楠木康平@エルミこうのす

20250430.jpg4月30日。

前夜に渋谷で飲んだら、財布に1000円ちょっとしかなくなった。
30日は出版社からお金が振り込まれているはず。

駅前のATMで金を下ろし、駅ビルを抜けていこうと思ったら。
あら、インストアライヴが始まった。

インストアライヴ、5年ぶりに観た。
そうか、前回はコロナ禍の前じゃないか。

楠木康平という人。
全然知らない。
それもそのはず、MCを聞けばこの1月15日にデビューしたばかりというド新人。
2001年生まれの23歳。
福島県郡山市出身。
23年の日本クラウンの新人オーディションで準グランプリを獲得したのだそうで。
客席は満員で、サイリウムを持った女性も多い。

いわゆる演歌/ムード歌謡。
ありがちと言えばありがちな感じ。
しかし、キャッチフレーズが”魅惑の裏声ボイス”。
なるほど、随所にファルセットが入る。

驚いたのは、オヨネーズ80年代の大ヒット曲「麦畑」のカヴァー。
一人で男声と女声のパートを、地声とファルセットで歌い分けるのである。
コレはお見事。

物腰や話し方など、中性的な感じ。
同じ場所で10年近く前に観た観月ゆうじもそうだったけど、演歌系で性別不明っぽいキャラって、氷川きよし以来の流れとしてあるのだろうか。
あとこれまた観月ゆうじ同様、歌いながら客席に分け入って観客と握手して回っていた。

MCも新人離れしたよどみないモノで、デビューから3ヵ月半ほどの間にキャンペーンでショッピングモールなどを廻って相当の場数を踏んでいるであろうことが窺われた。
”魅惑の裏声ボイス”を磨いて紅白を目指していただきたいですね。

彼に限らず、地道な営業を続ける未来のスターたちに幸あれと。

IGGY POP@有明GARDEN THEATER

IGGY POP 2025.jpg2日。
行ってきましたイギー・ポップ。
ライヴ盤『TELLURIC CHAOS』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202107article_17.html)に収録された2004年3月22日・渋谷AXでのTHE STOOGES以来、実に21年ぶり(!)の生イギーだった。

自宅を出てから2時間近くかかって有明にたどり着く。
東京GARDEN THEATER。
ガーデンなんとかってのは全部恵比寿にあると思ってたから、アクセスを確認して「あ、有明?」となったよ(笑)。
入場前に、隣接する商業ビルに入ったんだけど、そこでもイギー・ポップの曲が流れている。
気が利いてるじゃん。
で、入場して場内を確認する。
喫煙所があるのが嬉しい。
フロアでは主にガレージ・パンクが流れている。

相当数の知り合いが来ているはずだったが、何しろデカいハコで、人も多い。
結局6人しか会わなかった。
(もう一人遠目に見かけたけど)

やはりというか、当日券が出ていた。
”パンクのゴッドファーザー”イギー・ポップといえど、日本ではキャパ8000人の会場を埋めるのは難しいか…と思ったのだが。
開演時刻が近付くにつれて人がひしめくフロア。
それでも、前に行きたい人、後ろで観たい人、それぞれ好きな位置に立てるだけの隙間はあったと思う。

定刻の19時ジャストにオープニング・アクトのザ・クロマニヨンズが登場。
公演の直前になって彼らの出演が決定したのは、やはり前売りチケットの売れ行きが思わしくなかったからでは、と推測する。
甲本ヒロトは20年近く前に某所で見かけたことがあったのだが、ライヴを観るのは初めて。
THE BLUE HEARTSのデビューからもう40年近く経っているのに、ヒロトとマーシーの見た目にあまり変化が感じられないのは凄いね。
「どんどんやらせてくれ!」と言いながら約25分を駆け抜けた。

ザ・クロマニヨンズの演奏が終わるのと同時にロビーに出て、トイレを済ませてビールを買おうとしたら。
1階のドリンクカウンターは開演と同時に終了したという。
「ふ、ふざけんな!」と思ったが、2階(バルコニー席の入り口があるフロア)でもドリンクやフードを売っていた。
どうにか生ビール(800円)をゲット。
俺は身長があるせいで前とか真ん中とかに行くとかなり邪魔になるので(あとステージ前でギチギチになって観るのとかもう無理…)、それなりに前だけど脇の方、でフェンスにもたれる。
(それでも2004年にTHE STOOGESを観た時よりかはかなり前の方)

