THE DICTATORS/THE DICTATORS

DICTATORS.jpg昨年10月のリリース。
先月入手。
最近まで聴けず。
聴き始めたら超ヘヴィ・ローテーション。
とりあえず”今日の新譜”で紹介。
2001年の『D.F.F.D.』以来実に23年ぶりとなる、THE DICTATORSのオリジナル・アルバム。

バンドの編成は、大きく変わっている。
現在のメンバーは、キース・ロス(ヴォーカル、ギター:FRANKENSTEIN 3000)、アンディ・シャーノフ(ベース、ヴォーカル、キーボード、パーカッション)、”ロス・ザ・ボス”フリードマン(リード・ギター)、アルバート・ブシャード(ドラム、パーカッション、ヴォーカル、サックス、ハープ:元BLUE OYSTER CULT)の4人。

キース・ロス加入以前の2021年に配信シングルとなっていた「Let's Get The Band Back Together」「God Damn New York」では、23年に亡くなったスコット”トップ・テン”ケンプナーがギターを弾いている。
(トップ・テン最晩年の録音だろう)
他に、SHAKIN' STREETのアルバム『SHAKIN' STREET』(1980年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_824.html)やアルバートのバンド・BRAIN SURGEONSのアルバムなどに参加していた姉妹コーラス・デュオTISH & SNOOKY(パトリス&アイリーン・ベロモ)がバッキング・ヴォーカルで参加。
ミックスはエド・ステイシアムが担当している。

「Let's Get The Band Back Together」はアンディ・シャーノフとジェシー・ベイツ(元YOUTH GONE MADで、THE FLESHTONESのアルバムにも参加している人)の共作。
アンディはFLESHTONESのキース・ストレングとTHE MASTERPLANでも活動しているので、その人脈だろう。
「God Damn New York」のソングライティングには、なんと”マイティ”ジョー・ヴィンセント(THE DEVIL DOGS~THE SWINGIN' NECKBREAKERS)が関わっている。
(なんとというか、DEVIL DOGSはTHE DICTATORSをカヴァーしていたね)
「Wicked Cool Disguise」にクレジットされているスージー・ロレインは、アルバート・ブシャードと活動していた人。

「Who Will Save Rock 'N' Roll」路線の(?)「Let's Get The Band Back Together」(曲名がグッとクる)を1曲目に持ってきたのは正解。
全10曲中でアンディ・シャーノフが歌っているのはシングルの2曲のみで。
アンディともハンサム・ディック・マニトバともまったく声質の違うキース・ロス(7曲を歌う)がリード・ヴォーカルをとる曲がトップに来たら、かなり違和感が大きかったはず。
アルバート・ブシャードとキースが書いてアルバートが歌うカントリー・ロック風(?)な「Really Good」あたりになると、およそTHE DICTATORSっぽく聴こえない。
とはいえコレもまた2025年のDICTATORSなのである。
(やはりというか、トップ・テンが参加している2曲が最もDICTATORSらしく聴こえる)

驚かされるのはBLUE OYSTER CULTのカヴァー「Transmaniacon MC」。
いや、元BLUE OYSTER CULTのアルバート・ブシャードがいるんだから驚くにはあたらないのかも知れんが。
それだったらアルバート自身が歌っていたレパートリーでもっとTHE DICTATORS向きなのがあったような気も。
まあでも両バンドのファンとしては嬉しいです。
(何しろ今のTHE DICTATORS、4分の1がBLUE OYSTER CULTなんだぜ)

ロス・ザ・ボスはいつも通りメタリックに弾きまくる。
アルバート・ブシャードのドラムは、録音とミックスのせいもあるんだろうけど、どうかするとBLUE OYSTER CULT時代以上にヘヴィで、時々ツーバスが炸裂。
(二人とも70代なんだが…)

