The Skarlets/Diamond Tears Tales

Skarlets Diamond Tears Tales.jpg1980年に少数がリリースされ、2020年にCD化されるまで幻の存在だった、東京ニュー・ウェイヴ/ポスト・パンク系オムニバス『都市通信』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202002article_15.html)…のトップを飾っていたSynchronize。
…の後身バンド・The Skarletsは90年に活動を停止していたが。
しかし彼らは『都市通信』がCD化された20年に活動を再開し。
昨年34年ぶり(!)の新作音源である12inch EP「hug」をリリース。
https://lsdblog.seesaa.net/article/498720012.html
そのSkarletsが、87年にSynchronizeから改名してSkarletsとなってから実に37年にして(!)初のアルバムを完成させた。

現在のメンバーは「hug」と同じ、白石未来夫(ヴォーカル)、野本健司(ギター:元NON BAND他)、橋本由香里(ベース)、久野(横田)尚美(キーボード)、小暮義雄(ドラム)の5人。
白石、久野、小暮が『都市通信』当時の、野本、橋本が1990年当時のメンバー。
彼らはこの11月の時点で60~71歳(!)という。
しかし90年にアイディアだけあったらしい「Original Hour」を除く全曲が活動再開後の新曲で、「hug」にも収録された「Off World」のリミックスを除く全曲が「hug」録音以降(昨年夏)に新たに録音されたモノ、とのこと。

印象としてはやはり「hug」の延長線上にある音…というだけではなく。
エレポップ風なサウンドと無機質な感じのヴォーカルをフィーチュアしたSynchronize時代に較べると、というか…いや、ピアノだけでなくバスーンやオーボエやチェロやバグパイプなども突っ込んで、「hug」以上にオーガニックな感触。
そこに、「hug」よりも更に肉感的になった、と感じさせる白石未来夫のヴォーカルが乗る。
60~70代のメンバーによる、とは思えないほど、どうかすると「hug」以上に瑞々しい歌唱とサウンド。
白石のヴォーカルが時に激する(と言うほどではないのかも知れない)のだが、そのタイミングが非常に独特で、個人的にはかつて「イカ天」で「どうしてそこで盛り上がるのかわからない」と評された、たまの石川浩司のセンスに近いモノを感じたり。

あと、「Clearnize Dance」の歌詞に”データ”とか”起動”といったいかにも(?)デジタルっぽい言葉が出てくるのだが。
やはりと言うべきなのか、デジタルネイティヴな若い世代とはまるで違った、デジタル的/ICT的な諸々に対する昭和生まれならではの(?)独特な距離感の様なモノを感じるのは、多分俺だけではないのでは、と思う。
ちょっと昭和のレトロ・フューチャーっぽい感覚とでもいうか。
『都市通信』がリリースされた1980年にテレビ電話(Zoomやスカイプなどがあるとはいえ、結局スマホの世でメインとなってはいない)を歌ったFILMSの名曲「T.V.Phone Age」なんかを思い出したりも。
(あるいは同じ80年に日本青年館で”俺はデータが欲しい”と歌ったPANTA & HALに通じると言ってもイイかも知れない)

ともあれ凄くいいアルバムです。
(個人的には年間ベスト候補に入るレベル)
興味を持った人は是非聴いてみてください。


『都市通信』参加組の中で近年もアクティヴであるNON BANDやThe Skarletsのライヴを観る機会は、仕事が忙しいこともあってなかなか巡ってこない。
それでもいつかは、と思う。
いつまでも生きてられんしなあ。


『Diamond Tears Tales』、15日リリース。

SMALLTOWN TIGERS/CRUSH ON YOU

SMALLTOWN TIGERS.jpg2月のリリース。
9月に入手。
先月まで聴けず。

イタリア北東部のリミニという街から登場した女性トリオ、1stフルアルバム。
音源も出していない2019年に、早くも英国ツアーをやったんだそうで。
コロナ禍の20年にミニアルバム『FIVE THINGS』でデビューしている。
今回の『CRUSH ON YOU』も10曲で25分しかないので、ひょっとしたら1stフルアルバムじゃなくて2ndミニアルバムなのかも知れない。
俺が持っているのはCDだが、限定300枚ナンバリング入りのLPも出ているという。