ザ・クロマニヨンズがはけてから約30分、20時を待たずに暗転。
(思ったより早い)
バンドのメンバー(ギター2本と2管のホーンズを含む7人という、過去のイギー・ポップのバック・バンドでも類を見ない大人数)に続いて、遂にイギー御大登場。
”ろおおおおおお!!”という叫びから、「T.V.Eye」がスタート。
おおお、『TV EYE 1977 LIVE』(1978年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201708article_27.html)を思い出させるではないですか。
登場時には黒いベストを着ていたイギー、歌い出す前にベストを脱いで上半身裸に。
(何故着て出てくる…)
そして「Raw Power」「I Got A Right」と、70年代初頭から前半にかけてのTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGES楽曲が続く。
キーボードは俺が89年1月(36年前!)に初めてイギーのライヴを観た時にも帯同していたシーマス・ビーゲン(元MADNESS)。
「Raw Power」では、”キンキンキンキキン♪”と鳴っていた、アルバム『RAW POWER』(73年)でのピアノの音がそのまま再現されている。

それにしても。
元々小さかったイギー・ポップ、更に縮んでいるな。
皮膚にはたるみが目立ち(一方で肩の筋肉は盛り上がっている…)。
何より、片足を引きずってぎっこんぎっこんと歩くその姿。
イギーは背骨が曲がっているだけでなく、左右の脚の長さがかなり違っているということはよく知られていると思うが。
1989年のイギーはもの凄いスピードで走っていたし、2004年に観た時もけっこうな勢いで動き回っていた。
しかし今はそうではない。
”びっこ”を引き引き歩く姿は、痛々しくさえ見える。
何しろ47年生まれ、今月78歳という、尾木ママや泉ピン子や岸部一徳と同い年(!)のおじいちゃんなのだ。

だがしかし。
それでもイギー・ポップは、間違いなくイギー・ポップなのだった。
観客とともに”Fuck”を連呼(笑)。
そこからの「Gimme Danger」。
1972~73年頃の裏返るような高音こそ出さないものの、50年以上前のどの曲もまったく問題なく歌いこなす。
しかも「Gimme Danger」のようなスロー/ミドル系では、かつてなかったほどの深みある声を聴かせるのだ。
ただ者ではない、と言うよりも、かなりとんでもない。

ここで初めてソロのレパートリー「The Passenger」。
シーマス・ビーゲンのオルガン・ソロが入るアレンジ。
イギー・ポップ2019年のアルバム『FREE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201910article_6.html)のプロデューサーでもあるレロン・トーマス(トランペット)とコリー・キング(トロンボーン)のホーンズがフィーチュアされると、観客の”ら~ら~ら~ら~らららら~♪”という大合唱が起きる。
続いて「Lust For Life」。
イギーは観客の手を引いてステージ上に引っ張り上げようとしている様に見えたが、逆に倒れ込む。
すぐに飛んでくるスタッフ。
そしてこのあたりからステージに上がったりクラウドサーフしたりする観客が出始める。

「Death Trip」から「Loose」。
ここでもイギー・ポップはフロアにダイヴするというより偶然落ちた様に見える。
やはりすぐにスタッフが飛んできてステージに引き戻される。
昔の様に観客の頭上をサーフし続けることはない。
しかしイギーはどんな状態になってもマイクを手放さず、歌い続ける。
そして「I Wanna Be Your Dog」「Search And Destroy」「Down On The Street」「1970」とTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGES問答無用の定番曲が続く。
ところでこのへんの曲にホーンズって…ひょっとしてイギーはSTOOGES楽曲をブラスでカヴァーするTHE RIDICULOUS TRIO(https://lsdblog.seesaa.net/article/201703article_13.html)を聴いていただろうか?
(あとホーンズはコーラスも担当していた)

更に全然定番曲ではない(?)IGGY AND THE STOOGES「I'm Sick Of You」。
1993年頃のライヴでは演奏されていたものの、近年のステージでは聴かれなかったのでは、と思われる1曲。
THE STOOGES以来、イギー・ポップのバンドはギター1本のことがほとんどだったが(あとはキーボードと兼任だったりイギー自身がギターを弾いたり)、最近ギター2本の編成(今回リード・ギターは基本的にYEAH YEAH YEAHSのニック・ジマー)になっているのは大正解で、多くの曲でスタジオ作を再現するかのようなサウンドを聴くことが出来た。

一方でTHE STOOGESをはじめ、80年代頃までのイギー・ポップが組んできたバンドのような、イギーと演奏陣の有機的/自発的な絡み合いのようなモノは、流石にもうあまり期待出来ないのだなと思ったりも。
本当に素晴らしいプレイだったけれど、あくまできちんとアレンジされた”バック・バンド”の演奏だ。
でもそれに対して不満を言っても詮無かろう。
とにかく完璧な演奏陣を従えた、イギーの素晴らしい歌を楽しめばよい。
何しろ俺が1989年に初めて観た時からもう36年も経っているのに、おじいちゃんのイギー、イケてる声だけじゃなく、ますますかわいくてチャーミングなんだから。

