METHOD/DEFINITION OF METHOD

METHOD.jpg韓国のメタル・バンドの5thアルバム。
本国では昨年リリースされたそうで、‟第17回韓国ミュージック・アワード”ではベスト・メタル/ハードコア・アルバムに輝いたとのこと。

2002年結成。
METHODとはまたあんまりメタルっぽくないバンド名だが、‟可能な限りすべての音楽的要素を利用して、ヘヴィ・メタルというカテゴリーの中で独自の音楽とメッセージを可能な限り伝える”という意志に基づく命名なのだそうで。
(ACCEPTとかも考えてみるとメタルっぽくない名前だけど、アレもすべてを受容するみたいな意味があったはずだよな)
メンバーはキム・ジェハ(ギター)、ウ・ヨングソン(ギター、ヴォーカル)、キム・ヒョウォン(ベース)、キム・ワンギュ(ドラム)の4人。
4人中3人がキム姓か…韓国って本当にキムさん多いのね。

音楽的にはSLAYER、KREATOR、TESTAMENT、CARCASS、ARCH ENEMY、AT THE GATES、CRASH(韓国のメタル・バンド)なんかの影響を受けたそうだが、確かにギター・ソロのセンスにSLAYERあたりの影響を感じさせる一方で、昔のMETALLICAを思わせるようなリフもあるし、ニュースクール・ハードコアみたいなビート・ダウンのパートもあったり、プログレッシヴな味付けも。
ウ・ヨングソンのヴォーカルはいかにもスラッシュらしい吐き捨てとデス・メタルっぽいグロウルの間を行き来するスタイルで、スラッシュとしてもメロデスとしても聴けるようなタイプのバンド。
スピード一辺倒ではなく曲調は多彩かつメロディアス、「Nothing To Fear」でフィーチュアされた女性ヴォーカルもよいアクセントになっている。
(その「Nothing To Fear」、アコースティックで終わるエンディングもカッコいい)

国内盤にはボーナス・トラックが3曲入っていて、そのうち2曲がライヴ。
スタジオ録音でもメンバーの高いスキルはよくわかるが、ライヴだと更に凄まじい。
特にキム・ジェハのギターとキム・ワンギュのドラム。
大韓メタルは昔のしか知らなかったんだけど、進歩著しいのねー。
(そりゃそうか)

そしてもう1曲のボーナス・トラックはなんとLOUDNESS「Like Hell」(『THUNDER IN THE EAST』収録)のカヴァー。
ヴォーカル・スタイルが全然違うんでなんか別物みたいになってるけど、それはそれで実にユニーク。


『DEFINITION OF METHOD』、本日リリース。


(2025.12.5.改訂)

CONFESS/BURN 'EM ALL

CONFESS.jpgストックホルムの5人組メタル・バンドの3rdアルバム。
ジャケットこそB級っぽいものの、内容かなり良くてびっくり。

結成は2008年。
12年にデビューEP「The Gin Act」を、14年に1stアルバム『JAIL』をリリース。
15年にはアメリカでライヴを行なって好評を博し、17年に2ndアルバム『HAUNTERS』をリリースしている。
そして前作から3年ぶりとなる新作が『BURN 'EM ALL』。
現在のメンバーはジョン・エリオット(ヴォーカル)、ブローマン(ギター)、ポントゥス(ギター)、ルドヴィグ(ベース)、サマエル(ドラム)の5人。
ってかジョン・エリオットって…DEF LEPPARDのジョー・エリオットと紛らわし過ぎるぞ(笑)。

レーベル宣材では‟スリージー”というのが強調されているし、彼らがアメリカで好評を得たライヴというのがMOTLEY CRUEのファンがWHISKY A GO GOで開催している「CRUEFEST HOLLYWOOD」ということで、確かにそのへんのファンにもアピールする音ではあるが、実際のところスリージーとかだけでは片付けられないアルバムになっている。
MOTLEY CRUEとかだけじゃなく、もっとトラディショナルな80年代メタルのファンにも十二分にアピールするサウンド。