メンバーは(多分)ジャケット左から、モンティ(ギター、ヴォーカル)、デボラ・ヴァリ(ヴォーカル、ベース)、カステル(ドラム、ヴォーカル)…だと思う。
それぞれにデザインの違う、ストライプのコスチューム。
プロデューサーのスティーヴ・カンタレッリもピアノなどで録音に参加している。

バンドはヴァリとモンティの二人で結成され、カステルはあとから加わったとのこと。
結成当初はRAMONESのコピーからスタートしたという。
RAMONES以外にもTHE B-52'sやJOAN JETT &THE BLACKHEARTSなんかの影響を受けているとか。
”メジャー・ハイプなしのTHE DONNAS”とか、”イイ曲があるTHE RUNAWAYS”とか、けっこう勇ましいキャッチフレーズを標榜している。
パンクのルーツとグラムのアティテュードをミックスした、とも語っているが、グラムのアティテュードって何だ?

ともあれサウンドは上に書いてきたようなことから想像出来るパンク/ガレージ/R&R。
全体的にRAWで直線的な演奏だけど、「I Want You」では突っ走る前半からサビでいきなりテンポ・チェンジしたりも。
ラストの「Killed Myself When I Was Young」では途中からゲストのサックスが斬り込む。
コレはTHE STOOGESの『FUN HOUSE』やTHE DAMNEDの『MUSIC FOR PLEASURE』あたりが頭にあったのかも知れない。
実際にこのバンドはDAMNEDのイタリア・ツアーをサポートしたそうで、”THE LOVERS”と題されたサンクス・リストにはDAMNEDの現メンバー全員の名前が載っている。

とりあえず勢いがあってよろしい。
今後にも期待。

LARRY WALLIS/POLICE CAR: THE ANTHOLOGY

LARRY WALLIS.jpg8月2日リリースだったが、DISK UNION行ってもAmazon見ても何処にも在庫がなく。
国内有数のMOTORHEAD研究者・長谷川修平くんに教えてもらって、1ヵ月遅れでようやく入手。
超ヘヴィ・ローテーション中。

2017年の『THE SOUND OF SPEED』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201708article_14.html)以来7年ぶりとなる、ラリー・ウォリスの編集盤。
今回の内容も『THE SOUND OF SPEED』とかなり重複しているが、10曲しか入っていなかった『THE SOUND OF SPEED』が基本的にレア音源集だったのに対して、ボーナス・トラック含め19曲収録の今回のリリースは、ある程度はタイトル通りアンソロジー/ベストと言えるモノだろう。
リミックス/リマスターにはクレオパトラ・レコーズでは御馴染み、ユルゲン・エングラー(DIE KRUPPS)が関わっている。

ラリー・ウォリスのソロとして代表曲中の代表曲「Police Car」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202001article_10.html)からスタート。
実質PINK FAIRIESな編成による1986年のシングルA・B面「Leather Forever」「Seeing Double」ももちろん収録。
「MC5 Japan」の赤川夕起子さんによれば、「Old Enuff To Know Better」は、元々ラリーが存命中のレミーに歌ってもらいたいと作ったデモだったとか。

最も古い音源はボーナス・トラックのSHAGRAT「Amanda」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201902article_12.html)で、1971年録音のはず。
スティーヴ”ペレグリン”トゥックのヴォーカルとラリー・ウォリスのベースが聴ける。
しかしこのアルバムに入れるんだったら、シングル「Amanda」のB面だったエレクトリックな「Peppermint Flickstick」(70年録音、ラリーはギター)の方が良かったのでは、と思う。
スティーヴ・トゥック名義の「Scorpius」は、95年にリリースされた発掘音源『THE MISSING LINK TO TYRANNOSAURUS REX』から。
そして最後はUFO『FLYING』収録曲の、ラリー在籍時のライヴ音源「Silver Bird」。