ここでソロのレパートリーに戻り、イギー・ポップが椅子に座っての「Some Weird Sin」。
そこからいきなりハードな「Frenzy」。
ここまでの最新作『EVERY LOSER』(2023年:https://lsdblog.seesaa.net/article/497037591.html)から。
そして、短い集団即興に「Nightclubbing」の音源がかぶさる。
(ここはぶっちゃけ、そのまんま「Nightclubbing」を演ってくれればな、と思った)
続いて演奏された曲だけ、正直「コレなんだっけ…?」となった。
ああ、『EVERY LOSER』の「Modern Day Rip-Off」か。

そして『NEW VALUES』(1979年)からの「I'm Bored」(イギー・ポップがマイクスタンドをぶん投げる!)に、『BLAH-BLAH-BLAH』(86年)からの「Real Wild Child」。
3日前のフェスティヴァル「PUNKSPRING」では「Frenzy」あたりからノリ切れない観客が見られたとかいうが、イギーのファンだけが大量に詰めかけたこの日の単独ライヴではあまり有名じゃないソロ作の曲でも大盛り上がりだ。
(いや、「Real Wild Child」は当時そこそこヒットしている)
イギーはマイクをぶん投げたりステージから降りたり、いよいよ最高潮。
昔の様にお客をどんどんステージに上げたり、「PUNKSPRING」の様にフロアを練り歩いたりではなかったものの、イギーも観客もヒートアップ。

その後イギー・ポップもバンドもステージを去ることなくアンコールに入る。
(ぶっちゃけ今のイギーには、いったん引っ込んでまた出て来る方が逆にしんどいのではと思われる)
『NEW VALUES』の「Five Foot One」から、THE STOOGES「L.A.Blues」的な集団即興。
ここまで1時間半。
77歳のおじいちゃんが裸で暴れるだけじゃなく素晴らしい歌を聴かせる、夢のような1時間半でした。

個人的には…ホーンズをフィーチュアした編成なら、『BRICK BY BRICK』(1990年)からの「Home」とかを演ってほしかった。
絶対カッコよかったはず。
まあそれはそれとして。


コロナ禍以降いつでもとにかく早く帰って早く寝たい俺なのだが、この日ばかりはまっすぐ帰る気になれず。
行きは新橋からゆりかもめだったんだけど、帰りは国際展示場からりんかい線に乗って新宿に移動し、ゴールデン街でちょっとだけ飲んで帰宅。
帰って更に飲みました。


1989年に初めてイギー・ポップのライヴを観て「ああ、もう死んでもいい!」と思った。
2004年に再結成THE STOOGESを観て、やっぱり「ああ、もう死んでもいい!」と思った。
2025年に4回目のイギーを観て…「よし、もうちょっと生きるぞ、死ぬまで生きるぞ」と思っている俺がいる(笑)。

HERE@恵比寿LIQUID ROOM

HARMONIZEDE IN CHAOS.jpg本日。
HEREの主催イヴェント「HARMONIZED IN CHAOS」。
多分5年ぶりのLIQUID ROOM。

一番手がHERE、その次がアルカラだったとのこと。
俺は開演に間に合わず、アルカラの終盤から観る。
ステージにはあらかじめ全バンドの機材がセットされ(ドラムセットが3台並んでいる!)。
アルカラの演奏が終わると、疋田武史のドラム・ソロに合わせてHEREの尾形回帰とHEREのベース(サポート)壱が登場。
コレが尾形のソロ・プロジェクト尾形回帰+現象…と思ったら、数曲演って尾形の弾き語りになり、そして9mm parabellum bulletのメンバーが登場する。
尾形が退場すると、9mm parabellum bulletのアコースティック・ヴァージョン・AC 9mmのステージに。
今回のイヴェント、このように、次々にメンバーが登場してシームレスに進んでいくのである。

AC 9mmの演奏が終わるのと同時にHEREのメンバーが登場し、続く菅原卓郎ソロはHEREがバックアップする。
そして菅原の退場と同時に尾形回帰がステージに戻り、タイムテーブルの約6分押しでHERE2回目のステージとなる。
約2年ぶりのHERE。
もうすぐ45歳になるという尾形.
HEREの1stアルバム『死ぬくらい大好き愛してるバカみたい』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1185.html)から既に12年経っている。
果たして「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」、サビの高音が歌えてない。
声が衰えたか?…と思ったが、フォトグラファーT畠氏曰く、1回目の出番からペース配分が間違っていたとのこと(笑)。
HEREらしいねえ。