アンディ・シャーノフが一人で書いた曲が3曲、アンディとロス・ザ・ボスが書いた曲が1曲。
一方でキース・ロスがソングライティングでクレジットされている曲は2曲しかないので(それぞれアルバート・ブシャード、アンディとの共作)、キースが前面に出てバンドがまるっきり変わってしまっているようなことはない。
THE DICTATORSのファンでまだ聴いてない人がもしいたら、聴いた方がよいでしょう。
堂々のセルフ・タイトル作だぜ、悪いはずがない。

ラストを飾るアンディ・シャーノフ作の「Sweet Joey」は、多分同級生だったジョーイ・ラモーンに捧げた曲だろう。
サンクス・リストにはフェビアンヌ・シャイン(SHAKIN' STREET)、パンキー・メドウズ(ANGEL)、そしてトップ・テンの遺族の名前があり。
アルバムはトップ・テンやリッチー・ティーター、ステュ・ボーイ・キングら亡くなったメンバーに捧げられている。

アンディ・シャーノフ70歳、ロス・ザ・ボス71歳、アルバート・ブシャードに至っては今月78歳。
今の編成でTHE DICTATORSの次のアルバムが出る可能性は、限りなく低いのではと思われ。
ともあれ今はこのアルバムを楽しく聴いている。

OLEDICKFOGGY/BEAUTIFUL DAYS

OLEDICKFOGGY.jpg紹介が遅れてしまった。
16日のリリース。
OLEDICKFOGGY、前作『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』(https://lsdblog.seesaa.net/article/498657616.html)から2年ぶりとなる8thアルバム。

2年ぶりというと随分経った気がするが、『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』はその前の『Gerato』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201803article_7.html)から5年ぶりだったので、そんなにむやみに空いたワケでもない。
しかし、バンドには大きな変化がある。
昨年四條未来(バンジョー)が脱退していて。
現在のOLEDICKFOGGYは伊藤雄和(ヴォーカル、マンドリン)、SUZZY(ギター)、三隅朋子(アコーディオン、キーボード、ヴォーカル)、鹿児島大資(ベース)、大川順堂(ドラム)の5人編成。
”OLEDICKFOGGY第3章”なのだという。

前作からエレキ・ベースとなっていたところに、バンジョーも聴かれなくなり。
一聴しての”ラスティックっぽさ”は、更に後退した感がある。
バンジョーに代わって、曲によっては伊藤雄和のマンドリンがより前面に出るようにもなっているが。
「ラスティックの楽器編成の必然性がない」と言われることもあったOLEDICKFOGGY、今やその楽器編成自体がラスティックと言い切れないモノになりつつあり。
しかしそれでも、彼ら流のラスティックを追求し続けているのでは、と思われてならない。
(それは是非聴いて判断してください)

そして今作が”OLEDICKFOGGY第3章”の端緒たる由縁。
全員が曲を書いている。
全12曲中、伊藤雄和が4曲、SUZZYが3曲、鹿児島大資が2曲、三隅朋子と大川順堂が各1曲、カヴァーが1曲。
「O.D.N.」(おでん?)をはじめとする、SUZZY作曲の楽曲での、以前から感じられたメタル好きっぽい部分も好ましい。
(続く鹿児島作曲「LIFE」のソロもメタリック)
鹿児島が書いた「今夜はきっと満月」が、鹿児島参加前の「KUNG FU VACATION」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201801article_23.html)を思わせる中華テイストなのも、第3章を迎えた現在のバンドの一体感を示している気がする。

更に、今回SUZZYが2曲を作詞。
こんなことは、これまでになかった。
一方で、前作同様に伊藤作詞・作曲で三隅朋子が歌う曲もアリ。
(コレがまたよいのです)
カヴァーは彼らが影響を受けた16TONSの「白銀を越えて」。

タイトル曲は伊藤雄和が私淑する故・西村賢太に捧げた1曲。
”飲んでる間に 早く忘れちまいたい 事ばかりの毎日だったけど/時の静寂に 飲み込まれたくないから 街に出てみても 虚しいだけ/だけど諦めのついた夜だけはなかったのさ/ごめんな俺まだ終われずにいるよ”という最後のサビがグッとクる。

