F.K.U./THE HORROR AND THE METAL

F.K.U..jpgスウェーデンのホラー・メタル・バンド、前作から6年ぶりとなる6thアルバム。

F.K.U.。
バンド名は”Freddy Krueger's Underwear”の略だという(笑)。
ウプサラで最初に結成されたのは実に1987年で、当時はS.O.D.の影響を受けたクロスオーヴァーを演っていたそうだが、リハーサル数回のみで解散してしまったとのこと。
10年後の97年、ラリー・リーサル(ヴォーカル)を中心に再編。
99年に1stアルバム『METAL MOSHING MAD』をリリース。
しかし各メンバーが他にもバンドをやっていたため、活動のペースは鈍く、2ndアルバム『SOMETIMES THEY COME BACK…TO MOSH』がリリースされたのは2005年。
その後も3rdアルバム『WHERE MOSHERS DWELL』(09年)、4th『4: RISE OF THE MOSH MONGERS』(13年)、5th『1981』(17年)と、数年に1枚のペースでアルバムを出しながら現在に至る。
17年には来日も果たしたそうだけど、俺は今回のアルバムで初めて聴いた。
現在のメンバーはラリー・リーサル(ヴォーカル)、ピート・ストーアール(ギター)、パット・スプラット(ベース)という97年からの3人に、16年に加入したアンスピーカブル・エンプ(ドラム)。
うん、ナイスなルックスですね…。

略歴・ルックスの通り、クロスオーヴァー、スラッシュ・メタルにホラーやスプラッターやゾンビ映画の影響をまぶしたヘヴィ・メタル。
1stアルバムのタイトルが何処かで聞いたような気がする(笑)ことからも明らかなように、アメリカ西海岸のスラッシュよりかはS.O.D.とかANTHRAXとかの東海岸勢に共通するセンス。
ひしゃげた地声を中心に、グロウルからいかにも80年代風な(?)ハイトーンまでを行き来するラリー・リーサルのヴォーカルもナイス。
で、タイトル曲とか「(He Is)The Antichrist」とか「Harvester Of Horror」とか「Bringing Back The Dead」とか、いかにもなホラー・テイスト。
あとほとんどのアルバム・タイトルに”Mosh”という語が入っていて、本作にも「Some Kind Of Mosher」という曲があり、モッシュ出来るサウンドというのは初期からブレなく追及しているようだ。
非常に小気味よく気味悪い(笑)1枚です。

今後も活動ペースはゆっくりなのかも知れないが、ゾンビのようにしぶとく続けるに違いない。
『THE HORROR AND THE METAL』、本日リリース。

SPiRiTRiAL/SPiRiTRiAL 2023 edition

SPiRiTRiAL.jpg1998年に結成され、活動25周年を迎えた関東拠点のトリオ・SPiRiTRiAL。
(現編成は2016年からだが、バンド名通り3人組というのは堅持されている)
彼らが19年に5年ぶりの2ndアルバムとしてリリースし、当時EURO-ROCK PRESS Vol.83(https://lsdblog.seesaa.net/article/201912article_2.html)でも紹介した『SPiRiTRiAL』…が、”新装盤”として新たにリリースされた。

オリジナル・リリースから既に4年。
このタイミングで純然たる新作アルバムではなく、何故前作の新装盤なのか…というのは、いろいろ事情などもあるのだと思う。
(25年でアルバム2枚とは相当な寡作…)
ともあれ現編成での初のアルバムとして、堂々のセルフ・タイトル作だった『SPiRiTRiAL』に対する、メンバーの並々ならぬ思い入れ…は間違いなく絶大だったはず。
(”今日の再発・発掘音源”ではなく敢えて”今日の新譜”枠で紹介します)

現在のラインナップはTakeaki Itoh(ヴォーカル、ベース、キーボード、プログラミング)、Takehito Katsuya(ドラム:元・上弦の月)、Masaru Maruoka(ギター)の3人。
唯一のオリジナル・メンバーであるTakeaki ItohはFENCE OF DEFENCEとグレン・ヒューズを敬愛しているということだが、それはこのアルバムを聴けば即座に了解出来る。
で、今回は11曲入りだったオリジナル・ヴァージョンに序曲「Overture」(そのまんまのタイトル)と、ボーナス・トラックとしてアルバム収録曲「Firefly」のアコースティック・ヴァージョンを加えた全13曲。
更に、各楽曲には大幅なリテイク、リミックス、リマスターが施されている。

