the GOLDEN RAT/we got a right

GOLDEN RAT.jpg先月27日のリリース。
紹介が遅れた。

ACE KILLERS UNIONのMR.RATBOYとHIROSHI THE GOLDEN ARMが別にやっているカヴァー・ユニットのアルバム。
HIROSHIの自主レーベルではなく、オーストラリアのヴィシャス・キトゥン・レコーズからのリリース。

2018年の「RETURN OF THE LIVING DOLLS VOL.2」ではドラムを含むトリオで登場したthe GOLDEN RATだったが。
今回の録音はMR.RATBOY(ヴォーカル、アコースティック・ギター、ベース、パーカッション、キーボード、ハープ)とHIROSHI THE GOLDEN ARM(エレキ・ギター)+ゲストの岡島大源太(バリトン・サックス)の3人で行なわれている。
HIROSHIは例によって(?)”All Electric Guitars - Thunders licks”とクレジット。

ジャケットには”File Under: Soundtrack of our teenage years”とあり、15曲全てカヴァー。
HEARTBREAKERS「It's Not Enough」、THE LORDS OF THE NEW CHURCH「Russian Roulette」、RADIO BIRDMAN「Love Kills」といったコテコテな選曲はむしろ少数派で。
ブライアン・ジェイムズ「Ain't That A Shame」、ルー・リード「Rock And Roll Heart」、THE ROLLING STONES「Some Girls」、MAGAZINE「Shot By Both Sides」、RAMONES「Don't Come Close」、THE MODERN LOVERS「She Cracked」、THE SAINTS「A Minor Aversion」、THE ONLY ONES「The Whole Of The Law」…と、人選あるいは選曲に「お、そう来たか」と思わせるようなモノが大半。
更に、有名だけど驚かされるTHE STRANGLERS「No More Heroes」、PATTI SMITH GROUP「Dancing Barefoot」。
(まあ「No More Heroes」は2018年のライヴでも演ってたが)
そして元COCK SPARRERのギャリー・ラミンが結成してジョー・ストラマーがプロデュースした(初期にはYAZOO以前のアリソン・モイエも参加)THE LITTLE ROOSTERS「Ain't Proud」、ミッチ・ライダーのソロ作から「Ain't Nobody White」なんて激渋なところも。

MR.RATBOYがパーカッションでもクレジットされているものの、基本的には大半の曲がドラムレスで、MR.RATBOYの弾き語りの上でHIROSHI THE GOLDEN ARMが”あの”ギターを存分に弾きまくるという作風。
「No More Heroes」や「Don't Come Close」をはじめとして、オリジナルとはがらりと趣の異なるアレンジになっているモノが多く、楽しめる。
時々入るサックスがテナーやアルトではなくバリトンというのもユニーク。
一方、比較的ストレートなアレンジでカヴァーした「Dancing Barefoot」でのMR.RATBOYの歌唱がハマっているのにはびっくり。
(アルバムはウォルター・ルアー、シルヴェイン・シルヴェイン、アイヴァン・クラール、クリス・ベイリーに捧げられており、PATTI SMITH GROUPとTHE SAINTSを取り上げているのはそのあたりからだろう)

29日「RETURN OF THE LIVING DOLLS VOL.3」の物販でも販売されるはず。


追記:
タイトルのスペルを間違えていたことに、3ヵ月ほども経ってから気付く…。

(2023.1.21.)

ARIDA VORTEX/RIDERS OF STEEL

ARIDA VORTEX.jpgロシアのメロディック・パワー・メタル・バンド、8thアルバムにして初の国内リリース。

1998年にモスクワで結成されたというから、もう20年選手の大ヴェテランだ。
アルバム・デビューは2003年。
14年の5thアルバム『HAIL TO ROCK』から歌詞が英語になり(もっともコレはロシア語で歌われていた4thアルバムの英語ヴァージョンだったそうだが)。
17年にヴォーカリストが脱退したものの、18年に新たなヴォーカリストを迎え、新編成で制作された初のアルバムが『RIDERS OF STEEL』。
現在のメンバーはエフゲニー・エピシン(ヴォーカル)、ロマン・グリエフ(ギター)、アレクサンドル・ストレルニコフ(ギター)、アレクサンドル・フェドニン(ベース)、ヴァディム・セルゲーエフ(ドラム)の5人。

オープニングはキーボードをフィーチュアしたインストゥルメンタル。
続く「Small Toy Soldier」(エフゲニー・エピシン加入後初のリリースとなった2018年リリースのEPのタイトル曲)もサビで琴のようなシンセサイザーの音色が前面に出ているものの、以降の曲は特にキーボード・オリエンテッドというワケではない。
今やロシアン・メロディック・パワー・メタルの代表格ということだが、確かにいわゆる”メロスピ”ではなく、マイナー調のメロディを押し出したヨーロピアンなパワー・メタルという感じ。
特にロシアっぽいメロディが出てくるワケではないものの、全編通してキャッチーながらも哀愁を感じさせるメロディのセンス。

