浅井蓮次(原作:沢田新)『バイオレンスアクション』4

画像第3集から半年余り、お待ちかねの最新巻です。

10話・11話は基本的におまけで、メインは12話。
(途中まで)
一見真面目でいい人そうだけど実はクズ野郎な警官(駐在)・桑井が、ヤクザから依頼された殺し屋兼業の猟師集団(!)に狙われ。
その桑井を護るために派遣された主人公=20歳のゆるふわ殺し屋ガール・ケイ。
(今回銃なし、ナイフのみ所持)
しかし折からの台風に直撃されて風邪を引いたケイは、(それ以外にもいろいろあって)実力を発揮出来ないまま桑井と共に猟師集団に捕らわれ。

窮地のケイを救うのが、げっそり痩せた“みちたかくん”と、まさかの巌谷!
第1集の時点で、みちたかくんがその後準レギュラーになると予想した人がどれほどいただろうか。
そして、第2集~第3集にかけて極悪&クズっぷりを存分に発揮した挙句もの凄くあっさりやられた巌谷が再登場するとは。
しかも“恐怖”そのものを自認して中二レベルの全能感をバリバリに出していた巌谷が、みちたかくんにヘコヘコする下僕と成り果てている。
猟師との気持ち悪過ぎるファイトは苦笑必至。
敵も味方も壊れた人ばっかりどんどん増殖するなー。

もっとも一番壊れてそうなのはケイその人なんだけどね。
資格取得に燃える安定志向の専門学校生・ケイがどうして表情ひとつ変えずに獲物を屠る(鬼強い)殺し屋なのかは、ここに至っても明らかにならない。
ただ、第4集ではちょっとだけ、ほんのちょっとだけ思わせぶりなシーンが挿まれたりもする。
巌谷を含めて、登場人物の背景がまるっきりすっぽ抜けている『バイオレンスアクション』なのだが、そのあたり今後少しずつでも明らかになるのかどうなのか。

基本的に激することのないケイが、みちたかくんに対して一度だけ言葉を荒げるシーンがある。
「いま上も下もないでしょう。ばかですか! お互いのプライドと仕事してるわけじゃないんです!」
「おお」と思うが。
それに続くセリフが「早く済ませてお風呂に入りたいの!」
(…)

今回は状況のせいもあってケイのアクション少な目ながら、相変わらず荒唐無稽を恐れずに突き進む、救いがあるんだかないんだかよくわからない痛快(?)活劇。
左手にスリングショットを巻きつけたケイ(“美智鷹美装”のツナギ着用)はどう巻き返すのか。
(ってか、テープで手にエモノを固定って、あの漫画思い出すじゃんよ…)

諸々のランキングでも注目されまくっている(つまり俺がわざわざプッシュするまでもないってことなんだが)『バイオレンスアクション』。
ともあれ続きが待ち遠しい。
16日より絶賛発売中。


(2025.5.6.改訂)

ムラマツヒロキ『DJ道』完結

画像ここ数年、多くのイヴェントでDJとして一緒に回してきた盟友にして人気漫画家・ムラマツヒロキが「チャンピオンクロス」で好評のうちに続けてきた連載『DJ道』。
本日17日に配信された第24話を以て、堂々の完結。

http://chancro.jp/comics/dj/24

アニソン以外無縁だったヘタレ青年・道雄が失恋を契機にDJとして覚醒していく物語。
24話ってことは、まるまる2年楽しませてもらったのか。

第23話、DJの師・ムラマツからの「ノリで何とかしろ」という指令に困惑しつつ、ノリに任せて“超新星無我MIX”の境地に突入した道雄。
DJコンテストと恋の行方は…については本編を御覧いただくとして。
道雄の新たな恋(?)やその後の“DJ道”に関して含みと余韻を持たせる…というか、続編を期待させるような終わり方だったと思う。