タイトル曲に限らず、伊藤雄和の歌詞の言葉の力/煽情力はますます研ぎ澄まされ。
”昨日よりはマシさ そうやって此処まで来たんだろう/「それならもう少し行けるだろう」 そんな声がした”(「飴色の街」)とか。
三隅朋子作曲「隣人」での、睦まじいカップルの歌と見えて、実はコレ、主人公はただのストーカーでは…と思わせる怖さもユニーク。

「地下で」「未完の肖像」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2057.html)や「KUNG FU VACATION」のような、それこそ1回聴いてすぐ覚えるような楽曲がないのが弱点と言えなくもない気はする。
しかしタイトル曲や「飴色の街」など、これから繰り返し聴いて体にしみこんでいきそうな曲は幾つもある。
更に繰り返し聴こう。

TELEVISION『MARQUEE MOON』を思わせるジャケットの色調もナイス。

THE BUDGET BOOZERS/LOVE YOU HATE YOU

BUDGET BOOZERS.jpg昨年9月のリリース。
先月入手。
最近まで聴けず。

多分THE JACKETS(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2097.html)以来9年ぶりに買ったヴードゥー・リズム・レコーズの新作じゃないかと思う。
コレもスイスのバンド。

THE JACKETS、THE LOVERS、DEAD BUNNYのメンバーたちによって、2005年に結成されたらしい。
メンバーはサム・シング(ギター、ヴォーカル)、ベティ・ブーズ(ヴォーカル)、C.J.ロウ(ベース)、ブッカー・T(ドラム)の4人。
写真を見ると、サムはJACKETSのベーシスト、サミュエル・シュミディガーのようだ。
ブッカーはDEAD BUNNYのブッカー・T・ベニのこと。
アルバムを聴く限りではベティがリード・ヴォーカルを担当する曲は1曲しかないんだけど、でも正式メンバーみたい。
全員が重度のアルコール依存だとか。

ヴードゥー・リズムのBandcampとか見ると3rdアルバムとなっているが、それ以前のリリースは12inch EP(2008年)と33回転10inch(10年)みたいなので、フル・アルバムとしては1枚目なのかも知れない。
それにしても嫌なジャケットだなあ…。
(ヴードゥー・リズムのオーナー、レヴェレンド・ビートマンの手になる)
バレリーナ姿の男がベースのC.J.ロウ。

ところが、CDのプレイボタンを押してびっくり。
いきなりのメロトロン(!)によるイントロ(メンバーではなくゲストが弾いている)から勢いよく始まる1曲目「Dignity」。
えらくカッコいい。
BandcampではTHE SWEET、CHEAP TRICK、THE NERVES、THE UNDERTONES、BAY CITY ROLLERSのファンにお勧めみたいなことが書いているが、本当にそんな感じ。
グラムとバブルガムとパンクとパワー・ポップの要素を融合させて、そこに90年代以降のガレージもぶち込んだみたいな。

THE JACKETSにも共通する歪んだギター、アンサンブルをリードするぶっといベース、ワイルドに突っ走るドラム、時に何処かうつろなヴォーカルによる、キャッチーでパンクでグラマラスでサヴェージなR&R。
メロトロンの入る「Flowers」はちょっとサイケだったりも。
10曲25分で駆け抜ける。
ミックスとマスタリングはジム・ダイアモンド。

とても良いアルバムです。
やっぱりヴードゥー・リズムのリリースはもっとしっかりチェックしないとだなあ。

THE STRANGE MOON/ROCK'N' ROLL GOD

STRANGE MOON.jpgKenこと松谷健率いるTHE STRANGE MOON、前作『SECOND TRIPS』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202104article_5.html)から約3年半ぶりとなる3rdアルバム。
なんとLPでのリリース。
しかも見開きジャケット!
(ジャケット内側からレコードを出し入れする凝った作り)
更に、厚い紙の大きな歌詞カードも封入されている。
原料やらプレス代やら高騰の折にやってくれるぜ…。
(画像はジャケットを開いた状態)