2本のギターと引っ掛かりのあるヴォーカルをフィーチュアした、キャッチーかつフックのある楽曲。
そのヴォーカルのジョン・エリオット、声自体がそれほど似ているワケではないのだが、名前の通りと言うべきなのかどうなのか(?)、時々ちょっとジョー・エリオットを思わせる瞬間があったり。
更に、分厚いコーラスもけっこうDEF LEPPARDっぽかったりする。
そのDEF LEPPARDっぽさというのはもちろん(?)『HYSTERIA』以降じゃなく『PYROMANIA』以前の。
かと思えばタイトル曲はツーバスドカドカの疾走ナンバー。

随所に加えられたキーボードが、単なる味付けに終わらないアピールになっている。
それがまたわざとなのかどうなのか、80年代っぽさマシマシな感じに結び付く。
国内盤のみのボーナス・トラックとして、アルバムの最後ではなくど真ん中の7曲目に収録された「The Great Divines」のイントロがほとんどオジー・オズボーン「Mr.Crowley」なのには思わず吹き出してしまった。
(曲自体は切ない感じのバラードで、コレがボーナスというのなら輸入盤ではなく国内盤を買うべきと思わされる)
それに続く「Is It Love」の終盤に登場するキーボードのリフもJOURNEY「Separate Ways」イントロを思わせたり。
「509」のギター・リフがPINK FAIRIES「City Kids」にそっくりなのはホントに偶然だろうが…。

確かにスリージーではあるものの、スリージーという言葉について回りがちなチープさは全然ない。
むしろラスト「One For The Road」のメロディのスケール感とか。
ライヴでのシンガロング必至な感じ。


メタル華やかなりし80年代の音を愛する人にはお勧めの1枚。
『BURN 'EM ALL』、18日リリース。


(2025.12.3.改訂)

AL DI MEOLA/ACROSS THE UNIVERSE

AL DI MEOLA.jpgこの2月に来日したばかりのアル・ディ・メオラの新作。
タイトルからも明らかなとおり、THE BEATLESカヴァー集。
アルは2013年にもBEATLESのカヴァー集を出していて、コレが2作目となる。
(2月の来日でも本作収録の「Hey Jude」を演奏したとのこと)
ジャケットはBEATLESじゃなくてジョン・レノン『ROCK 'N' ROLL』(1975年)へのオマージュだが、BEATLESのジャケットを模するとしたら4人いないとダメ(?)なので、そこでこのアイディアとなったのだろう。

アル・ディ・メオラがトリビュート・アルバム2枚も出すほどTHE BEATLESが好きというのを、今まで全然知らなかった。
そもそもアルのアルバム自体、超久しぶりに聴いたのであった。
ともあれコレは大変ナイス。
アル自身が各種ギターに加えてベース、そしてドラムまでプレイしていて、オリジナルに対する多大なリスペクトをキープしながらも独自性に富んだアレンジで聴かせる。

アコースティックでもエレクトリックでも、基本的には原曲の歌メロに忠実に、一方でちょっとしたオブリガード、あるいは原曲にはなかったトリッキーな展開を聴かせる間奏部分では存分に炸裂する超絶速弾き。
ギター、ベース、ドラムというベーシックな部分はアル・ディ・メオラ自身が担当しているが、他にキーボード、アコーディオン、パーカッション、管楽器も加わっている。
特にスペイン人パーカッショニスト、セルジオ・マルティネスが操る各種打楽器類の音が左右あちこちのチャンネルから斬り込んできて、サウンドに立体感と奥行きを与える。
(「Hey Jude」をはじめとしてドラムレスでセルジオがカホンをプレイする曲も多く、カホンってこんなに多彩な音が出せるんだなあと感嘆)
イタリア人アコーディオン奏者ファウスト・ベッカロッシ(2月の来日にも帯同)の、時にタンゴ風かと思えばミュゼットっぽくもなる多彩な演奏も味わい深い。
また「I'll Follow The Sun」ではランディ・ブレッカー(トランペット)がゲスト参加し、印象的なプレイを聴かせる。