ストーリー自体は荒唐無稽とも言えるモノだったし。
(基本ギャグ漫画なんだからそりゃそうだ)
そもそもいわゆるDJっぽいスキルが皆無で、曲を途中で切り替えたり(ギターソロの前でカットするなんてとんでもない!)“2枚がけ”したりといったことをあんまりしない(たまにはするよ)俺みたいな人間…には縁のない世界かと思いきや。
実際には、自分がDJをやるうえでも参考になるところが幾つもあったりしたのだった。
なので、DJ初心者はもちろんのこと、なんとなくノリでDJ続けてるような人にも見るべきところがあると思う。

連載はコレで終わりだけど、7月には単行本化されるそうです。
(7月か…単行本買うカネあるかな)
さあ、『続・DJ道:愛…しりそめし頃に』(笑)に期待しよう。


ともあれムラマツ先生、連載お疲れ様でした。
コレで収入源がひとつ減りましたね(爆)。


(2025.4.28.改訂)

山下ユタカ近況

画像今や本人がスマホでツイッターやってる(一時期からは想像もつかない…今じゃ一応パソコンだって持ってるんだぜ。ただしスマホはしょっちゅう壊す)ということもあり、最近このブログでは御無沙汰だった“山下ユタカ近況”。

昨夜我が地元埼玉は宮原ヒソミネ(そんなところにライヴハウスあったんだ!)で山下ユタカ=ハッチがヴォーカルを務めるゲルチュチュのライヴがあり。
都内で用事済ませてから向かったところが宮原近辺で沿線火災があって電車が止まり。
ヒソミネに着いた時にはイヴェントは無事終了しておりました(苦笑)。
とりあえず1ヵ月ぶりで山下氏に会って路上飲み。
一応元気でした。

何でこのタイミングなのかは知らないけど、出世作(?)『ノイローゼ・ダンシング』(画像)が無料公開され。
新作ネームは公式サイト(http://yamashitayutaka.com/)やnote(https://note.mu/yutaka_yamashita)で発表されていたのが、新たに60ページの新作読み切り「狂い咲き産業道路」のネームが本人のツイッター(https://twitter.com/yutaka_yamasita)で公開されたり。
新作が雑誌に載ることこそないものの、山下ユタカ、実は話題は途切れてない。
(バンド活動も盛んにやってる)

「狂い咲き産業道路」は持ち込んだ先で「需要がない」とか言われたそうだけど、山下ユタカテイストがバリバリの、ファンならたまらなそうなお話。
(ツイッターからだとかなり見づらいが)
他にも新しいネームが幾つもあるんだそうで。
相変わらずの旺盛な創作意欲。

しかし…ペン入れされて完成した作品は、残念ながら「残像のラプソディ」(クラウドファンディングで制作された作品だったが、今ではnoteで読める)以来皆無なんだよなあ。
(『カリスマ』もあったけど、完結してない以上“完成”とは言えんだろう)
それが一番の問題だ。
どうにかなりませんかいのう。

毎回言ってるけど、“需要がない”んだったら、魂売ってでも(苦笑)需要がある作風で1本やれないかな。
これまた毎回言ってるけど、本人の作家性が全然出ないような請負仕事でも、あの絵で描いたら絶対面白くなると思うんだが。


2年前から漫画原作の仕事もやってる俺が今妄想してるのは、いつか原作:大越よしはる、作画:山下ユタカ…でやれないかな、と。
それで売れたらお互いウィンウィンだ(笑)。


追記:
原作:吉良大介、作画:山下ユタカってのもアリだぜ。

(2025.4.18.)

