流血ブリザードの2枚

流血ブリザード.jpg11月前半は結局先月以上に忙しく。
ブログ休みがちに。

それはさておき、スーザン・ボ・イール(ベース:何ちゅう名前だ…)を迎えた流血ブリザードが、この5日にアルバム2枚を同時リリースしている。
2枚同時とはいえ、彼らが同じメンバーでアルバムを2枚出すのはバンド史上初めて(!)のはず。



『アンチェインオーバーキル』

こちらはオリジナル・アルバム。
パンクでアナーキーな曲とユニークで笑える曲、というのは元々流血ブリザードの両輪だが、このアルバムではその二面性が更に両極に振り切れた感がある。
拝金主義にヘイトを叩きつける「マネー ザ ゴッド」、この世は無理ゲーで、自分たちは操られていると叫ぶ「RPG」、風呂にも入れない抑鬱状態を歌う「SICK PARADE」、つのる自己嫌悪の感情を英詞で表現した「I hate me」があり。
かと思えば母親への愛と感謝を歌い上げるハードコア・パンク「OKAN OOKINI FOREVER」、”自分くらいは自分をゆるそ”という歌詞が多くの人の救いになりそうな「しゃーない」、上田正樹かジャッキー・チェンかというコテコテの関西ブルーズ/AOR(?)「MY SWEET HOME OSAKA」がある。
そしてひたすら自分への愛を歌う(「I hate me」とは真逆の)名曲「I LOVE ME」ではなんとMAD3のEDDIEがギター・ソロを弾いているという…。
他にも益子寺かおり(ベッド・イン)や関口マーフィー(背前逆族)など豪華ゲスト参加。
元々ベーシストではなかったはずの(ザ☆ダッチワイフでは亀山スーザン久美子としてヴォーカルを担当していた)スーザン・ボ・イールが実にナイスなベースを弾くのにも驚かされる。
流血ブリザードのオリジナル・アルバムとしては、間違いなくここまでの最高作だろう。


『FUCK OFF, WE MURDER!!!』(画像)

そしてこちらは、多分世界初ではと思われるGGアリンのトリビュート・アルバム。
アートワークからも一目瞭然なユダ様(ヴォーカル)のGG愛と、それにかねてより触発され続けてきたであろうメンバーの気合が炸裂する1枚。
(アルバム2枚とも、写真は菊池茂夫、録音は中村宗一郎が担当している。スタッフ体制的にもばっちりだ)
冒頭のMCがANTiSEENのジェフ・クレイトンでびっくり。
「Bite It You Scum」「I Wanna Fuck Myself」「Kill The Children, Save The Food」「Outlaw Scumfuc」をはじめとして、ベストに近い選曲。
(個人的にはあと「Gimme Some Head」とかも欲しかったけど)
一方でアレンジは単にGGのコピーにとどまらない、流血ブリザードのオリジナルなアイディアを随所に取り入れたモノになっている。
シンガロングなハード・パンクになった「I Wanna Fuck Myself」にも驚いたが、「When I Die」をエレクトロに料理しているのには更に驚かされた。
下北沢MURDERJUNKIESによる全14曲中9曲の歌詞対訳も素晴らしい。
歌詞が全曲でないのは、DESTROY ALL MONSTERS「You're Gonna Die」のカヴァーである「Die When You Die」などが含まれていることからして納得だろう。
ちなみに今回のアルバム2枚とも14曲入りなのは、偶然らしい。


海外も含め、既に確たる人気を得ている流血ブリザードだが。
今回の2枚のアルバムを通じて更に彼らを知る人が増えること、そして若い人たちにもGGアリンという傑出したパンク・ロッカーの魅力が伝わることに期待したいところだ。

ワード・レコーズの2枚(AVATARIUM+BLIND GUARDIAN TWILIGHT ORCHESTRA)

avatarium.jpgAVANTARIUM『THE FIRE I LONG FOR』(画像)