問題は、クレジットが最小限で、詳細なところが不明ということだろう。
ネットを見ると「Story Of My Life」(元々はDr.FEELGOODに提供されるはずが没になり、スティッフ・レコーズでお蔵入りになったラリー・ウォリスのソロに入るはずだった曲)「Don't Fuck With Dimitri」「Mrs Hippy Burning」「Where The Freaks Hang Out」「Meatman」(これらは元々2001年のソロ・アルバム『DEATH IN THE GUITARFTERNOON』収録だった曲)、「I Love You So You're Mine」(元々Dr.FEELGOOD用に書き下ろしたが没になった、LOVE PIRATES OF DOOMのレパートリー)の6曲にルーカス・フォックス(ドラム)参加となっている。
これらは、リミックスに際してルーカスのドラムに差し替えられたのか?
(何しろCDにはルーカスどころか録音メンバーのクレジットが一切ない)
現時点では既発の音源と聴き較べてもおらず、よくわからんのだが。
やっぱりクレオパトラの仕事と言うべきか…。
(あと、裏ジャケットとトレイのラリーの写真は間違いなく裏焼き)

ともあれ、「Police Car」をはじめとして、ホーンズのような独特の鳴りを持つ豪快なギター、歌いっぱなしの個性的なヴォーカルを堪能出来る。
しかもルーカス・フォックスの演奏が6曲もフィーチュアされているのなら、「うおおおそれはつまり初代MOTORHEADの3分の2ではないですか!」とエキサイトする俺みたいなの(笑)、世界中にけっこういるはずだ。

ただし、コレではまだラリー・ウォリスの”真のアンソロジー”にはならないだろう。
本来ならPINK FAIRIESのオリジナル・アルバムの楽曲やスティッフのシングル「Between The Lines」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201902article_6.html)、そしてMOTORHEAD『ON PAROLE』からの楽曲なども収録されなければイカンはずだ。
クレオパトラじゃなくてエイスあたりでもっとちゃんとしたの作ってくれないかなあ。
(いや、コレはコレでナイスだけどさ)

MoritaSaki in the pool/MIRROR'S EDGE

MoritaSaki in the pool.jpg2021年に京都で結成された若いバンド、MoritaSaki in the pool。
9月18日にリリースされる1stアルバム『Love Is Over!』に先行する配信シングル。

メンバーはイシハラリク(ギター、ヴォーカル)、ヘイケナツミ(ベース、ヴォーカル)、ニノミヤタイガ(ギター)、シバタマキ(ドラム)の4人。
…モリタサキがいないじゃねえか!(苦笑)
”モリタサキ”はイシハラの実在の友人だが、メンバーではなく、名前だけ借りているのだという.
イシハラがよくプールに行ってプールサイドで曲を作るのは事実らしい。

いわゆるシューゲイズ・ポップということになると思う。
インディー・ポップ的なダンサブルなビートに、耳に痛くない透明感のある轟音ギター。
そこに爽やかなような切ないような男女ツイン・ヴォーカルがふわりと乗る。
ノイズ混じりのぼんやりした画面の中でメンバー4人がひたすら踊り続けるMVも、キュートで楽しげなようで何処か切なげ。

既発の音源もチェックしてみたけど、どれもメロディがポップでキャッチー。
コレは人気出るんじゃないでしょうか。

…と思ったら、既にかなり注目されているようで。
アルバム・リリースに先立つ9月6日(金)には、祇園にあるアニエスベーの店舗で開催される2024年秋冬コレクション「Collection Preview」に出演して、ライヴ(アコースティック)を披露するのだという。
(やっぱりおしゃれロックはアニエスベーに向かうのか―)


