしていたね)
「Wicked Cool Disguise」にクレジットされているスージー・ロレインは、アルバート・ブシャードと活動していた人。

「Who Will Save Rock 'N' Roll」路線の(?)「Let's Get The Band Back Together」(曲名がグッとクる)を1曲目に持ってきたのは正解。
全10曲中でアンディ・シャーノフが歌っているのはシングルの2曲のみで。
アンディともハンサム・ディック・マニトバともまったく声質の違うキース・ロス(7曲を歌う)がリード・ヴォーカルをとる曲がトップに来たら、かなり違和感が大きかったはず。
アルバート・ブシャードとキースが書いてアルバートが歌うカントリー・ロック風(?)な「Really Good」あたりになると、およそTHE DICTATORSっぽく聴こえない。
とはいえコレもまた2025年のDICTATORSなのである。
(やはりというか、トップ・テンが参加している2曲が最もDICTATORSらしく聴こえる)

驚かされるのはBLUE OYSTER CULTのカヴァー「Transmaniacon MC」。
いや、元BLUE OYSTER CULTのアルバート・ブシャードがいるんだから驚くにはあたらないのかも知れんが。
それだったらアルバート自身が歌っていたレパートリーでもっとTHE DICTATORS向きなのがあったような気も。
まあでも両バンドのファンとしては嬉しいです。
(何しろ今のTHE DICTATORS、4分の1がBLUE OYSTER CULTなんだぜ)

ロス・ザ・ボスはいつも通りメタリックに弾きまくる。
アルバート・ブシャードのドラムは、録音とミックスのせいもあるんだろうけど、どうかするとBLUE OYSTER CULT時代以上にヘヴィで、時々ツーバスが炸裂。
(二人とも70代なんだが…)

アンディ・シャーノフが一人で書いた曲が3曲、アンディとロス・ザ・ボスが書いた曲が1曲。
一方でキース・ロスがソングライティングでクレジットされている曲は2曲しかないので(それぞれアルバート・ブシャード、アンディとの共作)、キースが前面に出てバンドがまるっきり変わってしまっているようなことはない。
THE DICTATORSのファンでまだ聴いてない人がもしいたら、聴いた方がよいでしょう。
堂々のセルフ・タイトル作だぜ、悪いはずがない。

ラストを飾るアンディ・シャーノフ作の「Sweet Joey」は、多分同級生だったジョーイ・ラモーンに捧げた曲だろう。
サンクス・リストにはフェビアンヌ・シャイン(SHAKIN' STREET)、パンキー・メドウズ(ANGEL)、そしてトップ・テンの遺族の名前があり。
アルバムはトップ・テンやリッチー・ティーター、ステュ・ボーイ・キングら亡くなったメンバーに捧げられている。

アンディ・シャーノフ70歳、ロス・ザ・ボス71歳、アルバート・ブシャードに至っては今月78歳。
今の編成でTHE DICTATORSの次のアルバムが出る可能性は、限りなく低いのではと思われ。
ともあれ今はこのアルバムを楽しく聴いている。

OLEDICKFOGGY/BEAUTIFUL DAYS

OLEDICKFOGGY.jpg紹介が遅れてしまった。
16日のリリース。
OLEDICKFOGGY、前作『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』(https://lsdblog.seesaa.net/article/498657616.html)から2年ぶりとなる8thアルバム。

2年ぶりというと随分経った気がするが、『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』はその前の『Gerato』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201803article_7.html)から5年ぶりだったので、そんなにむやみに空いたワケでもない。
しかし、バンドには大きな変化がある。
昨年四條未来(バンジョー)が脱退していて。
現在のOLEDICKFOGGYは伊藤雄和(ヴォーカル、マンドリン)、SUZZY(ギター)、三隅朋子(アコーディオン、キーボード、ヴォーカル)、鹿児島大資(ベース)、大川順堂(ドラム)の5人編成。
”OLEDICKFOGGY第3章”なのだという。