「あの方」の正体

画像青山剛昌が病気療養(何の病気?)と充電のため『名探偵コナン』を長期休載するのだという。
そして、休載前の最後の話で遂に“黒ずくめの組織”のボスである「あの方」の正体が明らかに?
チェックしましたよ、少年サンデー。
(最近はあんまり読んでなかったんだけどね)

…烏丸蓮耶かあ。
20年ほど前に99歳で死んでいるはずの、謎の大富豪。
『名探偵コナン』では30巻(画像)で名前が登場。

意外性はないというか。
妥当(?)なところに落ち着いたなというか。
(落ち着いたってか、作者は30巻以前の時点でもうこういう風に決めてたんだろうけど)
「あの方」は阿笠博士をはじめとするコナン(=工藤新一)に近しい人物ではないとか、作中で既にフルネームが出ているとかいった、これまでの作者の発言には合致する。
『名探偵コナン』のディープなファンで「あの方」=烏丸蓮耶と踏んでいた人はかなりいたんじゃないだろうか。

一方で、多くのファンががっかりしたんじゃないかとも思う。
意外性なさ過ぎと思う人も多そうだし。
作中で“黒ずくめの組織”との関係性が全然語られてきてないじゃん、とか思う人も多そうだし。
(まあこれまで散々ヒントとされてきた「七つの子」がカラスについての歌=”烏丸”の暗示ではというのはあったけど)
あと、『名探偵コナン』をあんまりディープに読んでこなかったような人だと、そもそも「誰よそれ?」とかいう人も多いのでは…。

ともあれ、遂に明らかになっちゃいましたよ「あの方」。
長期休載がどれくらいの期間になるのかわからないが、コナンの両親が解決まで日本に滞在することになったそうだし、連載再開後はいよいよ“最終章”として物語が急速に展開するのではないでしょうか。

『名探偵コナン』、1994年の連載開始から既に23年。
烏丸蓮耶の名前が出た時点で、既に6年経っていた。
そこから更に17年。
凄いね。


時々音楽以外の原稿仕事をやって…というか、実のところ今じゃそっちの方が稼ぎのメインなんだけど。
詳細は秘すものの、考えてみれば『名探偵コナン』がなかったら、俺自身今もフリーライターとか言って世に憚る状況じゃなかったかも知れんのだよなあ。
縁は異なモノじゃのう。


追記:
この後、『名探偵コナン』の連載は2018年4月から再開。
連載は既に30年を超え、青山剛昌は還暦を超えている。

(2025.3.12.)

岩明均(原作)・室井大資(漫画)『レイリ』第四巻

画像こないだ『バイオレンスアクション』第3集が出たのに、1週間ちょっとで『レイリ』の第四巻。
なんだよ、今月室井大資月間かよ。
(『レイリ』のカバーにももう“沢田新の名義で原作をつとめる『バイオレンスアクション』”って書いてあるね)

ともあれ。
武田信勝を亡きものにせんとする刺客とレイリの激闘。
そして、レイリが敬愛する岡部丹波守が死守する高天神城を、武田家は見捨てることに。
…というのが、第三巻のあらすじ。

高天神城には援軍を送らないという武田家の決定が、当の高天神城には知らされておらず。
援軍を信じて果敢に籠城戦を闘う高天神城の将兵らはギリギリまで奮闘の末に使い潰される運命…と知ったレイリが、遂に立つ。
徳川軍の厳重な包囲網を潜り抜けて高天神城にたどり着いたレイリは、岡部丹波守との再会を果たし。
第四巻はそのような話向き。

援軍が来ないことを知った高天神城の将たちは“玉砕”を覚悟するが、よりによって誰よりも死にたがっているはずのレイリがそれを喝破。
武田信勝の思想を知り、(本人にそのつもりがなくとも)その影響を受けたレイリは、最早第二巻までの絶望にまみれた死にたがりの少女ではなく。
その命を“正しく”武略のための盾として使うことを願い出る。

それにしても。
第二巻でレイリを「失せよ!! 不吉な者!!」と退けた岡部丹波守が、死を覚悟の作戦を前に見せる柔らかい表情、そしてレイリに話しかける心からのねぎらいといたわりの言葉。
「こんな荒みきった戦場で最後に一輪の花…お前の顔が見られて嬉しかったぞ」