ドラムレスの曲も多く、アコーディオンもフィーチュアしたこの演奏、ジャズなのかフュージョンなのかそれともロックなのか。
つまるところアル・ディ・メオラによるTHE BEATLESとしか言いようがない。
ジャンルを超えたプログレッシヴな解釈でありつつ、紛れもなくBEATLESの音楽。
アル自身は「美しさと喜びに満ちた音世界へのセレブレーション」と称していて、そのコメントからもこのアルバムに対する絶大な自信が窺われる。

それにしても、今年66歳になるというアルの、衰えぬテクニックと艶やかな音色。
先のコメントにもうなずかざるを得ないというモノ。


『ACROSS THE UNIVERSE』、13日リリース。


(2025.12.3.改訂)

MARKO HIETALA/PYRE OF THE BLACK HEART

MARKO HIETALA.jpg1月末のリリース、遅ればせながら紹介。
NIGHTWISHのベーシスト兼ヴォーカリスト、マルコ冷え鱈…じゃなかったマルコ・ヒエタラ(元TAROT~SINERGY他)、初のソロ・アルバム。

NIGHTWISHと言えば初代ヴォーカリスト、ターヤのソロ作『IN THE RAW』を昨年紹介したが。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201909article_26.html
バンドをクビになったターヤがソロとしてのキャリアを積んできた一方で、2001年にNIGHTWISHに加入して以降、3人の歴代女性ヴォーカリストと一緒に歌ってきたマルコ・ヒエタラの方は、54歳にしてソロ・デビューとなった。
意外と言えば意外。

マルコ・ヒエタラ(ベース、ヴォーカル、ギター)以外のメンバーはKOTIPELTOのトゥオマス・ワイノーラ(ギター、シンセサイザー、プログラミング他)、マルコが参加しているNORTHERN KINGSでも弾いていたヴィリ・オイリラ(キーボード、プログラミング)、HAVANA BLACKなどでも叩いていたというセッションマンのアンシ・ニカネン(ドラム)。
他にも曲により管楽器、弦楽器、鍵盤などが参加している。

全曲の歌詞をマルコ・ヒエタラが書いている一方で、ほとんどの楽曲はトゥオマス・ワイノーラとヴィリ・オイリラとの共作で、マルコという人は基本的にバンド志向の人なのだなあと思わされる。
とはいえ全曲を一人で歌うソロ・アルバム。
ここで聴けるのが、NIGHTWISHとは違う彼自身の持ち味だろう。
マルコ自身はハード・プログレと言っているらしいが、NIGHTWISHのシンフォニック/ゴシック志向を大幅に引っ込めて、代わりにNIGHTWISHの一部で聴けるフォーキーな風味を大幅に増量したような感じ。
プログレッシヴ・メタルとペイガン・メタルの中間を行くとでもいうか。
加えて、いわゆるクラシック・ロックからの影響。

特に、ヴァイオリンやヴィオラやチェロをフィーチュアした北欧民族音楽的な不思議なリフに乗せて疾走する「Runner Of The Railways」のカッコよさ。
ソロに入ってから転調し、ストリングスとギターが並走するかと思えば70年代風のオルガン・ソロが炸裂。
かなりしびれる。
そして抒情的な曲からパワフルな曲まで、説得力十分のマルコ・ヒエタラの歌唱。
時にロニー・ジェイムズ・ディオを思わせる部分もあり、かつてブルース・ディッキンソン脱退時にIRON MAIDENのヴォーカリスト候補に挙がっていたという話にも納得。

アルバム終盤は(多分)敢えてスローな曲で締め。
ベースのイントロで始まる「I Dream」はそのままベース1本の弾き語りにキーボードがかぶさり、そこにギターとドラムが入ってくる。
5分半ほどの楽曲で、1分半ほどはヴォーカルとベースのみという。
そしてラストの「Truth Shall Set You Free」は室内楽風のストリングスを配して切々と歌われるアコースティック・バラード。

まさに満を持してという感じの、堂々たる1枚。


(2025.12.1.改訂)