前作からエレキ・ベースとなっていたところに、バンジョーも聴かれなくなり。
一聴しての”ラスティックっぽさ”は、更に後退した感がある。
バンジョーに代わって、曲によっては伊藤雄和のマンドリンがより前面に出るようにもなっているが。
「ラスティックの楽器編成の必然性がない」と言われることもあったOLEDICKFOGGY、今やその楽器編成自体がラスティックと言い切れないモノになりつつあり。
しかしそれでも、彼ら流のラスティックを追求し続けているのでは、と思われてならない。
(それは是非聴いて判断してください)

そして今作が”OLEDICKFOGGY第3章”の端緒たる由縁。
全員が曲を書いている。
全12曲中、伊藤雄和が4曲、SUZZYが3曲、鹿児島大資が2曲、三隅朋子と大川順堂が各1曲、カヴァーが1曲。
「O.D.N.」(おでん?)をはじめとする、SUZZY作曲の楽曲での、以前から感じられたメタル好きっぽい部分も好ましい。
(続く鹿児島作曲「LIFE」のソロもメタリック)
鹿児島が書いた「今夜はきっと満月」が、鹿児島参加前の「KUNG FU VACATION」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201801article_23.html)を思わせる中華テイストなのも、第3章を迎えた現在のバンドの一体感を示している気がする。

更に、今回SUZZYが2曲を作詞。
こんなことは、これまでになかった。
一方で、前作同様に伊藤作詞・作曲で三隅朋子が歌う曲もアリ。
(コレがまたよいのです)
カヴァーは彼らが影響を受けた16TONSの「白銀を越えて」。

タイトル曲は伊藤雄和が私淑する故・西村賢太に捧げた1曲。
”飲んでる間に 早く忘れちまいたい 事ばかりの毎日だったけど/時の静寂に 飲み込まれたくないから 街に出てみても 虚しいだけ/だけど諦めのついた夜だけはなかったのさ/ごめんな俺まだ終われずにいるよ”という最後のサビがグッとクる。

タイトル曲に限らず、伊藤雄和の歌詞の言葉の力/煽情力はますます研ぎ澄まされ。
”昨日よりはマシさ そうやって此処まで来たんだろう/「それならもう少し行けるだろう」 そんな声がした”(「飴色の街」)とか。
三隅朋子作曲「隣人」での、睦まじいカップルの歌と見えて、実はコレ、主人公はただのストーカーでは…と思わせる怖さもユニーク。

「地下で」「未完の肖像」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2057.html)や「KUNG FU VACATION」のような、それこそ1回聴いてすぐ覚えるような楽曲がないのが弱点と言えなくもない気はする。
しかしタイトル曲や「飴色の街」など、これから繰り返し聴いて体にしみこんでいきそうな曲は幾つもある。
更に繰り返し聴こう。

TELEVISION『MARQUEE MOON』を思わせるジャケットの色調もナイス。

THE BUDGET BOOZERS/LOVE YOU HATE YOU

BUDGET BOOZERS.jpg昨年9月のリリース。
先月入手。
最近まで聴けず。

多分THE JACKETS(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2097.html)以来9年ぶりに買ったヴードゥー・リズム・レコーズの新作じゃないかと思う。
コレもスイスのバンド。

THE JACKETS、THE LOVERS、DEAD BUNNYのメンバーたちによって、2005年に結成されたらしい。
メンバーはサム・シング(ギター、ヴォーカル)、ベティ・ブーズ(ヴォーカル)、C.J.ロウ(ベース)、ブッカー・T(ドラム)の4人。
写真を見ると、サムはJACKETSのベーシスト、サミュエル・シュミディガーのようだ。
ブッカーはDEAD BUNNYのブッカー・T・ベニのこと。
アルバムを聴く限りではベティがリード・ヴォーカルを担当する曲は1曲しかないんだけど、でも正式メンバーみたい。
全員が重度のアルコール依存だとか。

ヴードゥー・リズムのBandcampとか見ると3rdアルバムとなっているが、それ以前のリリースは12inch EP(2008年)と33回転10inch(10年)みたいなので、フル・アルバムとしては1枚目なのかも知れない。
それにしても嫌なジャケットだなあ…。
(ヴードゥー・リズムのオーナー、レヴェレンド・ビートマンの手になる)
バレリーナ姿の男がベースのC.J.ロウ。