はい、泣きました、泣きましたよ。
漫画読んで泣いたの何年振りだろう。
考えてみりゃ岩明均には『寄生獣』でも泣かされてるからなあ。
その岩明の作劇と、それを余すところなく描写して見せた室井大資。
室井がここまで描けてなかったら、泣かされはしなかったのに。

そして作戦決行。
ここでダメ押し、最期の別れを前に、岡部丹波守ときたら。
「ゆけ!! 頼んだぞ!! わが娘よ!」
ええ、泣きました、また泣きましたよ。

そこから始まる地獄の闘い。
先ほどまでのムードは何処へやら、鬼神の強さで進むレイリ。
さっきまで息をしていた人間がたちまち肉塊と化す、『寄生獣』以来変わらぬ岩明均の殺戮描写。
(そして岩明が乗り移ったかの如くでありながら自らの個性を存分に発揮する室井大資)
その闘いの行く末は如何に…。

時に天正9年。
史実では翌年に武田家滅亡。
物語はいよいよクライマックスへと?
第五巻が待ち切れん。

ともあれ『レイリ』第四巻、20日より絶賛発売中。


(2025.2.28.改訂)

浅井蓮次(原作:沢田新)『バイオレンスアクション』3

画像「やわらかスピリッツ」で好評連載中、『バイオレンスアクション』の第3集。
…好評ってか、「やわらかスピリッツ」の連載作品中で、PV数がぶっちぎりのトップですってよ。
凄いね。

…で、第2集の発売直後に、原作者“沢田新”の正体が公表されている。
室井大資。
岩明均原作の『レイリ』の作画担当として絶賛連載中の室井大資その人であります。
納得した人も多かっただろう。
ところどころに挟まれるギャグのセンスとか『秋津』とそっくりだもんね。

ともあれ、第2集の巻末、トラックで突っ込んできた“巌谷(塾長)”“玲(りん)”“玲(れい)”の3人と、ケイ、だりあ、そして“みちたかくん”たちの死闘…が、第3集のメイン。
相変わらず、ゆるふわなのに鬼強い殺し屋ケイ…が走って跳んで蹴って撃って刺す。
何処かが完全に壊れている巌谷たち3人を凌駕する壊れっぷりと底の知れない何かを、あくまでなんとなく匂わせたり示唆したりするだけで、基本的には荒唐無稽さを恐れない、ポップで痛快なアクション。

室井大資(沢田新)が、わざわざ変名(&自分以外の描き手)を用いて提示しようとしている(いた)のは、何なのだろうか。
荒唐無稽さやツッコミの余地まで含めて、徹底的にエンターテインして見せようと?
そこらへんは正直よくわからんのだが。
ただ、常日頃「漫画家はサービス業」と断言している室井大資が、自分の名を伏せることで(って、もうバレちゃってるけど)自身のネームバリューや作家性からも離れたところで自身のサービス精神とエンターテインの極北を開陳しようとした試み、という気はしないでもない。
何しろ、20歳のゆるふわ巨乳専門学生殺し屋とか。
イ○カを聴いて鬼MAXな強さを発揮する(サイボーグにも殴り勝つ!)みちたかくんとか(笑)。
そもそも室井大資自身のペンでは、ケイのようなヒロインは描き得なかっただろう。
(その点で、浅井蓮次の貢献度も実に大きい)

俺がプッシュし続けている漫画家・山下ユタカは、あまりにも痛みを実感させ過ぎるリアルな暴力描写の極北を追及したが。
“バイオレンスアクション”と大上段に銘打ちながら、この漫画にはそんなリアリティはない。
それでイイのだと思う。
…ロックに例えるなら。
山下ユタカがステージで自身を傷つけて実際に血を流すイギー・ポップなのだとしたら、室井大資はロックの情念や直截な暴力性を全部廃して“空気よりも軽い”と評された、全盛期のCANなのだ、と。
(そうかあ?)