俺はこのアルバムで初めてこのバンドを知ったので、前任ヴォーカルの時代を全く知らないのだが、新ヴォーカリストのエフゲニー・エピシンは引っ掛かりのある独特の声質。
超絶ハイトーンも随所で聴かせ、実力は充分。
(ムーディーな低音も魅力的)
2本のギターを中心とする演奏陣も確かなテクニックで、インストゥルメンタル「The Invincible」の楽曲構成は80年代のイングヴェイ・マルムスティーンあたりを彷彿とさせたりも。

「The Invincible」から8分半のドラマティックな大曲「Damned And Killed」につなげ、アルバム本編をアコースティックでしっとりしたバラード「To Be By Your Side」でシメる構成も見事。
(国内盤はそのあとにボーナス・トラックが入っているが)
コレは売れるかも。


『RIDERS OF STEEL』、19日リリース。


(2026.1.12.改訂)

V.A./BOB STANLEY & PETE WIGGS PRESENT OCCASIONAL RAIN

OCCASIONAL RAIN.jpg5月のリリース、先月入手。
元SAINT ETIENNEのボブ・スタンレーとピート・ウィッグスの二人が英エイス・レコーズで編纂し続けているテーマ別編集盤の新作。
2017年にリリースされた『ENGLISH WEATHER』の続編とのことで、”英国の天候”に続いてはこれまた納得という感じの”時々曇り”。
梅雨が明けて酷暑となった今聴くには「…」という感じもするものの、ともあれ実にタイトル通りの内容に仕上がっている。

いかにも英国らしい天気を思わせる曲が並ぶ一方で、60年代末~70年代初頭の英国ポスト・サイケデリック/プログレ前夜というもうひとつのテーマもあり。
TRAFFIC、THE MOODY BLUES、YES、ARGENTといった有名どころもあれば、CRESSIDA、キース・ウエスト、SKIN ALLEY、PETE BROWN & PIBLOKTO!、'IGGINBOTTOM、TONTON MACOUTEといったB級(?)/ややマイナーどころも。
そしてCLOUDS、SHAPE OF THE RAIN、THE EXCHANGE & MARTなどといった相当マニアックなあたりも。

レーベルは多岐にわたるが、PETE BROWN & PIBLOKTO!にマイケル・チャップマンとハーヴェストから二組、SHAPE OF THE RAINにTONTON MACOUTEとネオンから二組というセレクトに思わずニヤリとさせられたり。
有名どころにしてもTRAFFICが「Hidden Treasure」、THE MOODY BLUESが「Out And In」シングル・ヴァージョン、YESが1stアルバム『YES』(1969年)からのフォーキーな「Sweetness」…と、かなり渋いところを突いてくる。

確かにサイケ以後、プログレ前夜っぽい曲が多く、特にTRAFFIC「Hidden Treasure」やSKIN ALLEY「Night Time」(プロデュースはディック・テイラー)、GRANNY'S INTENSIONS「Nutmeg, Bitter Suite」、TONTON MACOUTE「Flying South In Winter」のようにフルートをフィーチュアしたジャジーなアレンジの楽曲が耳を惹く。
PETE BROWN & PIBLOKTO!「Station Song Platform Two」やTHE MOODY BLUES「Out And in」あたりに聴けるメロトロンも、いかにも英国の曇り空(そして時々雨)という感じで実にたまらん。
半数近くはアルバムを持っていたり聴いたことがある曲で占められるが、こうして編集盤で1曲ずつ並べられるとまた違った聴こえ方をしたり。
そして名前は知っていたけど音は聴いたことなかったバンドとか、全然知らなかったような人とかも非常にイイ感じ。

このメロウネスと湿り気、先に書いた通り酷暑のBGMにはけっこう不向き(?)ながら、季節を改めて穏やかな気分で聴き流しつつコーヒーあるいは(やっぱり英国流に)紅茶など楽しみたいところ。


(2026.1.7.改訂)

OUT/OUT

OUT.jpg先月のリリースだが、紹介遅くなった。
札幌で2012年に結成されたというトリオの1stアルバム。

メンバーは橋本昌徳(ヴォーカル:ギター:元やぎ、KARMA他)、渡部徹(ヴォーカル、ベース:元ライナスの毛布他)、岡田亜土(ドラム:元パラフレーズ、やぎ、KARMA他)の3人。
このブログを読んでいる人で、上記の元〇〇、というところに反応する人はどれぐらいいるのだろうか。
ってか平均年齢は何歳だ…と思わずにはいられない、80年代札幌インディーズ・シーンの古強者が集まったバンドとなっている。

年齢を感じさせない、初期衝動という言葉を使いたくなる勢いと、一方で年輪を感じさせる確かな技術と表現力。
11曲で27分しかない。
4分以上の曲は2曲しかなく、2分以下の曲が4曲。

大半の楽曲は橋本昌徳と渡部徹がそれぞれに作詞・作曲していて、それぞれ自分が作った曲を自分で歌っている様子。
(「二重少年」のみ二人の共作で、ツイン・ヴォーカルが掛け合う)
ちょっと遠藤ミチロウあたりを思わせる橋本、ドスの利いた叫びを聴かせる渡部、各々のヴォーカルの対比がユニーク。
CDの帯にある”狂ってる あいつは 俺の心臓めがけて 刺す”というのは橋本作「刺す」の歌詞。
この曲のサビの歌詞”Hello my paranoia”に、かつて札幌で”Hello my schizoid”と歌っていたFALSE CHARGEを思い出す…のは俺だけだろう。
(必ずしも歌詞が聴き取りやすい曲ばかりではないので、歌詞カードがあるとよかったのだが)