HOLYCIDE/FIST TO FACE

HOLYCIDE.jpgマドリードのメタル・レーベル、エクストリーム(Xtreem)・ミュージックのオーナーであり、AVULSEDのヴォーカルでもあるデイヴ・ロットン(すげえ名前…)が2004年に結成したバンドの2ndアルバム。

2004年結成でありながら、初のデモをリリースしたのが13年、1stアルバムは17年と、下積み(?)というか準備期間が長い。
今回の2ndアルバムも前作から3年ぶりとなる。
メンバーはデイヴ・ロットン(ヴォーカル)、ミゲル・バレス(ギター)、ダニ・フェルナンデス(ベース)、サルヴァ・エステバン(ギター)、ホルヘ・ウトレラ(ドラム)の5人。
FLOTSAM & JETSAM、ONSLAUGHT、DRIなんかとツアーしたことがあるという。

ジャケットが実にイイ。
マウント・ポジションで殴られてるの…ドナルド・トランプじゃん(笑)。
実際アルバム1曲目は、トランプの声をサンプリングしたと思われる「Intrump」でスタート。
本編ラストの「Fake Libertarian」という曲名からしても、政治的主張が強そうなバンド。

音の方は、テクニカルなスラッシュ・メタル。
デス・メタルでもブラック・メタルでも、テクニックを極めるとジャジーな方に行ったりシンフォニックな方に行ったりゴシックな方に行ったりアトモスフェリックな方に行ったりしがちだけど、このバンドはテクニカルながらも苛烈なスラッシュ・メタルという基本線をがっちり押さえている。
基本スラッシュそのものの吐き捨て系ながら、時々デスっぽさも聴かせるデイヴ・ロットンのヴォーカルを中心に、弾きまくるギターと弾きまくるベースと叩きまくるドラム。
一聴した時点では特にドラムのハイテクぶりに耳を惹かれたが、繰り返し聴いてみるとギターもベースもかなり凄い。
それでいて勇壮かつシンガロングを誘うシンプルでキャッチーなコーラスもフィーチュアされていて。

アルバム本編にもRECIPIENTS OF DEATHのカヴァー「The Aftermath」が収録されているが、国内盤ボーナス・トラックもカヴァーで、DETENTE「Losers」とDARK ANGEL「Merciless Death」。
(DETENTEって俺知らない…)

かなり強力な1枚。
12日リリース。


(2025.11.28.改訂)

Otus/MURK

Otus.jpg2012年に結成された東京の4人組の1stアルバム。

メンバーはTakashi Kawamura(ベース)、Tatsunobu Sakuraoka(ギター)、Satsuki Makimura(ヴォーカル)、Tomohiro Sekino(ドラム)。
Kawamuraはベースだけでなく大半の歌詞も手掛けていて、彼がバンドのリーダーのようだ。
バンド名の読みは“オータス”でいいのだろうか。
英和辞典にも載っていなかったのでネットで検索してみたら、ラテン語でフクロウの一種のことだとか。
ジャケットを見て納得。
アルバム・タイトルの『MURK』というのも初めて見た言葉だが、“暗黒”という意味で、“Darkness”と同義とのこと。
人間の暗部を直視し掘り下げるというのがバンドのコンセプトらしい。

1曲目「Drop Back」、不穏なノイズから突進するハードコア。
そこにちょっとデス・メタル気味でもあるヴォーカルが乗る。
ギターもメタリックな刻みを聴かせる一方で、歪まない音色でなんともヘンテコなリフを奏でたりも。
レーベル(デイメア・レコーディングス)の宣材には“ダークなハードコアに現代的なヘヴィさを加え、90'sハードコアのエッセンスを交えてアップデイトしたサウンド”とある。
概ねその通りの音だと思う。

全14曲中、半分の7曲が1分台。
3分以上の曲は1曲しかない。
(残る6曲は2分台)
ダークにへヴィに、ドカドカと突進する。
そんな短い曲の中で、隙あらばスローやミドルに転じたりと展開はめまぐるしい。
1曲の中での展開だけではなく、7曲目「Malignance」から9曲目「Fear Of Deprivation」まではちょっと組曲風だったりと、かなりいろいろなことをやっている。
怒涛の2ビートにブラスト、かと思えばトライバルなビート…と自在なドラムが素晴らしい。
最後はヘヴィな中に余韻を残して終わる。

