
2日。
行ってきましたイギー・ポップ。
ライヴ盤『TELLURIC CHAOS』(
https://lsdblog.seesaa.net/article/202107article_17.html)に収録された2004年3月22日・渋谷AXでのTHE STOOGES以来、実に21年ぶり(!)の生イギーだった。
自宅を出てから2時間近くかかって有明にたどり着く。
東京GARDEN THEATER。
ガーデンなんとかってのは全部恵比寿にあると思ってたから、アクセスを確認して「あ、有明?」となったよ(笑)。
入場前に、隣接する商業ビルに入ったんだけど、そこでもイギー・ポップの曲が流れている。
気が利いてるじゃん。
で、入場して場内を確認する。
喫煙所があるのが嬉しい。
フロアでは主にガレージ・パンクが流れている。
相当数の知り合いが来ているはずだったが、何しろデカいハコで、人も多い。
結局6人しか会わなかった。
(もう一人遠目に見かけたけど)
やはりというか、当日券が出ていた。
”パンクのゴッドファーザー”イギー・ポップといえど、日本ではキャパ8000人の会場を埋めるのは難しいか…と思ったのだが。
開演時刻が近付くにつれて人がひしめくフロア。
それでも、前に行きたい人、後ろで観たい人、それぞれ好きな位置に立てるだけの隙間はあったと思う。
定刻の19時ジャストにオープニング・アクトのザ・クロマニヨンズが登場。
公演の直前になって彼らの出演が決定したのは、やはり前売りチケットの売れ行きが思わしくなかったからでは、と推測する。
甲本ヒロトは20年近く前に某所で見かけたことがあったのだが、ライヴを観るのは初めて。
THE BLUE HEARTSのデビューからもう40年近く経っているのに、ヒロトとマーシーの見た目にあまり変化が感じられないのは凄いね。
「どんどんやらせてくれ!」と言いながら約25分を駆け抜けた。
ザ・クロマニヨンズの演奏が終わるのと同時にロビーに出て、トイレを済ませてビールを買おうとしたら。
1階のドリンクカウンターは開演と同時に終了したという。
「ふ、ふざけんな!」と思ったが、2階(バルコニー席の入り口があるフロア)でもドリンクやフードを売っていた。
どうにか生ビール(800円)をゲット。
俺は身長があるせいで前とか真ん中とかに行くとかなり邪魔になるので(あとステージ前でギチギチになって観るのとかもう無理…)、それなりに前だけど脇の方、でフェンスにもたれる。
(それでも2004年にTHE STOOGESを観た時よりかはかなり前の方)
ザ・クロマニヨンズがはけてから約30分、20時を待たずに暗転。
(思ったより早い)
バンドのメンバー(ギター2本と2管のホーンズを含む7人という、過去のイギー・ポップのバック・バンドでも類を見ない大人数)に続いて、遂にイギー御大登場。
”ろおおおおおお!!”という叫びから、「T.V.Eye」がスタート。
おおお、『TV EYE 1977 LIVE』(1978年:
https://lsdblog.seesaa.net/article/201708article_27.html)を思い出させるではないですか。
登場時には黒いベストを着ていたイギー、歌い出す前にベストを脱いで上半身裸に。
(何故着て出てくる…)
そして「Raw Power」「I Got A Right」と、70年代初頭から前半にかけてのTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGES楽曲が続く。
キーボードは俺が89年1月(36年前!)に初めてイギーのライヴを観た時にも帯同していたシーマス・ビーゲン(元MADNESS)。
「Raw Power」では、”キンキンキンキキン♪”と鳴っていた、アルバム『RAW POWER』(73年)でのピアノの音がそのまま再現されている。
それにしても。
元々小さかったイギー・ポップ、更に縮んでいるな。
皮膚にはたるみが目立ち(一方で肩の筋肉は盛り上がっている…)。
何より、片足を引きずってぎっこんぎっこんと歩くその姿。
イギーは背骨が曲がっているだけでなく、左右の脚の長さがかなり違っているということはよく知られていると思うが。
1989年のイギーはもの凄いスピードで走っていたし、2004年に観た時もけっこうな勢いで動き回っていた。
しかし今はそうではない。
”びっこ”を引き引き歩く姿は、痛々しくさえ見える。
何しろ47年生まれ、今月78歳という、尾木ママや泉ピン子や岸部一徳と同い年(!)のおじいちゃんなのだ。
だがしかし。
それでもイギー・ポップは、間違いなくイギー・ポップなのだった。
観客とともに”Fuck”を連呼(笑)。
そこからの「Gimme Danger」。
1972~73年頃の裏返るような高音こそ出さないものの、50年以上前のどの曲もまったく問題なく歌いこなす。
しかも「Gimme Danger」のようなスロー/ミドル系では、かつてなかったほどの深みある声を聴かせるのだ。
ただ者ではない、と言うよりも、かなりとんでもない。
ここで初めてソロのレパートリー「The Passenger」。
シーマス・ビーゲンのオルガン・ソロが入るアレンジ。
イギー・ポップ2019年のアルバム『FREE』(
https://lsdblog.seesaa.net/article/201910article_6.html)のプロデューサーでもあるレロン・トーマス(トランペット)とコリー・キング(トロンボーン)のホーンズがフィーチュアされると、観客の”ら~ら~ら~ら~らららら~♪”という大合唱が起きる。
続いて「Lust For Life」。
イギーは観客の手を引いてステージ上に引っ張り上げようとしている様に見えたが、逆に倒れ込む。
すぐに飛んでくるスタッフ。
そしてこのあたりからステージに上がったりクラウドサーフしたりする観客が出始める。
「Death Trip」から「Loose」。
ここでもイギー・ポップはフロアにダイヴするというより偶然落ちた様に見える。
やはりすぐにスタッフが飛んできてステージに引き戻される。
昔の様に観客の頭上をサーフし続けることはない。
しかしイギーはどんな状態になってもマイクを手放さず、歌い続ける。
そして「I Wanna Be Your Dog」「Search And Destroy」「Down On The Street」「1970」とTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGES問答無用の定番曲が続く。
ところでこのへんの曲にホーンズって…ひょっとしてイギーはSTOOGES楽曲をブラスでカヴァーするTHE RIDICULOUS TRIO(
https://lsdblog.seesaa.net/article/201703article_13.html)を聴いていただろうか?