空間系のエフェクトを多用したギター。
ゴリゴリしたヘヴィなベース。
タイトで乾いたドラム。
鋭く疾走する楽曲にはFRICTIONあたりに通じるモノを感じたり。
スローな曲でのフリーキーでドロドロした感覚は、やはり80年代のアンダーグラウンドなシーンを通り抜けてきた人たちならではと言った印象。
ラストはレトロなリズム・ボックスに乗せて独特な叙情っぽさを漂わせる「Derweze」でシメる。
「Derweze」は橋本昌徳の作詞・作曲で、このアルバムのリリース元もDerweze Recordsとなっている。
(”Derweze”というのは、天然ガスが燃え続けている”地獄の門”と呼ばれる場所があるトルクメニスタンの村のはず)

俺が札幌に住んでいた80年代、渡部徹がやっていたライナスの毛布のライヴを何度も観たモノだった。
ライナスの毛布はかなり長いこと活動していたのに正式なアルバムはリリースしていないはずで。
(MARBLE SHEEPとの連名作が1枚ある)
この2020年になって元メンバーの新しいバンド(と言ってももう結成から8年経っているが)のアルバムを聴く機会が巡ってきたことには驚かされた。
HAWKWINDや初期PINK FLOYDあたりの多大な影響を感じさせたライナスの毛布とこのOUTの音楽は随分違うものの、80年代の札幌でライヴハウスを賑わせていた人たちが今も活動を続けて、今の自分たちの音を鳴らしているのは実に喜ばしい。
そういえばあのバンドのあの人とか今はどうしているのだろう…などと思いつつこのアルバムを何度も聴いている。
(何しろ27分しかなくてすぐ聴き終わるので)


『OUT』、6月6日より発売中。


(2026.1.5.改訂)

SCHIZOPHRENIA/Voices

SCHIZOPHRENIA.jpgベルギーの4人組メタル・バンドのデビューEP。

2010年にアントワープで結成されたスラッシュ・メタル・バンドHAMMERHEADを前身バンドとする。
活動中に2枚のEPをリリースしたHAMMERHEADはその間にメンバー交代を経ていて、その最終ラインナップが16年にSCHIZOPHRENIAと改名したのだという。
HAMMERHEADが最終ラインナップで何年活動していたのか知らないが、SCHIZOPERENIAは16年にスタートした新しいバンドと言いつつも、メンバーにはそれなりのキャリアがあるワケだ。
ちなみにSCHIZOPHRENIAとなってからも17年にメンバー交代があり、現在のバンドはリッキー・マンドッツィ(ベース、ヴォーカル)、ロメオ・プロモス・プロモパウロス(ギター)、マーティ・ファン・ケルクホーフェン(ギター)、ロレンツォ・ヴィソル(ドラム)の4人。
HAMMERHEADからのオリジナル・メンバーはリッキーとロメオの二人。
ベルギーのバンドながら、いかにもベルギー人らしい名前なのがマーティ一人というのがなんだかユニークだ。
リッキーとロレンツォは多分イタリア系、ロメオはギリシャ系ではなかろうか。

2016年に新たなバンドとしてスタートして、現在の編成に固まったのが17年、そしてデビュー・シングルをリリースしたのが19年10月。
このEP「Voices」が母国ベルギーでリリースされたのは今年1月とのこと。
わざわざ改名しただけあって、新たなバンド名の下で演りたい/演るべき新たな方向性というのを突き詰めるのにはかなり時間をかけたようだ。

その方向性というのは、オールド・スクールなデス・メタルとスラッシュ・メタルを融合したブルータルなメタルということになるだろう。
リッキー・マンドッツィの歌唱は、いわゆるデス声/グロウルとスラッシュ特有の吐き捨てヴォーカルの中間に位置するようなスタイルで、かつ随所にブラック・メタル的なヒステリックさやCELTIC FROST的な「ウッ!」という押し殺した叫びが入っていたり。
演奏の方はドンカンドンカン突っ走る80年代B級スピード・メタルを現代風なサウンドとテクニックで再構成するような、メロディックな要素のない暴虐のメタル。
良くも悪くも一本調子な爆走サウンドながら、80年代のスラッシュや初期の洗練されないデス・メタルが好きな人にはかなりアピールするのではないかと。

国内盤にはバンドのテーマ曲とも言える「Schizophrenia」のデモ音源がボーナス・トラックとして収録されている。
『Voices』、7月1日リリース。


(2026.1.1.改訂)

摩擦原因/BLAZING! MASATSUGENIN

摩擦原因.png大阪の爆走R&Rトリオ摩擦原因、2017年の前作『SEX DRINKIN' ROCK'N'ROLL』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201710article_27.html)から約3年ぶりとなる4thアルバム。