「Divide The World」が2004年からあった曲、「Calling」「Sad Ride」は05年頃から、「Firefly」は01年頃から、「Anthem」は00年頃、そして「1999」に至ってはバンド結成当初の1998年に作られた曲ということ。
つまり一番古い曲は四半世紀前。
それだけに練り上げられた楽曲がそろっている。
(「Anthem」は『SPiRiTRiAL』オリジナル・ヴァージョンの時点で3回目のレコーディングだったという)

とにかく演奏も歌も上手い。
(ライヴは配信でしか観たことがないのだが、やっぱり超絶に上手かった)
メロディ自体はキャッチーなのに、アレンジと演奏の複雑なことと言ったら、そこは完全にプログレ。
変拍子リフやら目まぐるしいリズム・チェンジやら。
一方ハード・ロック色も強い。
演奏巧者が持てるテクニックの限りを尽くしてキャッチーな楽曲を演っている点ではASIAにも通じる…というのは、オリジナル・リリース時にEURO-ROCK PRESSでも書いた。
Takeaki Itohのエモーショナルなハイトーン・ヴォイス、曲によりアラン・ホールズワース風にもゲイリー・ムーア風にもなるMasaru Maruokaのギター、「Promises」あたりに顕著なTakehito Katsuyaのヘヴィでビッグなドラム…と、聴きどころ多数。


『SPiRiTRiAL 2023 edition』、本日リリース。
12月1日(金)にはバンドが活動当初に出演していた大塚MEETSでワンマン・ライヴも開催されるとのこと。

DOCTORS OF MADNESS feat. SISTER PAUL/THE LOCKDOWN SESSIONS

DOCTORS OF MADNESS THE LOCKDOWN SESSIONS.jpg9月6日にリリースされていたのに、すっかり出遅れてしまった。
コロナ禍で海外と行き来する手段が断たれていた2020年に、リチャード・ストレンジとSISTER PAULの二人がオンラインでDOCTORS OF MADNESSとして行なったセッションをCD化したモノ。

全11曲のうち9曲は2020年にYouTubeで配信されていたが、「Triple Vision」「Waiting」の2曲は未配信。
曲順は配信順ではなく、「Doctors Of Madness」に始まり「Waiting」に終わるという、ライヴのセットリストに近い曲順に改められている。
ミックスとマスタリングはPEACE MUSIC中村宗一郎。

2003年の初来日以来、リチャード・ストレンジとSISTER PAULによるDOCTORS OF MADNESSのライヴは何度も観たし、19年にはスタジオ作『DARK TIMES』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201909article_13.html)もリリースされているが。
しかし、彼らが往年のレパートリーを演奏するのはライヴでしか聴けなかったワケで。
(実は初来日の後にライヴ盤リリースの話があり、ミックスまで終わっていたものの、残念ながら立ち消えになってしまった)
20年の時を経て、SISTER PAULの二人を含むDOCTORS OF MADNESSが演奏する70年代の名曲(もちろんそれ以外も収録されている)が、世界中のリスナーに届けられることとなった。
コロナ禍がなかったら実現しなかった企画かと思うと、ちょっと複雑な気分。

演奏と歌唱は実に素晴らしい。
ライヴ会場では基本的に「うきょーっ」とか言いながら(?)聴いているだけだったけど、こうして改めてCDで聴くと、老境に入ったリチャード・ストレンジの声の円熟度がよく伝わる。
一方で、速い曲では枯れていないところも存分に聴かせる。
3人でのライヴでも不足は感じないとはいえ、ここでは70年代のレパートリーにおけるヴァイオリンの不在を補うべく、リチャードのギターも重ねられていて。
あと、ライヴでも思ったが、往年のレパートリーと『DARK TIMES』収録曲の落差の少なさ。
もちろんテイストはかなり異なるものの、リチャードのブレのなさとソングライティング能力の衰えのなさを実感する。