ところが、CDのプレイボタンを押してびっくり。
いきなりのメロトロン(!)によるイントロ(メンバーではなくゲストが弾いている)から勢いよく始まる1曲目「Dignity」。
えらくカッコいい。
BandcampではTHE SWEET、CHEAP TRICK、THE NERVES、THE UNDERTONES、BAY CITY ROLLERSのファンにお勧めみたいなことが書いているが、本当にそんな感じ。
グラムとバブルガムとパンクとパワー・ポップの要素を融合させて、そこに90年代以降のガレージもぶち込んだみたいな。

THE JACKETSにも共通する歪んだギター、アンサンブルをリードするぶっといベース、ワイルドに突っ走るドラム、時に何処かうつろなヴォーカルによる、キャッチーでパンクでグラマラスでサヴェージなR&R。
メロトロンの入る「Flowers」はちょっとサイケだったりも。
10曲25分で駆け抜ける。
ミックスとマスタリングはジム・ダイアモンド。

とても良いアルバムです。
やっぱりヴードゥー・リズムのリリースはもっとしっかりチェックしないとだなあ。

THE STRANGE MOON/ROCK'N' ROLL GOD

STRANGE MOON.jpgKenこと松谷健率いるTHE STRANGE MOON、前作『SECOND TRIPS』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202104article_5.html)から約3年半ぶりとなる3rdアルバム。
なんとLPでのリリース。
しかも見開きジャケット!
(ジャケット内側からレコードを出し入れする凝った作り)
更に、厚い紙の大きな歌詞カードも封入されている。
原料やらプレス代やら高騰の折にやってくれるぜ…。
(画像はジャケットを開いた状態)

メンバーは前作からドラマーが交代し、Ken(アコースティック・ギター、ヴォーカル)、K.Ron(ギター)、Ajima(ギター)、Louis Inage(ベース)、Nishigori(ドラム、パーカッション)、Kummy(コーラス、パーカッション)、Tomoko Jett(コーラス、キーボード、こきりこ)の7人。
そして前作にも参加していたゲストのKo2Rock(サックス他)。
人海戦術。

録音はピース・ミュージックで、プロデュースはバンドと中村宗一郎。
エンジニアも中村が担当している。

1stアルバム『IN THE STORMY NIGHT』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201903article_18.html)に較べてグッとR&R度を増していた『SECOND TRIPS』だったが。
今回は更にR&R色を強めた感がある。
タイトル曲をはじめとして、速い曲では前作以上の勢いで突っ走る。
1分半しかない疾走曲「Anaconda」のギター・ソロの終わりのフレーズがBLUE OYSTER CULT「The Red & The Black」みたいだったり。

そんな中でも「Take A Break On A Southern Island(南の島で一服)」は曲名通りトロピカルにして、女性コーラスにはやっぱりというかT.REXっぽさを感じたり。
(前作にもT.REXっぽい曲はあった)
速い曲もミドルの曲も、基本ポップ。

全9曲中8曲がKenの作詞・作曲だが。
唯一共作となっている「Model Girl」…コレはKenによれば、彼が高校生の時にやっていたバンドの曲だという。
そのバンドでは、なんとアルファレコードでデモを録ったことがあったのだそうで。
その話が進んでいたら、KenはPSF界隈とかじゃなくて、10代でメジャーからデビューしていたかも知れんのだ。
実際にはメンバーの親が「受験だからやめさせてくれ」と言ってきて、話は流れてしまったとか…。

「Alabindian(アラブのインディアン)」とか、英語と日本語のタイトルが併記されているのは前作まで同様。
歌詞の言葉遣いに女性的な部分が見られるのもね。
楽しくて痛快なアルバムです。
我が家ではヘヴィ・ローテーション中。

正式なリリース日が決まっているワケではないということだが、レコ発ライヴは21日(土)、東高円寺U.F.O.CLUBで、もちろんそこでは販売されるとのこと。
残念ながら俺は行けそうにないけど…。
THE STRANGE MOONの活動だけでなく、最近はなんとMARBLE SHEEPでのライヴも再開しているKen、老いて(?)なお盛ん。
このまま死ぬまでロックでお願いします。