いや、この作品を理屈であれこれ言うのが一番愚かしいのだろう。
考えるな、感じろ。
そして楽しめ!
…というのが一番正しい向き合い方に違いない。


『バイオレンスアクション』第3集、12日より絶賛発売中。


(2025.2.26.改訂)

山下ユタカ近況

画像ここで山下ユタカの話をするのも4ヵ月ぶりくらいですが。
何しろ何処かに新作が載るとか、そういう動きがないからねえ。
最近はそんなにしょっちゅう会ってもいない。
こっちも貧乏暇なしなもんで。
あ、こないだは二人で昼から翌朝まで17時間飲み続けてその間の支出は全部俺持ちというアホな遊び方をしたけど。
(山下氏の名誉のために言っておくと、俺がおごってもらったことももちろんありますよ、一応…)

そんな中…先日公式ツイッターでも告知されていたけど、公式サイトにアップされているネーム「逆頭(さかたま)-REVERSE HEAD-」の前日譚である物語のネーム「REVERSE HEAD-EPISODE 0(ゼロ)-」がnoteで公開されてます。

https://note.mu/yutaka_yamashita/n/n6818f5e7c2e8

以前にも公開されてたネタではあるが、ブラッシュアップされている。
公式サイトやツイッターをチェックしてる人はもう御存知だと思うけど、まだの人は是非御覧あれ。
パンクにこだわるピュアで不器用なバンドマンのリアルが存分に描かれております。

しかし…本編にしても“EPISODE 0”にしても、ネームなんだよなー。
どっかで完成品を読む機会はないもんでしょうか。
結局「残像のラプソディ」以降、ファンがペン入れされた新作を読む機会は途絶えている。
公開されてるネームだけじゃなくて、他に進行してる話もあるはずなんだけど、そのへんがどうなってるのかは、俺もよく知らない。

前にも書いたけど、最近山下ユタカに会って飲む時は「もう、魂売れや!」ぐらいのことを言ってる(笑)。
本人は漫画家よりもバンドマンって意識なのかも知れないが、バンドで食うなんてのはあり得なくて他に仕事する気もないんだったら、もうどうにかして漫画で稼ぐしかないもんね。
何度も言う通り、ヤクザもヤンキーもバイクも出てこない、請負仕事の愚にも付かない(?)山下漫画…というのを読んでみたいと思うファンは俺だけじゃないと思うし。
なんか全然違うジャンルの漫画を描いたとして、山下ユタカを知らなかった人や彼の元々のテイストが好きじゃないような人も取り込めるポテンシャルは、持ってるはずなんで、多分。

あと都内のファンは、ゲルチュチュのライヴにも行ってあげてねー。
漫画も音楽も同じ心根から出てますんで…。


画像はネームじゃなくてボツ原稿。


(2025.2.7.改訂)

浅井蓮次(原作:沢田新)『バイオレンスアクション』2

画像「やわらかスピリッツ」にて好評連載中『バイオレンスアクション』、待望の第2集。
好評も好評、第1集は重版に次ぐ重版で、この5月の「このマンガが凄い!」ランキング“オトコ編”の第1位なんだそうで。

20歳の専門学校生・ケイはデリヘル「ぷるるん天然娘特急便」の指名ナンバーワン…と見せかけて実は超凄腕の殺し屋。
あくまで簿記検定合格を本道として日々勉学に励み続けるゆるふわ女子・ケイが何故バイトで殺し屋なのか、その超人的な身体能力と銃や刃物の腕前はどのように培われたのか…という大きな謎は相変わらずすぽーんと(?)置き去りにされたまま、彼女は走って跳んで撃って切り刻む。
(いや、第2集ではナイフを使うシーンは出てこないけど)