ともあれ後半は「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」「己 STAND UP」「LET'S GO CRAZY」と超ハイテンションなグラム歌謡ポップ連発。
そしてAC 9mm、アルカラ、HEREと各バンドが1曲ずつアンコール。
最後は9mm、アルカラのメンバーを交えたトリプル・ヴォーカル&ツイン・ドラムで「はっきよい」。
(この際正直トリプル・ドラムが観たかったが。ステージ上に3台のドラムセットが並んでいる様は、ほとんど近年のKING CRIMSON)

この特殊な(?)イヴェント、今後定期化したいとのこと。
是非そうして欲しいですね。

「第22回白門さぎそうチャリティーコンサート」@成城ホール

20250322.jpg本日。
機会がありまして、中央大学のOB会・中央大学学員会の世田谷支部「世田谷区白門会」が主催するチャリティ・コンサートに行ってきましたよ。

開始直後、世田谷区長があいさつしているタイミングで会場に入る。
おお、けっこうお客さんいっぱい。
何しろコロナ禍での中断はありつつも、もう22回もやってるっていうんだから。

まずは世田谷区明正小学校合唱団の合唱。
3~6年生の有志による、「七つの子」他、楽しく元気な歌。

続いて知的障害者の作業所「上町工房」利用者によるフラダンス。
踊りは決してそろっていないが、それでイイ。
MCやギターの伴奏は施設の職員が担当していた。
時間が巻いていたので、アンコールあり。

次に世田谷区立砧中学校吹奏楽部。
既に卒業した3年生も交えて、今年度最後の演奏。
「学園天国」や「風になりたい」も含む、幅広い選曲。
MCでは「学園天国」を”小泉今日子さんの”と言っていたが、その後司会者が話した通り、俺らの世代にはフィンガー5だよね…(笑)。
ともあれ中学生のコンクールだけでなく地域イヴェントにも積極的に出ている吹奏楽部、演奏力は高い。
演奏後、卒業生の中には涙をぬぐう姿も。

そしてトリは中央大学 スウィング クリスタル オーケストラ(中央大学学友会文化連盟音楽研究会スウィング部)。
創部から83年という歴史あるビッグ・バンド…ってかOBに谷啓がいるのか!
(1942年創部ということになるので、当時は創部してからすぐに敵性音楽とかいって活動休止になっていたのだろうなあ)
コンクールでの受賞歴も多く、演奏力はもちろん1級。
で、「In The Mood」や「Take The A Train」といったスウィング・ジャズ/ビッグ・バンドのスタンダードだけじゃなく、レイ・チャールズの「I Can't Stop Loving You」やマンボも。
ドラムなど各楽器のソロもキレッキレ。
ここで演奏しているメンバーの中にも、将来のプロ・ミュージシャンがいるかも知れない。

最後はスウィング クリスタル オーケストラと砧中学校吹奏楽部の合同演奏(画像)で、観客を含むみんなで歌う「ふるさと」。
(毎回の恒例らしい)
もちろん俺も一生懸命歌いましたよ。

週末の午後、(もちろん)酒も煙草もなしの3時間だったけど、それはそれで楽しかったのです。
たまにはこういうのもイイね。


ちなみにイヴェント名の”さぎそう”というのは植物図鑑には必ず載っているサギみたいな白い花を咲かせる植物で、昭和43年に世田谷区の”区の花”に制定されたんだけど、残念ながら今の世田谷区内にはもうサギソウは生えていないのだという。

WARLORD@新宿HOLIDAY

WARLORD.jpg15日。
エピック・メタルの始祖のひとつであるWARLORDが、まさかの来日。

オープニング・アクトその1・MIKE VESCERA'S CRASH AND BURN。
LOUDNESSやイングヴェイ・マルムスティーンで知られるマイク・ヴェセーラが10年ぶりに来日。
ILLUSION FORCEのベーシストを含む日米混成のバックを従えて、全員が白塗りメイクでANIMETAL USAの曲を演る。
『タッチ』とか『エヴァンゲリオン』とか『聖闘士星矢』とか。
30分のセットにドラム・ソロまで入っていた。

オープニング・アクトその2・MinstreliX。
大阪の4人組。
中性的な容姿と声のヴォーカリスト(バンド名通り吟遊詩人風の衣装。基本メタルっぽくない声質と唱法ながら、曲の最後に超絶ハイトーンを聴かせる)をフィーチュア。
ギターが凄く上手い。
約40分。


そして19時35分頃にWARLORDが登場。
WARLORD…と言っても、ほとんどバンドその人だったウィリアム・J・ツァミス(ギター)は4年前に亡くなっていて。
オリジナル・メンバーはマーク・ゾンダー(ドラム:元FATES WARNING)のみ。
2013年当時のメンバーだったジャイルズ・ラヴェリー(ヴォーカル)や、ALCATRAZZ(!)のジミー・ウォルドー(キーボード)らをフィーチュアした、ツイン・ギターの6人編成。
HOLIDAYの小さいステージはメンバーでいっぱいだ。
マークを除けば最古参であるフィリップ・バイノー(ベース)が元ALCATRAZZのスティーヴ・ヴァイのバンドにいたことは、何だか皮肉。