SISTER PAULの二人も大貢献。
ススムのベーシストとしての存在感はどうかするとSISTER PAUL以上だし、先日のライヴ(https://lsdblog.seesaa.net/article/501000970.html)でも思った通り、「Waiting」のマッキーのドラムとかすげえよ。
コーラスも前面にフィーチュア。

欲を言えば「Back From The Dead」も収録されて、そしてそれが「Triple Vision」とつながっていたら、更に完璧だったが。
まあ贅沢は言いますまい。

16歳の時からDOCTORS OF MADNESSのファンだったという東瀬戸悟氏による熱の入ったライナーノーツも読み応え十分。
2023年の年間ベスト・アルバムの候補がまたひとつ増えた。
超おススメです。

SEVENTH SON/EDGE OF INSANITY

SEVENTH SON.jpg東京のプログレッシヴ・メタル・バンド、前作から7年ぶりとなる3rdアルバム。

結成は2000年。
08年デビューEP「Judgment Bells」、13年に1stアルバム『FATES FOR DISTINATION』、16年に2nd『ARC OF INFINITY』をリリース。
現編成は19年からで、Yama(ヴォーカル)、Yasumoto Ohtani(ギター)、Mitsuharu”弦鬼”Ikeda(ベース)、Tai Shouda(ドラム)、Takuo Kobayashi(キーボード)の5人。
RUSH、QUEENSRYCHE、DREAM THEATERあたりに影響されたとのこと。
(バンド名はIRON MAIDENからじゃないらしい)

前作から間が空いたのは、やはりコロナ禍の影響があった様子。
一方でロシアのウクライナ侵攻があり。
新作はそのことを題材に、民族を超えた分断なき平和や団結…などを歌っているとのこと。
ジャケットからも明らか。

まず何より耳を惹くのはYamaのハイトーン・ヴォーカル。
なるほどジェイムズ・ラブリエあたりの影響が見える感じながら、随所でオペラティックだったりヒステリックだったりと、多彩な表情を見せる。
(声は似ていないが、歌い回しにジェフ・テイトなんかを思わせるところも)
テクニカルなギターとキーボードの応酬…と、音楽的にもやはりというかDREAM THEATERを彷彿とさせつつ、「Insane」なんかではパワー・メタル色が前面に出たり。
一方でアルバム中最長なのが「Scarstorm」の7分半で、全8曲中3曲は3分台と、楽曲はかなりコンパクトにまとまっていて、聴きやすい。

くそったれな戦争が創作にインスピレーションを与え、それでクォリティの高いアルバムが出来る…というのは実に皮肉だが。
ともあれ非常に完成度の高い1枚。

『EDGE OF INSANITY』、本日リリース。
さっきから繰り返し聴いてます。

NOVERIA/THE GATES OF THE UNDERWORLD

NOVERIA.jpgはい、今月は仕事がアレでブログ休みがちになります…。
コレも8日のリリースだが、ここまで聴く暇がなく。

なんか日本に似たような名前のバンドがいた気がするが(笑)。
こちらはイタリアのプログレッシヴ・パワー・メタル・バンド。
2013年結成。
19年の前作『AEQUILIBRIUM』から4年ぶりとなる4thアルバム。
俺はこのアルバムで初めて聴いた。

メンバーはフランチェスコ・コリリアーノ(ヴォーカル)、フランチェスコ・マッティ(ギター)、ジュリアン・スプルーテレス(キーボード)、アンドレア・アルカンジェリ(ベース)、ダヴィデ・カラブレッタ(ドラム)の5人。
全員がヒゲ面。
アンドレアはDGMのメンバー。
(初期のキーボーディストはDGMのエマニュエル・カサーリだった)
フランチェスコ・マッティとジュリアンはETHERNITYのメンバー。

メンバーは「捻りのあるメロディ、マッシヴでヘヴィなリフ、ダークなキーボード、難易度の高いソロの応酬満載のヘッドバンギング体験を作り出すこと」がNOVERIAのゴールだとしているが。
このへんのジャンルに興味がない人が聴いたら、DGMもETHERNITYもNOVERIAも全く聴き分けられないと思う(笑)。
ギターが弾きまくり、キーボードがシンフォニックに彩る。
(いや、キーボードも時々超絶に弾きまくる)