「MIRROR'S EDGE」、本日より配信スタート。

明日の叙景/コバルトの降る街

明日の叙景.png昨年のBorisのヨーロッパ/UKツアーに帯同したことで知られるポスト・ブラック・メタル・バンド、明日の叙景。
2022年の2ndアルバム『アイランド』以来となる新音源は配信シングル。

布大樹(ヴォーカル)、等力桂(ギター)、関拓也(ベース)、齊藤誠也(ドラム)の4人組。
俺はこのバンドをよく知らず(バンド名も”あしたのじょけい”かと思ったら”あすのじょけい”だった…)、今回初めて音を聴いたんだけど、2014年結成でもう10年選手なんですってね。

『アイランド』の全曲演奏ライヴは東京・大阪ともに完売。
香港と韓国でのライヴも即日完売。
この6月には6年ぶりに中国をツアーして、上海公演はコレも完売だったそうで。
えらく人気あるのねえ。

ジャケットの左右が余白、真ん中に縦長に写真を配したデザインは…そうかコレ、短冊型CDシングルを模しているのか。
ブラスト・ビートをぶっ込んだ激烈な演奏と、まさにブラック・メタルな叫喚系ヴォーカル…なんだけど、ヴィジュアル系とJ-POPが不可分に練り込まれているのだった。
インディー・ロックとかギター・ポップとかの成分も微妙に混ぜてあるように聴こえる。
…と思ったらギターには9mm Parabellum Bulletの影響があるんだそうで。
(やっぱりそのへんか…)
途中で「後生大事にしておくほどの…感傷じゃない」なんて台詞も入ったりして。

このブログでもブラック・メタル/ポスト・ブラックは幾つか紹介してきたけど。
(10年ぐらい前ね、最近は全然だが)
明日の叙景はブラック・メタルの変種というよりも、ブラック・メタルとJ-POPをベースにしつつ、ただの融合じゃなくて名状し難い別の何か、になっている気もする。
ともあれかなりのインパクト。

21日より配信中。

BAROCK PROJECT/TIME VOYAGER

BAROCK PROJECT.jpg現在発売中のEURO-ROCK PRESS Vol.101(https://lsdblog.seesaa.net/article/503499405.html)の表紙も飾っている、21世紀のイタリアが世界に誇る現行プログレ・バンドの雄、BAROCK PROJECT、前作『SEVEN SEAS』(2019年)から5年ぶりとなる7thアルバム。
国内盤は今日発売で、今日1日コレばかり聴いているという人もいるかも知れないし、先に出た輸入盤で聴きまくっていた人もいるかも知れない。

メンバーはルカ・ザッビーニ(キーボード、ギター、ベース、ブズーキ、ヴォーカル)、エリック・オムベッリ(ドラム、ブズーキ、ギター、ヴォーカル)、マルコ・マッツォッコーロ(ギター)、アレックス・マーリ(ヴォーカル)、フランチェスコ・カリエンド(ベース)という、前作と同じ5人。
作詞はメンバーではなく、アントニオ・デ・サルノとジョルジョ・フランチェスケッティの二人が担当。
そしてアレッサンドロ・ボネッティ(ヴァイオリン)とマヌエル・カリウミ(サックス)の二人がゲスト参加し、それぞれ印象的なプレイで貢献している。

タイトル通り、時を経巡る旅をテーマとするコンセプト・アルバム。
しかし、歌詞を読む分にはトータルな物語性などはあまり感じられず、さまざまな題材の多彩な楽曲(3分半のボーナス・トラックを除き、4~8分台)が詰め込まれている。

