
活動中にはEPとシングルを1枚ずつしか出していないのに、17曲70分近く入っている。
アラン・リー・ショウ(ギター、ヴォーカル)を中心に、ドイツ人のスティーヴ・シュミット(ギター)、フィンランド人のクリスター・ソル(ベース)、スティーヴ・バイ(ドラム)というメンバーで1978年初頭に結成。
78年9月に自主制作EP「All Sexed Up」をリリース。
5000枚限定だった。
アラン・リー・ショウはPHYSICALSで、MANIACS時代よりもメロディックな方向を目指していたという。
確かにMANIACSでの性急なパンク・ロックよりも、よりR&Rに揺り戻したような感じ。
NEW YORK DOLLSやMC5に影響されていたというアランは、PHYSICALSではMANIACS以上にデイヴィッド・ジョハンセンっぽい歌い方。
一方で「All Sexed Up」や「Should Have Been You」のリフや唱法にはフィル・ライノットを思わせる部分も。
(PHYSICALSはTHIN LIZZYのアイルランド・ツアーをサポートしている)
ただ、PHYSICALSのその後の活動は曲折を経るのだった。
マネージャーのイアン・ディクソンが本業のフォトグラファーに注力するためマネージメント業から手を引き。
THIN LIZZYのロード・マネージャーだったフランク・マーレイが後を引き継ぐ。
一方スティーヴ・バイが脱退し、ドラマー不在に。
(スティーヴは本当はヘヴィ・メタルがやりたかったのだという。しかしその後スカ・バンドVILLAINSに参加している)
そこでなんとポール・クック(元SEX PISTOLS)がドラムとプロデュースを担当し、PHYSICALSはシングルをレコーディングする。
(フランク・マーレイの紹介だったという。THIN LIZZYとSEX PISTOLSのつながりを考えれば納得)
一方でアラン・リー・ショウはTHE RINGS時代に知り合っていたブライアン・ジェイムズ(元THE DAMNED)に誘われ、1978年12月にBRIAN JAMES ALL STARSのライヴに参加。
(ドラムはTHE POLICEのステュワート・コープランドだったという)
いろいろあってPHYSICALSのシングルがリリースされないまま、アランは79年3月からBRIAN JAMES AND THE BRAINSのメンバーとしても活動することに。
BRIAN JAMES AND THE BRAINSは1979年7月にリズム・セクションが交代。
一方ブライアン・ジェイムズは79年11月からイギー・ポップのバックでツアーに出てしまう。
そこでアラン・リー・ショウはフランク・マーレイの手引きで、THE BRAINSのリズム・セクション、アルヴィン・ギブス(ベース:元THE USERS)&ジョン・トウ(ドラム:元GENERATION X)にスティーヴ・シュミットを加えた4人編成でPHYSICALSとしてTHIN LIZZYのライヴの前座を務める一方、デモを録音している。
1980年初頭にはポール・クックが参加した録音がシングル「Be Like Me」としてリリースされる。
(まさにポールそのものなドラムが聴ける)
一方ブライアン・ジェイムズがイギー・ポップのツアーから戻り、BRAIN JAMES AND THE BRAINSはHELLIONSとして活動を再開。
しかし80年の「READING FESTIVAL」にも出演したHELLIONSは9月に解散。
そしてPHYSICALSもそのまま立ち消えになってしまったのだった。
このCDには「All Sexed Up」「Be Like Me」に加え、1978年と79年のデモ、そしてELECTRIC BALLROOMでのライヴも収録されている。
ライヴとデモではイギー・ポップ「Lust For Life」、THE MUSIC MACHINE「Talk Talk」、THE ELECTRIC PRUNES「Get Me To The World On Time」というカヴァーが披露されているのが興味深い。
(特にサックスをフィーチュアした「Get Me To The World On Time」は、ガレージ・パンク/サイケのカヴァーというよりもニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクを意識したアレンジに聴こえる)
アラン・リー・ショウはその後もブライアン・ジェイムズとの腐れ縁(?)が続いていたが、彼の名前が改めて知られるようになったのは、90年代半ばの一時期THE DAMNEDに参加した時だっただろう。
00年代後半までは自身のバンドで活動していたはずだけど、最近はどうしていることか。