現在のパーソネルはKIYOSHI NAGATA(ヴォーカル、ギター)、Mr.P(ベース、コーラス)、KO-SHO-Good Sun(ドラム、コーラス)の3人。
前作のラインナップからドラムが交代した模様。
しかし疾走するパンク・ロックにルーツ・ミュージックを絶妙に混ぜ込む、その音楽性には変化なし。
作を重ねる毎にカントリーやブルーズの要素がちょっとずつ後退し、逆にストレートなR&Rの部分がちょっとずつ増している感もありつつ、根底にやっぱりルーツ・ミュージックがあって、曲によってはジョージ・サラグッドあたりに通じるようなテイストも。

1曲目「YOU FUCKIN FAKE」イントロからRAMONESっぽくて嬉しくなる。
4曲目「DARK COOL BERLIN」イントロのベースはTHE DAMNED初期のキャプテン・センシブルあたりを思わせたりもするし。
一方その「DARK COOL BERLIN」の歌詞に”テクノが流れるイキな街で/足の悪い老人が歩いてく”とあるように、彼らにとってパンク・ロックもルーツ・ミュージックも伝統芸能的な古色蒼然としたモノではなく。
彼らのR&Rは最新型のエレクトロ・サウンドと同じ地平で、あくまでも現在進行形の音楽として鳴らされている。

「YOU FUCKIN FAKE」に続いて「FUCKIN GO TO HELL」、更に「YOU'RE RIGHT!! I'M WRONG」と、腐った奴らにノーを突きつける姿勢も変わらず。
一方で「I'M JUST A MAN」や「SILLY BOY」ではダメな自分も馬鹿な自分も直視して、”そんな奴でも成長はするぜ”(「SILLY BOY」)と愚直に前に進もうとする。
悪態をつく曲でもポジティヴな曲でも、いかにもそれ風な通り一遍のポーズじゃなく、根底に市井の生活者/労働者としての視点があり。
キャッチーさやユーモアのセンスもたんまり。

前作同様に女性ヴォーカルやサックス、それにオルガンやアコーディオンといったゲストも参加して、アレンジに幅を持たせている。
グルーヴィーなオルガンをフィーチュアしてR&Bテイストな「WHITE SNAKE SKIN GIRL」なんかは、曲名に通じるイギリスのあのバンド、およびそこのヴォーカリストが在籍していたあのバンドを思い出したり。
(歌詞に”BLACK NIGHT”とある…)
サックスを重ねてロカビリーとジャズをミックスしたようなインストゥルメンタル「MAD DOG MARGARITA」もおしゃれでカッコいい。
(そしてKIYOSHI NAGATAの確かな腕前もよくわかる)

2009年の1stアルバムから11年でアルバム4枚。
多作とは言えないものの、日々の生活を回しながら続けているインディペンデントなバンドとしては寡作とも言い切れないだろう。
コロナ禍でレコ発ツアーはほぼ潰れた格好になっているようだが、今後も着実に続けてほしいバンドです。
ライヴ随分観てないな。


9日より絶賛発売中。


(2026.1.1.改訂)

Lily & Gen with Friends/An Imperfect Life…Tribute to Johnny Thunders

AN IMPERFECT LIFE.png元LIPSTICK KILLERS~MURDER STYLE~Naruzy Suicide Bandのベーシスト・GenがLily & Gen(リリとジェン)という男女ユニットをやっているのは知っていたが、ライヴを観たりする機会はなかった。
ここに、Lily & Genの拡大編成である”Lily & Gen with Friends”名義によるジョニー・サンダースのトリビュート・ミニアルバムが登場。
元LIPSTICK KILLERS~Naruzy Suicide BandのNaruzyが主宰するD.O.A.レコーズからのリリース。
で、”Friends”が豪華な顔ぶれでびっくりしてしまった。

ジョニー・サンダース楽曲5曲と、ジョニーもレパートリーにしていたNEW YORK DOLLS「Lonely Planet Boy」、計6曲をすべてアコースティックなアレンジでカヴァーするというアプローチ。
Lily(ヴォーカル)とGen(アコースティック・ギター他)を中心に、多彩なゲストが盛り立てる。

そのゲストだが…1曲目「I Only Wrote This Song For You」からいきなり元THE ODDBALLSのスティーヴィー・クラッソンがアコースティック・ギターを聴かせる。
スティーヴィーは全6曲中4曲に参加し、「You Can't Put Your Arms Around A Memory」ではスライドをプレイ。
そしてその「You Can't Put Your Arms Around A Memory」ではLilyがバッキング・ヴォーカルに回り、リード・ヴォーカルはなんとデイヴ・カスワース。
デイヴのヴォーカルは彼が今年3月に来日した際、東京で録音されたモノという。

他にもスウェーデンのTRENCH DOGSのアンディ・ヘッカンディ(ヴォーカル)に、ACE KILLERS UNION他で活動するMr.ラットボーイ(ヴォーカル)。
そして元THE GOLDEN ARMS~ACE KILLERS UNIONで『ジョニー・サンダース コンプリート・ワークス』の監修を務めたHiroshi The Golden Arm(エレクトリック・ギター)、元THE HONG KONG KNIFEのLittle Johnnie(スライド)、そしてもちろんリリース元のD.O.A.を主宰するNaruzy Suicide(ヴォーカル、アコースティック・ギター)など。