ただ、”ヘッドバンギング体験”とか言うだけあってか、タイトル曲が12分超えの大曲だったりしつつも、プログレッシヴ・メタルよりかはパワー・メタル寄り。
あと、ちょっと線が細いながらも引っかかりのある声質のハイトーンを聴かせるヴォーカルは、このバンドの個性かも知れない。
メロディは時にキャッチーにも響く。
「Descent」には現ANGRAのファビオ・リオーネがゲスト参加している。

DGMが好きな人はコレも当然アリでしょう。

ノンベイイダとジャッセイコイケ/Spin Lee. EP

ノンベイイダとジャッセイコイケ.jpgNonbeことノンベイイダ(ベース、ハープ、ヴォーカル)とJustsayことジャッセイコイケ(ヴォーカル、ギター)によるデュオの5曲入りミニアルバム。
8月30日から発売中。

そりゃ一体誰じゃい…と思ったら、ジャッセイコイケというのはこのブログでは御馴染み、THE ALLIGATOR BLUESの小池”ワニー”孝典のことなのだった。
そしてノンベイイダは現Giant Stepsのイイダダイスケだという。
(以前PONTIAC BLUESで現ALLIGATOR BLUESの”メイン・サポート・ドラマー”ベニーと一緒に活動していたとのこと)
この二人、20年以上の付き合いなのだそうで。

小池孝典の作品としては、昨年のソロ・アルバム『名もなき反抗』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202204article_20.html)以来となる。
で、その『名もなき反抗』にも収録されていた「スピン・リー」と「真白の月」が再録されている。
残る3曲も、どうやら書き下ろしの新曲ではなく、音源化されていなかったレパートリーらしい。
(作詞・作曲はすべて小池)

『名もなき反抗』同様、盤はCD-Rながら上等な紙質の紙ジャケット+全曲の歌詞が掲載されたインサートを封入。
これまた最近のTHE ALLIGATOR BLUES/小池孝典の作品と同じく、ICレコーダーによる一発録り。
(マスタリングは施されているが、ミキシングなし、ほぼ録ったままの音)

ブルーズ色濃い目に感じられた『名もなき反抗』と収録曲がかぶっていながら、こちらは歌謡テイスト強めな感触。
…と思われるのは、the CHICKEN masters以来の小池孝典の得意技(?)、でありながら近年のTHE ALLIGATOR BLUESではほぼ封印されている、”一人称が女性”な昭和歌謡っぽい歌詞が「スピン・リー」「夏空涙雨」と2曲続くせいか。
”ねえ リー あなたのカルメンで私だけを刺して くわえた薔薇の棘でそっと殺して”(「スピン・リー」)
”あなたと見たい景色があるけど たどり着けないから さよならと言って”(「夏空涙雨」)
リード・トラックである「スピン・リー」に合わせ、ジャケットはフラメンコ風。
(この写真は何処から?)
一方で「暗がりにフラットホワイトを」ではTHE BEATLES「Michelle」の歌詞が引かれていたりも。

で、楽曲は小池孝典一人によるモノでありつつ、デュオ作ということでイイダダイスケのベースとコーラス、そしてハープもフィーチュアされ、アレンジにはソロ作とは違った奥行きが。
(イイダはエレキベース弾き語りでも活動していて、そこでもハープを吹いているのだという)
5曲15分、今日は何十回と繰り返し聴いている。

リリースと同時開催となった8月30日のライヴには、残念ながら行けなかったが。
いずれナマで観ることもあるだろう。
そして3月の下北沢DAISY BAR(https://lsdblog.seesaa.net/article/498632594.html)以来となるTHE ALLIGATOR BLUESのライヴも。
あんまりしょちゅうはやってないけどライヴ最高なんです。
興味を持った人は是非チェックしてみてください。

GALUNDO TENVULANCE/LUNAR ECLIPTURE

GALUNDO TENVULANCE.jpg2020年9月と、コロナ禍真っただ中に結成された日本のシンフォニック/メロディック・デス・メタル・バンドの1stアルバム。

