
音楽性もキャリアも全然違う二組、どちらもお勧めのアルバム。
SOFT KILL『SAVIOR』
オレゴン州ポートランドで2010年に結成されたポスト・パンク/ダーク・ウェイヴ・バンド。
11年に1stアルバムをリリースして以降、途中に1年以上の活動休止期間を挟みつつ、アルバム4枚リリース。
前作から1年半ぶりとなる5thアルバム。
現在のメンバーはトビアス・グレイヴことトビアス・シンクレア(ヴォーカル、ギター、シンセサイザー:元BLESSURE GRAVE)、コンラッド・ヴォルマー(ギター)、オーウェン・グレンドワー(ベース、ピアノ)、アダム・バルガセム(ドラム)の4人。
THE CHAMELEONSの多大な影響を受けているそうで、他にもTHE CUREとかECHO & THE BUNNYMENとかTHE PSYCHEDELIC FURSとか。
実際そんな感じの音。
時につぶやいたり時に叫んだりするトビアスの低音ヴォーカルは、イアン・カーティス(JOY DIVISION)を思わせたりも。
音楽的にはJOY DIVISIONみたいに鬱々とはしていなくて、速い曲も遅い曲もスカッとしてる。
メランコリックで時にノイジーなギター、低く地を這うベース、トライバルになったりもするドラム。
びっくりするくらい80年代っぽい。
「Dancing On Glass」とか「Do You Feeling Nothing」とか、「おお、まさに!」と思うような曲多し。
しかしあくまで現代のバンドであるのは、90年代以降のエクストリームな音楽を通過しているのが明白な、ソリッドでダイナミックな演奏に現れている。
「Missing」とか、けっこうキャッチーな感じの曲も。
SLEEP『THE SCIENCE』(画像)
2009年に再結成したSLEEP、待望のアルバム。
『DOPESMOKER』(2003年)を独立したオリジナル・アルバムではなく『JERUSALEM』(1999年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201612article_18.html)の改訂版とすれば、『JERUSALEM』以来実に19年ぶりのオリジナル・アルバムとなる。
残念ながらクリス・ハキアス(ドラム)は不参加で、再結成後のSLEEPはアル・シスネロス(ベース、ヴォーカル)、マット・パイク(ギター)、そしてNEUROSISから客演のジェイソン・ローダー(ドラム)という3人。
この1月に初来日を果たしているが、俺は行けなかった。
原盤はジャック・ホワイトのサード・マン・レコーズからで、海外では4月にリリースされて、10000枚限定のLPが数時間で完売したんだとか。
それだけ渇望されていた新作。
(「Sonic Titan」は『DOPESMOKER』にも収録されていたものの)
ジャケットからして「SLEEPがスペース・ロック化?」とか思うけど、多少スペーシーなテイストも、程度。
見事にSLEEP節。
冒頭のタイトル曲からいきなりギター・ノイズが唸りを上げ、「おおお」となる。
あとは例の重剛引きずりリフが存分に味わえます。
ただ、もちろん昔のSLEEPそのままではない。
アルのお経ヴォーカルは90年代よりも随分クリアに聴こえて、SLEEPよりもOMを思わせたり。
「Giza Butler」あたりでは、かつてのSLEEPでもOMでも聴けなかったような、微妙にキャッチー(?)とも言える歌メロも顔を出す。
その「Giza Butler」、もちろんBLACK SABBATHのギーザー・バトラーにひっかけた曲名で、これまたかつてなかったユーモアのセンスを感じたりも。
ジェイソンのドラムは、クリスとかなりノリが違う。
ここは好みの分かれるところだろう。
あと、SLEEPとしては聴きやす過ぎる、というある意味屈折した(?)違和感を持つ人も多いかも知れない。
まあ14分半ある「Antarcticans Thawed」とか聴いて「昔よりも聴きやすい」とか思ってしまう俺みたいなのの方が病んでるんだと思う(笑)。
「コレじゃない」とかまで思う人はまあ少ないだろう。
初めてSLEEP聴く人にも安心して(?)お勧め出来るというか。
コレ聴いて気に入った初心者は是非『JERUSALEM』または『DOPESMOKER』も。
『SAVIOR』『THE SCIENCES』、共に本日リリース。
(2025.5.9.改訂)