先日の来日ライヴも素晴らしかったCANDLEMASSのリーダー、レイフ・エドリング(ベース)が2012年に立ち上げた別バンドの4thアルバム。
俺はこのアルバムで初めて聴いた。
レイフは既にこのバンドからは離れているが、本作でも3曲を提供している。
現在のメンバーはジェニー=アン・スミス(ヴォーカル)、マーカス・ジデル(ギター)、リッカード・ニルソン(キーボード)、アンドレアス“ハボ”ヨハンソン(ドラム)に、ライヴのみ参加というマッツ・リッドストロム(ベース)という5人。
マッツはスタジオ録音には参加しないらしいものの、グループ写真には5人写っているので、サポートというワケでもなさそう。
レイフ脱退後のバンドの中心は元ROYAL HUNTでCANDLEMASSの近作のプロデュースにも関わっているマーカスと、強力なヴォーカルを聴かせるジェニー=アン。
CANDLEMASSほどドゥーミーではなく、どっちかと言えばクラシック・ロック/ハード・ロックに寄った音で、CANDLEMASSよりかはむしろSPIRITUAL BEGGARSあたりとファン層がかぶりそうなタイプのサウンド。
(あとギリシャのFREEROCK SAINTSとか)
とはいえ1曲目「Voices」あたりではまさにCANDLEMASS直系という感じのヘヴィなギターを聴かせたり。
明快なハード・ロックも多い一方で、あちこちに妖しいムードが漂う。
きれいなソプラノとかではなくひっかかりのある声質のジェニー=アンのヴォーカルはかなり幅広い表現力で、ロニー・ジェイムズ・ディオなんかをも思わせるコブシの効いたパワフルな歌い上げを披露しつつ、バラード系の曲はしっとりと。
個人的にはマーカスのギター以上にリッカードのオルガンの音色にやられた。
「Voices」をはじめとして、随所でもの凄くカッコいいオルガン・ソロが飛び出す。
曲によってはロニー時代のRAINBOWのファンなんかにもお勧め。


BLIND GUARDIAN TWILIGHT ORCHESTRA『LEGACY OF THE DARK LANDS』

うわー、BLIND GUARDIANなんて何年ぶりに聴いただろう…と思ったが、コレは名義を見てもわかるとおり、通常運転のBLIND GUARDIANではない。
ハンズィ・キアシュ(ヴォーカル)とアンドレ・オルブリッチ(ギター)以外のバンド・メンバーは参加しておらず。
しかもアンドレは“オーケストラル・コンポジション”とクレジットされていて、ギターを弾いてない。
お得意のエピカルなパワー・メタルではなく、演奏はすべてプラハ交響楽団が担当する、完全にオーケストラルなアルバム。
少し前に紹介した、イアン・ギランがモスクワでオーケストラと共演したライヴ盤(コレもワード・レコーズからのリリース)はあくまでバンド+オーケストラだった。
こちらはアンドレが曲を書いてハンズィが歌い、演奏は完全にオーケストラのみ。
ハンズィとアンドレはこの作品を20年以上前から構想していたのだという。
(名義が1990年のアルバム『TALES FROM THE TWILIGHT WORLD』を思わせるのも納得だ)
内容はハンズィとアンドレがドイツ・ファンタジー文学の巨匠マーカス・ハイツと協力して出版した小説『DIE DUNKLEN LANDE』の続編になっているとのことで、プロテスタントとカトリックの対立から神聖ローマ帝国が解体に追い込まれた三十年戦争(1618~48年)を舞台に、傭兵ニコラスの謎めいた冒険が語られている。
全24曲というヴォリュームながら、半分は語り/寸劇で、元になった小説を未読の身には荷が重いかと思ったものの(ってかそれドイツ語だよね…)、音楽的な完成度の高さで一気に聴き通せた。
それにしてもオーケストラをバックに堂々たる歌唱を聴かせるハンズィ凄いねー。
ちなみに三十年戦争については先日発売された『勢力マップで学ぶ世界史』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201911article_4.html)を御参照あれ(←宣伝)。


どちらも22日リリース。

SPiCYSOLの配信リリース

SPiCYSOL.jpg先日のodolに続いて、UK.PROJECTの配信リリース。












SPiCYSOL「SOLO(Acoustic ver.)」(画像)
SPiCYSOL「Traffic Jam(Acoustic ver.)」

このバンドも名前しか知らなかった。
2013年結成。
現在のメンバーはKENNY(ヴォーカル、ギター)、AKUN(ギター)、PETE(キーボード、トランペット)、KAZUMA(ドラム)の4人。
“The Surf Beat Music”を標榜していて、“City”と“Surf”のハイブリッドを目指しているのだとか。
16年にシングルでデビューした後、17年、18年と2枚のアルバムをリリースしている。
俺はTVを見ないのでよくわからんのだけど、KENNYは「テラスハウス」という人気番組への出演で注目度がアップしているんだそうで。