シンフォニック・デス・メタルに、デスコア/メタルコアの要素を融合して、新たなメロディック・デス・メタルを創造すべく結成されたというが、他のアンダーグラウンド/エクストリーム系メタル・バンドと並行して活動するメンバーもいたりで、当初は本格的なバンドではなく、レコーディング・プロジェクトだったらしい。
しかしメンバー交代を経て、ライヴを含むより本格的な活動をするバンドに方向転換したとのこと。
現在のメンバーはMARCHO(ヴォーカル)、ASUKUN(ギター)、DERA(ギター)、GLUE(ベース)、KEN(キーボード、オーケストラル・アレンジメンツ)の5人。
現編成になる前に、シングルやEPを3枚リリースしている。

デス・メタルに限らず、シンフォニックとかプログレッシヴを標榜しながら正式メンバーにキーボーディストがいないバンドも少なくないが。
このバンドは単にキーボードを弾くだけでなくわざわざ”オーケストラル・アレンジメンツ”とクレジットされるメンバーがいるだけあって、そのシンフォニックぶりは本格的、堂に入ったモノだ。
(一方で正規のドラマーはいないようだが)

超絶なブラストに乗せたファストなパートとビート・ダウンっぽいヘヴィ/スローなパートが随所で入れ替わる楽曲の構成は、確かに単なるメロディック・デス・メタルではないモダンなエクストリーム・メタルに寄せていると感じられる。
ただ、バンドのベーシックなところには、シンフォニックでドラマティックなオーケストレーションに呼応してエモーショナルに弾きまくる2本のギター、そしてそれに乗る野太い咆哮ヴォーカル…という、王道のメロディック・デス・メタルがあるのでは、と思う。
(俺は聴いていないが、前任ヴォーカルはもっとデスコア寄りのスタイル+ノーマル声も用いていたらしい)
イントロとかオーヴァーチュア的なモノがなく、いきなり爆走する「Red Raven」でアルバムが始まる一方で、クワイアをフィーチュアした叙情的なインストゥルメンタル「Mystified Reiteration」で余韻を以てアルバムが終わる構成も、かなりイイ感じ。


『LUNAR ECLIPUTURE』、23日リリース。

WARMEN/HERE FOR NONE

WARMEN.jpg元CHILDREN OF BODOMのヤンネ・ウィルマン(キーボード)が、CHILDREN OF BODOMと並行してやってきたバンド、前作『FIRST OF THE FIVE ELEMENTS』(2014年)から9年ぶりとなる6thアルバム。
(その間は活動休止状態だったらしい)

2000年結成。
現在のメンバーはヤンネ・ウィルマン(キーボード)、新加入のペトリ・リンドロス(ヴォーカル:元NORTHER~現ENSIFERUM)、アンティ・ウィルマン(ギター)、イーリ・ヘイコ(ベース)、セッポ・タルヴァイネン(ドラム)の5人。
不可解な解散を遂げたCHILDREN OF BODOMだったが、現在ではネット上でもヤンネら脱退した3人のインタヴューを読むことが出来る。
ともあれWARMENはCHILDREN OF BODOMとは別にもう23年も存続しているワケで。
(ちなみにアンティは一瞬だけCHILDREN OF BODOMをサポートしたことがある)

WARMEN、俺はこのアルバムで初めて聴いたので、過去のアルバムと比較することは出来ないのだが。
ヴォーカルの声質も楽曲も当然ながらCHILDREN OF BODOMとは異なる一方で、グロウルをフィーチュアしつつもテクニカルかつシンフォニックなキーボードに彩られ、ヴォーカルを別とすれば曲や演奏自体は極めてオーソドックスなヘヴィ・メタルを感じさせる…という点では、やはりというかCHILDREN OF BODOMを思わせる部分もかなり多い。
(上述の通り過去作を聴いていないんだけど、ペトリ・リンドロス加入後は以前よりヘヴィになっているんですってね)
ギター1本なのでCHILDREN OF BODOMよりも流麗なキーボードが前面に出ている…というのは、音を重ねたスタジオ作よりも多分ライヴでもっとはっきり違いが出るのかも。


