
3月のリリース。
発売日以降、都内に出る度TOWER RECORDSやDISK UNIONで捜し歩いていたが(出来るだけお店で買いたい)一向に見つからず、そうこうするうちにコロナ禍でレコード屋がみんな閉まってしまい(号泣)、結局通販で入手。
タイトル通り、BLUE OYSTER CULTの名盤『AGENTS OF FORTUNE』(1976年)リリースから40年経った2016年に行なわれた再現ライヴを収録したCD+DVD。
”LIVE 2016”としか表記されていない。
何月何日に何処で収録したのかというクレジットは何処にも見当たらない。
『AGENTS OF FORTUNE』再現ライヴは16年4月にニューヨークとLAで行なわれているが、ひょっとするとライヴ録音/撮影のために別に行なわれたライヴなのかも知れない。
(拍手と歓声がえらく少ないのも、ミックスのせいだけではなく少人数相手のスタジオ・ライヴ的な収録だったとすれば納得)
MCも何もかも全部編集で削ってしまっているようで、本当に『AGENTS OF FORTUNE』の楽曲をそのままの順番で演奏しているだけ。
CDは37分しかない。
DVDはどういうワケか1曲目の「This Ain't The Summer Of Love」が収録されておらず、本編は30分ちょっとしかない。
コレはどういうことなのか…撮影に何か問題があったのだろうか。
(この曲だけ作詞がTHE IMPERIAL DOGSのドン・ウォラーなんだが、そのあたりの権利関係でDVD収録だけはダメだとかそういうアレがあったのかも、などと思ってみたりする)
ともあれ。
『AGENTS OF FORTUNE』から実に40年(!)。
このライヴの時点でデビューから44年。
主要メンバーの年齢を考えると、過大な期待は禁物かも知れない、などと思っていたのだが。
いや…内容は最高でした。
(もちろん贔屓の引き倒しみたいなのも十分あるかも知れないとはいえ)
この時点でのBLUE OYSTER CULTは、エリック・ブルーム(ギター、キーボード、ヴォーカル)、ドナルド”バック・ダーマ”ローザー(ギター、ヴォーカル)のオリジナル・メンバー二人に、2004年以降のメンバーであるリッチー・カステラーノ(ギター、キーボード、ヴォーカル)とジュールス・ラディーノ(ドラム)、そしてUTOPIAのカシム・サルトン(ベース)という5人編成。
(カシムはこの後脱退し、現在は1999年の来日時に在籍していたダニー・ミランダが復帰している)
リッチーはエンジニアリング他も担当。
プロデュースは70年代以降サンディ・パールマンの下でバンドのマネージメントとプロデュースに関わってきたスティーヴ・シェンク。
「This Ain't The Summer Of Love」でライヴがスタート。
改めて言っておきますが、この曲は”アイルランドの無名パンク・バンドのカヴァー”ではありません、アメリカのプロト・パンク・バンドTHE IMPERIAL DOGSの代表曲の曲名と歌詞だけいただいてBLUE OYSTER CULTが新たに曲を付けたモノですよ。
以下、メンバーの挙動についてはDVDを観ながらの感想になる。
既に故人であるアレン・ラニエに代わってバック・ダーマがリード・ヴォーカルを担当する「True Confessions」に続く。
エリック・ブルームもバックも、意外と若々しい。
バックは1999年の来日時同様にスタインバーガーを弾いているが、白いボディには漫画に出てくるチーズみたいな穴がいくつも開いている。
エリックとバックを支える他の3人は、堅実なプレイと言うべきか。
(コレはDVDを観始めた時の印象で、観終える頃には特にリッチー・カステラーノとジュールス・ラディーノのプレイに大満足することとなる)
ステージ前方にはモニタースピーカーがなく、全員がイヤーモニターを使用。
99年に観た時にはフツーにモニタースピーカーを使っていたことを思うと、テクノロジーの進歩は凄いわねえ、といかにも年寄りじみた感慨がわいてしまう。
DVDには「This Ain't Summer Of Love」が入っていないので、すぐに「(Don't Fear)The Reaper」になってしまう。
エリック・ブルームは当初ギターを弾かずにコーラスだけ担当しているので、ギターはバック・ダーマが弾く1本だけ。
と、ドラムの脇でカウベルを叩いているのは…オリジナル・ドラマーのアルバート・ブシャールだ!
この時点でちょっと泣きそうになる。
そして泣き叫ぶようなバックのあのギター・ソロ。
バックがギター・ソロに入ったところでエリックがリズム・ギターを弾き始めるが、見ると右手にE-Bowを持ったままで弾いている。
ギター・ソロのあとの超ロング・サスティーンは、エリックがE-Bowで出していた。
エリック・ブルームがギターを置いて、ハンドマイクで「E.T.I.(Extra Terrestrial Intelligence)」を歌う。
リッチー・カステラーノがキーボードから離れてリズム・ギターを担当。
と、エリックは最後のギター・ソロのところでキーボードに向かい、そのままエリックがキーボード、リッチーがギターで曲が終わる。
そしてアルバート・ブシャールがギターを提げてステージに登場!