マスタリングはCONVERGEやFULL OF HELL、SUNN O)))、SLEEPなどを手掛けたブラッド・ボートライト。
実際CONVERGEのファンなんかにはかなりアピールすると思う。

『MURK』、本日リリース。


(2025.11.22.改訂)

木幡東介/シンクレディズム/反植民地ドラミング

木幡東介 シンクレディズム.jpg昨年10月のリリース。
12月に入手していたところが、紹介漏れていた。

木幡東介(マリア観音)のソロCD-R新作。
基本的にインストゥルメンタルで、ドラムを中心とした打楽器やベースを木幡が一人で多重録音している。
昨年10月に録音して、すぐにCD-Rに焼いてリリースしたらしい。

“基本的にインストゥルメンタル”と書いたのは、「口頭メトロノーム1」と「口頭メトロノーム2」の2曲で木幡東介の声が聴こえるから。
ただしそれはいわゆるヴォーカルではなく、曲名からもわかるように木幡が口でメトロノーム的な音を出し、それに合わせてドラムとベースを演奏するというモノ。
この“口頭メトロノーム”というのが、通常想像されるいわゆるメトロノームとはまるっきり違っていて。

木幡東介が中野ギャラリー天獄で開催している「アンダーグラウンド音楽教室」の資料から引用すると、“口頭メトロノームによるレコーディング”とは、

①先ず、ヴォイスパーカッション宜しく好き勝手に口頭でリズムを数分間レコーディングする。
 この時決して数字で認識しない。
 この段階で自分に刷り込まれているリズムの種類がわかってしまう。
②これに合わせ他のパートをオーバーダビングする。
 寸分違わず合うまでやる。
 自分の特徴(段々と早くなる、段々と遅くなる、前のり、後のり、特定の位置にアクセントが来る 等)を自分の体内に刷り込んでゆく。
やる事はこれの繰り返しである。パートを増やしても良い。これだけであるが、合わせられるまでにはメトロノーム(機械)の約10倍の時間がかかるが、これが紛う事無き自分の独自のリズムである。とにかく自分の肉体に自分のリズムを刷り込み続ける。
これを私は(これによって再現可能になる)本能の制度化と呼んでいる。
巷の音楽教育ではタブーである、リズムが不安定、弱い、走る、もたる 等は、この制度化によって全て個性になり武器になる。

…とのこと。

木幡東介が自身のソロ音源でやっているのもまさにコレで。
なので、木幡がインドのタブラ奏者のごとく「どどどどだっだっだっだっだっだっだだ♪」と口でやっているリズムというのはメトロノーム(機械の方)に則ったジャストなリズムではなく、完全に木幡自身のリズムに他ならない。
西洋の音楽教育に従属しない独自のリズム・アプローチこそが、タイトルにある“反植民地ドラミング”ということなのだろう。
その木幡独自の(一般的にはまるっきりジャストじゃない)リズムを、口頭とドラム、更に他の打楽器類やベースなどと完全に一致させて重ね録り。
そう出来るようになるまでの修練の過程を思うと気が遠くなるモノがある。

そもそも彼はなんでそんなことをやっているのか?
それは、これまた「アンダーグラウンド音楽教室」の資料から引用すると、

その目的は、自己という動物の偽らざる姿の表現である。
これがどれだけ自覚的に表現されているか?
合言葉は、自己を窮めれば普遍に通ず、である。
窮めなければ、単なる独り善がりである。
(中略)
自己の妥協の低さを、世のため人のため観客のためと置き換えてはならない。

…とのこと。

…なんて書いてくると堅苦しいイメージを感じる人もいるかも知れないが、聴いている分には楽しいですよ。
7曲収録されているうち、個人的に特に気に入っているのは「和獣の王」。
「和獣の王」とはニホンオオカミかヒグマか知らないけど、不穏な静寂(間)とほとんど割れんばかりに歪んだ大音量の間を行き来する演奏は、確かに曲名から連想される通り。
続く「魚葬」でのヘヴィなベースとドラムのコンビネーションには、ヤニック・トップ在籍時のMAGMAを思い出したり。