「SOLO」はEP「FREE」、「Traffic Jam」はEP「EASY」と、いずれも今年(1月と8月)リリースされたEPからアコースティック・アレンジで配信リリース。
EP聴いてないのに別ヴァージョンの方から先に接してしまったが。
ともあれ「SOLO」のメロウネスと、「Traffic Jam」のサンバ/ラテン・ジャズ風の軽やかなアレンジ、そしてKENNYの伸びやかできれいな声(あと押韻を意識したリズミカルな歌詞の乗せ方)は門外漢なりに楽しめた。
アコースティック・ギターとピアノの軽快な響きはもちろんのこと、特に「SOLO」で前面に出たウッド・ベースも印象的。
(今のバンドにはベーシストはいないが)

「Traffic Jam」の方はネットにオリジナル・ヴァージョンが上がっていたので、聴き較べてみた。
なるほど、いわゆるシティ・ポップのビートを思いっきり強調したみたいな(?)オリジナルのアレンジに対して、今回のアコースティック・ヴァージョンは大きく印象が変わっている。
軽くても必要十分にしてグルーヴィーなリズム(MVを観るとカホンをフィーチュア)。
(オリジナルもカッコいい。“交通渋滞”という曲名に反して、ドライヴ中にFMから流れてきたら凄く気持ちいいタイプの曲)

先日のodol同様、俺自身が毎日聴きたいタイプの音楽かというとそうでもないのだけど、日々MOTORHEADだのPINK FAIRIESだのと言ってる俺でも(笑)わかるハイクォリティ。
「SOLO(Acoustic ver.)」は13日から、「Traffic Jam(Acoustic ver.)」は20日から配信中。


(2025.10.20.改訂)

DAYMAREの2枚(NO ONE KNOWS WHAT THE DEAD THINK+COFFINS)

NO ONE KNOWS WHAT THE DEAD THINK.jpg相変わらず旺盛なリリースを続けるデイメア・レコーディングスの新作。
対照的なサウンドを聴かせる2組。


NO ONE KNOWS WHAT THE DEAD THINK『NO ONE KNOWS WHAT THE DEAD THINK』(画像)

“死人が何を考えてるかなんて誰も知らない”という長い名前の、限りなくDISCORDANCE AXIS復活に近い新バンドのデビュー作。
そもそも本当にDISCORDANCE AXIS再編が意図されていたらしいのだが、デイヴ・ウィット(ドラム)は結局参加せず、新バンドとなった。
メンバーはジョン・チャン(ヴォーカル)、ロブ・マートン(ギター)というDISCORDANCE AXISの二人に、元COHOLのナカノキョウスケ(ドラム)。
DISCORDANCE AXISと同じベースレスの3人編成で、ジョンがDISCORDANCE AXIS以降に活動していたGRIDLINKと同様に日米混成のバンドとなった。
で、音楽的方向性はほとんどDISCORDANCE AXIS復活と言って差し支えない、52秒から2分34秒の楽曲をテクニカルにぶっ飛ばすグラインド・コア。
手元に、最初に聴いた時のメモがあるのだが、どの曲も“ドカドカのハードコアにギャーギャーわめくヴォーカル”と書いてあって、笑ってしまった。
そう、DISCORDANCE AXISもGRIDLINKもHAYAINO DAISUKIも、ジョンが歌うバンドはエクストリーム過ぎて思わず笑ってしまう。
しかしこのバンドではHAYAINO DAISUKIにあったユーモラスな感覚は排除されている…というか、これまで以上にシリアスな方向を目指しているようで、「Red Echoes」ではSEをバックに放射性物質の種類を(曲名通り)エコーたっぷりの日本語で説明するナレーションが続く。
(映画か何かから引っ張ってきたのだろうか)
“しかし馬鹿だな、人間はアホだ…”という台詞は、原発の汚染水が海に放出されようとしている今を痛烈に刺している。


COFFINS『BEYOND THE CIRCULAR DEMISE』

日本のドゥーム/デス・メタルを牽引する重鎮、現編成で初のアルバムにして、前作『THE FLESHLAND』から実に6年ぶりとなるアルバム。
現在のメンバーはBUNGO UCHINO(ギター、ヴォーカル)、SATOSHI HIKIDA(ドラム)、JUN TOKITA(ヴォーカル)、MASAFUMI ATAKE(ベース、ヴォーカル)の4人。
ヘヴィなリフに、時々CELTIC FROST直系の「ウッ!」をカマすグロウル。
以前ライヴを観た時、「東京オールド・スクール・デス・メタル、COFFINS!」と宣言してから演奏に入っていた通り、ドゥーミーでありつつもデス・メタルの基本線を押さえに押さえた演奏と歌唱。
しかしそれだけではない。
ライヴでも印象的だった、速い曲でもミドルの曲でも随所でドカドカ炸裂するHIKIDAのずっしりしたドラムを軸に、ある種グルーヴィーとさえ言えるような演奏を展開する。
TOKITAのヴォーカルも、純正デス声でありつつ、なんとも言えないノリの良さを感じさせる。
そして決して弾き過ぎることなく、あちこちでギューンと唸るUCHINOのギター。
古典的なハード・ロックとハードコア/メタル・クラストが融合したように感じられる部分も多々あり。
カッコいいです。