狙撃の現場でアイスキャンディーをバリバリ食いまくり、ボコボコに殴られても笑顔を絶やさず(そしてそののち反撃に転じ)、平然とかつ迅速に相手を始末した後でTシャツの返り血を嘆き、しくじったヤクザがぶち込まれる棺桶ほどのスペースにも「WiFiあったら住めるなあ」と言い放ち。
あらかじめ何かが決定的に壊れているケイ。
しかし凡百の漫画であれば露悪的に強調されるかも知れないケイの“壊れた”キャラクターは、ところどころに破綻した者のたたずまいをほんのごくわずかに匂わせつつも基本異様なまでにフラットに、かつポップに描かれる。
そこにあざとさが感じられないのが、この漫画が多くの支持を得ている理由のひとつではないかという気がする。

第2集では、幼少時からヤクザ・フカに蹂躙されながら殺人者として育てられ、一方でケイとはまったく較べ物にならないほど“まともな”負の感情を露わにする新キャラクター・だりあが登場。
登場人物に幅が出ると共に、だりあとのコントラストでケイの不気味なまでにゆるふわなキャラクターが強調されることにもなっている。

第1集で殺されかかったケイの同級生・渡辺くんはフツーの専門学校生だったはずが、第2集ではしれっと殺し屋組織の下働き(つまりバイト仲間)となって登場。
更に第1集でケイに殺されたはずだったアウトローの法の番人(?)“みちたかくん”も“復活”。
そして新たに出現した“塾長”“玲(りん)”“玲(れい)”という3人の敵はどう動くのか。
(どう動くのかって、トラックで突っ込んできたけど)

秋に発売されるという第3集が、早くも待ち切れない。
『バイオレンスアクション』第2集、本日発売。
(地元の本屋にあって良かった)


(2025.2.2.改訂)

岩明均(原作)・室井大資(漫画)『レイリ』第三巻

画像2日続けて漫画の話。
岩明均・室井大資コンビによる最新巻。

織田軍の雑兵に家族を惨殺された少女・レイリは武田家の武将・岡部丹波守の元で死を願いつつ剣の腕を磨き。
しかし何故か武田家の重臣・土屋惣三に拾われることとなり、武田勝頼の嫡男・信勝の影武者として日々を送ることになるのだった…というのが第二巻までのあらすじ。

第二巻は武田信勝と影武者・和助が刺客に襲われる緊迫の引きだったが。
話はそこから容赦なく転がって行く。
和助の死と信勝の動揺。
そして再度の敵襲。

ハイライトは約60ページに渡って展開する、2度目の敵襲とそれに伴う大立ち回りだろう。
遂に真剣で敵と切り結ぶ…いや、バッタバッタとひたすらに敵を斬り伏せて行くレイリの圧倒的な強さとアクション。
初めて真剣を振るって、初めて人間を斬ったにも関わらず、レイリはとんでもない剣技で殺人機械のように敵を仕留めて行く。
(しかも影武者としてきちんと演じながら)
剣を操るだけでなく縦横に走り、跳ぶ、驚異の身体能力。
まさに水を得た魚。
一方で、遂に敵と対峙し命のやりとりをする事態となっても、レイリの心には興奮もゆらぎもなく。
(少なくともそれは描かれず)
このあたり、昨日紹介した『バイオレンスアクション』のヒロイン・ケイにも共通するモノがあると思う。
(レイリは斬り合いが済んだ後に感情を開放するが)

それにしても。
以前このブログで紹介した室井大資の漫画『イヌジニン』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1931.html)は、約10年前の作品。
当然のこととはいえ、現在の室井の画力は、当時の比ではない。
岩明均の世界を実に過不足なく絵に出来ているな…というのは、第三巻に至って戦闘/アクションのシーンを見ることで改めて実感出来た。
112ページ、敵に斬りかかる土屋惣三の腕が刀ごと鞭のようにしなるコマに『寄生獣』を連想した人は少なくなかったのではないかと。