(この時点でトリプル・ギター)
A面ラストの「The Revenge Of Vera Gemini」が始まる。
作詞を担当したパティ・スミスによる冒頭の語りはアルバムの音源が使われているが、コーラスの一部はバック・ダーマが。
アルバートは髪もヒゲも真っ白ながら、バンド脱退後も自身の活動を続けているだけあってそれほど老け込んだ感じはなく、スリムな体型も維持している。
声も変わっていない。
リッチー・カステラーノのキーボードは音色まで完璧にアレン・ラニエのプレイを再現していて、彼が現在のバンドを支える重要な存在であることを窺わせる。
LPだとここからB面だが、「The Revenge Of Vera Gemini」が終わると間髪入れずジュールス・ラディーノのカウントが入り、「Sinful Love」に突入。
リード・ヴォーカルはもちろん引き続きアルバート・ブシャール。
全員がヴォーカルをとり、クライマックスでは全員がギターも弾く…というかつてのバンドの特色はとっくの昔に失われているものの、それでもジュールス以外の全員が歌うので、コーラスもばっちりだ。
(1999年の来日時、当時のドラマーだったボビー・ロンディネリにギター弾けないことをツッコまないようにと誰かに言われたのを思い出す)
そしてギター・ソロが始まるとマイクの前を離れてステージを跳ね回っていたアルバート(元気!)はソロが終わると同時にマイクの前に駆け戻る。
アルバート・ブシャールがステージに残ったまま、ジュールス・ラディーノのパワフルなイントロから、俺が大好きな「Tattoo Vampire」が始まる。
(この曲も含め、ほとんどの曲がジュールスのカウントから入る)
リッチー・カステラーノがギターに持ち替え、ギター4本!
ただしエリック・ブルームはギター・ソロの時以外はほとんど弾かず、実質的にはほぼ3本。
そしてあの、たった4音のみで弾かれるソロ。
サビのコーラスではアルバートが喉元に手を当てて「アイ~ン」みたいなポーズで(笑)声にヴィブラートをかけている。
続いては「Morning Final」。
エリック・ブルームとリッチー・カステラーノのツイン・キーボード。
(エリックがオルガン、リッチーがピアノの音色の様子)
そしてジョー・ブシャールに代わるリード・ヴォーカルをリッチーが。
コレがまた実にナイスな歌唱。
エリックによる終盤のアナウンス(?)もばっちり再現。
リズム・セクションとSEのみによる「Morning Final」エンディングの間にバック・ダーマとカシム・サルトン以外の3人が位置を変えたり楽器を持ち替えたり。
そしてリッチー・カステラーノがギターを提げたままキーボードを弾き、アルバート・ブシャールがジュールス・ラディーノの横でシンバルを叩く「Tenderloin」。
エリック・ブルームとカシムのツイン・ヴォーカル(!)。
リッチーはキーボード・ソロをアルバム通り完璧に再現した後、キーボードから離れてリズム・ギターを弾くという大活躍。
エンディングでギターとベースを弾きながら4人が並ぶさまは、これぞBLUE OYSTER CULTの醍醐味。
最後はアルバート・ブシャールが12弦アコースティック・ギターとヴォーカル、エリック・ブルームもアコギを手にして「Debbie Denise」。
(この曲もパティ・スミスの作詞。パティのファンでBLUE OYSTER CULT聴いてない人は聴くべきだね…)
楽曲・演奏の素晴らしさ、そしてコレで最後の曲という感慨に、再び泣きそうになる。
(って、もう何度もCDとDVDを聴いては観てを繰り返してるんだけど)
アナログB面の曲なんて、コレまでライヴで演ること自体ほとんどなかったはず。
アルバート・ブシャールがドラムを叩きながら歌っていた70年代には演りようがない曲もあっただろう。
それが、現行のバンドにアルバートが客演するという形で再現出来てしまった。
アルバートの脱退はクビだったはずだし、いろいろわだかまりもあっただろうに、30年近く経ってこんな機会があろうとは。
長生きするのも悪くない、とか思ったりして。
CDもDVDもライヴ本編は短いが、DVDの”Special Features”にはインタヴューなども収録されている。
(俺の英語力では、集中して聴いても断片的にしかわからない。ちなみに”アルバート・ブーチャード”とカタカナ表記されることの多いAlbert Bouchardはやっぱり”アルバート・ブシャール”と聴こえる)
このライヴの時点でエリック・ブルーム71歳、バック・ダーマ68歳。
ステージには当然ながらかつてのダークな妖気も、元祖ヘヴィ・メタルたる過大な熱量もない。
(21年前に来日した時点で既になかった)
しかし『AGENTS OF FORTUNE』や『SPECTRES』(1977年)のB面で聴かせたような、怜悧でインテリジェントな独特のヘヴィ・ロックはいまだ健在。
改めて、現編成におけるリッチー・カステラーノの存在は大きいのでは。
彼らがまた来日することは99%ないのでは、と思いつつも、かねてより噂される新作アルバムには期待せずにいられない。
エリック・ブルームは今年76歳、バック・ダーマは73歳になるが。
今のところかなり元気そう。
コロナ禍の中、YouTubeに「Godzilla」を上げている。
https://www.youtube.com/watch?v=QvrqwcArNA4(2025.12.20.改訂)