『NO ONE KNOWS WHAT THE DEAD THINK』『BEYOND THE CIRCULAR DEMISE』、2枚とも18日リリース。


(2025.10.15.改訂)

HERE+インビシブルマンズデスベッドの新作

HERE HELLO.jpgHEREとインビシブルマンズデスベッドが新音源を同時リリース。




HERE「HELLO」(画像)

HEREの7thシングル…は、シングルと銘打ちながら新曲2曲に加えてライヴ音源11曲が入っているので、結局シングル+ライヴ音源なのかライヴ・アルバム+新曲2曲なのかよくわからない、超マキシ・シングルとでも言うべき状態。
(なのでシングルで2000円は高価くない)
近年HEREのシングル曲というと「LET'S GO CRAZY」なんかをはじめとしてミドルのポップな曲が続いていたが、表題曲「HELLO」は久しぶりにファストな、初期のHEREを思わせたりもする1曲。
しかしメロディは最近のHEREらしいポップでキャッチーなモノだし、途中でミドルに転じたりと展開も起伏もある。
タイトルが連呼されるサビはHEREお得意のスタイルとでも言うか。
ハジメタルのキーボードを前面に出したメイン・リフもカッコいい。
カップリングの「お元気で。」はいかにも最近のHEREらしい、タメの効いたヘヴィなリズムが気持ちいいミドル。
こういう曲では、ジョン・ボーナムを敬愛するユージ・レルレ・カワグチのドラミングが却って映える感も。
尾形回帰(ヴォーカル)のちょっとコミカルな歌詞もナイス。
(ヴォーカルでダブル・トラックを試したのは初めてだったか)
ライヴは今年4月の恵比須LIQUID ROOMでの音源で、「Fantastic!!」「HIGH TENSION DAYS」「ヘッチャラ」「クラシカルダイヴ」「Walk This Way」「OH YEAH」「スーパーポジティブ」「ロックスターに会いに行こう」「ネバギバ」「ほったらかし」というアルバム『OH YEAH』全曲に、“往年の名曲”(?)「MANをZIしてROCKSTAR」。


インビシブルマンズデスベッド『儚くサーカス』

復活アルバム『屈辱』(2017年)から2年半ぶりとなるインビシブルマンズデスベッドの新作音源は、5曲入りのミニアルバム。
タイトルからも多少想像が付くように、相変わらずの文学的にしてダークな世界観ながら、全体に多少メロウな感覚をたたえているような。
そうは言ってもタイトル曲なんかはやっぱり重く歪んだベースに導かれて尖ったリフとイカレたソロが炸裂する。
比率として速い曲よりも遅い曲の方が多いのと、デスベッドの歌唱があんまり凶暴な感じじゃないのが、メロウに感じるところか。
とはいえやっぱり退廃的で狂気を宿した、HEREとは180度違う世界観。
異色なのは「月に抱かれて」で、ワンコードで延々続く、トリップ・ホップっぽい(?)浮遊感に満ちた1曲。
「冷たく燃えてる」で朗々と歌われる“嫌いになった”という歌詞も強力。
ラストの「レゴリス」は効果音的に鳴り響くスペーシーとも言えるギターやキーボードの中で西井慶太のベースが物悲しいリフを奏でるインストゥルメンタルで、コレは一発録りの即興演奏なのだという。
HERE、インビシブルマンズデスベッドともわりと珍しい、写真ではなくイラストをフィーチュアしたジャケットで、ここにはとりあえずHEREのジャケット画像を載せたが、インビシブルマンズデスベッドの方も不気味なテイスト全開でユニーク。


どちらも21日より発売中。

DAYMAREの2枚(WEAR YOUR WOUNDS+TORCHE)

WEAR YOUR WOUNDS.jpg相変わらず旺盛なリリースを続けるデイメア・レコーディングスからの最新盤2枚。


WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(画像)