『シンクレディズム/反植民地ドラミング』、マリア観音のライヴの物販、あとエレクトレコードの通販でも入手可能です。


(2025.11.21.改訂)

THE SCHIZOPHONICS/PEOPLE IN THE SKY

SCHIZOPHONICS.jpg昨年10月のリリース。
2009年にサンディエゴで結成された二人組の(一応)2ndアルバム。
13年に自主制作でアルバムを出しているはずだが、公式(?)には17年の『LAND OF THE LIVING』が1stアルバムということになっている様子。

メンバーはパット・ビアズ(ギター、ヴォーカル)とレティ・ビアズ(ドラム)の男女二人。
『LAND OF THE LIVING』では3人のベーシストが参加していたようだが、元々パットとレティの二人で結成され、この二人が正式メンバーらしい。

ジャケットやアルバム・タイトルから想像されるようなサイケ成分は少ない。
(タイトル曲のエコー処理ぐらいか)
ベースレスの二人組という編成から想像しがちなブルーズ色も希薄。
1曲目からわりと60年代ガレージ・パンクっぽい曲調で(オルガンが入っているのかなと思ったけど、それっぽい音も全部ギターで賄っている様子)、しかもあのマイク・スタックスがバッキング・ヴォーカルで参加しているので、最近ではあまり見かけなくなったレトロなやつかなと思ったら、えらく勢いがある。
2曲目の突進するギター・リフなんかはほとんどBIG BLACK。
MC5、ジェイムズ・ブラウン、イギー・ポップ、ジミ・ヘンドリックス、リトル・リチャード、THE SONICSあたりから影響を受けたという。
実際、初期のMC5(アルバム・デビュー以前)を思わせるような楽曲もけっこうある。
それにしてもえらく勢いがある。
(もう1回言ってみた)
非常にナイス。
例えばTHE JIM JONES REVUEあたりが好きな人にはかなりアピールすると思う。

ROCKET FROM THE CRYPTやTHE WOGGLESあたりと対バンすることが多いというのも、わりと納得。
地元サンディエゴでは、THE DAMNEDの前座を務めたりもしたという。
エネルギッシュでかなりカッコいいガレージ・サウンドが聴けます。
お勧め。


追記:
このバンド、その後来日もしたけど、行けんかった…。

(2025.11.21.)

ALICE COOPER/BREADCRUMBS

ALICE COOPER.jpg紹介が遅れたが。
“ショック・ロックの帝王”アリス・クーパーがここに来てデトロイト・ロックのルーツに回帰した…このブログ的には絶対に無視出来ない1枚。

もっとも、それはいきなりではなかったのだ。
このEPの1曲目「Detroit City 2020」は、アリス・クーパーが2003年のアルバム『THE EYES OF ALICE COOPER』に収録していた楽曲の再録。
モータウンやイギー・ポップやMC5やテッド・ニュージェントやスージー・クアトロなどの思い出を歌った1曲だが、俺はその時点でアリスが60年代のデトロイトを歌っていたということを、まったくチェックしていなかった。
(何しろ80年代末以降のアリスはすっかりメタル界の人と思っていたので…)

で、今回のミニアルバムでは60~70年代デトロイト・ロックへの回帰がもの凄く露骨。
何しろリード・ギターがGRAND FUNK RAILROADのマーク・ファーナー(!)で、ベースがJAZZANOVAのポール・ランドルフ、ドラムがMITCH RYDER & THE DETROIT WHEELSのジョニー“ビー”バダニェック(!!)。
BOB SEGER & THE LAST HEARD「East Side Story」カヴァー、スージー・クアトロ「Your Mama Won't Like Me」カヴァーにTHE DETROIT WHEELS「Devil With A Blue Dress On」カヴァー(ちょっとジャズ風)、MC5「Sister Anne」カヴァー。
新曲「Go Man Go」ではMC5のウェイン・クレイマーがギターを弾いている。
そればかりかTHE DIRTBOMBS「Chains Of Love」をカヴァーしていてミック・コリンズがバッキング・ヴォーカルで参加しているという、60~00年代デトロイト・ロック満艦飾状態。
しかもそれらの楽曲を、アリス・クーパーの全盛期を演出したあのボブ・エズリンがプロデュースしているというのだから。
(ボブはキーボードやパーカッションやバッキング・ヴォーカルも担当)