大半の楽曲はジョニー・サンダース自身がアコースティック弾き語りなどで演奏していたモノなので、単にアコースティック・アプローチというだけなら目新しさはないのだが、ここでは少なくて3人、多くて7人という編成でドラムレスのバンド・アレンジを施された演奏になっているし、女性ヴォーカルが中心となっているのもユニーク。
そして、ジョニー自身を含めてこれまでにアコースティックで演った人は誰もいなかったのではと思われるHEARTBREAKERSの「Let Go」に驚く。
(ヴォーカルはMr.ラットボーイとLily。この曲のみドラムマシーンが控えめに鳴っている)

そんなアコースティック編成の中で、一人エレキを弾くHiroshi The Golden Armが気を吐いている。
クレジットが”Electric guitar~Thunders licks”となっていて…その通り、まさにジョニー・サンダース本人が弾いているのではと思わされるようなイタコ状態のプレイなのだった。

ジャケットをはじめとする、Lilyによるドローイングもイイ感じ。
名古屋・東京・スウェーデンとバラバラの場所でバラバラの時期(昨年5月~今年の4月)に録音された音源をミックスしたとは思えないような音質も特筆すべきか。
参加メンバーのジョニー・サンダースに対する愛情が透ける、良いトリビュートです。
今月8日より発売中。


(2025.12.31.改訂)

十四代目トイレの花子さん/命日

十四代目トイレの花子さん 命日.jpg前作『真っ赤ナ トイレ』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201608article_12.html)から4年ぶりとなる”出禁系地下アイドル妖怪”十四代目トイレの花子さんの2ndアルバム。
ライヴの物販では先月4日から、14日からは一般流通もしていたのだが、入手が遅くなった。

昨年にも『大量虐殺』というアルバムが出ていて、こちらも漫画家・駕籠真太郎のアートワークをフィーチュアした気合の入った作りだったものの、流通に乗ることはなく、そちらはオリジナル・アルバムではなくアメリカ・ツアーの物販向けの限定商品という位置付けになるようだ。
そして『大量虐殺』収録曲はすべて今回の『命日』にも収録されている。
(そのままではなく、ヴァージョン違いもあるが)

語りを含めて実に20トラック(楽曲は18曲)のヴォリューム。
まずはいかにもアイドルらしい、ふわっとしたしゃべりからはじまるのだが、どうやら何も考えずに出たとこ勝負で話しているらしく、いきなり笑わされる。
しかしそこから「月経前症候群」(凄い曲名だな…)が始まると、景色が一変。
メタリックなハードコアという感じだった『真っ赤ナ トイレ』に較べるとバックトラックのメタル色とヘヴィネスが大幅に増していて、80年代末までのMETALLICAあたりを思わせるような「月経前症候群」をはじめとして、楽曲自体はスラッシュ・メタルと呼んで差し支えないモノが多くなっている。
「Rusty ring」「暁」といったモロX Japanな曲もあるのでなおさらだ。
(前者は多分オマージュ、後者は歌詞にもある通り完全にパロディ)
十四代目トイレの花子さん自身はメタルはほとんど聴かないようだが。

で、それらの楽曲に乗る十四代目トイレの花子さんの禍々しいスクリーム。
本人曰く、影響を受けたのはQP-CRAZYのザ・クレイジーSKBとのことながら、冒頭の語りからは想像もつかない絶叫はほとんどブラック・メタル。
(メタルほとんど聴かない花子さん、もちろんブラック・メタルも聴いてないのだが)
とにかくヒステリックに叫んで叫んで叫んで叫ぶ。
”静電気怖い”のあとはひたすら絶叫のみの「四四秒」なんて、本当に44秒間強烈なスクリームが連続。
一方であくまでかわいらしいノーマル声を前面に出した楽曲もあり、前作同様にヴァラエティに富んだ作りになっている。
…というか、ヴァラエティと言っても前作のようにフツーのアイドルっぽいポップな曲などで落差を出すよりかは、ヴァラエティの中にも統一感があり、全体の完成度が随分高くなった感が。
花子さん自身は曲を書いたり演奏したりするワケではないので、コレについては楽曲を提供した各トラック・メイカーの貢献度も大きいのだろう。
ただ、「デストロイハグ」「ヘドバン体操」「四時四四分」なんかはアルバム・デビュー以前からのレパートリーで、つまり本人の方向性に最初からブレがないということでもある。
(「四時四四分」は初音源以来ミックス違いや再録などで今回が3回目の収録になるはずなので、本人的にも大事な曲と思われる)
歌詞もほとんどが花子さん本人によるモノで、小学生みたいなルックスからは想像しづらい怨念や情念、血まみれの嗜虐性、かと思えば笑わせられるモノも。
好き嫌いは分かれると思われるものの、「父の自慰行為」(!)をはじめとして、花子さん以外のアイドルにはちょっと書けない歌詞ではと。

それぞれの楽曲提供者がアレンジや演奏も手掛けている様子。
6名がクレジットされているが、そのうち最多の6曲を担当するMr.PerkeleはNECRONOMIDOLの楽曲も提供している。
(メタリックな曲は大体この人)
そして「潔癖症ノ唄」「エレベーター」はQP-CRAZY他のベーシストとして知られるツージーQ、「四四秒」「アダピクミンの唄」はコケシドール~ビルのギタリスト、久保偽札犯…とナニゲに豪華。
更に、ラストに収められている「汚れなんてないさ~お掃除の時間だよ~」の作曲は”ニューハーフ地下アイドルソングライター”美広まりなで、コレがアニメのエンディングみたいなキャッチーな曲調でアルバムを締める。