しかし、現在のWARLORDも確かにWARLORDであった。
次々に繰り出される名作『DELIVER US』(1983年)からの楽曲。
「Black Mass」とか「Child Of The Damned」とか。
しかもジャイルズ・ラヴェリー(もっさりした見た目に反し、歌もステージ運びもかなり上手い)、『DELIVER US』楽曲では当時のシンガー、ダミアン・キングにかなり寄せたっぽい歌い方で。
そりゃ盛り上がるよね。
(ただし『DELIVER US』のシケシケな感じは流石に薄く、今っぽい音になっていた)
メンバー中、日本で一番有名と思われる(?)ジミー・ウォルドーは、後ろに控えて堅実なバッキング。

で、マーク・ゾンダー。
短髪で薄毛のおじいちゃん。
(来月67歳)
頭の位置がもの凄く低い。
かなり小柄なようだ。
そしてレギュラー・グリップ。
(ANVILのロブ・ライナー同様)
小さな金物類こそ多いものの、タムはひとつしかない。
見た目だけだと何だかジャズ・ドラマーみたい。
しかしツイン・ペダルを”ドドドドド”と踏みまくる…。

俺はライヴの間、半分はマーク・ゾンダーを見ていたと思う。
スネアとタムとフロアタムで”タカタカダカドコ”というオカズを連発するだけでなく、ツイン・ペダルと多数の金物類(カウベル含む)も組み合わせて、縦横無尽に叩きまくる。
そして、演奏を終えて前に出てきたマーク、本当に小さかった。
半ズボンの小柄なおじいちゃん。
あのおじいちゃんがあのドラムを叩いていたのか…!
WARLORDがエピック・メタルの祖である一方で、マークはプログレ・メタルの重要人物の一人でもある。
いやあ、いいもん見ました。

約1時間半、アンコールなし。
(現メンバーでライヴで演奏出来る曲は演り尽くした、ってことはなかったはずだが)
客電がついたら即退出して帰ってすぐ寝ました。

残念だったのは観客がかなり少なかったこと。
ライヴの内容はとても良かったし、2日目の今日はもっとお客が増えていたならイイな、と思う。

D・O・T@新宿ANTIKNOCK

20241208.jpg8日。
1年ちょっとぶりのANTIKNOCK。
開演には間に合わず、一番手のthe slowmotionsを後ろの方でちょっと観る。

二番手、DEATH SIDE。
the slowmotions同様、実は初めて観た。
うわー、かっけえなあ。
スパっと終わる短めの曲をヘヴィに叩きつける、貫禄のパフォーマンス。
久しぶりに接するMUKACHIN(SLIP HEAD BUTT他でも活躍)のドラミングも素晴らしい。
そしてISHIYAの野太い声。
「生きてなんぼだ、生きろ」「楽しもう、人生を」など、ちょっとしたMCがまたグッとくる。


そしてトリ前、2年ぶりに観るD・O・T(画像)。
HIROSHI(ベース)が小脳出血で倒れてから1年8ヵ月。
彼が不在の間、ステージにHIROSHIの等身大パネルを置いてライヴ活動を続行する、と語っていたNEKO(ヴォーカル)とMARU(ドラム)だったが。
予想外に早く、HIROSHIがライヴに復帰。
ようやく観ることが出来た。

支えられながらステージに登場したHIROSHIが、椅子に座ってベースを手にする。
演奏が始まると、前面に出るのはサポートのTSUYOSHI(RAPES、COALTER OF THE DEEPERS)のベース音なのだが。
HIROSHIは確かにベースを弾いているのが見えるし、声も予想以上に出ていて驚かされる。
MCはかなりろれつが回らないものの、しかしここまで回復したとは…。
リハビリ頑張ったに違いない。
NEKOとMARUはいつも通り踊って歌い、叩いて歌い。
楽しく激しく、優しく切ない、アラビック・ハードコア。

そして、4thアルバム『BOKU NO TOMODACHI』(https://lsdblog.seesaa.net/article/499627866.html)のイントロ。
HIROSHIが一人でベースを弾き始める。
…確かにあの歪んだベース・サウンドが聴こえる!
俺はここでちょっと、目から水が出るようになりまして…。

ステージの最後、自分で椅子から立ち上がったHIROSHIの姿にも、目から水があふれ。
ライヴ終了後に直接HIROSHIと話したらもう(以下略)