メンバーは前作からドラマーが交代し、Ken(アコースティック・ギター、ヴォーカル)、K.Ron(ギター)、Ajima(ギター)、Louis Inage(ベース)、Nishigori(ドラム、パーカッション)、Kummy(コーラス、パーカッション)、Tomoko Jett(コーラス、キーボード、こきりこ)の7人。
そして前作にも参加していたゲストのKo2Rock(サックス他)。
人海戦術。

録音はピース・ミュージックで、プロデュースはバンドと中村宗一郎。
エンジニアも中村が担当している。

1stアルバム『IN THE STORMY NIGHT』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201903article_18.html)に較べてグッとR&R度を増していた『SECOND TRIPS』だったが。
今回は更にR&R色を強めた感がある。
タイトル曲をはじめとして、速い曲では前作以上の勢いで突っ走る。
1分半しかない疾走曲「Anaconda」のギター・ソロの終わりのフレーズがBLUE OYSTER CULT「The Red & The Black」みたいだったり。

そんな中でも「Take A Break On A Southern Island(南の島で一服)」は曲名通りトロピカルにして、女性コーラスにはやっぱりというかT.REXっぽさを感じたり。
(前作にもT.REXっぽい曲はあった)
速い曲もミドルの曲も、基本ポップ。

全9曲中8曲がKenの作詞・作曲だが。
唯一共作となっている「Model Girl」…コレはKenによれば、彼が高校生の時にやっていたバンドの曲だという。
そのバンドでは、なんとアルファレコードでデモを録ったことがあったのだそうで。
その話が進んでいたら、KenはPSF界隈とかじゃなくて、10代でメジャーからデビューしていたかも知れんのだ。
実際にはメンバーの親が「受験だからやめさせてくれ」と言ってきて、話は流れてしまったとか…。

「Alabindian(アラブのインディアン)」とか、英語と日本語のタイトルが併記されているのは前作まで同様。
歌詞の言葉遣いに女性的な部分が見られるのもね。
楽しくて痛快なアルバムです。
我が家ではヘヴィ・ローテーション中。

正式なリリース日が決まっているワケではないということだが、レコ発ライヴは21日(土)、東高円寺U.F.O.CLUBで、もちろんそこでは販売されるとのこと。
残念ながら俺は行けそうにないけど…。
THE STRANGE MOONの活動だけでなく、最近はなんとMARBLE SHEEPでのライヴも再開しているKen、老いて(?)なお盛ん。
このまま死ぬまでロックでお願いします。

The Skarlets/Diamond Tears Tales

Skarlets Diamond Tears Tales.jpg1980年に少数がリリースされ、2020年にCD化されるまで幻の存在だった、東京ニュー・ウェイヴ/ポスト・パンク系オムニバス『都市通信』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202002article_15.html)…のトップを飾っていたSynchronize。
…の後身バンド・The Skarletsは90年に活動を停止していたが。
しかし彼らは『都市通信』がCD化された20年に活動を再開し。
昨年34年ぶり(!)の新作音源である12inch EP「hug」をリリース。
https://lsdblog.seesaa.net/article/498720012.html
そのSkarletsが、87年にSynchronizeから改名してSkarletsとなってから実に37年にして(!)初のアルバムを完成させた。

現在のメンバーは「hug」と同じ、白石未来夫(ヴォーカル)、野本健司(ギター:元NON BAND他)、橋本由香里(ベース)、久野(横田)尚美(キーボード)、小暮義雄(ドラム)の5人。
白石、久野、小暮が『都市通信』当時の、野本、橋本が1990年当時のメンバー。
彼らはこの11月の時点で60~71歳(!)という。
しかし90年にアイディアだけあったらしい「Original Hour」を除く全曲が活動再開後の新曲で、「hug」にも収録された「Off World」のリミックスを除く全曲が「hug」録音以降(昨年夏)に新たに録音されたモノ、とのこと。