この2月に来日したCONVERGE…のヴォーカリスト、ジェイコブ・バノンの別バンド、2ndアルバム。
1stアルバム『WYW』は未聴で、このアルバムで初めて聴いた。
ジェイコブ・バノン(ヴォーカル、ベース、ピアノ、エレクトロニクス)、マイク・マッケンジー(ギター:THE RED CHORD)、ショーン・マーティン(ギター:TWITCHING TONGUES)、アダム・マッグラス(ギター:CAVE IN)、クリストファー・マッジオ(ドラム:TRAP THEM)という、トリプル・ギターの5人編成。
けっこうスーパー・グループ。
ジェイコブ自身による静謐なピアノとオーケストレーションで始まる「Mercifully」から、一気に引き込まれる。
続くタイトル曲もピアノのイントロで、それに続くアンニュイでメランコリックなヴォーカル。
えっ、ジェイコブってこんな風にも歌う人だったんだ?
ギターやドラムが暴れまくるところもあるけれど、全体的にはヘヴィながらもメロディアスでリリカル。
大半の曲がミドルまたはスローで、ジェイコブが落ち着いたヴォーカルを聴かせる。
(疾走するハードなアンサンブルを聴かせるところもあるが)
泣きのあるギターのハーモニーは、時にTHIN LIZZYあたりを思わせたりも。
そして1曲目の変奏とも言える(しかしヘヴィに展開する)「Mercilessly」で終わる。
繊細ながら、実にドラマティック。
近年のNEUROSISや後期のISISあたりに通じるところもある、スケールを感じさせるヘヴィ・ロック。


TORCHE『ADMISSION』

2004年にフロリダで結成された“ストーナー・ポップ”を標榜するバンドの、前作から4年ぶりとなる5thアルバム。
これまた以前のアルバムを聴いていなくて、今回初めて聴いた。
現在のメンバーはスティーヴ・ブルックス(ヴォーカル、ギター)、ジョナサン・ヌニェズ(ギター)、エリック・ヘルナンデス(ベース)、リック・スミス(ドラム)の4人。
各々、フロリダ界隈のスラッジとかグラインドとかのバンドでキャリアを重ねたメンバーとのこと。
(俺は全然知らんかった…)
MOTORHEADばりのリフとドカドカのドラムで始まるが、そこに明るい音色のシンセが重なり、エコーたっぷりの柔らかいヴォーカル(けっこうヘタウマ)が乗る。
チューニングをかなり下げているようで、重いベースがブンブン唸り。
速い曲が疾走しドライヴしまくる一方でメロディはかなりポップというかキャッチー。
重ねまくったギターは相当ヘヴィながら、曲によりシューゲイザーっぽかったりも。
(タイトル曲のキラキラしたギター・サウンドはまさに…)
なるほど、ストーナー・ポップという売り文句にも納得。
しかしストーナー云々と言うには相当タイト。
音楽性そのものが似ているワケではないものの、90年代以降のMETALLICAなんかが好きな人にもアピールしそうな音。
かなりユニーク。


どちらも10日リリース。


(2025.9.3.改訂)

CORNUCOPIAの2枚(THE OUTBURN+ENOUGH TO ESCAPE)

画像先月新大久保EARTHDOMでのライヴをレポートしたENOUGH TO ESCAPE。
そのヴォーカリストである岡崎幸人(ETERNAL ELYSIUM)が主宰するコーニュコピア・レコーズからはENOUGH TO ESCAPEともう1バンドがリリースされていたんだが、紹介がすっかり遅くなってしまった。


THE OUTBURN『DEPARTURE』(画像)

愛知県の4人組。
コレが2枚目の音源だそうで。
元々はトリオ編成だったのが、前作リリース後にメンバー交代があったとのこと。
現在の編成はTEN(ヴォーカル)、Takeda(ギター)、HAZI(ベース)、Lill(ドラム)の4人。
音楽的にはKYUSSやFU MANCHUやNEBULAあたりの海外ストーナー勢、そしてハードコアの影響もありそうなストーナー・ロック/ヘヴィ・ロック。
実際メンバーは元々ハードコアやパンク出身のようで、前作はもっとハードコア寄りだった様子。
一応EPということになっているものの、4曲で33分はLP時代だったらフルアルバムで通用するヴォリューム。
で、重さもあれば勢いもあるストーナー・ロックをプレイしているんだけど、日本語詞(一部英語も混じる)の内容が興味深い。
なんか凄く前向きな感じの。
まあレーベルの盟主ETERNAL ELYSIUMも最近はドゥーミーな音に前向きな歌詞だが、それともまた違う。
“一人になる勇気を持て/孤独な此処がスタート”(「Saharan」)
“目を覚ませ/この流れ/舵をとれ/その定め/這い上がれ”(「Under Water」)
“太陽が昇る時/もう一度歩き出そう”(「Fighting Gate」)
“視界不良な/時が訪れても/受け入れよう”(「Blind Corner」)
4曲全部がこういう感じ。
そのようにポジティヴな歌詞が、ヘヴィでラウドなストーナー・ロックに乗っている。
あんまりいないタイプだと思う。
ユニーク。
録音はもちろんSTUDIO ZEN。