HIROSHIの完全復活はまだまだ先のことだろう。
しかし信じて待ちたいところです。


仕事が立て込んでいるため、残念ながらトリのTHE TRASHを残して退出。
帰って猛然と仕事。
倒れるように寝たのでした。
年内まだまだ観たいライヴがあるけど、多分無理。

THE MUSICAL BOX@川崎CLUB CITTA'

MUSICAL BOX.jfif11日。
カナダが世界に誇るTHE MUSICAL BOX。
観に行きましたよ。
「見せてもらおうか、究極のGENESISトリビュート・バンドの実力とやらを…」と思っていたら、想像を絶するパフォーマンスにぶっ飛ばされました。

日中必死で仕事して、例によって川崎の吉野家で腹ごしらえ。
CLAUDIO SIMONETTI'S GOBLIN(https://lsdblog.seesaa.net/article/503985755.html)以来4ヵ月ぶりのCLUB CITTA'。

ステージ上には箪笥の様なメロトロンに、タム1個のどシンプルなドラムセット。
そして、最近のライヴでは見なくなったモニタースピーカー。

定刻の約7分押しで、メンバー登場。
ドニ・ガイエ(ヴォーカル、フルート他)、フランソワ・ガニョン(ギター)、セバスチャン・ラモート(ベース、アコースティック・ギター)、イアン・ベンハムー(キーボード、アコースティック・ギター)、マルク・ラフラム(ドラム、ヴォーカル)の5人。
もちろん「Watchers Of The Skies」からスタート。
生メロトロン・サウンドによる長い長いイントロ。
そこからたたみかける演奏は、ライヴでの指グセまで再現しようとするかのごとく。
で、頭にコウモリのような翼を着けたドニの声がピーター・ゲイブリエルに似てるのよ。
時々ぞっとするほど似ている。
演奏は一生懸命頑張れば似るだろうが、声そのものがこれほどまでに似ているとは…。
しかもちゃんと前頭部剃ってるんだぜ。
タンバリンを振り上げたりするアクションも完璧。

「コンバンハ、GENESISノ世界ヘヨウコソ」というMCに続いて「The Musical Box」。
ドニ・ガイエは1曲毎に「アリガトウ」と日本語でMCするが、1973年にGENESISが来日していたら、ピーター・ゲイブリエルも同じようにしていたかも知れない。
「The Fountain Of Salmacis」からの「Get'em Out By Friday」で、ドニが帽子をかぶったり脱いだりする。
(「The Musical Box」での老人マスクや腰振りはなし)
暗めの照明も、完全に当時を再現。
ライヴでの初期GENESISにかなりハード・ロック色が濃かったことも、改めて実感。

そして、大半の観客が期待していたに違いない、25分近い「Supper's Ready」。
フィル・コリンズ役を務めるマルク・ラフラム(ちゃんとオーバーオールを着ている)とのツイン・ヴォーカル状態も完璧に再現。
冠の様なモノをかぶったドニ・ガイエは、続けて”花”から”箱”へ。
おお…GENESISの『LIVE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201806article_8.html)のジャケットそのものではないですか。
(リズム・セクションの利き手が逆だけど)
それにしても、後半の変拍子パートとか、どうしたらあんなの思い付くかな、とも思うし、THE MUSICAL BOXの再現ぶりもまた凄い。
間奏の途中でシンバルがヘタレたのをローディーが直したのも、実はわざとじゃねえかとまで思った。

「The Return Of The Giant Hogweed」でライヴ本編が終了した後、なんとアンコール3曲。
個人的にはアンコール1曲目の「The Knife」でお腹いっぱいだったが。
しかしお客さんの反応も熱狂的だったなあ。

アンコール含めて約1時間45分ぐらい。
ともあれいろいろ凄かった。
というか凄過ぎた。
途中から70年代のGENESISそのものを観ているような気分になりましたよ…。


追記:
ライヴ自体と関係ないけど、ひとつだけ気になったのは、俺の二つ隣にいたお客さんが、「The Musical Box」の途中あたりで席を立って、トイレに行ったのかなと思ったら戻ってこなかったこと。
なんか気に入らなかったのだろうか…。

流血ブリザード@渋谷CYCLONE

流血ブリザード OCT 6.2024.png本日。
(と言いつつ泥酔してキーボードがまったく打てなくなり、実際には大半を翌日書いている)

丸1ヵ月取り組んでいた仕事が前夜に終わり。
日中は稲村ヶ崎でしらす丼食ったり温泉に入ったりして。

約4年半ぶりの渋谷CYCLONE。
流血ブリザードのユダ様(ヴォーカル)とミリー・バイソン(ギター)のW生誕祭。
6バンド出演で夕方早くから開催されていたが、俺がフロアに入ったのはイヴェント後半。
久しぶりのあんな人やこんな人に会う。