びっくりしたのは国内盤ボーナス・トラック。
なんとULTRAVOX(!)「Dancing With Tears In My Eyes」のカヴァー。
ニューウェイヴィーなビートにキラキラしたキーボードという原曲のロマンティックなテイストそのままに、見事にグロウルを乗せている。
かなりカッコいい。
このへんの北欧メロディック・デス・メタルのファンでULTRAVOXとか聴いている人がどれぐらいいるのかわからないけど、興味がある人は国内盤聴いた方が良いです。
さっきからこの曲を繰り返し聴いている。


『HERE FOR NONE』、本日リリース。

WINTERAGE/NEKYIA

WINTERAGE.JPG4日にリリースされている。
紹介が遅れた。

2008年に結成された”トライアンファント・シネマティック・パワー・メタル”を標榜するイタリアのバンド、3rdアルバム。
15年に1stアルバム『THE HARMONIC PASSAGE』、21年に2ndアルバム『THE INHERITANCE OF BEAUTY』をリリースしている。
俺はこの3rdアルバムで初めて聴いた。

メンバーはダニエレ・バルバロッサ(ヴォーカル)、ガブリエレ・ボスキ(ヴァイオリン、オーケストラル・アレンジメント)、ジャンマルコ・バンビーニ(ギター)、マッテオ・セルレンガ(ベース)、ルカ・ギリオーネ(ドラム)の5人。
シンフォニック・メタルを標榜していてもメンバーに専任キーボーディストがいない、というのはざらにあることだが。
このバンドもキーボーディストこそいないものの、メタルでは珍しくヴァイオリニストが正式メンバーで、そのヴァイオリン奏者がシンフォニックなアレンジも担当している。

映画音楽やオペラに影響されているとのことで、冒頭の「Apertio ad Profundum」からいきなり大仰なクワイアが炸裂する。
そしてどの曲でも管弦大フィーチュアの目くるめくシンフォニック・アレンジ。
いかにもイタリアのバンドらしい濃さ。
それだけでなく、「Newmen」や「White Leviathan」ではそこいらのフォーク・メタル/ペイガン・メタルのバンドに全く引けをとらないケルト/アイルランド風のメロディを聴かせたりも。
ダニエレ・バルバロッサのヴォーカルも、野太くパワフルな中音域からオペラティックなハイトーンまで、とんでもなく広い声域を駆使して盛り上げる。
ガブリエレ・ボスキのヴァイオリンも随所で大活躍。
更に曲によってはブラスト・ビートも導入し。
クサいメロディのメロディック・パワー・メタルをベースに、突っ込めるだけの要素を全部突っ込んだ満艦飾。
それでいて楽曲は6分台が1曲あるだけで、大半が4~5分台とコンパクト、非常に聴きやすい。

全部乗せな感じだけどそんなに暑苦しくないのは、”冬世代”というバンド名ならではだろうか。
ともあれ欧州メロディック/シンフォニック・パワー・メタルのファンには間違いない1枚では。

ALCATRAZZ/TAKE NO PRISONERS

ALCATRAZZ TAKE NO PRISONERS.jpg”グレアム・ボネットじゃない方”のALCATRAZZの新作。
もっとも、グレアム率いる(はずの)ALCATRAZZ featuring GRAHAM BONNETには動きが見られないので、現時点ではALCATRAZZと言えばこっちだ。
映画のポスターを思わせるジャケット・デザインがユニーク。

現在のバンドは、ジミー・ウォルドー(キーボード)とゲイリー・シェイ(ベース)のオリジナル・メンバーに、2019年から参加しているジョー・スタンプ(ギター)、前作『V』(21年)から歌っているドゥギー・ホワイト(ヴォーカル)、そして新加入のローレンス”ラリー”パターソン(ドラム)という5人。
ラリー・パターソンはブレイズ・ベイリーのバンドにいたらしい。