イタリアが世界に誇る…と書いたが、聴いている分には特にイタリアっぽさを意識することはない。
曲名も歌詞もすべて英語だし、70年代のイタリアのバンドに顕著だった土着性とか濃さみたいなモノがあまり感じられないからだ。
むしろ、トラディショナルっぽいメロディやアレンジが聴かれる部分では、イタリアよりも英国プログレに近いモノを感じる。
一方で70年代のブリティッシュ・ロックのような重厚さや鬱蒼とした感じがなく、スケール感がありつつもカラッと抜けが良いのは、やはり21世紀の若いバンド。
最も長い曲が8分ちょっとということからしても、ゴリゴリのプログレ・ファンだけでなく、現行の他のジャンルのロック・バンドを聴いている層にも充分にアピールする音だと思う。

もちろん、比較的コンパクトな曲の中に、プログレらしい複雑さとテクニカルさが詰まってもいる。
アレックス・マーリのエモーショナルなヴォーカルに加えて、ルカ・ザッビーニとエリック・オムベッリの二人もリード・ヴォーカルが取れるというヴォーカリスト3枚看板もナイス。
ライナーノーツの指摘通り、先日来日して素晴らしいステージを見せてくれたスウェーデンのMOON SAFARI(https://lsdblog.seesaa.net/article/503469182.html)、そして英国のBIG BIG TRAINと並ぶ、現行プログレッシヴ/シンフォニック・ロックの”御三家”と呼ぶにふさわしい力作。

未聴の人は、ボーナス・トラック収録の国内盤を是非。

NIGHTRAGE/REMAINS OF A DEAD WORLD

NIGHTRAGE.jpg今やフィンランドと並ぶメタル大国(?)ギリシャ出身のメロディック・デス・メタル・バンドによる10thアルバム。

90年代からギリシャで活動していたメロディック・デス・メタル・バンドEXHUMATIONのギタリストだったマリオス・イリオポウロスが、2000年6月にあのガス・G(ギター)と結成したバンド。
間もなくスウェーデンに拠点を移し、03年にアルバム・デビュー。
05年には2ndアルバムをリリースしているが、06年3月にFIREWINDの活動が忙しくなったガスが脱退するなど、メンバー交代は頻繁。
(オリジナル・メンバーはすぐにマリオス一人となった)
それでも活動自体に滞りはなく、11年9月に5thアルバムをリリースして、その後北米ツアーも行ない、13年11月には初来日を果たす。
19年の8thアルバム『WOLF TO MAN』が国内発売された時には、EURO-ROCK PRESS Vol.81(https://lsdblog.seesaa.net/article/201905article_27.html)で俺がレヴューを書いている。
その後22年2月には9thアルバム『ABYSS RISING』をリリースするも、14年に加入したロニー・ニーマン(ヴォーカル)が脱退し、18年から続いていたラインナップは4年しか持たなかった。
現在の編成はマリオス・イリオポウロス(ギター)、23年に参加したギリシャ人のコンスタンティノス・トガス(ヴォーカル)、マグナス・セーデルマン(ギター)、フランシスコ・エスカロナ(ベース)、ジョージ・スカモグラウ(ドラム)という、ギリシャ、スウェーデン、ベネズエラ出身のメンバーからなる多国籍バンドとなっている。

前任シンガーのロニー・ニーマンがクリーン・ヴォイスを一切使わないスクリーム一辺倒のスタイルだったためか、メタルコアに分類されることもあるバンドだが、リーダーのマリオス・イリオポウロス自身はオールド・スクールなメロディック・デス・メタルを意識している様子。
新ヴォーカリストのコンスタンティノス・トガスもクリーン・ヴォイスをあまり用いず、苛烈なグロウル/スクリーム主体ながら、やはりバンドの基本線は今もギターのクサメロを前面に出した古式ゆかしい(?)メロデスにこそあるのだろう。
(マリオスは「メタルコアじゃねえよ、勘弁してくれよ」とか思っているかも知れない)
実際、ヘヴィながらもドラマティックなリフと、時にギリシャらしい(?)エキゾチックなフレージング、そこにたま~に出てくるメロウなクリーン・ヴォイスが印象深いアクセントとなり、単なるメタルコアとは違った叙情や美旋律を聴かせるバンド。
老舗の看板を守りつつ、新章の始まりを感じさせる1枚。