印象としてはやはり「hug」の延長線上にある音…というだけではなく。
エレポップ風なサウンドと無機質な感じのヴォーカルをフィーチュアしたSynchronize時代に較べると、というか…いや、ピアノだけでなくバスーンやオーボエやチェロやバグパイプなども突っ込んで、「hug」以上にオーガニックな感触。
そこに、「hug」よりも更に肉感的になった、と感じさせる白石未来夫のヴォーカルが乗る。
60~70代のメンバーによる、とは思えないほど、どうかすると「hug」以上に瑞々しい歌唱とサウンド。
白石のヴォーカルが時に激する(と言うほどではないのかも知れない)のだが、そのタイミングが非常に独特で、個人的にはかつて「イカ天」で「どうしてそこで盛り上がるのかわからない」と評された、たまの石川浩司のセンスに近いモノを感じたり。

あと、「Clearnize Dance」の歌詞に”データ”とか”起動”といったいかにも(?)デジタルっぽい言葉が出てくるのだが。
やはりと言うべきなのか、デジタルネイティヴな若い世代とはまるで違った、デジタル的/ICT的な諸々に対する昭和生まれならではの(?)独特な距離感の様なモノを感じるのは、多分俺だけではないのでは、と思う。
ちょっと昭和のレトロ・フューチャーっぽい感覚とでもいうか。
『都市通信』がリリースされた1980年にテレビ電話(Zoomやスカイプなどがあるとはいえ、結局スマホの世でメインとなってはいない)を歌ったFILMSの名曲「T.V.Phone Age」なんかを思い出したりも。
(あるいは同じ80年に日本青年館で”俺はデータが欲しい”と歌ったPANTA & HALに通じると言ってもイイかも知れない)

ともあれ凄くいいアルバムです。
(個人的には年間ベスト候補に入るレベル)
興味を持った人は是非聴いてみてください。


『都市通信』参加組の中で近年もアクティヴであるNON BANDやThe Skarletsのライヴを観る機会は、仕事が忙しいこともあってなかなか巡ってこない。
それでもいつかは、と思う。
いつまでも生きてられんしなあ。


『Diamond Tears Tales』、15日リリース。

SMALLTOWN TIGERS/CRUSH ON YOU

SMALLTOWN TIGERS.jpg2月のリリース。
9月に入手。
先月まで聴けず。

イタリア北東部のリミニという街から登場した女性トリオ、1stフルアルバム。
音源も出していない2019年に、早くも英国ツアーをやったんだそうで。
コロナ禍の20年にミニアルバム『FIVE THINGS』でデビューしている。
今回の『CRUSH ON YOU』も10曲で25分しかないので、ひょっとしたら1stフルアルバムじゃなくて2ndミニアルバムなのかも知れない。
俺が持っているのはCDだが、限定300枚ナンバリング入りのLPも出ているという。

メンバーは(多分)ジャケット左から、モンティ(ギター、ヴォーカル)、デボラ・ヴァリ(ヴォーカル、ベース)、カステル(ドラム、ヴォーカル)…だと思う。
それぞれにデザインの違う、ストライプのコスチューム。
プロデューサーのスティーヴ・カンタレッリもピアノなどで録音に参加している。

バンドはヴァリとモンティの二人で結成され、カステルはあとから加わったとのこと。
結成当初はRAMONESのコピーからスタートしたという。
RAMONES以外にもTHE B-52'sやJOAN JETT &THE BLACKHEARTSなんかの影響を受けているとか。
”メジャー・ハイプなしのTHE DONNAS”とか、”イイ曲があるTHE RUNAWAYS”とか、けっこう勇ましいキャッチフレーズを標榜している。
パンクのルーツとグラムのアティテュードをミックスした、とも語っているが、グラムのアティテュードって何だ?