それにしてもドゥギー・ホワイトすげえなあ。
リッチー・ブラックモアともマイケル・シェンカーともイングヴェイ・マルムスティーンともやったことがあるって…そりゃグレアム・ボネットと一緒じゃねえか!
確かにALCATRAZZに入る資格のあるキャリアなのかも知れん(?)。
ロニー・ロメロはリッチーとマイケルはともかく、イングヴェイとは関わってないしな。
あとマイケルともPRAYING MANTISともやったことがあるという点ではゲイリー・バーデンにも重なる。
一方でTANKにもいたことあるんだからよくわからん…。

そのドゥギー・ホワイト、ボーナス・トラックを含む11曲中の8曲にクレジットされている。
それらの歌詞と歌メロはドゥギーによるモノだろう。
作曲の中心はジョー・スタンプで、オリジナル10曲全てにクレジットがある。
ジミー・ウォルドーは4曲しか関わっていないが、まあ元々ALCATRAZZのメイン・ソングライターじゃなかったので妥当かと。
「Holy Roller(Love's Temple)」にSAXONのベーシスト、ニブス・カーターの名前があるのが興味深い。
(前作『V』ではドラマーのナイジェル・グロックラーがゲスト参加しているので、付き合いがあるのだろう)

で、俺は『V』を聴いておらず、このアルバムで初めてドゥギー・ホワイトが歌うALCATRAZZを聴いたのだが。
ジョー・スタンプとドゥギーが書いた曲は…なんか、ALCATRAZZというよりもむしろ昔のイングヴェイ・マルムスティーンみたいに聴こえる。
スティーヴ・ヴァイやダニー・ジョンソン在籍時のALCATRAZZにあったアメリカっぽさは、希薄。
ALCTRAZZといえば結局イングヴェイ在籍時ばかりが注目されがちであること、ジョーが他でもないイングヴェイの影響を受けていること、そしてドゥギーもイングヴェイのバンドにいた一方で、そもそも声質も唱法もグレアム・ボネットとはまるっきり違うこと…などを考え合わせれば、自然なことではある。
ただし当然ながらイングヴェイのアルバムとは違って、ギターばかりが目立つような作風にはなっていない。
現在のバンド・リーダー(のはず)にしてかつてNEW ENGLANDでプログレをやっていたジミー・ウォルドー(アルバムのプロデューサーでもある)も、この方向性ならOKだったのだろう。
何しろバンド名を冠した「Alcatrazz」なんて曲もあって、相当気合が入っていたはず。
(「Alcatrazz」もかなりイングヴェイっぽい)

ただ、イングヴェイ・マルムスティーン在籍時の『NO PAROLE FROM ROCK 'N' ROLL』(1983年)にも「Island In The Sun」みたいな曲があったように、ALCATRAZZといえばやっぱりというか、メジャー系の明るめというかアメリカンな感じの曲も1曲は欲しい。
そういうタイプの曲として(?)、メンバーのオリジナルではない「Gates Of Destiny」が用意されている。
なんとジム・ピートリックの提供曲。
なるほどこの曲、歌い手がドゥギー・ホワイトじゃなかったら、SURVIVORみたいな曲になるのかも(?)。
(まあそこまで明るい感じの曲でもないけど)
あと、「Don't Get Mad…Get Even」での元気のいいコーラスは、GIRLSCHOOLのお姐さんたち。
意外な組み合わせに思われるが、ALCATRAZZは『V』リリース後のツアーをGIRLSCHOOLと一緒にやっていたので、その縁だろう。

あまりに雑多なキャリアのせいでどうも器用貧乏のイメージがある(?)ドゥギー・ホワイト…その昔RAINBOWの『STRANGER IN US ALL』(1995年)を聴いた時はどうも「これじゃない」感があったんだけど。
63歳の今、衰えているどころか説得力も風格も充分な歌唱を聴かせてくれる。
ただ余計なことをひとつ言わせてもらうと、自身のリーダー・バンドではなく雇われシンガー的な活動ばかりなので、そんなに儲かってはいないんじゃないかという気がする…。

ともあれグレアム・ボネットの声こそがALCATRAZZのアイデンティティ…みたいな信仰めいたモノがあるとか、そういう人でない限りは、新たなALCATRAZZの新たなアルバムとして楽しめる1枚に仕上がっていると思う。
『TAKE NO PRISONERS』、9日リリース。