強烈なスクリームに対し、以前はノーマル声で音程を追うのにかなり難があった十四代目トイレの花子さんだが、前作から4年、歌唱力もけっこう向上。
(それでもたどたどしいところはまだ残るとはいえ、ファンならそれも楽しめるだろう)
様々な点で前作よりもかなり進歩や成長が見られるアルバムになっている。
それでも、実際にライヴを観ないと花子さんの面白さは伝わり切らないのではと思う。
自分自身が彼女のライヴを観るようになってそれは本当に実感しているので、興味のある人はコロナ禍が収まったら是非ナマで体験されるべきかと。


ブックレットも写真集のような、ファンに嬉しい作り…って、あーっ、こ、コレは!(以下略)


(2025.12.20.改訂)

BLUE OYSTER CULT/40TH ANNIVERSARY-AGENTS OF FORTUNE-LIVE 2016

BLUE OYSTER CULT 40TH ANNIVERSARY AGENTS OF FORTUNE LIVE 2016.jpg3月のリリース。
発売日以降、都内に出る度TOWER RECORDSやDISK UNIONで捜し歩いていたが(出来るだけお店で買いたい)一向に見つからず、そうこうするうちにコロナ禍でレコード屋がみんな閉まってしまい(号泣)、結局通販で入手。
タイトル通り、BLUE OYSTER CULTの名盤『AGENTS OF FORTUNE』(1976年)リリースから40年経った2016年に行なわれた再現ライヴを収録したCD+DVD。

”LIVE 2016”としか表記されていない。
何月何日に何処で収録したのかというクレジットは何処にも見当たらない。
『AGENTS OF FORTUNE』再現ライヴは16年4月にニューヨークとLAで行なわれているが、ひょっとするとライヴ録音/撮影のために別に行なわれたライヴなのかも知れない。
(拍手と歓声がえらく少ないのも、ミックスのせいだけではなく少人数相手のスタジオ・ライヴ的な収録だったとすれば納得)

MCも何もかも全部編集で削ってしまっているようで、本当に『AGENTS OF FORTUNE』の楽曲をそのままの順番で演奏しているだけ。
CDは37分しかない。
DVDはどういうワケか1曲目の「This Ain't The Summer Of Love」が収録されておらず、本編は30分ちょっとしかない。
コレはどういうことなのか…撮影に何か問題があったのだろうか。
(この曲だけ作詞がTHE IMPERIAL DOGSのドン・ウォラーなんだが、そのあたりの権利関係でDVD収録だけはダメだとかそういうアレがあったのかも、などと思ってみたりする)

ともあれ。
『AGENTS OF FORTUNE』から実に40年(!)。
このライヴの時点でデビューから44年。
主要メンバーの年齢を考えると、過大な期待は禁物かも知れない、などと思っていたのだが。
いや…内容は最高でした。
(もちろん贔屓の引き倒しみたいなのも十分あるかも知れないとはいえ)

この時点でのBLUE OYSTER CULTは、エリック・ブルーム(ギター、キーボード、ヴォーカル)、ドナルド”バック・ダーマ”ローザー(ギター、ヴォーカル)のオリジナル・メンバー二人に、2004年以降のメンバーであるリッチー・カステラーノ(ギター、キーボード、ヴォーカル)とジュールス・ラディーノ(ドラム)、そしてUTOPIAのカシム・サルトン(ベース)という5人編成。
(カシムはこの後脱退し、現在は1999年の来日時に在籍していたダニー・ミランダが復帰している)
リッチーはエンジニアリング他も担当。
プロデュースは70年代以降サンディ・パールマンの下でバンドのマネージメントとプロデュースに関わってきたスティーヴ・シェンク。

「This Ain't The Summer Of Love」でライヴがスタート。
改めて言っておきますが、この曲は”アイルランドの無名パンク・バンドのカヴァー”ではありません、アメリカのプロト・パンク・バンドTHE IMPERIAL DOGSの代表曲の曲名と歌詞だけいただいてBLUE OYSTER CULTが新たに曲を付けたモノですよ。

以下、メンバーの挙動についてはDVDを観ながらの感想になる。
既に故人であるアレン・ラニエに代わってバック・ダーマがリード・ヴォーカルを担当する「True Confessions」に続く。
エリック・ブルームもバックも、意外と若々しい。
バックは1999年の来日時同様にスタインバーガーを弾いているが、白いボディには漫画に出てくるチーズみたいな穴がいくつも開いている。
エリックとバックを支える他の3人は、堅実なプレイと言うべきか。
(コレはDVDを観始めた時の印象で、観終える頃には特にリッチー・カステラーノとジュールス・ラディーノのプレイに大満足することとなる)
ステージ前方にはモニタースピーカーがなく、全員がイヤーモニターを使用。
99年に観た時にはフツーにモニタースピーカーを使っていたことを思うと、テクノロジーの進歩は凄いわねえ、といかにも年寄りじみた感慨がわいてしまう。