ENOUGH TO ESCAPE『FORTUNES』

で、先日ライヴを観たENOUGH TO ESCAPE。
メンバーは岡崎幸人(ヴォーカル)、エリック・クローゲル(ギター)、ダニエル・ソネゴ(ギター)、クリス・ミリントン(ベース)、マイケル・クィッグリー(ドラム)の5人。
2017年に録音していた自分たちのアルバムにヴォーカルを入れようと思い立ったシドニーのインストゥルメンタル・バンドが、結局ミックスとマスタリングを担当した岡崎にヴォーカルを依頼してこのラインナップになったとのこと。
オーストラリア人のメンバーは全員キャリア豊富で、特にマイケルはプロのドラマーとしてあちこちで活躍しているという。
サウンドはドゥーム・メタル+ポスト・メタルとでもいうか。
あちこちで乾いたギターの音がサウンドトラックのSE風に挿入されるのは、アメリカーナ路線に行ってからのEARTHっぽくもあり。
(サンプリングによると思われるSEもある)
そこに岡崎があの独特の声で、日本語の歌詞を乗せる。
あの独特の…と言っても、「Prism」などでのファルセットやウィスパーっぽい歌唱をはじめとして、いろいろな歌い方を試している感じ。
歌詞がライヴの時よりもずっと聴き取りやすいのはもちろんなんだけど、一方歌詞カードはデジパックのトレーに印刷されていてちょっと読みづらい(苦笑)。
ともあれ岡崎が書いた歌詞とはいえ、アルバムや楽曲のコンセプトはシドニーの4人によるモノなので、その方向性に沿った歌詞になっていて、ETERNAL ELYSIUMとの違いが興味深い。
ヴォーカルと演奏陣が北半球と南半球に分かれているので、コンスタントかつ身軽な活動は難しいかも知れないが、今後も是非続けてほしいモノです。


どちらも3月24日から発売中。


(2025.8.14.改訂)

DIWPHALANXの2枚(BALZAC + DILDOS)

画像相変わらず旺盛なリリースを続けるDIWPHALANX RECORDSから、今年もリリース攻勢が始まった…ってか、始まっている。





BALZAC『HYBRID BLACK』(画像)

1月23日のリリース。
“今月の新譜”じゃなくて“先月の新譜”になってしまった。
(同じ頃に入手してまだ紹介していないアルバムは、他にもある)
2015年の前作『BLOODSUCKER』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1927.html)から約3年半ぶりとなる、BALZACの12thアルバム。
アートワークがかなり凝っている。
プラケースにメンバー4人の写真のシールが貼ってあり、ブックレットの表紙と併せてジャケットとして完成する、という。
コレはケース割ったり傷つけたりしないようにしなければ。
中身は長いSEとも言えるインストゥルメンタル「Illusion」に続いて、多彩な楽曲が詰め込まれている。
「モノクローム」のようにコーラスがオーオーいう“BALZAC節”ともいうべき疾走ナンバーはもちろん、「Why」のようなデジタル・ハードコアもあり。
「Shadow」あたりはパンクというよりもクラシック・ロック的(?)だったり。
個人的に一番「おっ」と思ったのは、穏やかなバラード調に始まってヘヴィに展開するミドル/スローの異色作「蜉蝣」。
「午前0時、第三金曜」はライヴ会場限定でリリースされていたシングル曲のロング・ヴァージョンで、16年のEP「EVER FREE FROM #9 DREAM」(https://lsdblog.seesaa.net/article/201610article_1.html)に収録されていた「#9 Dream」もリミックスされて収録されている。
歌詞は前作以上に日本語詞が増えていて、前作のレヴューで日本語詞がもっと増えてイイみたいなことを書いた俺としては我が意を得たり。
前作もそうだったが、今ではバンド名のロゴがMISFITS風(?)ではなくなっていて、そのあたりはオリジナリティを確立したBALZACの新たなフェイズを感じさせたりも。
キャリアも長く、熱狂的なファンも多いバンドだけに、様々な受け止められ方があるかも知れないと思いつつ、俺は十分楽しませてもらった。


