サム・ゴパルはマレーシア出身。
(”サム・ゴーパル”と表記されることもあるが、発音はむしろ”サム・ゴパール”の方が近い)
7歳からタブラを演奏するようになり、1962年にロンドンに渡る。
66年頃にSAM GOPAL'S DREAMを結成。
当時のメンバーはサム・ゴパル(タブラ他)、ミック・ハッチンソン(ギター)、ピート・シアーズ(ベース)、アンディ・クラーク(キーボード)の4人。
サイケデリック渦中のロンドンでジミ・ヘンドリックスなどと対バンしたSAM GOPAL'S DREAMだったが、レコード・デビュー出来ないまま解散。
サム・ゴパル以外の3人は元THE PRETTY THINGSのヴィヴ・プリンス(ドラム)とVAMPで活動した後、ミック・ハッチンソンとアンディ・クラークはCLARK-HATCHINSONを結成してジェフ・ベックとも絡み、ピート・シアーズはSILVER METRE(https://lsdblog.seesaa.net/article/201710article_2.html)などを経てJEFFERSON STARSHIPに加入し、サム・ゴパルよりよっぽど有名になる。
その後サム・ゴパルは新たなメンバーでSAM GOPALを結成。
今度はレコード・デビューを果たす。
1968年にレコーディングされ、69年1月にステイブル・レコーズからリリースされたのがアルバム『ESCALATOR』。
メンバーはジャケット左からイアン”レミー”ウィリス(ヴォーカル、ギター)、ロジャー・デリア(ギター)、サム・ゴパル(タブラ他)、フィル・デューク(ベース)の4人。
そう、ヴォーカルとギターを担当していたのはMOTORHEADで知られるレミーその人であった。
ロジャーと友人だったことからこのバンドに参加したのだという。
それまでろくに歌ったことなどなかったレミーだが、このアルバムでは全11曲中、実に5曲をレミーが一人で作詞・作曲し、全曲のリード・ヴォーカルを担当している。
(レミーによれば、バンド名義の曲も含め、ほとんど一人で一晩で書いたという)
で、バンド名義による他の曲も含め、若々しいレミーの声(レコーディング当時22歳)がなんとも言えない哀感を醸し出す、ダークでアンダーグラウンドなサイケデリック・ロックを聴かせる。
ドラマーがいなくてボトムがタブラなどのハンド・パーカッションなので、ヘヴィネス控えめで、一方同様にドラマーがいなかったTHIRD EAR BANDなんかと同様に、アングラ臭が半端ない。
(ただし「Midsummer Nights Dream」あたりは明らかに普通のドラムが用いられている)
しかしどの曲もメロディアスで良い。
(女性コーラスをフィーチュアしたドノヴァンのカヴァー「Season Of The Witch」もなかなかの出来)
「You're Alone Now」のサビメロがそのまんまHAWKWIND/MOTORHEAD「The Watcher」に引き継がれたのは、よく知られるところ。
A面ラストは「It's Only Love」、B面ラストは「Yesterlove」と、いずれもレミーの手になる(多分)ラヴ・ソングで、MOTORHEADからは想像もつかないレミーのソフトなヴォーカルが聴ける。
YouTubeではレミー作の「The Sky Is Burning」の動画が観られる。
アルバムではレミーとロジャー・デリアがそれぞれリード&リズム・ギターとクレジットされているが、「The Sky Is Burning」の動画からして、基本的にレミーがリズムでロジャーがリードだったのではと思われる。
(レミーは初めて担当するヴォーカルで忙しかっただろうし、そもそもリード・ギターが弾けないという理由でP.P.アーノルドのバンドをクビになっているし)
あと、改めて聴いてみるとアンサンブルの主役はリード・ベース的なフィル・デュークのプレイだ。
(この人その後シーンから消えてしまったのが惜しまれる)
レミー曰く、サム・ゴパルはこのバンドでスターになると決意していたそうだが。
いや…タブラがパカポコ鳴ってるこのアングラ臭ぷんぷんな音楽性で、本当にそう思ってたの?
ステイブルがあまりにも弱小レーベルだったこともあり、『ESCALATOR』は当時ほとんど話題にならなかった。
(レミーによれば1枚も売れなかったということだが、いやそれは言い過ぎってもんだろう)
シングル「Horse」もまったく売れず。
(アルバム各曲のメロディアスさを考えれば、どうしてこんな平板な曲がシングルだったのか、とも思う)
しかし「The Sky Is Burning」のプロモーション動画を撮っていたりして、ステイブルも弱小なりにSAM GOPALの売り出しに注力していたことは間違いないと思われる。
俺の手元にあるのは80年代のブート再発LPと、1999年にキャプテン・トリップ・レコーズから国内配給されたCD。
CDにはボーナス・トラックとしてシングル両面「Horse」「Back Door Man」(THE DOORSでも知られるウィリー・ディクソンのカヴァー)が収録されている。
SAM GOPALは結局1969年半ばに解散。
その後のレミーについては言うまでもない。
ロジャー・デリアは70年代半ばにトゥインクのバンド・GLIDERに参加したが、その後の消息は知れない。
サム・ゴパルはアラン・クラーク(ヴォーカル)、ミッキー・フィン(ギター)、フレッド・ガンディ(ベース:元THE FAIRIES)、モックス・ゴウラント(ハープ、フルート)という新たなメンバーを迎えてCOSMOSISを結成。
(ミッキーは元MICKEY FINN & THE BLUE MEN、その後STEVE MARRIOTT'S ALL STARSやTHE FALLEN ANGELSで活動したギタリストで、T.REXのミッキー・フィンとは別人)
LED ZEPPELINで知られるピーター・グラントをマネージャーに迎えながら、レコード・デビューとは無縁のまま71年に解散している。
(サムが交通事故で大怪我をしたせいもあったらしい)
COSMOSIS解散後、サム・ゴパルはデイヴィッド・アレンのアルバムやジリ・スマイスの『MOTHER』(1978年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1473.html)などに参加していたが、その後シーンからフェイドアウト。
しかし91年、レミーと道端で再会したサムは、レミーに新バンド結成を宣言したらしい。
その後ドイツに移住したらしいサムは、99年になっていきなりソロ・アルバム『FATHER MUCKER…RHYTHM ON A TIGHTROPE』をリリースして一部のマニア(俺含む)を驚かせた。
しかもそのアルバムにはかつての盟友アンディ・クラークが参加していたのだった。
更に言うと、CLARK-HATCHINSONは2010年にTHE DEVIANTS/PINK FAIRIESのトリビュート・アルバム『PORTOBELLO SHUFFLE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_461.html)で健在をアピールし、これまた一部のマニアを驚かせることになる。
レミーは既に亡く。
サム・ゴパルはどうしていることか。
ともあれ同じステイブルからリリースされたTHE DEVIANTS『DISPOSABLE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/499477099.html)が2度も国内CD化されていることを思えば、『ESCALATOR』も改めて国内CD化されてもおかしくないはず…と個人的には思う。