間もなく四番手、巨乳まんだら王国。のライヴがスタート。
俺は初めて観たけど、もう34年もやってるのね。
(コロナ禍以降は年に1~4回程度しかライヴをやっていない)
ダンサー兼コーラスとかで、ステージ上に9人もいる。
しかし多い時は14人(!)ぐらいになるのだという。
(おかめのお面を着けてほとんど動かない人がいた)
そして曲が始まるまでにMCが10分以上あり。
持ち時間の半分くらいMCだったような気がする。
1曲目から代表曲とされる「ちん毛」(…)で、以下くだらない曲のオンパレードだったのだが、最後の曲の前のMCがなんか凄く真面目(そう)な内容だったのがむしろ印象に残った。

巨乳まんだら王国。はフロアの一番後ろで観たのだが、トイレに行ったり外で煙草吸ったりビールを買ったりしてフロアに戻ろうとして、ふと立ち位置に困る。
何しろ人が多いし、俺は身長がそこそこ高いので、後ろとか端の方で観ないと他の人の邪魔になるのだ。
(しかも温泉で使ったバスタオルとかが入ったデカいバッグを持っていた)
結局左のPAスピーカーのど真ん前に立つ。
そこにトリ前のHELL DUMPが登場。
2年ぶりに観た。
相変わらずの楽しいステージで、相変わらずヒロミパトラ(ベース)がとてもかわいい。
そして相変わらずアメーバ伊藤(ギター)は貼り付いたような笑顔を浮かべていた。
(そしてやっぱり途中でヘルメットが落ちる)
結局30分ちょっとスピーカーの前にいたのだが、耳は大丈夫だった。


再びトイレに行ったり外で煙草を吸ったりビールを買ったりしてフロアに戻り、今度は右のPAスピーカーの脇に立つ。
そしてこの夜の主役・流血ブリザード。
昨年末に彼らのライヴに出かけようとしたが強烈な腰痛に襲われて果たせず。
(その後しばらくまともに動けない時期が続いた)
なので昨年9月の「JUDAFEST」(https://lsdblog.seesaa.net/article/500938597.html)以来1年ぶりに観た。
新ベーシスト、スーザン・ボ・イール(なんつう名前だ…)が加入してからでは初めて。
そのスーザンは司会も兼ねる活躍。
一方セクシーダイナマイトプッシーガロアⅧ世(ドラム)は脚を骨折して入院中。
(手術になったとか…)
サポートとしてのろゐみこのドラム兼ヴォーカル・生虫が参加。
コレが小柄な体格からは信じられないアグレッシヴなプレイで。
しかも見た目は一つ目の怪物なのに、ちゃんとかわいいのがわかるのだった。

新曲「しゃーない」を含む通常のバンド・セットは20分ほどであっさり終了。
続いてミリー・バイソン、ユダ様それぞれのソロが披露され。
どっちもヒップホップ系なんだけど、それにしてもユダ様のメロディ・メイカーとしての才能はもっと評価されてイイと思う。
そして最後は全出演者がステージに登場しての「I Love Me」。
流血ブリザードとソロ、全部合わせても40分ほどと短めだったが、セクシー(以下略)不在では致し方なしだろう。
ともあれ楽しいイヴェントでした。

最近はライヴを観に行っても終演と同時にダッシュで帰ることがほとんどなのだが、今回は予想よりも早めにイヴェントが終了したこともあり、久しぶりにメンバーに挨拶してから退出。
楽しかったので帰りの電車でも飲み、帰宅してから更に飲む。
結局ヘロヘロになったのだった。

XOXO EXTREME@新宿ReNY

XOXO EXTREME AUG 9 2024.jfif9日。

”進化を続けるプログレッシヴ・アイドル”XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)。
EURO-ROCK PRESS Vol.97(https://lsdblog.seesaa.net/article/499539405.html)でライヴ・レポートを書いた昨年4月24日の5thワンマン・ライヴから1年余りを経て、6thワンマンは1回きりのライヴではなく、東名阪で4回行なわれたワンマン・ツアー「Time Scape」。
(コレは当初赤羽での1回の予定だったのが、メンバー自身の希望でツアー形式になったという)
その最終日。

新宿ReNY。
こんなところにライヴハウスあったのね。
ってかえらくわかりづらい場所だな…。
方向音痴ゆえ、Googleマップを見てもよく理解出来ず、早めに新宿に到着して、場所を確認しておく。
そして吉野家(以下略)