DVDには「This Ain't Summer Of Love」が入っていないので、すぐに「(Don't Fear)The Reaper」になってしまう。
エリック・ブルームは当初ギターを弾かずにコーラスだけ担当しているので、ギターはバック・ダーマが弾く1本だけ。
と、ドラムの脇でカウベルを叩いているのは…オリジナル・ドラマーのアルバート・ブシャールだ!
この時点でちょっと泣きそうになる。
そして泣き叫ぶようなバックのあのギター・ソロ。
バックがギター・ソロに入ったところでエリックがリズム・ギターを弾き始めるが、見ると右手にE-Bowを持ったままで弾いている。
ギター・ソロのあとの超ロング・サスティーンは、エリックがE-Bowで出していた。

エリック・ブルームがギターを置いて、ハンドマイクで「E.T.I.(Extra Terrestrial Intelligence)」を歌う。
リッチー・カステラーノがキーボードから離れてリズム・ギターを担当。
と、エリックは最後のギター・ソロのところでキーボードに向かい、そのままエリックがキーボード、リッチーがギターで曲が終わる。

そしてアルバート・ブシャールがギターを提げてステージに登場!
(この時点でトリプル・ギター)
A面ラストの「The Revenge Of Vera Gemini」が始まる。
作詞を担当したパティ・スミスによる冒頭の語りはアルバムの音源が使われているが、コーラスの一部はバック・ダーマが。
アルバートは髪もヒゲも真っ白ながら、バンド脱退後も自身の活動を続けているだけあってそれほど老け込んだ感じはなく、スリムな体型も維持している。
声も変わっていない。
リッチー・カステラーノのキーボードは音色まで完璧にアレン・ラニエのプレイを再現していて、彼が現在のバンドを支える重要な存在であることを窺わせる。

LPだとここからB面だが、「The Revenge Of Vera Gemini」が終わると間髪入れずジュールス・ラディーノのカウントが入り、「Sinful Love」に突入。
リード・ヴォーカルはもちろん引き続きアルバート・ブシャール。
全員がヴォーカルをとり、クライマックスでは全員がギターも弾く…というかつてのバンドの特色はとっくの昔に失われているものの、それでもジュールス以外の全員が歌うので、コーラスもばっちりだ。
(1999年の来日時、当時のドラマーだったボビー・ロンディネリにギター弾けないことをツッコまないようにと誰かに言われたのを思い出す)
そしてギター・ソロが始まるとマイクの前を離れてステージを跳ね回っていたアルバート(元気!)はソロが終わると同時にマイクの前に駆け戻る。

アルバート・ブシャールがステージに残ったまま、ジュールス・ラディーノのパワフルなイントロから、俺が大好きな「Tattoo Vampire」が始まる。
(この曲も含め、ほとんどの曲がジュールスのカウントから入る)
リッチー・カステラーノがギターに持ち替え、ギター4本!
ただしエリック・ブルームはギター・ソロの時以外はほとんど弾かず、実質的にはほぼ3本。
そしてあの、たった4音のみで弾かれるソロ。
サビのコーラスではアルバートが喉元に手を当てて「アイ~ン」みたいなポーズで(笑)声にヴィブラートをかけている。

続いては「Morning Final」。
エリック・ブルームとリッチー・カステラーノのツイン・キーボード。
(エリックがオルガン、リッチーがピアノの音色の様子)
そしてジョー・ブシャールに代わるリード・ヴォーカルをリッチーが。
コレがまた実にナイスな歌唱。
エリックによる終盤のアナウンス(?)もばっちり再現。

リズム・セクションとSEのみによる「Morning Final」エンディングの間にバック・ダーマとカシム・サルトン以外の3人が位置を変えたり楽器を持ち替えたり。
そしてリッチー・カステラーノがギターを提げたままキーボードを弾き、アルバート・ブシャールがジュールス・ラディーノの横でシンバルを叩く「Tenderloin」。
エリック・ブルームとカシムのツイン・ヴォーカル(!)。
リッチーはキーボード・ソロをアルバム通り完璧に再現した後、キーボードから離れてリズム・ギターを弾くという大活躍。
エンディングでギターとベースを弾きながら4人が並ぶさまは、これぞBLUE OYSTER CULTの醍醐味。

最後はアルバート・ブシャールが12弦アコースティック・ギターとヴォーカル、エリック・ブルームもアコギを手にして「Debbie Denise」。
(この曲もパティ・スミスの作詞。パティのファンでBLUE OYSTER CULT聴いてない人は聴くべきだね…)
楽曲・演奏の素晴らしさ、そしてコレで最後の曲という感慨に、再び泣きそうになる。
(って、もう何度もCDとDVDを聴いては観てを繰り返してるんだけど)

アナログB面の曲なんて、コレまでライヴで演ること自体ほとんどなかったはず。
アルバート・ブシャールがドラムを叩きながら歌っていた70年代には演りようがない曲もあっただろう。
それが、現行のバンドにアルバートが客演するという形で再現出来てしまった。
アルバートの脱退はクビだったはずだし、いろいろわだかまりもあっただろうに、30年近く経ってこんな機会があろうとは。
長生きするのも悪くない、とか思ったりして。