ともあれ。
第三巻の終盤は一転して権謀術数の世界。
徳川軍(その背後には織田信長が?)の侵攻で危機に瀕した高天神城を守るのはレイリの恩人・岡部丹波守。
しかし武田家は高天神城の放棄を決定。
丹波守の存亡危急、レイリは何を思いどう動くのか…。


時に天正8年。
ぶっちゃけ、史実では2年ぐらい後に武田家滅亡。
それはそれとして、物語はどうなるんでしょうか。
第四巻が待ち遠しい。
『レイリ』第三巻、7日より絶賛発売中。


(2025.1.13.改訂)

浅井蓮次(原作:沢田新)『バイオレンスアクション』1

画像発売から1ヵ月ほど出遅れたが。
コレ面白いです。
小学館のサイト「やわらかスピリッツ」で昨年から連載されている作品。
重版出来の人気作だそうなんで、このブログを御覧の皆様でも読んだ人いるかもだけど。

デリヘルを装った殺し屋派遣業者「ぷるるん天然娘特急便」(という設定からして既に狂ってるが)の指名No.1・ケイ。
日商簿記検定2級合格を目指して専門学校に通い、堅実な将来を夢見る彼女…は最強の殺し屋。
容姿ばかりか頭の中身も“ゆるふわ”そうなケイが、とんでもない身体能力と百発百中の射撃テクニックで、復讐から警護からしくじった人間の処分まで仕事を選ばず大立ち回り。
10人近いヤクザもモノともせず。

どう見てもフツーの女の子(見た目は…)なケイの身体能力と射撃やナイフの腕(しかも20歳にしてマニュアル車を乗りこなす)はどのようにして培われたのか。
そもそもどうしてこんな仕事に手を染めたのか。
…といった背景やらなんやらは(少なくともこの単行本第1集では)まったく説明されず。
そのあたりをいぶかしんだり突っ込んだりするのも馬鹿らしいほど、ケイは走って跳んで撃って斬りまくり、武闘派ヤクザの皆さんは次々に肉塊と化す。
そういったアレコレを、時には簿記の勉強の合間に淡々とこなしていくケイ。
完璧にイカレたイノセンス。
ってか、ほとんどの登場人物があらかじめイカレてるか壊れてるけど。

作者の浅井蓮次という人は全然知らなかったんだけど、『バケモノの子』とか描いてた人なのね。
曲者なのは、原作者・沢田新の作劇だろう。
“和歌山県出身・在住の兼業主婦”で、この『バイオレンスアクション』が漫画原作デビューというが。
疑わしいよな…。
個人的には、それなりに名のある作家とか漫画家の仮の姿ではと踏んでいるんだけど。

原作付きの漫画と言っても、原作者がガチガチにシナリオを作って漫画家がその通りに描く場合と、漫画家にアドリブの余地が多い場合との2種類がある。
『バイオレンスアクション』の場合…セリフ回しのあちこちに登場する乾いた笑いのセンスは、原作者のモノだろうか。

クスッと笑える部分だけにとどまらず…血が吹き出そうが手足を切り刻まれようが、何処もかしこも徹底的にドライ。
家族を殺されて復讐のためにケイを指名する依頼者さえもがドライ。
この乾いたセンスが全編に横溢しているんで、随所に背筋の寒くなる部分がありながらも読後感はいっそ爽快。
(全編に…となると、このセンスはやはり原作者のモノと考えるべきか)


テイストはまた違うけど、『ガンスリンガーガール』なんかのファンにもお勧め出来る作品だと思う。
連載の方ではケイ以外の殺し屋女子も登場し、話が広がりつつあり。
第2集も楽しみです。
『バイオレンスアクション』1、絶賛発売中。


追記:
この時点ではすっとぼけて”個人的には、それなりに名のある作家とか漫画家の仮の姿ではと踏んでいるんだけど”なんて書いているが…。

(2025.1.13.)