ともあれサウンドは上に書いてきたようなことから想像出来るパンク/ガレージ/R&R。
全体的にRAWで直線的な演奏だけど、「I Want You」では突っ走る前半からサビでいきなりテンポ・チェンジしたりも。
ラストの「Killed Myself When I Was Young」では途中からゲストのサックスが斬り込む。
コレはTHE STOOGESの『FUN HOUSE』やTHE DAMNEDの『MUSIC FOR PLEASURE』あたりが頭にあったのかも知れない。
実際にこのバンドはDAMNEDのイタリア・ツアーをサポートしたそうで、”THE LOVERS”と題されたサンクス・リストにはDAMNEDの現メンバー全員の名前が載っている。

とりあえず勢いがあってよろしい。
今後にも期待。

LARRY WALLIS/POLICE CAR: THE ANTHOLOGY

LARRY WALLIS.jpg8月2日リリースだったが、DISK UNION行ってもAmazon見ても何処にも在庫がなく。
国内有数のMOTORHEAD研究者・長谷川修平くんに教えてもらって、1ヵ月遅れでようやく入手。
超ヘヴィ・ローテーション中。

2017年の『THE SOUND OF SPEED』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201708article_14.html)以来7年ぶりとなる、ラリー・ウォリスの編集盤。
今回の内容も『THE SOUND OF SPEED』とかなり重複しているが、10曲しか入っていなかった『THE SOUND OF SPEED』が基本的にレア音源集だったのに対して、ボーナス・トラック含め19曲収録の今回のリリースは、ある程度はタイトル通りアンソロジー/ベストと言えるモノだろう。
リミックス/リマスターにはクレオパトラ・レコーズでは御馴染み、ユルゲン・エングラー(DIE KRUPPS)が関わっている。

ラリー・ウォリスのソロとして代表曲中の代表曲「Police Car」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202001article_10.html)からスタート。
実質PINK FAIRIESな編成による1986年のシングルA・B面「Leather Forever」「Seeing Double」ももちろん収録。
「MC5 Japan」の赤川夕起子さんによれば、「Old Enuff To Know Better」は、元々ラリーが存命中のレミーに歌ってもらいたいと作ったデモだったとか。

最も古い音源はボーナス・トラックのSHAGRAT「Amanda」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201902article_12.html)で、1971年録音のはず。
スティーヴ”ペレグリン”トゥックのヴォーカルとラリー・ウォリスのベースが聴ける。
しかしこのアルバムに入れるんだったら、シングル「Amanda」のB面だったエレクトリックな「Peppermint Flickstick」(70年録音、ラリーはギター)の方が良かったのでは、と思う。
スティーヴ・トゥック名義の「Scorpius」は、95年にリリースされた発掘音源『THE MISSING LINK TO TYRANNOSAURUS REX』から。
そして最後はUFO『FLYING』収録曲の、ラリー在籍時のライヴ音源「Silver Bird」。

問題は、クレジットが最小限で、詳細なところが不明ということだろう。
ネットを見ると「Story Of My Life」(元々はDr.FEELGOODに提供されるはずが没になり、スティッフ・レコーズでお蔵入りになったラリー・ウォリスのソロに入るはずだった曲)「Don't Fuck With Dimitri」「Mrs Hippy Burning」「Where The Freaks Hang Out」「Meatman」(これらは元々2001年のソロ・アルバム『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』収録だった曲)、「I Love You So You're Mine」(元々Dr.FEELGOOD用に書き下ろしたが没になった、LOVE PIRATES OF DOOMのレパートリー)の6曲にルーカス・フォックス(ドラム)参加となっている。
これらは、リミックスに際してルーカスのドラムに差し替えられたのか?
(何しろCDにはルーカスどころか録音メンバーのクレジットが一切ない)
現時点では既発の音源と聴き較べてもおらず、よくわからんのだが。
やっぱりクレオパトラの仕事と言うべきか…。
(あと、裏ジャケットとトレイのラリーの写真は間違いなく裏焼き)