DILDOS『CREAM』

2011年に1stアルバムをリリースした浜松の4人組、前作から実に8年ぶりとなる2ndアルバム。
(何やってたんだろう)
パーソネルは前作と同じ、KEITA(ヴォーカル、ギター)、CHIKO(ギター)、SHINGO(ベース)、CHO(ドラム)の4人。
前作リリース時はボンデージ・スタイルがショッキングだったが、今もそういうルックスだろうか…。
とりあえず(?)サイコビリーを基調としつつも、1曲目「AMEBA」からディスコとレゲエとポスト・パンクがごっちゃになったような楽曲/アレンジで、最早ジャンル分け不可能。
7曲目「INTANGIBLE ARTIFACTS」は、ひょっとしてキャブ・キャロウェイ「Minnie The Moocher」へのオマージュか?
しかも続いて収録されているのはEURYTHMICS「Sweet Dreams」のカヴァー!
(こういう曲に限ってベースがバチバチとスラップしていたりする)
猥雑でダーク、それでいてあんまりネガティヴには聴こえない楽曲そして歌詞の数々。
速い曲があんまりないのも独自性に拍車をかけていると思う。
非常にユニーク。
ピカソっぽいジャケットにも「おお」と思ったり。
こちらは20日にリリースされる。


(2025.8.1.改訂)

DAYMAREの2枚(GOUGE AWAY + A STORM OF LIGHT)

画像デイメア・レコーディングスから、アメリカのバンドの2作。


GOUGE AWAY『BURNT SUGAR』(画像)

2012年にフロリダで結成されたポスト・ハードコア・バンド。
16年に1stアルバム『DIES』をリリースした後、親しい仲であるTOUCHE AMOREの全米ツアーをサポートした際にデスウィッシュの目に留まり、2ndはデスウィッシュからのリリースとなった。
メンバーはクリスティーナ・ミッシェル(ヴォーカル)、ミック・フロイド(ギター)、タイラー・フォーサイス(ベース)、トミー・キャントウェル(ドラム)の4人。
FUGAZIやTHE JESUS LIZARD、NIRVANAなんかの影響を受けているというが、別にどれにも似ていない。
(「Fed Up」はちょっとNIRVANAの速い曲っぽいかな。あとバンド名はPIXIESの曲名から?)
1曲目から4曲目までがすべて1分40秒台。
4分以上の曲は1曲しかない。
アンサンブルをリードするのはタイラーのガリガリしてへヴィなベース。
トミーのパワフルなドラムが支え。
そこに、曲にもよるがどっちかというとポスト・ハードコアというよりはポスト・パンク/ニュー・ウェイヴっぽいミックのギターが乗る。
しかし何よりも強烈なのは、クリスティーナの激情スクリーム。
写真を見ると細くてキュートな感じの女性なんだけど、どうやってという感じの叫びが全編で炸裂。
楽曲がそれほどハードコアっぽくなくても、とにかく叫ぶこと叫ぶこと。
「Wilt」あたりをはじめとしてカオティック・ハードコアと呼びたくなる曲もある。
一方で、タイトル曲でのクリスティーナは叫ばず、楽曲や演奏も英国ポスト・ロック/ニュー・ウェイヴ的。
ともあれクリスティーナの歌唱は一聴の価値アリです。


A STORM OF LIGHT『ANTHROSCENE』

2000~12年にかけてNEUROSISのヴィジュアル担当だったジョシュ・グレアム(他にもSOUNDGARDENやSLEEPを手掛けている)が07年にニューヨークで結成したポスト・メタル・バンド。
俺は今まで聴いたことなかったんだけど、コレがもう5thアルバムですって。
初期はSWANSやUNSANEで知られるヴィニー・シグノレリ(ドラム)が参加していたそうだが、現在の編成はジョシュ・グレアム(ギター、ヴォーカル、キーボード)、ドメニク・セイタ(ベース)、ビリー・グレイヴス(ドラム)という、11年以来固定したトリオ。
KILLING JOKEの影響を受けているらしい。
しかし特に似ているとは思わない。
やはりというかNEUROSISに通じる部分は随所に。
しかしNEUROSISよりもずっとメタル寄りで、あちこちでザクザクしたスラッシーとも言える刻みリフを聴くことが出来る。
BLACK SABBATH的な引きずりドゥーミー・リフも何曲かにフィーチュア。
あと、スローでへヴィな曲には90年代以降のMETALLICAや、あるいはROLLINS BANDあたりを思わせる要素があったりも。
ジョシュがプレイするシンセ類も効果的な味付けになっていると思う。
こちらはGOUGE AWAYとは対照的に、5分以下の曲は1曲もなし。
1曲は8分以上。
比較的シンプルなリフを前面に押し出し、そこにぶっきらぼうながら印象的なメロディが乗る。
ダークなのに、妙にキャッチー。
レーベル宣材には“最もキャッチーなポスト・メタル”とある。
何となくわかる気もする。