メンバーは前回のワンマンと同じ5人、一色萌、小嶋りん、小日向まお、横山陽依、桃瀬せな。
XOXO EXTREMEがワンマン・ライヴを同じ編成で続けて行なうのは、実は初めて(!)。
そしてその5人を支えるバック陣はkyrie(ギター)、ISAO(ギター)、村井研次郎(ベース)、諸田英慈(キーボード)、大沼あい(キーボード)、Hyu-ga(ドラム)によるTime Scape Special BAND。
前回のワンマンのバックを務めた3バンドのハイブリッド+αみたいな人選。
更にゲストとしてクラムボンのミト(ベース)。
どういう形で参加するのかなと思ったら、村井とほぼ交互にベースを担当していた。

定刻の5分ほど前からバンドがステージに登場し、アンビエント的な音を鳴らす。
予想はしていたが、1曲目の「HA・LO・WA」から、選曲も曲順も前回ワンマンとはかなり違う。
ともあれ最初から小日向まおがガンガン煽る。
イントロでフロアからどよめきが起こった「Altair」に続き、前回のワンマンで披露されながらDVDには収録されなかったASIAカヴァー「Daylight」が。

「deus X machina」でいったんメンバーがはけた後、髪色を黒っぽく戻した小嶋りんが一人出てきてヴァイオリンを弾き、そこから「イロノナイセカイ」、そして「羊たちの進撃」。
小嶋はヴァイオリンも素晴らしいんだけど、何を歌っても切ない歌声もナイス。
一方何を歌ってもエモい小日向まおに対して、「キグルミ惑星」エンディングの桃瀬せながまた別の意味でエモい。
(「キグルミ惑星」は本当にイイ曲)

新曲「狂熱の尖晶石(スピネル)」で、「おお、すげえ盛り上がりだ、フロアが揺れている』と思ったら、スマホに緊急地震速報(苦笑)。
「RUSH!」でいったんメンバーがはけてインストゥルメンタル…の間にトイレに行く。
(ビール飲み過ぎた)
「ADELHEID」が始まって慌てて席に戻る。
(「ADELHEID」がまた本当にイイ曲)
そして「Ride A Tiger」からツインベースの「The Last Seven Minutes」で本編終了だな…と思ったら、初披露の新曲「レッドシックレコード」(小嶋りんが途中でヴァイオリンを弾きまくる)が本編ラストなのだった。
ここまで1時間半。
熱狂的なアンコール(昭和風の、「アンコ~ル~!」っていうやつ)が5分ほども続いてからメンバーが再登場。

印象的だったのは新メンバー二人の成長ぶりと、これまた前回ワンマンとは比較にならない5人の一体感。
一方で最古参、力強い声でグループを引っ張る一色萌から末っ子キャラ(?)の横山陽依(浅水るりを引き継ぐ清楚系、というのとはまた違うキャラが出てきた)まで、各々の魅力が際立つようになってもいる。
同じ編成でワンマンを2回やったのが初めて…という程度にはメンバー交代が繰り返されてきたXOXO EXTREME、今の5人は出来る限り長く続いてほしいと思った。


疾風怒濤の2時間余り。
終わってすぐ退出。
(帰って早く寝ないといかんかったので)
地震の影響で電車のダイヤは乱れに乱れていたが、30分遅れの電車がすぐ来たので無事に帰れました。

#STDRUMS@新宿駅東口

20240804.jpg本日。
新宿西口の「新世界」で鶏皮を食いながら飲んで、帰る前に更に路上飲みしちゃおうとか言って、東口に来た。
したら「大越さん?」と声をかけてきた奴がいる。
#STDRUMSことユージ・レルレ・カワグチだった。
ここらへんなら座って飲めるかなと思った場所を、即座に譲る。

プロのドラマーとして文字通り世界を股に掛けながら、スーツケースをバスドラ代わりに路上で神出鬼没のパフォーマンスを行なう男、ユージ・レルレ・カワグチ。
実は数ヵ月前に新宿駅西口でも遭遇していたのだが、その時は電車の時間が迫っていて、数分の邂逅だったのだ。
今回は最初からじっくりと観る。

バスドラ代わりのスーツケース(機材はそれに入れてくる)、スネアと小さなタム、ハイハットと小さなシンバル数枚、そしてスマホから流す打ち込みのトラック。
それが路上ライヴでの#STDRUMSのすべてだ。
そして、それらの限定に限定された機材で、和製SQUAREPUSHERとも言うべきダンス・ミュージックを路上にぶちまける。
警察が来るまで。
今回は幸い警察が来なかったので(!)、#STDRUMS/ユージ・レルレ・カワグチの音楽を長時間浴びるように堪能することが出来た。
いやあ、踊った踊った。
瘦せ細った初老のおじさんが、新宿駅東口前の路上で。
#STDRUMS、興味のある人は是非チェックしてみてください。


さて。
帰宅して#STDRUMSのCDを聴こうと思ったら…CDが割れた!
コレはアレか、また現場で遭遇して踊れという、神の啓示か。