ともあれ、「Police Car」をはじめとして、ホーンズのような独特の鳴りを持つ豪快なギター、歌いっぱなしの個性的なヴォーカルを堪能出来る。
しかもルーカス・フォックスの演奏が6曲もフィーチュアされているのなら、「うおおおそれはつまり初代MOTORHEADの3分の2ではないですか!」とエキサイトする俺みたいなの(笑)、世界中にけっこういるはずだ。

ただし、コレではまだラリー・ウォリスの”真のアンソロジー”にはならないだろう。
本来ならPINK FAIRIESのオリジナル・アルバムの楽曲やスティッフのシングル「Between The Lines」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201902article_6.html)、そしてMOTORHEAD『ON PAROLE』からの楽曲なども収録されなければイカンはずだ。
クレオパトラじゃなくてエイスあたりでもっとちゃんとしたの作ってくれないかなあ。
(いや、コレはコレでナイスだけどさ)

MoritaSaki in the pool/MIRROR'S EDGE

MoritaSaki in the pool.jpg2021年に京都で結成された若いバンド、MoritaSaki in the pool。
9月18日にリリースされる1stアルバム『Love Is Over!』に先行する配信シングル。

メンバーはイシハラリク(ギター、ヴォーカル)、ヘイケナツミ(ベース、ヴォーカル)、ニノミヤタイガ(ギター)、シバタマキ(ドラム)の4人。
…モリタサキがいないじゃねえか!(苦笑)
”モリタサキ”はイシハラの実在の友人だが、メンバーではなく、名前だけ借りているのだという.
イシハラがよくプールに行ってプールサイドで曲を作るのは事実らしい。

いわゆるシューゲイズ・ポップということになると思う。
インディー・ポップ的なダンサブルなビートに、耳に痛くない透明感のある轟音ギター。
そこに爽やかなような切ないような男女ツイン・ヴォーカルがふわりと乗る。
ノイズ混じりのぼんやりした画面の中でメンバー4人がひたすら踊り続けるMVも、キュートで楽しげなようで何処か切なげ。

既発の音源もチェックしてみたけど、どれもメロディがポップでキャッチー。
コレは人気出るんじゃないでしょうか。

…と思ったら、既にかなり注目されているようで。
アルバム・リリースに先立つ9月6日(金)には、祇園にあるアニエスベーの店舗で開催される2024年秋冬コレクション「Collection Preview」に出演して、ライヴ(アコースティック)を披露するのだという。
(やっぱりおしゃれロックはアニエスベーに向かうのか―)


「MIRROR'S EDGE」、本日より配信スタート。

明日の叙景/コバルトの降る街

明日の叙景.png昨年のBorisのヨーロッパ/UKツアーに帯同したことで知られるポスト・ブラック・メタル・バンド、明日の叙景。
2022年の2ndアルバム『アイランド』以来となる新音源は配信シングル。

布大樹(ヴォーカル)、等力桂(ギター)、関拓也(ベース)、齊藤誠也(ドラム)の4人組。
俺はこのバンドをよく知らず(バンド名も”あしたのじょけい”かと思ったら”あすのじょけい”だった…)、今回初めて音を聴いたんだけど、2014年結成でもう10年選手なんですってね。

『アイランド』の全曲演奏ライヴは東京・大阪ともに完売。
香港と韓国でのライヴも即日完売。
この6月には6年ぶりに中国をツアーして、上海公演はコレも完売だったそうで。
えらく人気あるのねえ。