『REMAINS OF A DEAD WORLD』、5日リリース。

死神紫郎/独白

死神紫郎 独白.jpgフォーク歌手にしてラッパーという、異色にもほどがある道を歩む死神紫郎。
前作『さよなら平成』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201911article_25.html)から約4年半ぶりとなる5thアルバム。
3月に配信リリースされていたが、この度CDでも出た。

これまでにこのブログで紹介した「冷蔵庫」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202205article_17.html)「神と紙」(https://lsdblog.seesaa.net/article/202209article_9.html)も含む全12曲。
「執念のラップもういっちょ」以外は外部のトラックメイカーからの提供を受けて、それらにラップを乗せている。
自作自演のシンガーソングライターだった死神紫郎は、「一度自分でも思いがけない方向に、おのれを放り込んでみたかったのです」と語る。

フォークのスタイルで出してきたアルバムでは、常に死を見つめ続け、ダークにして時にネガティヴとも取れる言葉の連なりの中になけなしの希望と生きる意志を浮かび上がらせてきた死神紫郎。
興味深いことに、ラップのスタイルで放たれる言葉の数々は今までになくダイレクトに、前向きな生きる意志を伝える。
”弱くたって生きちまえば価値は勝ちじゃねえか”(「超コノハチョウ」)
”弱いままで逞しく”(「独白」)
”何度でもやり直す生き直す”(「執念のラップもういっちょ」)
”いじいじしている暇などない 図々しいほどやってやっから”(「おのれの踊り」)
”反省だらけの半生まだやりたい 生きたい”(「眠ることで」)
”生きる意味なぞハナからないから 死んでたまるかリアル・サバイバル”(「リアル・サバイバル」)
本人は「ラップは韻というモノの弾みが世界を広げてくれる表現スタイルということに気づきました」と語っているが、実際死神紫郎の世界は新たな広がりを見せるようになった、と思う。
陰々滅々とした(?)『さよなら平成』にも聴かれた特有なユーモアのセンスは、ここでは当然ながら増量している。

個人的に一番気に入っているのは、死神紫郎本人がトラックを作った「執念のラップもういっちょ」。
本人によると思われるアコースティック・ギターをフィーチュアしたトラックは、他の曲に較べて正直素朴に過ぎ、素人臭くてスカスカなのだが。
フォーク歌手がラップにアプローチしたというバックグラウンドが、他の曲にない個性として光っている1曲、と思う。
(他の人が作ったトラックに委ねることで新たな個性を獲得しようとしたであろう死神紫郎には不本意な評価かも知れないけどね)

死神紫郎、次のアルバムはフォークだろうか、ラップだろうか。
いずれにしても期待しかない。
ともあれ2019年(ああ、コロナ禍の前だったんだなあ)の個人的なベスト10枚に入った前作同様、今回のアルバムもおススメです。
仕事が忙しくてこのアルバムに伴うインタヴューとかは出来なかったんだけど、死神紫郎にはいずれまた改めて話を聞きたいと思っている。


『独白』、15日リリース。

GUT EXPLOSION/HAPPY GUT DAY

GUT EXPLOSION.jpg以前一度だけライヴを観た”パーティー・ゴア・グラインド”バンドの1stアルバム。

メンバーはMochi(ヴォーカル)、Washin(ギター)、KAZUTO(ギター)、htpn(ベース)、Happening-T(ドラム)の5人。
裏ジャケットでは覆面などで顔を隠しているし、リズム・セクションはほとんど人名とも思えないようなステージネームだが、別に正体不明というワケではないらしく、インサートの内側では全員フツーに素顔をさらしている。
コスチュームは全員が赤ジャージで統一。
Mochiだけは白いタンクトップ(というかランニング)を着ている。