(あとホーンズはコーラスも担当していた)
更に全然定番曲ではない(?)IGGY AND THE STOOGES「I'm Sick Of You」。
1993年頃のライヴでは演奏されていたものの、近年のステージでは聴かれなかったのでは、と思われる1曲。
THE STOOGES以来、イギー・ポップのバンドはギター1本のことがほとんどだったが(あとはキーボードと兼任だったりイギー自身がギターを弾いたり)、最近ギター2本の編成(今回リード・ギターは基本的にYEAH YEAH YEAHSのニック・ジマー)になっているのは大正解で、多くの曲でスタジオ作を再現するかのようなサウンドを聴くことが出来た。
一方でTHE STOOGESをはじめ、80年代頃までのイギー・ポップが組んできたバンドのような、イギーと演奏陣の有機的/自発的な絡み合いのようなモノは、流石にもうあまり期待出来ないのだなと思ったりも。
本当に素晴らしいプレイだったけれど、あくまできちんとアレンジされた”バック・バンド”の演奏だ。
でもそれに対して不満を言っても詮無かろう。
とにかく完璧な演奏陣を従えた、イギーの素晴らしい歌を楽しめばよい。
何しろ俺が1989年に初めて観た時からもう36年も経っているのに、おじいちゃんのイギー、イケてる声だけじゃなく、ますますかわいくてチャーミングなんだから。
ここでソロのレパートリーに戻り、イギー・ポップが椅子に座っての「Some Weird Sin」。
そこからいきなりハードな「Frenzy」。
ここまでの最新作『EVERY LOSER』(2023年:
https://lsdblog.seesaa.net/article/497037591.html)から。
そして、短い集団即興に「Nightclubbing」の音源がかぶさる。
(ここはぶっちゃけ、そのまんま「Nightclubbing」を演ってくれればな、と思った)
続いて演奏された曲だけ、正直「コレなんだっけ…?」となった。
ああ、『EVERY LOSER』の「Modern Day Rip-Off」か。
そして『NEW VALUES』(1979年)からの「I'm Bored」(イギー・ポップがマイクスタンドをぶん投げる!)に、『BLAH-BLAH-BLAH』(86年)からの「Real Wild Child」。
3日前のフェスティヴァル「PUNKSPRING」では「Frenzy」あたりからノリ切れない観客が見られたとかいうが、イギーのファンだけが大量に詰めかけたこの日の単独ライヴではあまり有名じゃないソロ作の曲でも大盛り上がりだ。
(いや、「Real Wild Child」は当時そこそこヒットしている)
イギーはマイクをぶん投げたりステージから降りたり、いよいよ最高潮。
昔の様にお客をどんどんステージに上げたり、「PUNKSPRING」の様にフロアを練り歩いたりではなかったものの、イギーも観客もヒートアップ。
その後イギー・ポップもバンドもステージを去ることなくアンコールに入る。
(ぶっちゃけ今のイギーには、いったん引っ込んでまた出て来る方が逆にしんどいのではと思われる)
『NEW VALUES』の「Five Foot One」から、THE STOOGES「L.A.Blues」的な集団即興。
ここまで1時間半。
77歳のおじいちゃんが裸で暴れるだけじゃなく素晴らしい歌を聴かせる、夢のような1時間半でした。
個人的には…ホーンズをフィーチュアした編成なら、『BRICK BY BRICK』(1990年)からの「Home」とかを演ってほしかった。
絶対カッコよかったはず。
まあそれはそれとして。
コロナ禍以降いつでもとにかく早く帰って早く寝たい俺なのだが、この日ばかりはまっすぐ帰る気になれず。
行きは新橋からゆりかもめだったんだけど、帰りは国際展示場からりんかい線に乗って新宿に移動し、ゴールデン街でちょっとだけ飲んで帰宅。
帰って更に飲みました。
1989年に初めてイギー・ポップのライヴを観て「ああ、もう死んでもいい!」と思った。
2004年に再結成THE STOOGESを観て、やっぱり「ああ、もう死んでもいい!」と思った。
2025年に4回目のイギーを観て…「よし、もうちょっと生きるぞ、死ぬまで生きるぞ」と思っている俺がいる(笑)。