CDもDVDもライヴ本編は短いが、DVDの”Special Features”にはインタヴューなども収録されている。
(俺の英語力では、集中して聴いても断片的にしかわからない。ちなみに”アルバート・ブーチャード”とカタカナ表記されることの多いAlbert Bouchardはやっぱり”アルバート・ブシャール”と聴こえる)

このライヴの時点でエリック・ブルーム71歳、バック・ダーマ68歳。
ステージには当然ながらかつてのダークな妖気も、元祖ヘヴィ・メタルたる過大な熱量もない。
(21年前に来日した時点で既になかった)
しかし『AGENTS OF FORTUNE』や『SPECTRES』(1977年)のB面で聴かせたような、怜悧でインテリジェントな独特のヘヴィ・ロックはいまだ健在。
改めて、現編成におけるリッチー・カステラーノの存在は大きいのでは。
彼らがまた来日することは99%ないのでは、と思いつつも、かねてより噂される新作アルバムには期待せずにいられない。

エリック・ブルームは今年76歳、バック・ダーマは73歳になるが。
今のところかなり元気そう。
コロナ禍の中、YouTubeに「Godzilla」を上げている。
https://www.youtube.com/watch?v=QvrqwcArNA4


(2025.12.20.改訂)

PLEIADEZ/砂絵のMARTYRIA

PLEIADEZ.jpg最近入手したんだけど、1月からライヴの物販で販売されていたモノとのこと。
(ひょっとしたら既に入手困難か?)
PLEIADEZの初音源…のはずなCD-R。
‟プレアデス”と読みます。
PLEIADESというヴィジュアル系のバンドがいたが、そっちとは無関係です。

1stアルバム『FLIGHT OF CRYSTAL ARROW』(2016年)を某誌のレヴューで絶賛した関西の5人組、CRYSTAL ARROW。
しかし翌17年2月にあえなく空中分解。
その後6月、ベースを除くCRYSTAL ARROWの元メンバー4人が新たに結成したのがPLEIADEZ。
現在のメンバーはNaoko Hirota(ヴォーカル)、hiko(ギター)、Yohichiroh Mori(ベース)、Makoto Shobayashi(ドラム)、Yoshiaki Mori(キーボード)の5人。
ヴォーカルとリズム・セクションは以前このブログで紹介したわさび(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2250.html)と重複する。

「砂絵のMARTYRIA」「SPION」の2曲に、「砂絵のMARTYRIA」のカラオケ…という計3曲。
ざっくり言うと、基本的な方向性はCRYSTAL ARROWに近いながら、よりメタリックになった印象がある。
オジー・オズボーンのバンドにいた頃のドン・エイリーを連想させるシンフォニックなキーボードのイントロからザクザクしたリフで疾走する「砂絵のMARTYRIA」は特に。
前のバンドからそうだったが、いわゆるジャパメタと北欧メタルのいいとこどりをしたようなサウンドを、PLEIADEZではもうちょっとハードに展開したというか。
特に2番の歌唱からギター・ソロに入り、キーボード・ソロを経て再びギター・ソロになる流れなどは、あのBISCAYAあたりを彷彿とさせたり。
(あとRAINBOWの疾走系楽曲なんかも。実際、ギター・ソロのバックで突進するツーバスにはコージー・パウエル在籍時のRAINBOWを思い出す)
‟MARTYRIA”という語にはまるで馴染みがないのだけど、聖堂や廟なんかを意味するらしい。
‟廻る廻る廻る”と繰り返されるサビメロが耳にこびりつく。
かなりカッコいい曲。
彼らの初ライヴの1曲目がこの曲だったとのことで、かなり練り込まれた渾身かつ自信の1曲と思われる。

「SPION」はスローな1曲。
‟SPION”というのも何のことかと思ったら、ドイツ語やルーマニア語でスパイのことらしい。
曲名通り、ちょっとハードボイルドな(?)バラードとでもいうか。
CRYSTAL ARROW時代、バラード曲がハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドのそれよりもむしろフツーにJ-POPっぽいというところは改善すべきかもと思っていたが、この「SPION」はスローながら十分にハードかつヘヴィで、パワー・バラードあるいはロッカ・バラード(←死語?)と呼ぶにふさわしい。

で、CRYSTAL ARROWのアルバムでも確認済とはいえ、Naoko Hirotaこと廣田直子の歌唱力が改めてエグい。
関西のインディ・バンドで歌が上手いというとVELVET★CHERRYのAkaneなんかが思い浮かぶが、廣田のヴォーカルも相当のハイレベル。
パワフルにして柔らかさも備えた堂々たる歌唱…実際、プロを含めても、ここまで歌える人はそう多くないだろう。
(ちなみに2曲の歌詞も彼女が手掛けている)

PLEIADEZがスタートしてから初ライヴ(2018年7月)まで約1年。
それからこのCD-Rまで約1年半。
ライヴの本数もかなり少ない。
(ここに来て新型コロナウイルスの影響で、このバンドをナマで観る日は相当先のことになるだろう)
ゆっくりした歩みながら、アルバムが本当に待たれるバンドです。


(2025.12.12.改訂)