ジャケットの左右が余白、真ん中に縦長に写真を配したデザインは…そうかコレ、短冊型CDシングルを模しているのか。
ブラスト・ビートをぶっ込んだ激烈な演奏と、まさにブラック・メタルな叫喚系ヴォーカル…なんだけど、ヴィジュアル系とJ-POPが不可分に練り込まれているのだった。
インディー・ロックとかギター・ポップとかの成分も微妙に混ぜてあるように聴こえる。
…と思ったらギターには9mm Parabellum Bulletの影響があるんだそうで。
(やっぱりそのへんか…)
途中で「後生大事にしておくほどの…感傷じゃない」なんて台詞も入ったりして。

このブログでもブラック・メタル/ポスト・ブラックは幾つか紹介してきたけど。
(10年ぐらい前ね、最近は全然だが)
明日の叙景はブラック・メタルの変種というよりも、ブラック・メタルとJ-POPをベースにしつつ、ただの融合じゃなくて名状し難い別の何か、になっている気もする。
ともあれかなりのインパクト。

21日より配信中。

BAROCK PROJECT/TIME VOYAGER

BAROCK PROJECT.jpg現在発売中のEURO-ROCK PRESS Vol.101(https://lsdblog.seesaa.net/article/503499405.html)の表紙も飾っている、21世紀のイタリアが世界に誇る現行プログレ・バンドの雄、BAROCK PROJECT、前作『SEVEN SEAS』(2019年)から5年ぶりとなる7thアルバム。
国内盤は今日発売で、今日1日コレばかり聴いているという人もいるかも知れないし、先に出た輸入盤で聴きまくっていた人もいるかも知れない。

メンバーはルカ・ザッビーニ(キーボード、ギター、ベース、ブズーキ、ヴォーカル)、エリック・オムベッリ(ドラム、ブズーキ、ギター、ヴォーカル)、マルコ・マッツォッコーロ(ギター)、アレックス・マーリ(ヴォーカル)、フランチェスコ・カリエンド(ベース)という、前作と同じ5人。
作詞はメンバーではなく、アントニオ・デ・サルノとジョルジョ・フランチェスケッティの二人が担当。
そしてアレッサンドロ・ボネッティ(ヴァイオリン)とマヌエル・カリウミ(サックス)の二人がゲスト参加し、それぞれ印象的なプレイで貢献している。

タイトル通り、時を経巡る旅をテーマとするコンセプト・アルバム。
しかし、歌詞を読む分にはトータルな物語性などはあまり感じられず、さまざまな題材の多彩な楽曲(3分半のボーナス・トラックを除き、4~8分台)が詰め込まれている。

イタリアが世界に誇る…と書いたが、聴いている分には特にイタリアっぽさを意識することはない。
曲名も歌詞もすべて英語だし、70年代のイタリアのバンドに顕著だった土着性とか濃さみたいなモノがあまり感じられないからだ。
むしろ、トラディショナルっぽいメロディやアレンジが聴かれる部分では、イタリアよりも英国プログレに近いモノを感じる。
一方で70年代のブリティッシュ・ロックのような重厚さや鬱蒼とした感じがなく、スケール感がありつつもカラッと抜けが良いのは、やはり21世紀の若いバンド。
最も長い曲が8分ちょっとということからしても、ゴリゴリのプログレ・ファンだけでなく、現行の他のジャンルのロック・バンドを聴いている層にも充分にアピールする音だと思う。

もちろん、比較的コンパクトな曲の中に、プログレらしい複雑さとテクニカルさが詰まってもいる。
アレックス・マーリのエモーショナルなヴォーカルに加えて、ルカ・ザッビーニとエリック・オムベッリの二人もリード・ヴォーカルが取れるというヴォーカリスト3枚看板もナイス。
ライナーノーツの指摘通り、先日来日して素晴らしいステージを見せてくれたスウェーデンのMOON SAFARI(https://lsdblog.seesaa.net/article/503469182.html)、そして英国のBIG BIG TRAINと並ぶ、現行プログレッシヴ/シンフォニック・ロックの”御三家”と呼ぶにふさわしい力作。

未聴の人は、ボーナス・トラック収録の国内盤を是非。