38分で17曲(+オープニング)も入っている。
ライヴを観た時にも思ったけど、”ゴア・グラインド”を標榜しているとはいえ、音楽的にはそんなにグラインドっぽいとも思えないようなヘヴィ・ロック。
(グラインドっぽいドラムは時々入る)
そこに、どうやって発声しているのか、ゴワーゴワーとかピーピーとかいう奇妙極まりないヴォーカルが乗る。
ヴォーカルというか、ヴォイスだね。
しかしブラック・メタルも「シャー!」としか聴こえないのに実際には歌詞があったりするから、このゴワーゴワーというのもひょっとしたら歌詞を歌っていたりするのかも知れない(?)。
曲名は「Cannibal Carnival」とか「Gutty Gore Show」とか、確かにゴア・グラインドっぽい。
いかにもな感じのジャケットのイラストは、ヴォーカルのMochiの手になるという。

むしろ”パーティー”の方に力点が置かれているのかと思う。
実際リフや曲調はヘヴィながらもキャッチーだし、以前観たライヴも盛り上がっていた。


13日より発売中。

THE MASTER PLAN/GRAND CRU

MASTER PLAN.jpg昨年6月のリリースだけど、今日入手したんで無理やり”今日の新譜”枠で紹介します。

アンディ・シャーノフ(ヴォーカル、ベース:THE DICTATORS)、キース・ストレング(ヴォーカル、ギター:THE FLESHTONES)、ポール・ジョンソン(ヴォーカル、ギター:元THE WAXING POETICS)、ビル・ミルハイザー(ドラム、ヴォーカル:FLESHTONES)という顔ぶれのちょっとしたスーパー・グループ、2010年の前作『MAXIMUM RESPECT』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_354.html)から実に13年ぶりの3rdアルバム…と言うにはちょっと微妙な1枚。
全13曲中、新曲は4曲のみで、残る9曲は04年の1stアルバム『COLOSSUS OF DESTINY』と『MAXIMUM RESPECT』から。
その2枚は既に廃盤になって久しいのだそうで、そこからの選曲に新曲を加えた編集盤的なアルバムがこの『GRAND CRU』。
旧曲もカート・ブロック(FASTBACKS)がマスタリングし直している。

新曲はTHE HOLLYWOOD FLAMESのカヴァー「Ooh Baby Ooh」(アルバムの最初と最後にアレンジ違いで2回入っている)と、FAMILY(!)のカヴァー「Second Generation Woman」、そしてキース・ストレングとアンディ・シャーノフが共作した「Master Plan」。
オリジナル曲はほとんど各メンバーが単独で書いて自分で歌っているこのバンドにあって、キースとアンディの共作でバンド名を冠した「Master Plan」なんて曲が入っているところに、このアルバムがお茶を濁す程度の新曲を加えた過去2作からのベスト盤などではない、というメンバーの宣言が聞こえてくるような気もする。
「Ooh Baby Ooh」には、THE FLESHTONESやスティーヴ・ウィンのアルバムに参加しているキーボーディスト、ジョシュ・カンターがゲスト参加。
それにしてもFAMILYのカヴァーとは…。

ともあれ新曲も旧曲もオリジナルもカヴァーも、THE DICTATORSよりもTHE FLESHTONESよりもルーツ・ミュージック色の強いこのバンドならではのご機嫌なガレージ/R&R。
元々DICTATORSのレパートリーだった「What's Up With That?」(『COLOSSUS OF DESTINY』収録曲)も、DICTATORSとは全然違うアレンジでナイスに聴かせる。

ジャケットはクリフ・モットのイラストで、同じデザインを拡大したポスターも付いている。
ただ問題なのは…ラム・バー・レコーズのリリースでは多いんだけど、盤を取り出してみたら、CD-Rなんだよコレが…。
ぼったくられたような気分になるのは残念。
(紙ジャケとかポスターとか、金かけるところが間違ってると思う)