GRAND FUNK RAILROADを離れてクリスチャン・ロック方面に行ってしまったと思っていたマーク・ファーナーのギターもかなり強力。
ジョニー・ビーのドラムもまったく問題ない現役ぶりだ。
70歳を超えたアリス・クーパーのヴォーカルも変わらずワイルド。
(しかし「Devil With Blue Dress On」のアレンジを変えたのは、流石に全盛期のミッチ・ライダーには太刀打ち出来ないと思ったのかも)

海外ではアナログ10inchという変則的なリリースだが、国内盤のみCD。
11月29日より発売中。
超お勧め。


(2025.11.18.改訂)

SCREAMER/HIGHWAY OF HEROES

SCREAMER.jpgスウェーデンのメタル・バンドによる4thアルバム。
コレがまた、モダンな要素がいっこもない80年代風で実にすがすがしくさえある。

デンマークとの国境に近いユングビューで2009年に結成。
メンバー交代を重ねつつ、11~17年の間に3作のアルバムをリリース。
初期はベーシストがヴォーカルを兼ねる4人編成だったというが、15年からは専任ヴォーカリストを擁する5人組となり、17年から現編成。
昨年11月には初来日も果たしているのだそうで。
現在のメンバーはアンドレアス・ウィクストローム(ヴォーカル)、アントン・フィンガル(ギター)、デヤン・ロシック(ギター)、フレドリック・スヴェンソン・カールストローム(ベース)、ヘンリック・ピーターソン(ドラム)。

いわゆるNew Wave Of Traditional Heavy Metalの盛り上がりの中から登場したバンドらしく、本当に80年代風の古典的なヘヴィ・メタルを聴かせる。
随所でツイン・リードをフィーチュアしていることもあって、海外のサイトではJUDAS PRIESTあたりを引き合いに語られていたりもするものの、個人的にはむしろNWOBHMっぽいと感じる。
特に、1979~80年あたりに出て来たバンドじゃなく、81~83年ぐらいに出てきたようなバンド…例えばPERSIAN RISKとかTOKYO BLADEとか。
(あと、ジョン・サイクスが抜けた後のTYGERS OF PAN TANGとか。いずれも似ているというのとは違うけど)
その感覚はB級感ということになるのかも知れないが、そういうのがむしろたまらんという人は多いと思う。
アンドレアス・ウィクストロームのヴォーカルも典型的なハイトーンじゃなくドスの利いたミドル中心で、サビでひっくり返ったシャウトが飛び出すあたりとか、実にイイ感じ。

B級感と言えば、ジャケットのよくわからない感じも。
アルバム・タイトルがジャケットの隅に斜めに入ってるデザインとか、このへんはもう狙っているとしか思えない。
曲名がまた「Shadow Hunter」とか「Rider Of Death」とか「Sacrifice」とか「Towers Of Babylon」とかコテコテで。

たたずまいにB級感を漂わせつつ、楽曲と演奏はB級じゃない。
多分80年代の英国メタルが本当に好きでたまらないのか、あるいは相当に研究しているのか。
リフはどの曲も疾走感があって、ソロはあくまでメロディアスで必要以上の速弾きなどせず。
ベースはスティーヴ・ハリスあたりの影響を感じさせるような自己主張を時々入れてくる。
そしてイマドキっぽさが全然ない生々しいプレイと音作りのドラム。
このアルバムで初めて知ったバンドだけど、実にナイスです。

国内盤はライヴ・テイク2曲がボーナス・トラックとして収録され、300枚限定リリース。
25日より発売中。


(2025.11.17.改訂)