『BURNT SUGAR』『ANTHROSCENE』、どちらも10日から絶賛発売中。


(2025.6.25.改訂)

DAYMAREの2枚(SOFT KILL + SLEEP)

画像デイメア・レコーディングスより、本日リリースの新作2枚を紹介。
音楽性もキャリアも全然違う二組、どちらもお勧めのアルバム。













SOFT KILL『SAVIOR』

オレゴン州ポートランドで2010年に結成されたポスト・パンク/ダーク・ウェイヴ・バンド。
11年に1stアルバムをリリースして以降、途中に1年以上の活動休止期間を挟みつつ、アルバム4枚リリース。
前作から1年半ぶりとなる5thアルバム。
現在のメンバーはトビアス・グレイヴことトビアス・シンクレア(ヴォーカル、ギター、シンセサイザー:元BLESSURE GRAVE)、コンラッド・ヴォルマー(ギター)、オーウェン・グレンドワー(ベース、ピアノ)、アダム・バルガセム(ドラム)の4人。
THE CHAMELEONSの多大な影響を受けているそうで、他にもTHE CUREとかECHO & THE BUNNYMENとかTHE PSYCHEDELIC FURSとか。
実際そんな感じの音。
時につぶやいたり時に叫んだりするトビアスの低音ヴォーカルは、イアン・カーティス(JOY DIVISION)を思わせたりも。
音楽的にはJOY DIVISIONみたいに鬱々とはしていなくて、速い曲も遅い曲もスカッとしてる。
メランコリックで時にノイジーなギター、低く地を這うベース、トライバルになったりもするドラム。
びっくりするくらい80年代っぽい。
「Dancing On Glass」とか「Do You Feeling Nothing」とか、「おお、まさに!」と思うような曲多し。
しかしあくまで現代のバンドであるのは、90年代以降のエクストリームな音楽を通過しているのが明白な、ソリッドでダイナミックな演奏に現れている。
「Missing」とか、けっこうキャッチーな感じの曲も。


SLEEP『THE SCIENCE』(画像)

2009年に再結成したSLEEP、待望のアルバム。
『DOPESMOKER』(2003年)を独立したオリジナル・アルバムではなく『JERUSALEM』(1999年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201612article_18.html)の改訂版とすれば、『JERUSALEM』以来実に19年ぶりのオリジナル・アルバムとなる。
残念ながらクリス・ハキアス(ドラム)は不参加で、再結成後のSLEEPはアル・シスネロス(ベース、ヴォーカル)、マット・パイク(ギター)、そしてNEUROSISから客演のジェイソン・ローダー(ドラム)という3人。
この1月に初来日を果たしているが、俺は行けなかった。
原盤はジャック・ホワイトのサード・マン・レコーズからで、海外では4月にリリースされて、10000枚限定のLPが数時間で完売したんだとか。
それだけ渇望されていた新作。
(「Sonic Titan」は『DOPESMOKER』にも収録されていたものの)
ジャケットからして「SLEEPがスペース・ロック化?」とか思うけど、多少スペーシーなテイストも、程度。
見事にSLEEP節。
冒頭のタイトル曲からいきなりギター・ノイズが唸りを上げ、「おおお」となる。
あとは例の重剛引きずりリフが存分に味わえます。
ただ、もちろん昔のSLEEPそのままではない。
アルのお経ヴォーカルは90年代よりも随分クリアに聴こえて、SLEEPよりもOMを思わせたり。
「Giza Butler」あたりでは、かつてのSLEEPでもOMでも聴けなかったような、微妙にキャッチー(?)とも言える歌メロも顔を出す。
その「Giza Butler」、もちろんBLACK SABBATHのギーザー・バトラーにひっかけた曲名で、これまたかつてなかったユーモアのセンスを感じたりも。
ジェイソンのドラムは、クリスとかなりノリが違う。
ここは好みの分かれるところだろう。
あと、SLEEPとしては聴きやす過ぎる、というある意味屈折した(?)違和感を持つ人も多いかも知れない。
まあ14分半ある「Antarcticans Thawed」とか聴いて「昔よりも聴きやすい」とか思ってしまう俺みたいなのの方が病んでるんだと思う(笑)。
「コレじゃない」とかまで思う人はまあ少ないだろう。
初めてSLEEP聴く人にも安心して(?)お勧め出来るというか。
コレ聴いて気に入った初心者は是非『JERUSALEM』または『DOPESMOKER』も。


『SAVIOR』『THE SCIENCES』、共に本日リリース。


(2025.5.9.改訂)